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Covid-19に負けるな! ドクター×ドクター対談新型コロナウィルス向けワクチンを、ただいま開発中!

By 稲垣邦康(GQ)2020年4月13日

世界中で感染が拡大する新型コロナウイルスの脅威のもと、ワクチン開発に着手した遺伝子治療の専門医である森下竜一ドクターを、機能性医学を唱える斎藤糧三ドクターが直撃した。

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ワクチン投与開始までには時間を要する

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、各国ではワクチン開発が急ピッチで進んでいる。

日本でいち早くワクチン開発に着手した大阪大学大学院医学系研究科の臨床遺伝子治療学寄附講座教授、森下竜一(もりしたりゅういち)ドクターに話を訊いた。

森下ドクターにインタビューするのは斎藤糧三ドクター。腸内環境の再生によってアレルギーなどの慢性疾患を根治に導くことをめざす次世代型医療「機能性医学」を日本に紹介した実績を持つ。インタビューは4月3日(金)に、コンデナスト・ジャパン(東京都渋谷区)の会議室でおこなわれた。

森下竜一ドクター(写真左)と斎藤糧三ドクター(写真右)。

斎藤 先生が新型コロナ・ワクチンの開発に着手したきっかけを教えてください。

森下 もともと、国内初の血管再生の遺伝子治療薬「コラテジェン」を開発したのがきっかけです。遺伝子治療薬は、ある遺伝子を患者さんの体内に入れ、その遺伝子が作り出すたんぱく質の生理作用により病気を治療する薬です。この経験をもとに、新型コロナウイルス予防に効果のあるDNAワクチンの開発に着手しました。

斎藤 遺伝子治療薬のメリットとは?

森下 われわれは、環状のプラスミドDNAという遺伝子をベクター(運び屋)に使いますが、プラスミドDNAによるDNAワクチンは大量生産出来るのが特徴です。また、不活化ウイルスをワクチンとする方法(あるいは、弱毒化ワクチン)ではウイルス入手後不活化の過程とその生産が6カ月程度かかるのに比べ、DNAワクチンではウイルスの遺伝子情報だけが必要なので、3週間程度という短時間で開発出来ますから、感染が急激に拡大する新型コロナウイルスに有効であると考えます。また、製造に関しても不活化ウイルスの場合、「有精卵」と、呼ぶ、ヒヨコになる前の卵を使うので、そもそもワクチン製造用の有精卵を得るために時間を要する上、数も限られているためパンデミック(世界的大流行)なウイルスには向きません。われわれの研究グループでは、3月のはじめにワクチン開発に着手していますが、3週間ほどで完成しました。また、製造もプラスミドDNA(細胞の染色体とは別に、複製・増殖する遺伝因子の総称)を大腸菌に入れ、大腸菌を大きなタンクで大量に増やして抽出すればよいので、1か月で数十万人分の生産ができます。

斎藤 現在はどのような開発フェーズですか?

森下 現在は、動物実験中です。動物に抗体ができれば、9月を目処にヒトでの臨床試験を実施する予定ですが、更に前倒しすることを検討しています。年内に、百万人の方にワクチン接種が出来るようにするのが目標です。

斎藤 新型コロナウイルスを制圧するにはワクチンが有効なのでしょうか? 集団免疫の獲得によって制圧できるのでは、という意見もありますが…。

森下 集団免疫は、今回の新型コロナウイルスに関しては、必ずしもうまくいかないという危惧があります。インフルエンザと異なり、新型コロナウイルスでは少ないウイルス量で感染し、活動量が低く、既に発表もされていますが、治癒された方でも抗体が出来にくいという事情もあります。ゆえに、再感染する人がいます。ですから、ワクチンを使ってしっかり抗体をつくる必要があります。

斎藤 ウイルスの変異も話題になっています。

森下 新型コロナウイルスは、さまざまな形に変異するので注意が必要です。日本で当初感染拡大したのは、中国・武漢で流行したタイプですが、現在はヨーロッパ型、アメリカ型といわれるものが感染の主体となってきています。ただし、それぞれのタイプがどれほど危険なのかは、まだわかっていません。

