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（裕一）あの…　今更なんですけど…。（保）うん？　何？
バンブーって店の名前どっから付けたんですか？
あ～　それはね…。
（恵）この人　昔　古本屋の店主だったの。
（裕一　音）えっ？
今日はバンブーの２人　保と恵の物語です。
♪～
♪「泣いて　生まれて　響く命」
♪「きっと嬉しくて　笑っているんだ」
♪「僕らはきっと　出逢うでしょう」
♪「手を引き　背を押し　出逢うでしょう」
♪「きっといつか今日の日も意味を持って　ほら」
♪「耳をすませば」
♪「星の見えない日々を　超えるたびに」
♪「互い照らすその意味を知るのでしょう」
♪「愛する人よ」
♪「親愛なる友よ」
♪「遠くまで　響くはエール」
６２銭。
（木下）今年は　ご両親の七回忌だろう。
親戚とか集まんのかい？
みんな　疎遠だから　僕だけでやります。
中　汚れてたから　２銭引いときます。
いいよ　いいよ。読めりゃ　一緒なんだから。
なあ　余計なことかもしれないがもうちっと外に出たらどうだい？
外は嫌いです。
ここに　ずっと座ってるのは体にも心にもよくねえよ。
前みたいに　うちの店にコーヒーでも飲みに来いよ。
木下さんにコーヒーのいれ方を教わったんです。
同じものが飲めるのに　何でお店に行かなきゃいけないんですか？
コーヒーを楽しむってのは　場所とか空間とか雰囲気とかもあるわけで。
まっ　僕のは更に進化してますけどね。
あっ…。
おっ…　若いお嬢さんなんて珍しいな。
じゃあ　また来るわ。は～い。
（物音と悲鳴）
あっ…　ご…　ごめんなさい！
気を付けて。ありがとう。
いや　本が傷みます。
うん？　「吾輩は猫である」の初版かな？
奥付を見ないで　どうして分かったの？
（時報）
（恵）夏目漱石の「吾輩は猫である」は上・中・下巻に分かれています。でも　上巻に「上」の表記がないのはそもそも一話完結のつもりで発刊したから。
だから表紙だけで…。
処女作が「吾輩は猫である」なんてもう　すばらしいですよね！
漱石の中では何がお好きで？
やはり…。
「こころ」かな。
それじゃあ　最初の見返し裏にあるラテン語が書いてあるの知ってます？
見逃してた…。　何て書いてあるんだ？
「学は長く　人生は短い」。
ヒポクラテスの格言。
「学は長く　人生は短い」。
♪～
二宮…　恵。
それから　毎週木曜日恵は　お店に来るようになりました。
一度　来ない木曜日がありました。
（戸が開く音）
ヘヘヘヘヘ…。
はあ～　こんな時間まで開けてやがって。
本の整理をしてただけです。お～　怖っ。
恋する男は　けなげだねえ。
そうして３か月が過ぎたある日。
保さん　あの…。はい？
あっ…ここにいると　気持ちが落ち着きます。
では。
いい子だな。　どうなの？
どうって何が？またまた～　分かってるくせに。
ずっと一人でいいの？
僕は一人で　十分満足…　うん？
親戚の子。　遊びに来たの。
無類の本好き。
こんにちは。　佐藤久志です。
保さんの状況は　おじさんから聞きました。
楽しいのに進展しない時間が続くと女性は男性を恋愛対象から友達へと認識を変えてしまいます。
早く勝負をかけた方がいいと思います。
た…　保さん…　その子　あの蝶ネクタイしてなかった？
あ～　してた　してた。ほら　佐藤久志だよ！　音の先輩の　ほら。
そこで　劇やったでしょ？　一緒に。「ヴィオレッタ～！」って。
ヴィオレッタ～！
カ～ット！あ～！
（音）すごい！　保さんと久志さんが昔　出会ってただなんて。ねえ！
そう…　しかも彼が　恋のキューピッドなんだ。
（音　裕一）えっ？えっ？
なぜ行動に出ないのですか？彼女のこと　好きでしょ？
はい。えっ？
子どもには　うそはつけない。
あなたは　ずっと自分をごまかして生きてきた。
ちょっと　はっきり言い過ぎだぞ～。
一人でいるのは好きだが彼女のことも好きだ。
