【アスペルガー症候群とは】3つの症状と相談先、活用できる支援を解説
アスペルガー症候群は発達障害のひとつで、コミュニケーション能力や社会性、想像力に障害があり、対人関係がうまくいきづらいという特徴があります。アスペルガー症候群には大きく分けて3つの症状「コミュニケーションの問題」「対人関係の問題」「限定された物事へのこだわり・興味」があります。言語障害や知的障害はないので、周りからは「変わった人」と思われがちです。アスペルガー症候群の詳しい症状や相談先について解説します。
2016/01/18 更新
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アスペルガー症候群(AS)とは?
アスペルガー症候群(AS)はコミュニケーション能力や社会性、想像力に障害があり、対人関係がうまくいきづらく、知的障害や言葉の発達の遅れがないものをいいます。明確な原因は現在も分かっていませんが、何らかの脳機能の障害と考えられています。
アスペルガー症候群については、現代になってようやく認知が広まってきました。今までは障害だと気づかれずに、本人が生きづらい思いをしたり、周りも理解に苦しんだりすることも少なくありませんでした。しかし、アスペルガー症候群は決して珍しいものではありません。
参考:アスペルガー症候群について | eヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-006.html知的な遅れがないことから障害と認知されづらい側面もあり、周りの理解を得づらい部分があります。しかし、症状や対処方法を知っているだけで、自分も周りも心が楽になる生き方ができます。そのためにも適切な知識を持ち、障害を理解することが重要となります。
「アスペルガー症候群」の3つの症状
アスペルガー症候群には大きく分けて3つの症状があります。「コミュニケーションの障害」「対人関係の障害」「限定された物事へのこだわり・興味」です。これらの症状の具体的な特徴をみていきましょう。
1. コミュニケーションの障害
会話は表面上問題なくできるのですが、行間を読むことが苦手です。言葉をそのままの意味で鵜呑みにしてしまう傾向があるため、人の発言を勘違いしやすく、傷つきやすい面があります。
具体的な特徴としては、
■あいまいなコミュニケーションが苦手
言われたことをそのままの意味として受け取ってしまう。アイコンタクトや顔の表情を読み取るのが苦手。
■不適切な表現を使用してしまう
遠回しに発言することに困難さがあるため、言い方がキツく、ストレートすぎる発言になりがち。
■名前を呼ばれないと自分だと気づかない
1対1でも自分の名前を呼ばれないと相手が誰に対して発言をしているのか分からない。
■想像して動くことが苦手
想像力が弱い傾向にあるので、指示されたこと以外に考えが向かなかったり、相手や環境の変化に気づかないことがある。
などが挙げられます。
2. 対人関係の障害
場の空気を読むことに困難さがあり、相手の気持ちの理解やそれに寄り添った言動が苦手な傾向にあります。そのため、社会的なルールやその場の雰囲気を平気で無視したような言動になりがちで、対人関係を上手に築くことが難しくなります。
具体的な特徴としては、
■大勢の中で浮いてしまう
場にそぐわない発言や回答をしてしまう。
■相手の気持ちを理解するのが苦手
相手が何をどう考えているのかを想像することに困難さがある。
■自己中心的と思われる言動をしてしまう
自分の言動がその後どうなるか、ほかの人にどう影響するか、想像するのが苦手で、臨機応変に動くことに困難さがある。
■相手を傷つけてしまう
何も考えずに見たまま、思ったままの発言をしてしまうため、相手を傷つけてしまうことがある。
などが挙げられます。
3. 限定された物事へのこだわり・興味
いったん興味を持つと過剰といえるほど熱中します。法則性や規則性のあるものを好み、異常なほどのこだわりを見せることがあります。その法則や規則が崩れることを極端に嫌う傾向があります。一方、この特性は逆に強みとして活かすこともできます。
具体的な特徴としては、
■マイルールがある
自分の決めた予定や手順などを変えることを嫌い、頑なになる。無理に変更すると混乱してしまうこともある。
■記憶力が高い
興味のある物事に関しては、大量の情報を記憶したり、引き出したりすることができる。
■集中力がある
興味のある物事に関しては、一度手を付けると熱中しすぎて周りが目に入らないこともある。
■話し続ける
興味のある物事に関しては、一度話し出すと夢中になりすぎて止まらなくなる。
などが挙げられます。
周囲とのトラブルの要因となりがちな10の特徴
一見しただけではその人がアスペルガー症候群かどうかは気づきにくく、本人も自覚していない場合もあります。周囲とのトラブルになりがちな10個の特徴を紹介します。
1. 明確な指示がないと動けない
2. 場の空気を読むことができない、空気に沿った対応ができない
3. 冗談が通じず、会話の行間や間を読むことができない
4. 曖昧なことを理解できない
5. 好きなことは延々とやり続けてしまう、話し続けてしまう
6. スケジュール管理ができない
7. 自分が興味のないことは頑なに手を出そうとしない
8. 急な変更にうまく対応できず、だまされやすい
9. 名前を呼ばれないと自分だと気が付かない
10. 相手の気持ちをおもんぱかれない、人を傷つけることを言ってしまう
上記に付随した細かな症状が他にもありますが、基本的には自分以外の何か(人や物事)にうまく共感できない、言い回しが不適切などのコミュニケーションにおける困難さが主な症状となります。一度興味を持った物事に対して、異常なほどのこだわりや集中力、記憶力を発揮する場合もあります。さらに、アスペルガー症候群だけではなく、ADHDなど、他の障害の症状を持ちあわせている場合もあります。
アスペルガー症候群の疑いを感じたらどうすればいい?
