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小説

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はじまり2

『そんなものなんですか…』


春子はまた少し不安げな表情になった。


『ご安心くださいなどと気休めは言えませんが、できるだけ早く解決できるように動きます。』


俺の言葉に木村夫妻は揃って神妙な顔になった。

『もし長引くようでしたら、こちらの書類に銀行の口座番号がありますので、追加経費のお振り込みをお願いする場合もありまので、よろしくお願いします。』


『わかりました。そのような時はすぐにお振り込みします。』


博之はすがりつくような目で俺を見た。


『ではこの辺で失礼します。』


俺は木村宅を後にした。

メモを読み返した。


失踪人

木村恵子(17)

都立〇〇高校2年


父親

木村博之(50)

千代田区丸の内の大手
都市銀行勤務


母親

木村春子(48)

専業主婦


住所

杉並区天沼3丁目〇番地 〇号



2週間前に音信不通になり、警察に捜索願いを提出

その後手掛かりが無く、不安から依頼


気休めか?


今日の昼前に俺の事務所に電話が来て『警察にお願いしているのですが進捗状況が思わしくなく、居ても立ってもいられないのでお電話をしました。』と父親博之が言った。

電話から聞こえる父親博之の声は感情が高ぶっているので、やきもきしているのが窺えた。

夜に自宅に伺うと約束をして電話を切ると、すぐに父親博之の勤め先のウラをとったが、やはり生活水準は高いと言っていい環境だ。


このような環境での家出や非行はそう珍しくない。

しかし母親春子がくれたメモの親しい2人の友達の家にいる事は考えづらい。


警察が動いているのだから、既に見つかってもいいはずだ。

捜索はもう時間が遅いので、明日からになる。

俺は今までの経験上そう難しくないと踏んでいた。

腕時計を見る。

20時50分。

早苗の顔が浮かんだ。

携帯電話を取り出した。
3コールで早苗が出た。

『仕事終わった?』

早苗の元気のいい声が流れてきた。

『ああ。明日から動くよ。晩飯は食べた?』

『残念ながらもう食べちゃった。今日はもう疲れちゃった。明日は一緒に晩ご飯食べられる?』

『ああ。多分大丈夫だと思う。何が食べたい?』

『う〜ん。中華がいいかな?』

『わかった。池袋のあそこに行こう。』

『約束だからね。破ったら大変だよ。』

『わかった。また明日』

無性に早苗に会いたくなった。

更新日:2011-06-11 22:10:39