都知事選告示 コロナ禍に託す候補は

2020年6月19日 08時13分
 東京都知事選が告示された。新型コロナウイルスの感染が収束しない中での選挙だ。「三密」を避けるため、インターネットを通じた訴えも吟味して、四年間の都政を託す候補者を見極めたい。
 「手を握った人の数しか票は出ない」。かつて自民党最大派閥を率いた田中角栄元首相が説いたとされる選挙の信念である。
 顔を合わせれば強い印象が残る。手が触れ合えば情がわく、ということだろうか。
 こうした手法はコロナ禍で変わりつつある。街頭演説、屋内集会も「三密」になりかねない。
 都知事一期目の審判を受ける小池百合子氏(67)は、オンラインの選挙運動を中心にするという。
 挑む新人は街頭に立ち、動画のネット配信もする。れいわ新選組代表山本太郎(45)、立憲民主、共産、社民各党が支援する元日弁連会長宇都宮健児(73)、日本維新の会推薦の元熊本県副知事小野泰輔(46)、NHKから国民を守る党党首立花孝志(52)の各氏らだ。
 問われるのは、コロナと共存する時代の都政の在り方である。経済や文化の活動が疲弊し、暮らしへの影響が著しい。五人の公約は、都債発行による現金給付から経済重視までさまざまだ。
 五輪・パラリンピックは、来年の開催が小池氏、中止に理解を示すのが山本氏と宇都宮氏、再延期が小野氏と立花氏。選挙結果は都民だけでなく、国民全体や世界への影響が大きい。
 従来型の選挙運動が減るからといって、公約や人柄を知らずに投票したり、棄権するのでは都政の混乱に手を貸すだけだ。ネット選挙は二〇一三年に解禁され、ホームページや会員制交流サイト(SNS)などで発信できる。
 ただ、候補者が出すのは都合の良い情報だけだろう。有権者に必要なのは、候補者に対する冷静な視点であり、公平に比較できる環境である。
 コロナ禍にも生かせる取り組みが、ネット上で盛んになっている。候補者の政策を共通の書式でデータベース化した「マニフェストスイッチ」。また、候補者の公開討論会は近年、選挙期間中に無観客のネット配信で行うケースが増えているという。
 演説をじかに目にし、握手を交わせば熱気が伝わる。しかし、有権者がパフォーマンスや雰囲気にのまれることもあろう。
 ネットでは、一歩引いて眺められるかもしれない。多様化する手段を有権者のプラスにしたい。

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