大阪大学発のバイオ企業であるアンジェスは5月25日、大阪大などと共同開発している新型コロナウイルスに対するDNA(デオキシリボ核酸)ワクチンについて、3月26日から行っている動物へのワクチン投与で、抗体価上昇が確認できたと発表した。今後、毒性試験結果を確認した上で、速やかな臨床試験への移行を進めるとしている。
今回、アンジェスが確認したのは、マウスとラットへの投与で抗体価が上昇したということのみ。試験方法や具体的な数値などの情報については「まだ途中の段階なので開示できない」(広報担当者)とした。中和抗体かどうかを確認できているのかについても、「現段階では伝えるのを控える」とした。逆にその段階でリリースを出した理由については、「動物実験で結果が出ないと、臨床試験には入れない。動物で抗体ができることが大きなベンチマークだった」と説明した。
なお、今後のスケジュールについては、7月にも大阪大学医学部付属病院と大阪市立大学医学部付属病院の2施設で数十人程度を対象に行う計画だ。その後、大規模な臨床研究を経て、「承認については我々が決められることではないが、年内にも使えるようにしたい」(同社広報)とのことだ。
なお、ワクチンの製造についてはタカラバイオが協力しており、タカラバイオはAGC子会社のAGC BiologicsにDNAワクチン中間体の分担製造を委託、Cytiva社には精製用資材の優先的な供給という協力体制を構築したことを発表している。これにより、「年内に20万人分の供給ができる体制を確保できた」(タカラバイオ広報)としている。
なお、ワクチンに関しては中国CanSino Biologics社が5月22日に英Lancet誌に、108人を対象に実施した第1相試験の結果を報告した。それによると、アデノウイルスベクターを用いたスパイク蛋白質遺伝子のワクチン接種により、ワクチン接種後14日目から特異的なT細胞の応答が認められ、28日目にピークに達したとしている。免疫原性の高さは用量依存的に認められ、高用量群の一部で、重度の発熱、疲労、呼吸困難、筋肉痛、関節痛が報告されたとしている。
新型コロナウイルスに対するワクチンの開発では米Moderna社が第1相臨床試験の中間解析結果を発表した他、米INOVIO Pharmaceuticals社もNature Communications誌に前臨床のデータなどを発表している。ワクチンの開発競争が加速してきた状況だ。