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 緊急事態宣言下で東京高検の黒川弘務・前検事長=辞職=と産経新聞記者、朝日新聞社員=停職1カ月=が賭けマージャンをしていた問題で、産経新聞社は16日、参加していた東京本社社会部次長と記者=いずれも現在は編集局付=を出勤停止(停職)4週間とする懲戒処分を決め、発表した。取材に関連して賭けマージャンをするのは社内規定に違反し、不適切とした。

 また、監督責任を問い、編集担当の鳥居洋介取締役を減俸、井口文彦編集局長と中村将(かつし)社会部長を減給の処分とした。飯塚浩彦社長は報酬の一部を自主返上するという。

 同社は「取材源を秘匿する」として、マージャンをしたのが黒川氏だったとは認めていない。

 同社などによると、次長と記者の2人は、緊急事態宣言中に、東京都内にある記者宅に黒川氏と朝日新聞社員の4人で7回集まり、少なくとも4回は賭けマージャンをしていた。レートは1千点100円換算の「点ピン」で、勝つと最大で2万円程度を得ていたという。次長は7回とも、社のハイヤーで黒川氏を送り、車内で取材。帰宅後に取材メモを作っていた。

 次長は司法担当だった2008年ごろ、法務省幹部職だった黒川氏と知り合い、マージャンに誘われるようになったという。3年前ごろから、4人のメンバーが固定され、月2、3回の頻度で集まっていた。2018年9月に記者がマージャン卓を購入してからは記者宅に集まるようになった。次長と記者は社の調査に「取材が目的だったとはいえ、緊急事態宣言下に不適切で軽率な行為だった」と反省しているという。

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 産経新聞社の菅野光章取締役(コンプライアンス担当)の話 外出自粛を呼びかけていた新聞社の記者の行動として極めて不適切。信頼を裏切る行為であり、深くおわびします。

 加えて重大視したのは、新聞記者の取材という行為への信頼感を著しく損ねてしまったことです。取材の難しい分野で、情報を入手したい記者にとって取材対象者とのマージャンは、取材の機会を創出できる非常に重要な場でした。それゆえに定期的な機会を持つことに注力した、との趣旨を調査で述べました。

 記者が取材対象者との関係で不適切な記事を書いたり、逆に書くべきことを控えたりするなどの問題行為は認められませんでした。

 しかし取材目的とはいえ、賭けマージャンは許容されるものではなく、取材対象者との「なれ合いの関係」を印象付け、新聞記者の取材活動に不透明感を与えてしまったと反省しています。

 取材対象に肉薄する努力が普段から必要であると考え、記者たちにもそう指導しています。しかし、「肉薄」は社会的、法的に許容されない方法では認められず、その行動自体が情報の収集、取材、報道の正当性、信頼性を大きく損なうことになります。この当たり前のことに対する意識が甘かったと反省せざるを得ません。

 今回の問題を機に私たちは襟を正し、編集局の全社員を対象にコンプライアンス研修を実施するなど、社内の記者倫理や行動規範を徹底させていきます。