伊藤詩織×石川優実「傷つける方がSNSをやめればいい。私たちから取り上げるな」
日本での#MeTooの火付け役となった伊藤詩織さん、#KuTooの発起人である石川優実さん。SNSの声を追い風にムーブメントを起こしてきた二人。一方で、その大きな影響力の裏で、いわれのない誹謗中傷も多く受けてきました。木村花さんの訃報を受け、オンライン・ハラスメントにどう対応していくべきか、伊藤さんが自身の体験を交えながら、石川さんにテレビ電話でインタビューをしました。
日本での#MeTooの火付け役となった伊藤詩織さん、#KuTooの発起人である石川優実さん。SNSの声を追い風にムーブメントを起こしてきた二人。一方で、その大きな影響力の裏で、いわれのない誹謗中傷も多く受けてきました。木村花さんの訃報を受け、オンライン・ハラスメントにどう対応していくべきか、伊藤さんが自身の体験を交えながら、石川さんにテレビ電話でインタビューをしました。
伊藤詩織さん(以下伊藤):木村花さんの訃報を聞いたときは、起き上がれないくらいショックでした。自分もSNSでの誹謗中傷でつらい思いをしてきたし、何ができるかを考えている最中だったので、もっとスピード感をもって対応していれば……と思いました。なので私の場合は、訴訟をして、そのノウハウを伝えていくことを考えています。優実さんはどうですか。
石川優実さん(以下石川):私も同じく悔しい気持ちでいっぱいです。オンライン・ハラスメントについては、これまでもずっと問題提起をしてきました。被害者がでないように、という思いで、これまでずっと声をあげてきたので、今回のことがすごく悲しい。昨年、韓国のアイドルがSNSの誹謗中傷が原因で亡くなった時に、日本も対応ができていたら、こうはならなかったのかなと思います。
伊藤:これまでもSNSの誹謗中傷に対して、提訴することを考えていましたが、木村花さんのことがあって、本腰を入れてとりかかることにしました。法的措置を考えると、一番最初のハードルは費用面になりますよね。
石川:情報開示にかかるのは、1件50~60万円でしょうか。もし、情報開示されなかったら無駄金になってしまう。情報開示して、訴訟をおこして……果てしなく長い道のりですよね。
伊藤:通常の裁判だと勝ち取った金額の10%を弁護士費用にあてるのですが、全然たりない。
石川:更に、弁護士さんによって費用や「これなら情報開示できるだろう」という判断もまちまちなように思えるので、まずどの弁護士さんにお願いするか決めるまでに時間がかかります。すると、SNS運営会社が投稿者情報を保存しておく期限となる「3カ月」も過ぎてしまう。
伊藤:この「3カ月ルール」は知っていましたが、何を保存すべきなのかっていうのは最近知りましたし、誹謗中傷を保存しておかなきゃいけないこともすごくストレスですよね。訴えるまでのハードルがとても高い……。
石川:私はオンライン・ハラスメントの被害にあった人が、知りたい情報をまとめたサイトをつくろうと思っています。この問題に詳しい弁護士さんの情報ページや、被害にあった人にかけたい言葉の共有ページ、法的措置のやり方ページ、賛同者・オンラインハラスメントをなくすためのアクションの紹介ページ……などを想定しています。
あと、今被害にあっている人の情報共有のページをつくり、「みんなで助けに行こう」っていえたらいいかなと思っています。ただ、そのせいでより被害が集中することもあるかもしれないので、慎重に検討中です。なるべく早くに動けるように、情報をまとめておきたいと思っています。
伊藤:すごく大事なことだと思います。
石川:誹謗中傷してくる人たちは、いったいどんな毎日を送っているのかなと不思議に思います。私がツイートするとすぐに反応する、見張っているわけですよね。それって精神的に穏やかでいれるのかなって思うんです。
これは私の想像でしかないんですけど、人に嫌がらせをする人は、自分も同じようなことをされているのかなって思うんです。私が主張していることって「性暴力をするな」「いじめるな」という当たり前のこと。それがわがままに思えるくらい、自分も苦しい思いをしているのかなと。人権を求める人を批判するのは、自分に人権があると思っていないからなのかなって思うんです。
石川:こういうと「じゃあ、SNS使わなきゃいいじゃん」と言われることがあります。だけど、SNSからうまれる喜びがあることを、#KuTooや#MeTooのムーブメントを見てきたからこそ、私はわかっているわけです。だからその喜びを、取り上げないでほしい。見なきゃいいだけじゃなくて、根も葉もない噂も勝手に広がっていくし……。なぜ、被害者が、加害者のために我慢しなきゃいけないんだろう。
コメント欄を見えなくする、ということは応援のメッセージも見えなくなるわけで、ますます孤独になっちゃう。
伊藤:私は今、怖くてSNSがなかなか開けません。仕事柄、発信したり情報を収集するのに欠かせないのですが。
石川:なんで発信することまで取り上げられなきゃいけないんだろう。攻撃する側が悪いのに。安心して使えるように変えていきたいですね。
1987年生まれ。2017年末に芸能界で経験した性暴力を#MeTooし、話題に。2019年職場でのパンプス義務づけ反対運動「#KuToo」を展開、世界中のメディアで取り上げられ、英BBC「100人の女性」に選ばれる。
日本でのMeToo運動が広がるきっかけを作った伊藤詩織さん。「声をあげた性被害者」としての一面に焦点が当たることが多いですが、連載「No Labels」では、「こうあるべき」「こういうひと」にとらわれずに、日々の取材のなかで考えたこと、伝えたいことを綴っていきます。
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