斎藤 ワクチンがウイルスの変異に対応できないのでは? といった危惧もあるようですが。

森下 新型コロナウイルスを含むすべてのコロナウイルス(SARS、MERS)は、非常によく似た構造をしています。これまでのコロナウイルスとおなじく、COVID-19でもウイルス表面のスパイク(S)タンパク質という部分が、ウイルスの感染に重要なのはおなじです。COVID-19のSタンパク質は従来のコロナウイルスと比べても変異しておらず、Sタンパクを抗原(生物体内で抗体を形成・出現させる物質)として使えば、ワクチンが開発出来ないということはありません。

斎藤 ワクチンが出来るまで、われわれはどうすべきでしょうか?

森下 医療崩壊を避けるべく、外出を控え、おとなしくすべきです。現状、PCR検査数が少ないので、感染者の実態をあらわしてない可能性が高いからです。ただし、死者は少ないので、ギリギリのところで感染拡大を抑えられていると思います。いずれにせよ、今後を予測することは極めて困難です。感染者のためのベッド数は、当初の想定を超えて、逼迫しています。大阪府は、すでにトリアージ(大事故・災害などで同時に多数の患者が出た時に、手当ての緊急度に従って優先順をつけること)を実施していますが、今後はそれが全国的に拡がる恐れもあると思います。

ECMOの問題

斎藤 「ECMO(Extracorporeal membrane oxygenation)」(重症呼吸不全患者または重症心不全患者に対しておこなわれる生命維持法)に必要な機器も、足りなくなるのでは? といった話もあります。

森下 今後、ECMO関連の機器が足りている範囲で患者をコントロール出来るかどうかが重要になります。足りなくなってしまうと、その足りない台数分が死者につながってしまいかねません。

斎藤 インフルエンザと比べるとどうですか?

森下 季節性インフルエンザの死亡率は0.1%、パンデミックインフルエンザのスペインインフルエンザは死亡率2%、新型コロナウイルスの死亡率は数パーセントというデータもありますが、無症状や症状が軽い感染者を含めれば、死亡率は1%未満と考えられています。しかし、ハイリスク患者(高齢者や何らかの併存疾患を抱えた患者)ではやはり高い確率で死亡します。死亡率に注意が行きがちですが、新型コロナウイルスはインフルエンザと比べ、重症化してからが長いというのが実は最大の問題です。治るまでに平均約14日と言われています。対して新型インフルエンザは数日です。この違いは何を意味するのかというと、新型コロナウィルスに感染して入院し、呼吸管理を必要とする重症者が1000人いたとすると、それを新型インフルエンザ患者に置き換えると6000人の重症入院患者がいることに相当するということです。そのため、収容キャパシティを超えて、医療崩壊になります。

斎藤 院内感染も話題になっていますね。

森下 院内感染には2種類あります。ひとつは患者から発生する場合。こちらは、ある程度わかっていれば防護服の着用などで防げます。もうひとつは、本来感染が起こるべきところではないところで発生する場合。研修医が感染した事例などです。これにより、研修医やその関係者が2週間隔離されてしまいました。すると、いっぺんにドクターや看護師が40〜50人隔離されてしまい、数が足りなくなってしまいます。しかもECMOを実施する場合、最低でも8人の医療従事者を要しますから、いっきに人手不足になってしまうのです。結果、ドクターや看護師が疲弊し、院内感染がさらに進むケースも考えられます。

斎藤 しかもECMOのノウハウを有するドクターや看護師は少ないそうですね。

森下 心臓外科のノウハウを有する病院は大丈夫かもしれませんが、使いこなせる人が少ないのが実情です。日本はまだ機器不足には陥っていませんが、ヨーロッパは、機器を使いこなせる人、そして機器そのものも足りなくなったため死者が増えました。

斎藤 日本の現況はどう思いますか?

