もう一度言おう、中国がアメリカに「絶対に勝てない」その理由

「香港経済崩壊」はあり得ないと言う人へ
長谷川 幸洋 プロフィール

「脱中国」は「汚い言葉」ではない

というわけで、いまや外資企業にとって最大の課題は「いかに早く中国を脱出するか」になった。サプライチェーンの多様化が不可欠になったのだ。注目されているのは、日本だ。4月10日付のフォーブス電子版は、ラリー・クドロー米国家経済会議(NEC)委員長がFOXビジネスニュースの番組で語った発言を紹介している(https://www.forbes.com/sites/kenrapoza/2020/04/10/kudlow-pay-the-moving-costs-of-american-companies-leaving-china/#66b380e613c6)。

日本の安倍晋三政権は新型コロナに関わる第1次補正予算で、中国から生産拠点を移す企業への支援策として、2486億円の補助金制度を新設した。クドロー氏は、これに刺激されたのか「工場から設備投資、知的財産、技術開発などあらゆる分野にわたって、我々は中国から出たいと思っている米国企業の移転費用に100%、カネを出すつもりだ」と語った。

 

いまや「脱中国」「デカップリング(切り離し)」は、米中対立の負の側面を示す「ダーティ・ワード(汚い言葉)」でもなければ、政策担当者の頭の中だけにあるシナリオでもない。日本でも米国でも、実際の政策になっている。

中国共産党の習近平国家主席はもちろん、これに気付いている。だからこそ、外資企業が中国を出ていかないように、あの手この手で必死の食い止め工作を展開中だ。日本企業が「生産再開に〇〇が必要だ」と言うと、たちどころに「〇〇〇〇がそろう」という話もある。

中国の成長を支えてきたのは、外資企業だった。だが、その外資が逃げ出し始めた。国内企業だけで成長できるかといえば、たとえば、ご自慢の華為技術(ファーウェイ)を見ても、トランプ政権の制裁によって立ち往生している。第5世代移動通信システム(5G)の展開に不可欠な半導体を自前で作れないのだ(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-06-08/QBKUMADWRGG301)。

もう1度、繰り返そう。中国はどうがんばっても、米国に勝てない。

米中対決の行方については、YouTube番組の「長谷川幸洋と高橋洋一の『NEWSチャンネル』」でも、同志社大学の村田晃嗣教授と講談社特別編集委員の近藤大介氏をゲストに交えて、徹底議論した(https://www.youtube.com/watch?v=Wge89fJJM7c&list=PL6vmlngLTe5BJ1p8szg8TDi48pBP-PRxu)。こちらも、ぜひご覧いただきたい。
 
また、最新刊の『新型コロナの正体〜日本はワクチン戦争に勝てるか』(ビジネス社)では、大阪大学大学院の森下竜一寄附講座教授と新型コロナ問題と合わせて、米中対決についても対談した。こちらも、ぜひ。