このような話をすると、必ず「本人がこういう扱いを承諾してリアリティー番組に出演していたのだから、番組側だけを責めるのはお門違いでは」みたいな自己責任論へと持っていこうとする人たちがいるが、もし仮にご本人が叩かれることを覚悟の上で出演していたとしても、番組側には彼女のメンタルヘルスに配慮する責任があった。
世界中で、リアリティー番組の出演者の自殺が後を絶たないという現実があるからだ。
例えば、イギリスのリアリティー番組「ジェレミー・カイル・ショー」では番組内で浮気がバレた男性が自殺をした。隣の韓国でも、10人ほどの男女がゲストハウスで同居するというテラスハウス的なリアリティー番組「チャク」で、出演者の女性がドライヤーのコードで首をつって亡くなった。女性は番組の「演出」でやたらと孤独な女として描かれているのに不満で、番組が放映されたら韓国では暮らせないとこぼしていたという。
こんな「事件」が世界中に山ほど報告されている。それはつまり、このフォーマットで番組を制作する以上は、現場スタッフはもちろんのこと、出演者の安全に責任をもつテレビ局としても、このリスクを想定して最大限の「配慮」をしなくてはならないということだ。
例えば、出演者同士の対立を過度に煽らないことや、出演者の一方の面だけにフォーカスを当てたような編集をしない。また、視聴者から度を越した誹謗中傷があった場合は、放映中止や出演中止の判断、さらには出演者のイメージや名誉を回復するようなアフターフォローなどが考えられる。
番組がそこまで面倒を見なくちゃいけないのかと違和感を抱く人もいるかもしれないが、フジテレビにはその責任がある。面白ければなんでもいいというYouTuberやネット動画配信業者などではなく、政府から独占的に電波を使用できる免許を交付されている「基幹放送事業者」だからだ。
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