辺野古工事再開 県民への思慮を欠く
2020年6月16日 07時35分
新型コロナウイルスの感染者が工事関係者に出たため中断されていた辺野古新基地建設工事が先週、再開された。沖縄県議選で建設反対の民意が重ねて示された直後だ。県民への思慮に欠けている。
安倍政権はなぜこうも、民意を重んじようとしないのか。七日投開票の県議選は、新基地建設に反対する玉城デニー知事の県政与党が過半数を占めた。十二日の工事再開は、そのわずか五日後だ。
玉城氏は、工事を中止し、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を伴わない普天間返還の在り方について、政府と話し合う場を設けたいと主張してきた。
コロナ禍で四月十七日から工事が止まり、県議選で辺野古反対の民意が再び示されたことは、政権側にも話し合いに応じる好機だったはずだ。しかし、菅義偉官房長官は県議選で自民党議席が増えたことだけを捉え「(移設への)地元の理解が進んだ」と評した。ご都合主義も甚だしい。
県民感情を逆なでする政権の強権的な対応は今回だけではない。
安倍晋三首相は、玉城氏と二〇一八年十月の知事就任直後に会談し「県民の気持ちに寄り添う」と強調したが、その五日後、県の辺野古埋め立て承認撤回を無効にする手続きに踏み切った。
今年四月、県が非常事態宣言を出して新型コロナ対応に乗り出した翌日には、防衛省が県に辺野古海域に広がる軟弱地盤改良工事のための設計変更を申請した。県民の政府不信を深める時機をあえて選んでいるとしか思えない。
軟弱地盤の改良工事は技術や工期、工費、環境保護など課題山積で、新基地完成の実現性が疑われる申請内容である。玉城氏は許可しない方針で、政府との間で法廷闘争にもつれ込む見通しだ。
政権としても、県との対立を延々と続けるより、話し合い解決の道を探るべきではないのか。
辺野古の海の埋め立ては現在、全量の2%に満たないとされる。今、打ち切れば、サンゴなど希少な生態系への影響も少なくて済む。
玉城県政は現在、コロナ禍により大打撃を受けた経済の復興に全力を傾注している最中だ。安倍政権には、口先だけではない、沖縄県民に真に寄り添う政策への転換を強く望みたい。
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