森下 とくに東京は深刻です。ベッド数が限られていることもさることながら、危機感が薄い。大阪のようにトリアージをするという面でも遅れています。くわえて、東京は若者が多いので、オーバーシュートする可能性が極めて高いです。あとは、ECMO関連の機器がない離島は、感染者への対応が遅れる可能性が高いです。おそらく、どこの地域も足りなくなるので、高度な医療機器が離島などに送られる可能性は極めて低いと想定されます。医師の派遣も、派遣元が医療崩壊を起こしていれば、離島での感染リスクが高いため、積極的にはおこないにくいことが予想されます。

−−BCGワクチンの有効性がささやかれていますか?

森下 BCGワクチンの効果の有無はまったくわかりません。あてはまっている地域もあれば、あてはまっていない地域もあります。今後の議論を待つ必要があり、学会からも既に否定的な見解が出ていますが、今の時点で飛びつくのは危険です。今回、新型コロナウイルスでわれわれが注意すべき点は、とにかく症状の進展がはやいということです。朝、「ちょっとしんどいなぁ」と、思った人が、夕方にはECMOを装着している事例もあります。こんなに進行がはやい肺炎というのは前代未聞です。ですので、死亡率が高いのです。

斎藤 われわれは今、新型コロナウイルス対策としてなにをすればよいでしょうか?

森下 手をよく洗い、外出を控え、部屋の風通しをよくすることなど3密をさけるのが、重要です。とくにこれから気をつけたいのが冷房機器の掛けっぱなしです。冷房をつけたまま、換気をほとんどしないと、空気中に浮遊するウイルスによる“エアロゾル感染”のリスクが高まるからです。現状、特効薬がないため、感染を防ぐためには、日々の生活のなかでやるべきことをしっかりやるしかないのです。

斎藤 富士フイルムホールディングス傘下の富士フイルム富山化学が開発した抗インフルエンザ治療薬「アビガン」も注目されていますが。

森下 アビガンは副作用(胎児に対する催奇形性)もあるので、投薬には注意が必要です。ただ、軽症の方には効果があると報告されているので、症例を選んで使用すべきと思います。ワクチンが完成するまでにはまだ時間がかかりますので、対症療法を色々見出していく必要があります。ただ、ワクチンが完成したからといって100%効果があるわけではありません。インフルエンザのワクチンでも、効果は50%ほどと言われています。

−−開発に時間が要する理由は?

森下 まず動物実験で、安全性と抗体がきちんと出来るのかの確認をするまでに時間を要します。その後、ヒトでの臨床試験(治験)を経て、国の認証を得るので時間がかかるのです。しかも、日本には政府主導の開発施設がないので、各国にくらべ開発に時間がかかるのです。

−−日本以外の国はどうでしょうか?

森下 たとえばアメリカの場合、軍がバイオテロ対策のためにウイルスの研究開発体制を持っています。そのため、開発が急ピッチに進んでいます。

−−民間企業は積極的に開発を進めないのでしょうか?

森下 それは難しいと思います。なぜなら利益がそれほど見込めないからです。エボラ出血熱に対するワクチン開発がなかなか進まないのも、利益が望めないからと言われています。

<プロフィール>

森下竜一ドクター

1962年生まれ。1987年、大阪大学医学部卒業。1991~94年、米国スタンフォード大学循環器科研究員。その後、大阪大学助教授大学院医学系研究科遺伝子治療学を経て、2003年より大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授。著書に『アルツハイマーは脳の糖尿病だった』(青春出版社:共著)などがある。

斎藤糧三ドクター

1973年東京生まれ。医師。日本機能性医学研究所 所長。日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008 年、日本機能性医学研究所を設立。

まとめ・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)

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※2014年3月31日以前更新記事内の掲載商品価格は、消費税5%時の税込価格、2014年4月1日更新記事内の掲載商品価格は、消費税抜きの本体価格となります

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