クリスタルバイオレットの色変化と構造
紫色の色素のクリスタルバイオレット(CV^+と略記)は図1のように、紫、緑、黄色、無色、と多彩な変色挙動をする。
図1 クリスタルバイオレットの変色のフローチャート
そこで、それぞれの色がどのような構造に起因しているのかを、ネットで調べてみた。
1 酸を加えていくと、
溶液の色は、CV^+の最初の紫色から、緑色(pH1)、次いで黄色(pH=-1)に変化する[1,2]。
変色の理由は、次のように説明できる[2]。
① 図2の赤字で示すように、アミン窒素にプロトンが付加していく[2,3]。ただし、CV^+は正電荷を帯びているので、プロトン付加にはアニリンなどに比べてはるかに強酸性が必要である。
② その結果、窒素の非共有電子対とベンゼン環の共役(n→π*遷移)が消え、分子の共役系が短くなる。
③ その結果、「共役二重結合の数が増えるにつれて吸収波長は長くなる」、という規則の逆で、吸収波長は短波長化し、その補色の透過光は長波長化し、色は黄色化する。
図2 pHの低下に伴う、クリスタルバイオレットの色と構造の変化
CV^+は無色になります。
変色の理由は、図3に示すように、共役平衡で正電荷を帯びた中心の炭素に水酸基が結合して、クリスタルバイオレットカルビノールが生成し、共役系が阻害され、吸収が短波長側(紫外線部)に大きくずれるからです。
図3 アルカリ側での、クリスタルバイオレットの色と構造
(上の2種の反応は酸化還元反応ではないが、)CV^+は還元されて無色のロイコクリスタルバイオレッになります。
変色の理由は、図4に示すように、中心の炭素に結合した水素が共役系を阻害するからです。
還元剤は、例えば、亜ジチオン酸ナトリウム(Na2S2O4)です[4,5]。
図4 クリスタルバイオレットの酸化還元反応
この無色のロイコクリスタルバイオレットは酸化剤によって、紫色のクリスタルバイオレットに戻ります。
酸化剤は、例えば、フェントン試薬(Fe^2+と過酸化水素)です[5]。
文献
[1] http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1162024276
[2] http://en.wikipedia.org/wiki/Crystal_violet
[3] Journal of Analytical Chemistry, 2002年, 57卷(2), p.448-451
http://link.springer.com/article/10.1023/A:1015421927771#page-1
[4] Journal of Chemical Society, B, 1970年, p.227-231
[5] http://en.wikipedia.org/wiki/Methyl_violet
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