細胞システム研究室

Laboratory of Cell Systems

教授
岡田眞里子 (Mariko Okada)
mail mokada @ protein.osaka-u.ac.jp
助教
飯田渓太 (Keita Iida)
mail kiida @ protein.osaka-u.ac.jp
助教
張 素香 (Zhang Suxiang)
mail motoka-zhang @ protein.osaka-u.ac.jp
研究分野

情報伝達学

所属

蛋白質研究所

ロケーション

吹田キャンパス

研究内容

細胞内シグナル伝達系は、細胞外の環境情報を細胞内の生化学反応に変換し、細胞の形質を変化させる高度なシステムです。シグナル伝達系には、細胞内の時空間を利用した複雑な制御が組み込まれています。また、シグナル伝達から、細胞形質の変換の過程には、転写、翻訳、代謝などにさまざまな変化が生じます。 本研究室では、シグナル伝達系を起点とし、細胞内の生化学反応の産物、あるいは分子の細胞内の動きを定量的、網羅的に実験的に計測しています。また、網羅的な計測データを計算(バイオインフォマティクス)を用いて解析したり、常微分方程式などを用いた数理モデルで解析することにより、細胞制御における普遍的な規則性、そして、細胞の特異性を規定するメカニズムを分子レベルで明らかにしようとしています。現在は、がんや免疫系の細胞を対象とした研究を行っています。

NF-κB 転写因子の細胞内動態の役割

細胞機能の発現は細胞内のシグナル・ 転写ネットワークの非線形な振る舞いにより制御されています。その中で特に注目されるのは細胞決定に関わる NF-κB転写因子の細胞質・核内移行の振動による遺伝子発現制御機構です。NF-κBは細胞質・核内移行の減衰的な振動を介して遺伝子の発現誘導を行い、それにより発現誘導される遺伝子が細胞形成に貢献すると言われています。しかし、NF-κB の直接の標的遺伝子は厳密には明らかにされておらず、そのため、遺伝子の発現誘導のために、なぜ NF-κB の振動が必要なのかといった理由は一切明らかにされていません。当研究室では、主にエピゲノム解析と数理モデルにより NF-κB の動態と核内のDNA修飾の変化の関連性を調べ、NF-κB の振動による細胞形成の仕組みを明らかにしようとしています。

シグナルによる定量的な細胞周期制御

細胞周期は、サイクリンとサイクリン依存性キナーゼの発現と活性化・不活性化の組み合わせからなる周期性を有した生化学反応で、細胞の分裂、増殖に必須の機構です。細胞周期は、人のさまざまながんの発症に関与していることから、その制御機構の理解は重要です。しかしながら、シグナル伝達系による定量的な細胞周期制御は明らかでありません。本研究室では、シグナルの強弱が、細胞周期の周期性および反応不可逆性にどのように関与しているのかを、イメージングおよび数理モデルを用いて明らかにしようとしています。

細胞のかたちの制御

細胞形質を評価する指標のひとつに細胞のかたちがあります。たとえば、がんでは細胞が紡錘状になると浸潤がしやすくなると考えられています。これまで、さまざまな分子が細胞のかたちを変化させる機能を持つと報告されてきました。私たちは、それらの分子が単独ではなく、ネットワークとして相互作用し、細胞の内部の生化学反応を変化させ、かたちを変えているのだと考え、研究を進めています。これまでに、細胞の大小、丸さなどが、細胞接着のシグナルと代謝系により制御されていることがわかりました。また、細胞のかたちを定量的に評価する実験系を構築し、網羅的な薬剤スクリーニングを行うことにより、シグナル伝達系とエピゲノム制御の重要性が明らかになりました。

図0 定量的な実験と数理モデル+バイオインフォマティクスを用いて、細胞メカニズムを同定する

図1 シグナル伝達系から細胞制御までを理解する

図2 細胞シグナル-転写ネットワークの統合的理解 

参考文献

Liu, et al. Hunt for the tipping point during endocrine resistance process in breast cancer by dynamic network biomarkers. J. Mol. Cell Biol. , (2018)

Magi et al. Transcriptionally-inducible PHLDA1 attenuates the activity of ErbB receptors. J Biol. Chem , (2018)

Shinohara H, et al. Positive feedback within a kinase signaling complex functions as a switch mechanism for NF-κB activation. Science , (2014)

Inoue, et al. Oscillation dynamics underlie functional switching of NF-κB for B-cell activation. NPJ Syst Biol Appl. , (2015)

Nakakuki T, et al. Ligand-specific c-Fos expression emerges from the spatiotemporal control of ErbB network dynamics. Cell , (2010)

Birtwistle MR, et al. Ligand-dependent responses of the ErbB signaling network: experimental and modeling analysis. Mol. Syst. Biol. , (2007)

Nagashima T, et al. Quantitative transcriptional control of ErbB receptor signaling undergoes graded to biphasic response for cell differentiation. J. Biol. Chem. , (2007)

連絡先

〒565-0871
大阪府吹田市山田丘3番2号
大阪大学蛋白質研究所 細胞システム研究室

Tel:06-6879-8617 Fax:06-6879-8619
E-mail: mokada@protein.osaka-u.ac.jp

http://www.protein.osaka-u.ac.jp/cell_systems/

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