地上イージス 計画撤回を明確にせよ

2020年6月17日 07時13分
 「イージス・アショア」を、秋田、山口両県に配備する計画が停止された。それ自体は歓迎したいが、導入自体を断念したのか、判然としない。閣議決定により、計画撤回を明確にすべきだ。
 イージス・アショアは地上配備のミサイル迎撃システムで弾道ミサイルを撃ち落とす防衛装備。政府は昨年、秋田、山口両県の陸上自衛隊演習場二カ所を選定し、配備計画を進めてきたが、河野太郎防衛相が十五日、計画停止を表明した。
 ミサイル発射後、「ブースター」と呼ばれる初期加速装置を演習場内に確実に落下させることができないことが判明。改善には十年以上の期間と数千億円の費用が想定され、「コスト、期間を考えれば合理的ではない」との理由からだ。
 そもそも、この計画を強引に進めること自体に無理があった。
 秋田、山口両県への配備は、日本全土を網羅するためと説明されてきたが、ハワイとグアムに駐留する米軍基地を守ることが真の目的では、との疑念は消えない。
 さらにイージス・アショアは価格や納期の設定に米国が主導権を持つ対外有償軍事援助(FMS)での調達だ。二基の取得費用に三十年間の維持・運用費、ミサイル発射装置や用地取得費、施設整備費を含めれば、少なくとも五千億円以上に膨れ上がる。
 海上自衛隊はすでにイージス艦を展開しており、トランプ米政権の購入圧力で新たに地上に配備しても巨費に見合う安全保障上の効果があるのか疑問視されていた。
 防衛省が誤った報告書を作成したり、住民説明会で職員が居眠りしたりする大失態も加わり、演習場近隣の住民や自治体の理解がとても得られる状況ではない。
 新型コロナウイルス対策への巨額の支出で財政状況は厳しくなっており、費用対効果が疑わしい計画は取りやめ、国民の命や暮らしを守るために振り向けるのは当然だ。河野氏の判断は妥当である。
 ただ、正式な手続きを経なければ計画断念にはならない。来年度概算要求に関連予算を盛り込まないだけでなく、防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画に明記された地上イージス計画を削除して、閣議決定をやり直すべきだ。
 費用対効果の疑わしい防衛政策を、住民の反対を押し切って強行する構図は、沖縄県名護市での米軍新基地建設も同じである。
 地上イージスでできた計画の停止が、辺野古でできないはずがない。河野氏の英断を期待したい。

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