建物の調査、測量


建物の登記フローチャート




1、誰の登記ですか?
 建物の登記依頼を受け、最も大切な確認事項は、誰の建物であるかを調査する事です。
 すなわち、誰の金で建てたか、建築確認書は、所有権を証する書面になり得ますが、建築確
認書の性質上、建築屋さんが本人から適当に聞き取りを行い、適当に建築主を記載している
場合もありますので注意が必要です。くどいようですが、誰が金を出したが最も大切な調査事
項です。

 よく耳にするパターンとして、父親名義の既登記建物に息子の名前で建築確認を取って増築
工事を行っている事例があります。この場合息子が公庫等で金を借りて増築を行っているた
め、増築部分のみの登記を息子名義で登記して欲しいと言われます。

 これは、区分建物として登記でき得る場合を除いて無理な相談です。この事例の場合は、附
合という問題がありますので、既登記部分を息子に贈与してから後に増築登記又はその逆と
いう処理になります。

一口メモ
一般的に言えることは、建築資金の出所と、その結果であるべき登記が、一致しない場合 は、調査士において予測される登記の結果について専門家に問い合わせてから登記を進め るように、指示する事も重要です。・・(専門家・・税理士、銀行融資窓口又は税務署)



2、どこの土地に建っていますか?

 建物の登記で2番目に大切な事項が所在の調査です。どこの土地の上に建物が建っている
のか、充分な調査が必要となります。

 この時よく耳にするパターンとして、公庫で金を借入れして家を建て現場へ行ってみると、確
認書等に記載してある土地からはみ出て家が建っているケースです。このような場合、応々に
して、はみ出ている土地は調整区域の農地です。ここで問題となるのは、依頼人のために、は
み出てない様に建物図面を書いて、公庫の手続きがスムーズにいくようにしてあげるべきか、
はたまた、はみ出ている部分を分筆→農転(相当の時間を要する)という手続きを行うべき
か?という問題です。世間様から見ると、前者の調査士の方が腕のもしる調査士さんというこ
とになりがちですが、我々は後者の選択が正しいと考えます。金を借りられるかどうかという事
は、依頼人の勝手な事ですし、後々責任はすべて調査士にかかってきます。「へんな登記はで
きません」と丁重にお断りすべきと考えます。

一口メモ
依頼人とは、建築前から面識がある場合も多いと思いますが、建築時及び建築後の問題点 について注意を喚起する助言も、無駄な手続き・紛争の予防になります。



3、上申書の色々

   別 紙(全て、実印押印、印鑑証明書添付)



4、古い未登記建物の登記について

 A 建物の辺長(寸法)
   木造の建物はおおむね次の寸法の基準で違っています。
             古い用語
     狭 間 → 6尺  (1間) → 1.82m(1尺=30.3cm)
     中間間 → 6尺3寸(1間) → 1.91m 
     本 間 → 6尺6寸(1間) → 2.00m 
     その他 → 6尺4寸5分(1間)→1.97m  
 しかし、古い建物の中には、タテ方向は本間の寸法、ヨコ方向は狭間の寸法、又居間のみ本
間の寸法で建てるなどさまざまですが、一応の基準としては上記のとおりです。

 B 附属建物
 古い建物の中には、やたらと附属建物が登記簿上存在しているものがあります。(納屋、便
所、廊下等) 
 これらは主たる建物と実際、別々に存在しているものもありますが、全てがそうではありませ
ん。昔は一体の建物の中でも、便所、廊下等を別々に登記している時代もあり、現地へ行って
みると主たる建物しかない場合もあります。主とすべての附属建物の面積を足してみましょう。
大体あってくる場合があります。後は立会人等の証言を元に調査を行います。

一口メモ
古い建物で、所在地番、床面積さらには、所有者(依頼人の関係者である場合が多い)が違
う場合等、建物の同一性の判断に迷うモノがたまにあります。
①表示更正・変更登記で処理するのか?
②表示抹消登記及び表示登記・保存登記で処理するのか?
最終的には、自分の考えを登記官に示して、登記の処理方法を決定します。
この場合も、登記完了後の、課税問題が必ずついて廻りますので、登記提出前には、市役
所資産税課などに連絡を取っておくことを、奨めます。・・無用なトラブルをさけます。



5.建物の測量

(1) 床面積の測量









 ①通常の建物
 建物の外周を測量し、柱の中心線の場合は建物の外面から柱の中心までの幅を、壁の中
心線の場合は、壁厚を測定し、建物の外周寸法から差し引くことにより、中心線の寸法を算出
する。




