「オオサカ ヨリ コロナウイルス モッテクルナ」
4月20日、京都市中京区の雑貨店に、脅迫めいた文言が書かれた郵便はがきが届いた。差出人は不明だが、消印から同区で投かんされたことが分かる。店主の60代男性は「とにかく気持ち悪かった」と振り返る。
大阪市から通勤し、店を経営している。気さくな人柄で、客に「大阪から通ってるから、帰りの電車賃分くらい買ってくれるとうれしいわ」などと、よく冗談めかして雑談していたため、大阪在住だと知る人は多かったという。
はがきが届く前の同16日未明には、店のショーウインドーのガラスが割られる被害もあった。当初は「酔っぱらいがぶつかったのか」と思っていたが、はがきが届いて怖くなった。
営業を続けるつもりだったが、家族に「刺されたらどうするの」と心配され、ゴールデンウィーク明けまで休んだ。男性は「自分の価値観だけを正義だと思い込んだのだろうか。身の回りに、実際にこんなことをする人間がいるとは想像もしなかった」と話す。
大阪府に緊急事態宣言が出されたのは4月7日、京都府など全国に拡大されたのは同16日午後。男性の店のガラスが割られたり、はがきが届いたのは、両府の知事が京都―大阪間の移動の自粛を強く要請している時期だった。全国でも、行政の自粛要請に呼応するように、営業する飲食店に休業を求める張り紙が張られるなど、「自粛警察」と呼ばれる相互監視が顕在化していく。
同じ頃、パチンコ店にも「休業」を求める声が集中していた。府内のパチンコ店157店が加盟する京都府遊技業協同組合(京都市左京区)の副理事長(45)は「4月はまるで魔女狩りのようでした」と苦々しい表情で振り返る。