新型コロナウイルスの感染拡大がもたらす景気後退を緩和すべく、財政・金融政策が総動員されている。だが、将来の不透明性を懸念する家計も企業も、お金を使おうとしない。マネーは過剰流動性となった。今こそ政府の出番だ。お金を使うことのリスクを軽減し、消費と投資を刺激すべきだ。
今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大を受け、世界各国の政府が財政・金融政策に力を入れている。その規模は既に、世界のGDP(国内総生産)の1割に達した。だが国連経済社会局(DESA)が発表した最新の評価によると、一連の景気刺激策は政治家たちが期待するほどには消費や投資を押し上げていないかもしれない。
問題は、供給されたマネーの大部分が銀行口座に滞留していることだ。消費者や企業は不測の事態に備えてお金をため込んでいる。この状況は、世界大恐慌が起きた際に、経済学者ジョン・メイナード・ケインズが深く懸念した「流動性のわな」によく似ている。
現在の景気刺激策は当然のことながら、COVID-19のパンデミック(世界的な大流行)がもたらす経済低迷を食い止めるべく、大急ぎで導入されたものだ。当時の環境はパニック状態に近かった。
対象も絞られず、正確さも欠いた過剰な措置だが、当時、評論家の多くはこれしか選択肢がないと口をそろえた。あの緊急時に大量の流動性を注入しなければ、恐らく倒産が広がり、資本は損なわれ、回復への道のりは一層険しくなっていただろう。
こうした緊急対策を発動した当初、パンデミックは数週間で収束すると推測されていた。だが今、それよりずっと長引くことが明らかになっている。つまり、これまでの緊急対策を長期的な運営を視野に入れて丁寧に見直す必要がある。先行きが見えない時代には、予防策として貯蓄を増やすのが人の常だ。将来に不安を覚える消費者や企業は現金を手放そうとはしない。
コメント2件
K.Gotou
情報処理従事者
仕事をして報酬をもらい消費に役立てる。この流動性が滞れば、人間社会は凍り付く。
どんな仕組みや仕掛けでも、”動” を創り出すことが重要。だが、”動” は感染拡大を伴う。そのリスクを国家が肩代わりする。それは、「リスクを負った場合は、国が命
を保証します」ということ。
...続きを読む命あれば、ふたたび、”動” の要員になれる。あるべきは、「死なない感染症」にすること。それが確定すれば、「なにかの時のために溜める」行為は少なくなるであろう。
「死なせない」ことを保障するのは古今東西の ”国の仕事”。感染症対策で国が義務を果たすべく、世界と連携して ”安心” を創り出してほしい。そうすれば、暖かさが戻ってくるはずだから。
石田修治
定年退職
「マネーは銀行に眠る」は非常時の支援金の本質を語っている。私の場合、自分は年金暮らしでコロナによる減額もないので貰った10万円は家計の苦しい娘にあげる約束をした。今回の支援策は、本当に支援を必要としている人を絞り込んでいない。単なるバラマキ
だから、年金暮らしの年寄にとっては思いがけないボーナスだ。「政府がリスクを保証せよ」はドイツのような財政が健全な国には向いているだろうが、GDP2年分を超える借金大国の日本は、現状でも次世代で財政再建は不可能なのに、更に借金を積み増して財政再建を誰に託す気なのか。現在現役の40再前後の私の子供達は、定年までに私が手にした年収に届くことはほぼあり得ない。彼等の初任給は50年近く前の私のそれよりはかなり良くなっているが、その後の賃上げはゼロに限りなく近い。私の場合は、毎年月給で1万円以上上がっていた事と比べると、フラットに近い。子供が出来ても、子ども手当を貰ったり、大きくなったら扶養控除の対象にはなるが、給料本体は殆ど増えないのだから子供の成長に反比例して生活は苦しくなる。そんな彼等の世代がGDP2年分を超える莫大な借金を返済できるはずがないのだ。借金の恩恵を受けた現在の年寄世代は責任を持って財政再建に全面的に協力し、次世代に健全な財政を引き継ぐべきだと思う。先ずは、国債残高の半分に迫る日銀保有分の償還を半額に減じる「徳政令」を復活させるしか財政再建の方法は無い!税収の2倍近い予算を20年以上組み続けた日本政府の無責任にも呆れ果てるが、それを黙ってみていた我々国民も責任を感じないといけない。『自分さえ良ければ後は野となれ山となれ』流はあの世に行く前に精算すべきなのだ。...続きを読むコメント機能はリゾーム登録いただいた日経ビジネス電子版会員の方のみお使いいただけます詳細
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