もし、家族にアスペルガー症候群の症状がみられたら、専門機関での診断をおすすめします。誰かに相談する事によって気持ちも楽になります。
家族で悩んでいても、困難に対する改善策はなかなか見つかりません。できるだけ早期に、小さいころからアスペルガー症候群に対する教育方法や療育などの対処法を始めると、その後の発育に大きな違いがみられます。
はじめの一歩を踏み出すのには勇気がいるかと思いますが、踏み出すことによってさまざまな悩みが軽減されます。アスペルガー症候群ではないとされた場合でも、困難を乗り越えるためのさまざまなアドバイスをしてもらえることが多いので、一度相談してみることをおすすめします。
診断を受ける前にまずは専門機関で相談を
障害なのかな、と疑問を持った場合、まずは専門機関に相談するようにしましょう。子どもか大人かによって、行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。
【子どもの場合】
・保健センター
・子育て支援センター
・児童発達支援事業所
・発達障害者支援センター
【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所
知能検査や発達検査は児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、障害について相談することも可能です。その他、発達障害者支援センターでも相談ができます。自宅の近くに相談機関がない場合は、電話での相談にのってくれることもあります。
以下は小児神経学会が発表している、発達障害診療医師の名簿です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。まず身近な相談機関に行って、障害の疑いがあればそこから専門医を紹介してもらいましょう。
アスペルガー症候群をはじめ、障害のある人が受けられる支援とは?
障害者手帳の取得
障害者手帳には「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の3つがあります。
身体障害や知的障害がない場合は、精神疾患(てんかん、発達障害を含む)により、長い間、日常生活または社会生活への制約がある方を対象とした「精神障害者保健福祉手帳」を申請することができます。
障害者手帳を保持していると、手帳の級数によっても異なりますが、さまざまな福祉サービスを受けられます。
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手帳がなくても受けられるサービスもある
障害者手帳がなくても、申請して必要性が認められれば受けられるサービスも存在します。
「児童発達支援」「放課後等デイサービス」では、発達が気になる子や障害のある子に適したサービス・支援を受けることができます。
また、障害者総合支援法に規定されている「自立支援給付」を受けることができ、障害福祉サービスや自立支援医療などの給付を受けることが可能です。
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まとめ
アスペルガー症候群には様々な症状がありますが、その症状には個人差があります。
早期にそれらの特性に気づき、一人一人に合った環境をつくること、適切な教育を行っていくこと、苦手なことの対応方法を工夫していくことで、逆に特性を強みとすることもできます。アスペルガー症候群は、特性を活かして活躍している人がいます適切な環境づくりをすることで、本人の生活上の困難さを解消し、その人らしく生きることが可能になるでしょう。
アスペルガー症候群は、2013年に発行されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)においては「自閉症スペクトラム障害(ASD)」の中にまとめられています。そのため、今後この診断がつくことは少なくなることが予想されますが、現状では世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(※)による診断を行う医療機関もあること、すでにICD-10や、DSM-5の前版の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版 テキスト改訂版)でアスペルガー症候群の診断を受けた人もおられることから、本記事ではアスペルガー症候群という用語を用い、その症状や特徴を具体的に説明しました。
※ICD-10について:2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。