軽自動車といえば、排気量660cc以下、長さ3.4m以下、幅1.48m以下、高さ2.0m以下の三輪および四輪自動車のことを指します。それでは、「軽車両」がどんなものかはご存じでしょうか?
今回は「軽車両」に関する道路標識や定義について解説します。
この標識、一体何?
ちょっとここでクイズを1つ。路上で時折見かけるこちらの標識。中心には江戸時代ごろから使われていた荷車「大八車(だいはちぐるま)」が描かれており、赤い斜線が引かれています。現在ではもうほとんど見かけることのない大八車ですが、これは一体何を意味する標識なのでしょうか。
「自転車以外の軽車両通行止め」の標識
実はこちらは、「自転車以外の軽車両通行止め」をあらわす標識。軽車両とは、「自転車」、「リヤカー」、「人力車」、「馬車」、「荷車」、「そり」、「山車」などの車両を指します。つまりこの標識は、自転車だけが通行を認められる場所に設置される標識なのです。
7種類の「軽車両」をおさらい
同じ軽車両でも、自転車以外のものは名前は知っていてもあまり馴染みがないという方も多いのではないでしょうか。ここで7つの軽車両それぞれについておさらいしてみましょう。
1.自転車
自分の足でペダルを踏むことにより、車輪を回転させて走る乗り物。道路交通法では、「ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する二輪以上の車」(第2条11の2)などと定義されています。ちなみに歴史上もっとも古い自転車は、1810年代にドイツのK.ドライスが発明した、地面を足で蹴って走る「ドライジーネ」と言われています。
2.リヤカー
人力で引いたり、自転車の後ろにつないだりして荷物を運ぶ2輪の荷車。以前は明確な定義がありませんでしたが、2017年に警察庁が発表した資料では、「道路交通法第2条第1項第11号で定める軽車両のうち、乗車装置を備えておらず、物を積載して運ぶために用いる車であって、一定の大きさ以下の原動機を有する普通自動二輪車、原動機付自転車等によって牽引されることが想定されるもの」とされています。
3.人力車
人を乗せて人力で引く二輪車。自転車と同じく人が乗れる軽車両ではありますが、道路標識によって「自転車通行可」とされている歩道や、自転車道などの通行はできません。また、サイズの大きなベビーカー(長さ120cm、幅70cm、高さ109cmを超えるもの)は「小児用の車」ではなく「人力車」とみなされ、歩道を通行できない場合もあります。
4.馬車
馬に引かせて、人や荷物を運ぶ車。乗用馬車や荷馬車、駅馬車などさまざまな種類があり、車輪の数は2輪または4輪が基本です。引く馬は1頭だけでなく、2頭以上の場合もあります。国内には幕末時代に伝来して急速に広まりましたが、鉄道や自動車の普及によって衰退し、現在は観光馬車などでしか姿を見られなくなりました。
5.荷車
荷物を運搬するための車。車輪の数は基本的に1輪または2輪で、一輪車は押して、二輪車は引いて動かします。リヤカーも荷車ではありますが、リヤカーは基本的に鉄製の車体と2輪のゴムタイヤで構成されているのが大きな違いです。
6.そり
地上を滑走させて人や物を運ぶ道具。人力で引くほか、犬や馬などの動物に引かせることもあります。車輪のついた乗り物では進みづらい雪上や砂上などでも動きやすいという利点がありますが、自力での移動や方向転換はできません。
7.山車(だし)
神社の祭礼のときに引く、人形や花を飾り付けた屋台。「壇尻(だんじり)」や「山(やま)」、「屋台(やたい)」など、地域によってさまざまな呼び方があります。同じくお祭りでよく見かけるものに「神輿」がありますが、こちらは引くのではなく担ぐのが大きな違いです。
道路交通法と道路運送車両法による、「軽車両」の定義
「軽車両」の定義は、道路交通法にも以下のように記載されています。
自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽けん引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む。)であつて、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものをいう
(道路交通法第2条第1項第11号)
また、道路運送車両法には以下のように記載されています。
人力若しくは畜力により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽引(けんいん)して陸上を移動させることを目的として製作した用具であつて、政令で定めるものをいう
(道路運送車両法第2条第4項)
「軽自動車」と「軽車両」、似ている言葉ですがまったく別のものであることがわかりました。なお、車いすや歩行補助車、自転車を押して歩く場合などは、「軽車両」ではなく「歩行者」扱いとなります(道路交通法第2条第3項第11号)。路上で標識を見かけた際は、ぜひ思い出してみてくださいね。