友好を象徴するビル群を無残に爆破し、それを相手の責任だと言い立てる。そんな振るまいは、自らの愚かさを世界に知らしめる効果しか生まない。
北朝鮮が韓国との境に近い街・開城(ケソン)で、「南北共同連絡事務所」を破壊した。2年前の板門店(パンムンジョム)での南北首脳会談の合意に基づき、対話と交流を図る舞台だった。
最近まで北朝鮮が腐心していた近隣国との対話ムードは、これで霧散した。北朝鮮は、孤立無援に近かった3年前に逆もどりするつもりなのか。
そもそも南北会談があったからこそ、北朝鮮が切望してきた米国との首脳会談への道が開けたのだ。それも忘れたかのように今や、韓国への軍事行動さえ示唆している。
緊張を高めても、北朝鮮の国内事情は変えられない。指導部は国際制裁の長期化を前提に、国内に「自力更生」を呼びかけている。韓国をたたくことで、耐乏生活への覚悟を国民に求めたいようだ。
朝鮮労働党委員長の金正恩(キムジョンウン)氏は、人民生活を向上させることが最も重要だと訴えてきた。だが、今回のような危険な行動が招く代償を考えれば、国民に対する背信というべきだ。
一方、韓国の文在寅(ムンジェイン)政権はこれまで南北融和を看板にしてきたものの、今回は北朝鮮を非難し、警戒を強めている。
約2年半に及んだ対話基調の関係は、いったん途切れたと見ざるをえないだろう。
改めて明確になったのは、韓国独自の力で朝鮮半島の核問題打開や平和体制づくりを進めるには限界があるということだ。
北朝鮮の目は今も、米国に向けられている。トランプ大統領が秋の選挙に向けて、「米国第一」の内向き姿勢を一層強めており、それが今の南北間の動きにも関係している。
在韓米軍の駐留経費をめぐり米国は韓国に負担増を求めているほか、ドイツでは駐留米軍を縮小する方針を示した。こうしたトランプ政権の同盟軽視が、北朝鮮を助長している側面も否めない。
北朝鮮はもともと、米大統領選のある年に軍事挑発を強める傾向がある。4年前には核実験を2度強行したほか、弾道ミサイル発射を繰り返した。
こうした暴走を防ぐには、国際社会の一致した取り組みが肝要だが、最も影響力を持つ中国と米国はコロナ禍をめぐっても対立を深めている。
国際環境は厳しいが、それでも朝鮮半島情勢の悪化は長期的な禍根を残しかねない。韓国と日本の外交当局は少なくとも米国との3カ国協議を求め、北朝鮮政策の歩調を整えるべきだ。
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