しかしながら、憲法31条の適正手続及び刑法・刑事訴訟法の拠って立つ「罪刑法定主義」の観点からして、規制対象や犯罪の「類型・構成要件」を超える「類推適用」は厳に慎むことが人権保障上重要でもあるのです。
●「非恋愛型ストーカー」への対処法について
では、ストーカー規制法の適用がない以上、所謂「非恋愛型ストーカー」被害は、規制や救済の対象となり得ないのでしょうか?
この点、まず、「ストーカー行為の目的」は、被害者からすれば「恋愛や好意に起因するのか、単なる逆恨みや好奇心か?」一概に特定できるものでもないでしょうから、警察に相談して、対処を促すことはできるでしょうし、警察も、窓口レベルで「恋愛に起因する目的ではない」と断定して相談や対処を拒否する権限や立場はないはずです。
また、いかなる「つきまとい・ストーカー行為」が行われるのかにもよりますが、例えば、ネット上や書簡、或いは、近隣への張り紙で「害悪の告知」を行ったり、「不特定・特定多数人に被害者に関する誹謗中傷を流布する」行為が行われたとすれば、刑法上の脅迫罪(刑法222条)や名誉毀損罪(刑法230条)・侮辱罪(刑法231条)に問える場合もあります。
そして、加害者の誹謗中傷等が被害者の信用を毀損したり、その仕事を妨害する場合には信用毀損罪(刑法233条)や威力業務妨害罪(刑法234条)を構成する場合もあります。また、加害者が被害者宛の書簡を勝手に開封するなどすれば信書開封罪(刑法123条)に問われる場合もあり得ます。