チリのパリス保健相(左)とマニャリッチ前保健相(13日、サンティアゴ)=ロイター
【サンパウロ=外山尚之】南米チリ政府は13日、マニャリッチ保健相を交代させた。事実上の更迭とみられる。新型コロナウイルスの感染が再拡大している上、死者数を過小報告した疑いが浮上した。南米は新型コロナの「新たな震源地」となっており、各国で混乱が続いている。
チリは人口約1900万人ながら、新型コロナの感染者数は17万4千人を超え、直近では1日当たりの感染者数は世界で5番目の多さだ。政府発表で累積死者数は約3300人だが、遺体への検査で陽性と判定されたにもかかわらず計上しなかったケースが次々と発覚した。
現地からの報道によると、政府は世界保健機関(WHO)に対して実際の死者数は5千人を超えているとに報告していたとの疑惑が浮上した。政府の姿勢に批判が高まる中、マニャリッチ氏は混乱を招いた責任を取る形で辞任したが、事実上の更迭とみられる。
チリは感染の再拡大が深刻だ。3月に国境封鎖や市民の移動制限を実施し、感染拡大が抑制されたが、4月下旬にピニェラ大統領が「ピークを超えた」として外出制限を解除すると再び新規感染者が増加。5月中旬に首都サンティアゴなどで外出禁止措置を導入したが手遅れだった。
感染が急激に拡大している南米では、対策を巡り政治も混乱している。感染者数・死者数とも米国に次ぐ世界2位となったブラジルでは、対策の方向性を巡りボルソナロ大統領との対立で、2人の保健相が交代した。ボリビアでは医療機器の輸入に伴う汚職の発覚で、前保健相が逮捕された。