自分の中で　どちらも欲しい。
この子　何者？議員の息子。
これまでの関係が気まずくなるのも嫌。自分が傷つくのも嫌。
ああ…　この子としゃべってると自分が　愚かでどうしようもない存在に思えてくる。
（久志）ある本に書いてありました。
人は行動することで自分を変えられると。
言いかえれば　人は考えてても　自分を変えることはできないということです。
全ては行動です。まずは食事に誘ってみましょう。
そして数日後。
こんにちは。はい。　い…　いらっしゃいませ。
どうしたんですか？いえ　何も。
今日…　ちょっと変ですよ。
あっ…　そうだ！　コーヒー飲みます？
（恵）あっ…　ありがとうございます。
大丈夫。　やれる…　やれる。
め…　恵さん　どうぞ。
ありがとうございます。
保さんのコーヒー　おいしい。
ありがとう。
あ…　あの～…。
はい。
あの…　今度よかったら…。
ご…　ご…碁でも　やりませんか？
碁？
（保）碁。
教えて下さい！はい。
「ご…　ご…　碁」って。
そんな簡単に　人は変われませんよ。
いいの？　このままで。
一生　ここで　一人で本だけが友達でいいの？
ああっ…何で　彼女　この店に来たんだろう？
あ～　まあ　ともかく　今は碁だ。碁を習得せねば。
おい…　今日は　おとなしいな。どうした？
お二人は鈍いな。
僕は彼女が帰る時に気付いたんですよ。
左の薬指。
当時　日本では婚約指輪の慣習はまだありませんでした…　が。
外国では　婚約の時に男性から女性に指輪を贈る慣習があります。
恐らく　恵さんは外国人の男性から求婚されてるかと。
あっ…そういえば　話の端々で外国人の…。
「竹取物語」を外国の人に読んでもらったら「これは宇宙人の話？」って。
１，０００年以上も昔に　こんな話考えるなんてアメージングだって。
彼女　このまま　月に行ってしまいますよ。
行動するなら今しかない。
でも　もう…　婚約者がいるわけだし。
駄目もとでも　やってみればいいじゃない。
駄目だと分かっててやる必要ないでしょう？
（久志）あります。どうして？
あなたが　この店を一歩出れば全てが変わります。
変わらないよ。変わります！
言ったでしょ？　全ては行動です。
結果は変わらないかもしれない。恵さんは得られないかもしれない。
しかし　あなたは変わります。人生の分かれ道は　突然　やって来ます。
そこで行動すれば　全てが変わります。
久志…　君　何者だ？
議員の息子とはいえ…。
僕も　いろいろありました。僕は行動しました。
あなたにも行動してほしい。
保君　行け。　店の外には君の未来がある！
ずっと　一人で生きてるつもりだったけど間違ってました。
木下さん　久志君　ありがとう。
月から　かぐや姫を奪ってきます。
それで　どうなったの？
はい！　私　やってみるね。
彼と２人で歩いてたら突然　目の前にやって来て…。
ぼ…　ぼ…　僕は　あなたのことが全身全霊で好きです！
僕は今まで　過去に生きてきました。
でも　あなたと出会って　初めて未来を見ることができたんです！
失礼ですが　彼より　僕はあなたのことを幸せにできます！
ぼ…　ぼ…　僕と結婚して下さ～い！
アハッ…　って叫んだの　いきなり。
かっこいい！えっ　それで…　恵さん　何て言ったの？
それがね　左手の薬指に　そういう意味があるなんて　私　知らなかったの。
ただのファッションで　つけてただけ。
久志　ミラクルだな～。
外国人の彼も　学生時代のただの友達。
その彼が　もう感動してて。
「これが日本の武士道か」って。
バンブーって名前も　そこから？そう。
２人でお店やろうってなった時に彼女が考えたんだ。
ほら　竹って　根がすごいでしょ？私　もうずっと　こうやってふわふわして生きてきたからしっかり　地に足つけなきゃって思ってそういう意味も含めてね。
へえ～　久志さんって　すご～い。
♪～（口笛）
あっ！うわっ！
明日からは双浦　環　若き日の物語です。
えっ　何　何？　どうしたの？