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私が電通に製作費“7割中抜き”され企画を握り潰され、濡れ衣着せられクビにされた実話

構成=編集部、取材協力=ジャンクハンター吉田/ゲームコラムニスト
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 プロデューサーからOKが出たこともあり、担当していたゲーム紹介コーナーを4週間分作り込んでメキシコにわたりました。現地の生活になじみ始めた頃、突如プロデューサーから携帯電話へ国際電話が入ったのです。「任天堂の山内社長が吉田君に対し激怒している。早く日本へ帰ってきてくれ」と。意味がわかりませんでした。

 帰国が4日後に迫っていたので予定通りに日本戻った翌日、プロデューサーに「全体会議前に二人きりで話がある」と呼び出しされました。パソコンの画面を見せられて「この書き込みは吉田君……が書いたはずないよね? 僕はキミを信用して信じているから突如呼び出したんだけど」と言うのです。

 モニターには『2ちゃんねる』の「任天堂スレッド」にスタフィーの情報が書き込まれていました。

 私は「手元にPCもないし、メキシコになんてネットできるインフラがなかったからこの書き込み日時から特定してもらっても、あきらかに俺じゃないですよ。もしかして2ちゃんねるにネタを漏洩させたと疑われてます?」と聞きました。

 プロデューサーは「そうなんだよ。電通関西のI氏が吉田しかこんなこと書き込む奴はいないって鼻息荒く山内さんに伝えているようで、山内さんは激怒しているって話が出てるんだよ」と疲れたように話してくれました。

 IPアドレスを調べればわかる話です。当時のメキシコに日本語IMEが入ったPCはネットカフェにはありませんでした。そのうえで、プロデューサーは「メキシコ行ってる吉田君のわけがないって山内さんにも伝えたんだけど、どうやらI氏は吉田君を番組から降ろさせようとクビにしたがっているんだよ。これは間違いなく電通側が吉田君をハメた陰謀だと思っている」と言ってくれました。

 プロデューサーを困らせたくなかったので結局全体会議に出る前に自ら降板しました。9まで残り3カ月分、番組をつくる予定でした。プロデューサーは「これは僕が吉田君を守れなかった責任なので自腹で3カ月分払わせてくれ」と漢気を見せてくれました。

 お金も仕事もなかった無名の若手時代でした。プロデューサーの漢気に感動し、自分も人の上に立ったらこういう人間になろうと思いました。一方で、電通関西のI氏は「2ちゃんねるを常時チェックしている暇人ではないのか」という謎が残りました。

電通のネット監視チーム

 『マリオスタジアム』時代から嘘ばかりついて、上から目線で見下してくる電通関西とはそりが合わなかったので、番組を降りたことで気持ち的にはスッキリしました。しかし、任天堂の山内社長からは誤解されたままだったのだけは許せませんでした。ところが番組をクビになってから数週間後、プロレス好きという共通項があってしくさせて頂いていた電通本社のS氏から電話があり、衝撃的な事実を知ることになりました。

 S氏は私が山内社長からクビにされたことに驚いて、番組に対し社内ヒアリングをし、何があったのか調査したので話がしたいというのです。

 S氏は「電通的には任天堂がCMや雑誌広告等含め超大口のスポンサーなので、山内さんのご機嫌を取らないといけないから特に担当していたIは必死だったんだろうけど、今回の件はやりすぎていたと思う」とのことでした。

 つまり、スタフィーの情報漏洩事件で吉田が日本にいない隙を見て2ちゃんねるにI氏が自分でスタフィーの情報を書き込んで、それを吉田のせいにし、山内社長へ報告。そしてクビにさせるという単純極まりない自作自演を行なっていたということでした。

 S氏にどうしてそんなことがわかったのかを伺うと、「電通は2ちゃんねるを2000年から脅威に感じ始めたと同時に、秘密裏に自演書き込みをして印象操作を行なっているチームがある」というのです。そこからの情報でI氏が自作自演を行ったということがわかったというのです。

 ネット上で印象操作しているチームは、ほぼ24時間体制で稼働していたそうです。2ちゃんねる以外にも当時はネット掲示板が隆盛していた頃だったので、それをすべて網羅していたといいます。自分たちが企業から請け負っているPR案件を非難批判させないよう、または好印象を持たせるよう、複数人で印象操作するという仕事で、社内だけのインハウスで展開していたそうです。

 最近、ネット上で指摘されている「政府与党がフリーランスマッチングサイト・ランサーズに印象操作の仕事を依頼していた」という疑惑と違い、アルバイトなど外部の人間を雇うわけではないので、社内でもその組織の存在を知る人は少なかったということでした。

 掲示板文化だった20年前のエピソードですが、今のSNS文化とは違って、当時は匿名の便所の落書きみたいなものを信用する企業が多くいたということです。何が行われていたのしても、テレビ制作側は電通に基本逆らえません。CM=広告やタイアップを引っ張ってきてくれる営業マンが電通なんですから当たり前です。

 電通がどれぐらい中抜きしているかを、番組を作っている側は通常では一切知り得ません。メディア支配なんて簡単にやれてしまいます。S氏からは自民党の広報PRも担っていると当時伺っていて、政治にも首突っ込んでいるんだと驚いた記憶があります。S氏は10年ちょっと前に電通を退職しました。「電通を辞める人間は良が残されている」と言っていました。

 彼が辞める前、最後にオファーされた仕事が任天堂ゲーム機「Wii」のウェブサイト用に掲載する原稿でした。たった2000文字で18万円のギャラを頂戴しました。総額20万円の仕事だったそうです。S氏は「電通は個人商店みたいなもので、自分たちで数字を決めることができる。原稿を確認するだけの仕事なら1割でいい」と言っていました。売上至上主義で、少しでも自分たちの利益をねん出して、現場に負担を強い、社内の出世レースを勝ち上がっていく社員がいる一方、中抜きしない電通マンもいます。その案件を最後に電通とは完全に切れました。

(構成=編集部、取材協力=ジャンクハンター吉田/ゲームコラムニスト) 

 

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