予算がなければ出演料が高額なゲストは呼べないですし、企画案の種類も制限されます。しかも電通関西から降りてくる予算は、毎週木曜18時半~19時の放送時間帯の番組にしては驚くほど少ないものでした。一番費用が掛かっていたのが五反田のCG合成会社のスタジオと渡辺徹さんと声優の石川英郎さんだったと思います。そんな状況だったにもかかわらず、電通関西からは常々、「視聴率が伸びないのは番組の企画が弱いからではないか?」などと批判されていました。
制作スタッフは電通関西の下請けなので直接任天堂へ話ができず、ダイレクトに企画が通せませんでした。電通関西の責任者が参加する全体会議が月1ぐらいであり、山ほど企画書を出しても、「山内さんが面白くないとおっしゃっている」と電通関西側に却下されました。
そんなある日の番組会議で、電通関西のI氏が書類を椅子の上に忘れていったことがありました。ブリーフケースから機密書類と思われる書類が剥き出しのまま置かれていて、覗き見しなくても何が書かれているか、わかってしまったのです。
なんと任天堂から電通関西が貰っている予算のうち、たった3割しか制作費を落としていなかったことが判明しました。7割も中抜きです。せいぜい5割の半々だろうと思っていのですが、それが違った時のショックはまだ業界青二才な自分にはショックでした。
収録現場に毎回来るわけでもなく大して仕事もしてないのに7:3の割合にはどうしても納得が行きませんでした。むしろ3:7だろと。それ以降、大手広告代理店のやり方に疑問を抱くようになりました。任天堂が番組にこんな予算出してくれていたのに、「予算がない」というのは嘘だったんです。
電通に握りつぶされた企画提案書
しかも、任天堂の山内社長がダメ出しをしているという話も、山内社長、電通関西、われわれで食事会をする機会があり、その際に崩れました。
食事会で山内社長から、視聴率問題で叱咤された際、「キミたちから上がってくる企画が少なすぎるんだよ。もっとたくさん出さないと!」といわれたのです。山内さんの言葉に疑問を抱いたので、「僕らはこういう企画を自信持ってたくさん出していたんですけど山内さんがお気に召さなかったようで」と、たまたま持参していて企画提案書を山内さんへ見せたんです。そしたら山内社長は「おもしろい。こういう企画をなんでやらなかったんだ」ということになりました。
「何かの手違いで企画提案書が提出できてなかったようで、すみません」と逆に番組の企画を任されていた私から謝ることになりました。企画書を読む山内社長からは「これぐらいならば成立する予算はうちから捻出しているんだから、ボツになったのが、もったいないのばかりじゃないか!」と再び説教されました。