参入続々「高機能マスク」を見極める"製法"の差
「マスクバブル」崩壊で市場は新たな局面へ
ヤマシンのマスクは、素材はポリプロピレン製、製造方法は改良型のメルトブロー法で、一般的なメルトブロー法よりも細い繊維を混在させることに成功。繊維の直径は200~800ナノ(0.2~0.8マイクロ)のものが混在することで、ウイルスの直径と同じ0.1マイクロの微粒子を99%カットできるという。
価格は50枚入りの1箱が7425円(税込み、以下同)。手持ちの布マスクと組み合わせて使えるよう、フィルターのみという売り方もしていて、これが30枚入りで1078円。5月18日から同社ECサイトで販売を開始したほか、手芸用品のユザワヤと紳士服のコナカでも扱っている。
このほか、「コラボーン」などのスマートフォンケースブランドを展開するサムライワークスにフィルターを提供。同社は冷感加工した生地や抗菌・消臭加工した生地と組み合わせた洗濯可能な高機能布マスク「ナノクール抗菌マスク」の予約販売を6月6日から始めた。
理化学機器卸の理学は、ナノファイバー製の不織布と冷感性のあるレーヨン生地の布マスクをセットにした「ヌノテクト」を5月20日からアマゾンで販売開始。価格は布マスク2枚と交換用フィルター40枚で1セット6000円となっている。
ナノファイバー製のフィルターを提供しているのは、国内の大学で唯一、繊維学部を持つ信州大学の学内産学連携施設に本社を構えるベンチャー企業・ナフィアス。社長の渡邊圭氏は信州大学繊維学部の特任助教も務める。
2013年の年明け早々、世界中で中国のPM2.5が注目を集めたことをきっかけに、ナノファイバー製の不織布マスクを開発。同年夏に一般向けに販売を開始している。病院や特殊用途向けにN95マスクも供給。生産は外部に委託しており、自社工場を持たないファブレスメーカーである。
素材はポリウレタンで、製造方法は太さを均質にできるエレクトロスピニング法。直径10ナノ(0.01マイクロ)と、極細かつ均質な繊維で作った膜状のフィルターは、高い補集性と高い通気性がセールスポイントだ。
同じ「ナノ」でもまったく異なる
「ナノ」を名乗りながらも、ヤマシンやナフィアスとはコンセプトを異にするのは、北海道千歳市の企画会社・ノースワンが開発した「TNOC ナノファブリックマスク」。このマスクは同社が生地から独自企画し、「ナノファブリック」と命名したポリエステル製の生地を4層重ねた布マスクだ。
繊維の太さは7000ナノ(7マイクロ)。一般的な不織布マスクの繊維直径が3マイクロなので、その倍以上太いが、布としてはかなり細い糸で織られたものになる。
ファッション性を重視して企画されたらしく、色も豊富でかなりおしゃれ。北海道日本ハムファイターズのオリジナルグッズ用にも採用された。
一口にナノ素材と言ってもさまざまで、ナノ素材を粉末にしたナノ粒子を表面にコーティングしたものもナノを名乗っている。
新型コロナは一般用マスクを季節商品から通年商品へ、日本国内限定のローカル商品からグローバル商品へと激変させた。これからもニーズを反映した、さまざまなハイスペックマスクが続々と誕生してくるに違いない。