政党は党員に対し、党の意見に従えと要求する権利がある。だが自由民主主義を採用している国で、良心の自由の領域に属する国会議員の票決を、それも党の意見と違うという理由で懲戒するのは別の問題だ。民主党主流派の人々は、「党の意見に従わない議員を懲戒できる」とした憲法裁判所の判例を挙げている。だがこの事例は、民主党があれほど非民主的だと批判していたかつてのハンナラ党で起きた事件だったという点で、「ここまでやらないといけないのか」という思いを抱くほどだ。
民主党は、朴槿恵(パク・クンへ)前大統領に対する国会弾劾訴追案の票決を前に、党の利益と自らの所信の間でためらっていたセヌリ党非主流派議員に向けて「良心に従って自由投票すべき」と督励した。ユ・スンミン前議員がセヌリ党主流派から「裏切者」とされて困難に直面したとき、彼を応援したのも民主党だった。ところが今では、良心より党の規律を優先している。
米国では、共和党・民主党の穏健派が相手の党の法案に賛成する「クロスボーティング」が一般化している。こうしたクロスボーティングが、米国政治の極端化を防ぐ緩衝装置になってきた。米国大統領や与党指導部は、 電話にかじりついて反対派の政治家を説得はしても、懲戒はしない。逆に、反対派の芽を摘んでしまう「士禍」を繰り返した朝鮮王朝の政治を「朋(ほう)党政治」という。政権を握った朋党が修正実録を書き、反対派の記録を消して自分たちに有利なように書き直すケースもあった。民主党は今、朝鮮王朝の朋党政治に戻ろうというのか。
崔慶韻(チェ・ギョンウン)政治部次長