柳沼広幸
梅雨に入り、水害リスクが懸念される季節を迎えた。いざとなれば近くの避難所が頼りだが、これまでとは様相が違う。人が集中しがちな避難所は、新型コロナウイルスの感染症対策が欠かせない。群馬県内も大きな被害に遭った昨年10月の台風19号の記憶も新しい中、自治体は密閉・密集・密接の「3密」回避を模索する。
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「距離をとって感染しないように避難しないといけない。新しい避難所のあり方を訓練したい」。11日、渋川市八木原の古巻小学校体育館で高木勉市長はこう語った。感染症に対応した避難所の開設・運営の訓練。自治会長や自主防災リーダーら約30人の参加者に協力を求めた。
訓練では、受付でフェースシールドとマスクを着けた担当者が、避難者にマスクの着用と手指の消毒を促し、体温を測った。健康状態を尋ねる問診票には、新型コロナの感染者や濃厚接触者と一緒にいたことがあるか、2週間以内に国内外の流行地域に滞在したか、それぞれ問う項目がある。感染の恐れや熱がある人は他の避難者と接触しないように振り分け、約5平方メートルのテントなどに案内する。
この日は急な雨で蒸し暑く、換気しても風は弱い。エアコンのない体育館で参加者は汗だく。マスクで息苦しい。「暑さ対策が必要だ」「受け付けに時間がかかり『密』になった」「動線を一方通行にするなどの工夫が必要だ」。様々な課題が浮かんだ。自主防災リーダー会の冨沢真司さん(71)は「熱がある人の受け入れには不安がある。どう振り分ければいいのか」と戸惑った。
避難者同士の間隔を2メートル程度確保▽避難者が増えれば校舎内の特別教室なども校長の許可を得て開放▽高齢者ら要配慮者は、伊香保温泉旅館協同組合との協定に基づき受け入れを要請――。市は、そんな3密を防ぐ手立てを用意している。
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台風19号の土砂崩れで3人が亡くなった富岡市。台風が上陸した昨年10月12日の夜は、市内22カ所の避難所に約1500人が避難した。このうち6カ所は避難者があふれ、他の避難所に移ってもらうなどした。
この教訓もあり、市は指定した避難所の他に、各地区ごとに集会所などを「地域避難所」として登録してもらい、避難者の分散を図る。今月2日から受け付け、すでに10地区から届け出があった。発熱などの症状がある人のスペース確保のため、市独自に2メートル四方の段ボールの間仕切りを30セット用意した。段ボールは高さ90センチのため、別に高さ2メートルの鉄のポールを四隅に立てて農業用のビニールを張り、飛沫(ひまつ)感染を防ぐ。
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太田市は台風19号で石田川の氾濫(はんらん)や内水氾濫などがあり、住宅計356棟が半壊と一部損壊の被害に遭った。45カ所の避難所に2769人が避難したが、利根川で氾濫の危険が高まり、浸水想定区域の避難所は途中で閉鎖。避難者976人が別の避難所に移った。一方で364人はそのまま残るなど、大混乱に。大きな課題を残した。
市は浸水想定区域内でも安全が確保できる中学校の校舎を「垂直避難」で利用したり、宿泊施設の部屋の提供を受けたり、「車中避難」できる一時的な車の避難場所を確保したり、さまざまな手段で3密回避を検討している。(柳沼広幸)
国内の感染者
+45人17513人
死者
+2人931人
退院者
+87人16235人
6/13 20:00 時点
退院者数はクルーズ船の乗客らを含めた数。厚労省などによる
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