小鳥も店も生き延びた コロナ禍に寄付集まる
2020年6月18日 08時05分
新型コロナウイルスの影響で閉店の危機にあった上野の「ことりカフェ」(台東区)が、インターネット上で寄付を募るクラウドファンディングにより、5月末に再出発を果たした。系列の吉祥寺店は閉じたが、本店の上野だけでも存続させようと寄付を募ると、目標を超える金額が集まった。吉祥寺の小鳥たちも無事、上野に「移籍」し、社長の川部志穂さん(53)は「期待を裏切らないよう頑張っていく」と前を向く。
陽光が差し込むカフェ内の飼育スペース。ブンチョウ11羽が装飾品のリースやひもに止まって羽を休める。別の鳥かごには、緑色の体がかわいらしいサザナミインコ4羽が身を寄せ合う。川部さんは「この子たちは閉店した吉祥寺店から引っ越してきたばかりですが、とても元気に遊んでいます」と話す。
ことりカフェは2013年、川部さんの「都心に癒やしの空間を作りたい」との思いから南青山に本店をオープンし、のちに上野に場所を移した。小鳥グッズの販売ブースも併設し、カフェを利用しない人も入店できる。川部さんによると、小鳥は感情豊かなところが魅力で、店は家族連れや自宅で飼えない小鳥愛好家らから人気があるという。
吉祥寺店は14年に開店し、近くにある三鷹の森ジブリ美術館に訪れる人が立ち寄るなど、にぎわっていた。ところが今年、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、美術館が臨時休業したことで、店の経営も悪化。客足はふだんの3割ほどに落ち込み、営業を続けられなくなった。4月に緊急事態宣言が発令されたため休業し、そのまま閉店することになった。
残った上野本店も都内を訪れる観光客が激減したことから経営が苦しくなった。しかし「なんとしてでも店を存続させ、小鳥たちを守りたい」との思いから、クラウドファンディングを企画。飼育費や吉祥寺店閉店にかかる諸経費などのため200万円を目標額に4月6日から募集を開始すると、丸1日で達成。約1カ月の募集期間で、970万円を超える寄付が1999人から寄せられた。中には、韓国から協力してくれる人もいたという。
上野本店も臨時休業していたが、5月30日から営業を再開。休業中はスタッフらが小鳥を自宅に持ち帰り世話していたという。現在、吉祥寺店から引っ越してきた鳥を合わせ、オカメインコやセキセイインコ、タイハクオウムなど10種類約40羽を飼育・展示している。小鳥をケージから出して5分間ふれ合える「ふれあい体験」(有料)はコロナ感染拡大防止のため休止しているが、7月から再開する方針という。
川部さんは「たくさんの方に支援いただいて、生き延びることができた。しっかり受け止めて、きちんと継続していきたい」と話している。(問)ことりカフェ=03(6427)5115。
文・天田優里/写真・市川和宏
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