つまり、電通関西側に出した企画提案書は山内社長にほとんど回されておらず、「山内さんが面白くないと言ってる」発言そのものが嘘だったことがと判明したのです。しかし、その食事会には電通関西の担当者もいたので(彼は真っ青な顔していましたが)、彼の顔を潰すわけいかないため渋々フォローするしかありませんでした。
その食事会で山内社長からは「視聴率5%を3月の初週で達成しなかったら打ち切りにするけど、次はゲームの番組をやめて私の大好きな手品の番組にするから」と告げられたので、私はもうこの時点でリストラだろうと覚悟しました。
突然の番組降板と謎の2ちゃんねるへの書き込み
『マリオスクール』を代表して『TVチャンピオン』(テレビ東京系)のゲーム王選手権に出演した放送日が、皮肉にも番組の最終回になりました。翌週から『マジック王国』という、初めて任天堂の看板ゲームソフト『スーパーマリオ』の冠を外した30分番組がスタートすることになりました。スタッフそのままでこの手品番組を作ることになり、私は毎週3分ぐらいに縮小された枠でゲーム紹介を担当することになりました。
山内社長は「ゲーム番組は終了する」と言っていたので、新作紹介枠を設けることに違和感はありましたが、どうやら電通関西は山内社長のご機嫌取りをするべく、ジュニアが初プロデュースするゲームボーイアドバンス(GBA)専用ソフト『伝説のスタフィー』を強固なIntellectual Property(IP)にするためつくられた枠であることがわかりました。
電通はスタフィーをドンキーコング、マリオ、ポケモンなどに続く21世紀のIPにするつもりで、水面下で動いていた秘密プロジェクトで、一切外部にもらさず星形のキャラを先行で披露していく戦略だったようです。
番組の中でさりげなくスタフィーをスタジオ内に置くなど、山内さんのご機嫌取りに私たちも加担させられる形になりました。
ある日の会議で私は「この番組構成で新作ゲームの紹介が、マジシャンが手品披露した後でインサートされるのって誰が喜ぶんですか? ゲーム紹介だけが浮いてるんで、やめたほうがいいんじゃないですか?」と自らリストラしてくれと言わんばかりの発言をしました。
それに対し、電通関西の責任者I氏は次のように激高したのです。
「ジュニアが初めてプロデュースする『スターフィッシュ』というゲーム(当時のワーキングタイトル)が控えているから新作紹介枠作ってるんだよ! この枠なくなったらキミだって仕事なくなるだろう?」と、いかにも仕事を与えてやっているんだという態度でした。
これまで電通関西側とはたびたび衝突していたのですが、この時ばかりは一触即発ムードでした。彼としては山内社長の提灯持ちなので、自分に反対する奴は許せなかったのだと思います。あまりにも腹が立ったので、テレビマンユニオンのプロデューサーに「メキシコへプロレスの武者修行行きたいので1カ月休んでいいですか?」とお願いすることになりました。