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景気が悪化している。2020年6月5日に内閣府が公表した2020年4月の景気動向指数は、景気の現状を示す一致指数が大きく下落。前月比マイナス7.3ポイントの81.5と3カ月連続で低下した。新型コロナウイルスの感染拡大による店舗閉鎖や工場停止の影響を受け、経済活動が停滞していることが要因になっている。
実際の雇用の現場はどうなのか。大手自動車・自動車部品メーカーに数百人規模で社員を全国に派遣している企業担当者に聞くと、「大きな声では言えないが、派遣切りが始まっている。批判が出ないようにするためか、(顧客企業では)一部を正社員へ登用する動きも並行しているので、この先どうなるか……」と打ち明ける。
この話を聞いて思い起こしたのは、景気が悪化する局面においてIT業界でたびたび起こる「あの出来事」だ。大手IT企業による派遣エンジニア切り(解雇や雇い止め)や下請け切り、そして発注単価の切り下げだ。
ITバブルが崩壊した2000年代前半にはソフトハウスの倒産件数が年々増え、リーマン・ショックを経た2010年度にIT業界は軒並み減収減益に陥った。その結果、派遣切りが相次いだ。歴史は繰り返すのか。
数字面から確認するには、人材サービスのエン・ジャパンが毎月公表しているITエンジニアの募集時平均時給が分かりやすい。2020年5月20日に出された同年4月度のデータでは、IT系職種は2259円で、下がるどころか前月比や前年同月比で上昇していた。時給が増加しているということは、人材の取り合いになっているとも見える。エン・ジャパンによると、「時給上昇の要因は、テレワーク導入に向けた環境整備を進めるべく、IT系職種の募集をする企業が続出したため」としている。