特集「3分でわかる促進耐候性試験と屋外暴露試験のお話」

特集「3分でわかる促進耐候性試験と屋外暴露試験のお話」

耐候性/耐候性試験

窓際に置いたままにした本は見出しが色あせ、紙は茶色くなってしまった。
物干し竿につけっぱなしにしていたプラスチック製の洗濯バサミがボロボロになってしまった。
こんな経験をされた方も少なくないのではないでしょうか?
屋外にある自動車や建物にとってはさらに過酷です。365日24時間外気にさらされ続けます。もし買ったばかりの車の色が数日で色あせたら大事件です。

耐候性

このように材料が屋外や日光のあたる場所で使用された場合に、材料が変形、変色、劣化等の変質をしにくい性質を耐候性と呼びます。

耐候性試験

また購入後に耐候性に関する問題が起こらないように、販売する製品は事前に疑似的な太陽光などにさらして、規格に対して問題ない事を確認する為の試験を行う必要があります。
この試験を耐候性試験と言います。
耐候性試験の規格には、例えば

『JIS D 0205 自動車部品の耐候性試験方法』
『JIS K5600-7-8 促進耐候性(紫外. 線蛍光ランプ法)』
『ASTM D7869 輸送コーティング用の光と水への暴露を強化したキセノンアーク暴露試験のための標準的な方法』

などがあります。

耐候性試験の対象

耐候性試験対象は多岐にわたります。

材料
塗料、プラスチック、ゴム、繊維、紙、インクなど
製品
自動車、建築物、家電製品、ポスター、書籍、衣類、食料品など

耐候性の対象

耐候性の対象となる3大要因は光、温度、湿度の3つです。

3大要因 現象 ダメージ

(太陽光)
● 変色
● 劣化現象
● 外壁を指でこすると
  粉がつく
● 塗装ひび割れ
温度 ● 温度変化による素材の伸縮・膨張 ● 塗装浮き
● 塗装剥がれ
温度
(水)
● 降雨より急激に熱を奪われる事による素材の伸縮
● 長時間結露による材料の吸水
● 塗装浮き
● 塗装剥がれ

耐候性試験

耐候性試験には2つの代表的な試験があります。

1  屋外暴露試験

屋外暴露試験は、試料を実際に屋外にさらして状態の変化を確認する方法です。
この方法では3年後の材料変化を確認するためには3年の試験期間が必要になります。
また試験場は、概ね天候状態が厳しい場所が選ばれます。例:アリゾナ、北海道、など

2  促進耐候性試験

促進耐候性試験は加速試験の一種で、自然環境の劣化作用要因、例えば光の強さを人工的に増幅させた機械に試料をさらし、状態変化を観察する方法です。
この方法を使えば1年の屋外暴露試験を数週間の促進耐候性試験で置き換えられる可能性があります。

2.

促進耐候性試験と屋外暴露試験の相関関係

では、屋外暴露試験よりも何倍も早く結果を得られる促進耐候性試験があれば、屋外暴露試験は不要でしょうか?

残念ながら、そうではありません。

促進耐候性試験で使う人工光源は、太陽光そのものでは無いので、より現実的な結果が欲しい場合は自然環境下での太陽光を使った屋外暴露試験が必要となります。

例えば、屋外暴露試験365日(1年)を36日の促進対候性試験で置き換えられると想定した場合、試験期間の比率 365日/36日 =10 を、促進倍率と呼びます。

促進倍率は、促進耐候性試験の設定だけではなく、地理的要因、試料の材質、色などによっても変化します。よって促進倍率を、一律に

屋外暴露試験の1年 = 促進耐候性試験の◯◯時間

のように定義する事は原理的にできません。

促進耐候性試験の活用方法 ~順位相関~

促進耐候性試験の活用は、複数候補の相対比較に利用する使い方が一般的です。

例えば、ここに365日(1年)間の屋外暴露試験が必要な初めての材料があるとします。

まず屋外暴露試験の結果がありませんので、例えば5種類の材料候補 A, B, C, D, E を 365 日間、屋外暴露試験にかけます。
その結果、性能の良い順番に C, B, E, A, D となったとします。

次に同じ材料 A, B, C, D, E について、36日間の促進耐候性試験をし、もし性能の良い順番が全く同じく C, B, E, A, D の結果となったとしたら、この場合、この材料について材料の相対的な優劣については、促進耐候性試験でわかるかも知れません。

そうなれば、次々に作り出される開発中の新材料は、長期に渡る屋外暴露試験をしなくても、優劣についてはまず促進耐候性試験によって短期間でスクリーニング(ふるい分け)できる事になります。

また他社製品と比較できる事になれば、市場競争力のある材料を開発する上で非常に大きなメリットとなるでしょう。

ちなみに、この促進耐候性試験と屋外暴露試験の2つの試験の結果の優劣順位の相関性を、統計学では順位相関と呼びます。

促進耐候性試験は、このように屋外暴露試験よりも短い期間で、材料の相対性能比較に利用するのに非常に有効です。

もし促進耐候性試験を使わず、新材料に対して全て屋外暴露試験をやれば、新材料が完成するまでに長い歳月がかかる事になるでしょう。

こちらでご紹介した、促進耐候性試験機については、別の「3分でわかる紫外線蛍光灯とキセノンランプのお話」にも関連記事がございます。よろしければ、そちらもあわせて御覧ください。

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