 ②不定形建物
 建物の外周をトランシットにより測定し、平行移動交点計算により、柱または壁の中心の座
標値を求め、直角座標法あるいは三斜法により床面積を算出する。




 通常の建物の場合AとBは等しくならなければならないが、実際に測量してみると、等しくなら
ないことが多い。
 この場合AとBの平均値を寸法に定め、その辺長差を各辺に振り分けて、AとBが等しくなる
よう調整する。
 AとBの差が大きい場合は、測定ミスか、不定形建物である可能性があるので再測すべきで
ある。


 (2)建物位置の特定
 境界が明確な場合でも、何らかの原因により、境界が移動している場合がありますから、土
地所有者に十分な境界の確認を行い、建物の周囲すべてについてできるだけ多く寸法を測る
よう心がけ、正確な位置の特定をしましょう。

 境界が不明な場合の測量寸法は、隣接土地または周囲のはっきりした境界線から建物まで
の寸法を測定して建物の位置を特定します。




 建物が所在している土地または周囲の現況が全く不明で、建物から境界までの距離の測定
ができない場合は三角点及び図根点等の基準点をもとに建物の測定を行い、その公共座標
値を地図上にプロットし、外壁から境界への寸法を地図の上から読取する事も一つの方法で
しょう。





8.建物滅失申出について

 ① 既に取毀し、又は焼失により滅失している建物
 ② 登記名義人である法人が解散しており、その清算人が所在が不明
 ③ 登記名義人が死亡しており、その相続人が行方不明
 ④ 登記名義人は存在するが、土地所有者からの滅失登記申請の要請に同人が応じない。
 等の場合には、滅失した建物の敷地所有者或いは敷地上に建築した建物の所有者等の利
害関係人から登記官への職権を促すための建物滅失登記の申出により上申書を添付して行
うことができる。


       建物登記簿閉鎖申出書





       建物滅失申出書






9.附属建物について

 附属建物と認められるためには、主たる建物と効用上一体として利用される状態にあるこ
と、所有者が附属建物とする意思を有することの2つの要件を具備していることが必要であ
る。
 したがって、主従の関係が全くなく、効用上の一体性が認められない数棟の建物は、所有者
がいかに欲してもこれらを1個の建物とすることは許されない。しかし、主たる建物の床面積よ
り附属建物の床面積が大きい場合でも、効用上一体として利用される状態であれば附属建物
として認められる。また主たる建物と附属建物とが隣接していない場合であっても、効用上一
体性が認められる程度の位置関係にあれば附属建物として認められる。



 事 例
 ア.同一目的に供される数棟の集団的賃貸倉庫は、効用上一体性が認められないので、各
別に1個の建物として登記すべきである。
  (昭52.10.5民三5113号回答)

 イ.社宅の用に供している数棟の建物のうち、1棟を主たる建物とし、他を附属建物とするこ
とは許されない。
  (登記研究275号75号)

 ウ.同一地番上に、同一人が所有する甲建物(居宅)、専ら木工作業場として使用されてい
る乙建物(事務所兼作業所)とが存在する場合甲、乙両建物間には必ずしも効用上の一体性
があるとは認め難いので、乙建物を甲建物の附属建物とする登記申請は受理すべきでない。
  (登記研究357号82号)




10.建物の同一性について

 登記された建物に改造工事がなされ、床面積に変更を生じた場合、又は種類、構造に変更
を生じた場合には、改造工事の前後を通じて建物の同一性が認められなければならない。
 このような建物の同一性の有無については、所在、建築材料、取段の程度、構造の変更の
程度、床面積の増減の程度等を基準にしながら判断することになるが、究極的には社会通念
に従って決める。


 事 例(登記研究より)
 1.図のように床面積80平方メートルの既登記建物(居宅)の一部70平方メートルを取り壊
し、残存部分(浴室、便所)に接続して建築した場合(床面積75平方メートル)について建物表
示登記申請がされた場合





 独立の建物といえるかどうかの判断は、単に物理的状態だけでなく、客観的にみた建物の
用途、社会的、経済的取引価値等を総合して決定すべきであると考えられるが、この場合、そ
の規模、用途性あるいは取引価値等から考え、独立の建物としての取引性があるとは考え難
い。したがって、従前の建物の居宅としての機能は失ったものとして、従前の建物につき、滅
失の登記を行い、残存部分を含めた全体の建物については新たな表示の登記をすべきであ
る。

 2.図のように主要部分(点線)を取り壊したあと残存建物(居宅1階9平方メートル、2階9平
方メートル)に接続して約7.5倍の建物(居宅1階95平方メートル、2階41平方メートル)を増
築したとして表示登記申請がされた場合





 この場合、従前の建物の居宅部分が残存しているということであるが、その規模、構造、取
引価値等から考え、必ずしもその主要部分が残存しているとは言えず、この部分と従前の建
物との間には同一性が認められない。したがってこの場合にも、従前の建物の登記につき滅
失の登記を行い、それを含めて建築された建物については新たな表示の登記をすべきであ
る。











建物調査の実務と本音
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