民間企業ではあるものの、そういう特別待遇を受けているので「放送の公共的使命と社会的責任」(フジテレビの公式Webサイトより)を常に考えなくてはいけない。つまり、「台本なしで出演者は自分の意志で振る舞っているだけなんで、出演者に起きたトラブルは自己責任でお願いします」なんてブラック企業のようなムシのいいロジックは通用しないということである。
また、いくら台本が存在しなくとも、出演者にはスタッフからの「アドバイス」という形のソフト演出もある。出演者自身も爪跡を残そうと、制作サイドや視聴者の求めていることを忖度(そんたく)して、エッジを立てたキャラづくりをする。また「編集」という情報の取捨選択によって、視聴者が食いつくような刺激的なストーリーへと方向づけされていく。
つまり、「リアリティー」といいながらも多くのフィルターを介して人工的に加工された「制作物」なのだ。だったら、そこで起きるトラブルや人権侵害の責任は、制作著作のイースト・エンタテインメントと、企画制作のフジテレビが負わなくてはいけない。
では、彼らがこれまでこの番組の出演者たちの人権に「配慮」をしてきたのかというと、なかなかそうとは言い難い部分がある。これまで出演者の中には、木村さんのように罵詈雑言の嵐にあった人たちも少なくないが、番組側が彼らをフォローするような対応をしてこなかった。
むしろ、出演者の二面性などにフォーカスを当てたり、出演者同士の対立を蒸し返すようなムードをつくったりして、積極的に対立を煽っている側面が強い。実際、番組内容を取り上げたネットニュースのタイトルがそれを如実に示している。
『テラハ』軽井沢、最終話を前に史上最悪の険悪ムード トリンドル「どの面下げて…」(オリコンニュース 2019年1月15日)
ラストにスタジオ出演者のトリンドル玲奈さんが不快感を示したというニュースだが、こういう内容のときほどファンも大いに盛り上がる。つまり、この女は性格が悪い、この男の人間性を信じられない、など出演者をネタにボロカスに吊し上げることでスカッとするのが、テラスハウスの楽しみ方でもあるのだ。
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