作物食い荒らすバッタ大群、インド襲来 コロナ禍に追い打ち
2020年6月14日 07時07分
【バンコク=岩崎健太朗】東アフリカなどのバッタの猛威が南西アジアにも及んでいる。インドでは新型コロナウイルスによる農作物の価格下落に加え、大群が作物を食い荒らすなど約三十年ぶりの大規模な被害が懸念されている。国境を接する中国もパキスタンに専門家を派遣するなど警戒を強めている。
「州政府は日々拡大するコロナの感染と、各地に侵入を続けるバッタとの二重の闘いを強いられている」
インドメディアによると、パキスタンとの国境付近の西部ラジャスタン州、グジャラート州などで四月以降、サバクトビバッタの大群が確認され始めた。航空機の離着陸時に支障をきたすとして、五月末には当局が警鐘を鳴らしたほどだ。
インドでは過去にも七〜十月ごろに被害がみられたが、今回は春先から始まった。昨年、アラビア半島に降った大雨で繁殖に適した環境が整い、群れが東アフリカに移動する一方、増殖を繰り返し、イランなどを経由して南西アジアに襲来した。七月にはさらに東に進むとみられる。
政府は関係当局や州政府と対策会議を重ね、ドローンからの殺虫剤散布や夜間の撃退作戦を展開。駆除機材を増強するなど「万全の態勢」と強調するが、一部の専門家は「前例のない規模の群れに対処するための殺虫剤の散布が、水源に流れ込むなど環境への影響も十分検討する必要がある」と呼び掛ける。
インド国内では新型コロナ対策のロックダウン(都市封鎖)措置で、農作物の価格が下落。苦境に立たされている農家に追い打ちをかけている。国連食糧農業機関(FAO)は、小麦やジャガイモ、サトウキビやコメに計約五十億ドルの被害が出ると予測する。
二月に緊急事態を宣言したパキスタンも、断続的な襲来に治安部隊を動員して対応。さらなる拡大に、パキスタンやインドと接する中国も警戒を強める。「国境にはヒマラヤ山脈が横たわり、バッタは越えられない」(専門家)とされるが、中国側に殺虫剤の提供や専門家の派遣など迎撃支援に協力。FAOは「サバクトビバッタは世界でもっとも破壊的な移動性害虫。食料安全保障に甚大な被害をもたらすため、群れの制御が重要」と警告している。
<サバクトビバッタ> 体長約5センチ。数千万から億単位の群れをつくり、1平方キロあたり約4000万〜8000万匹まで繁殖するとされる。1日130キロ以上移動し、約4000万匹の群れでも1日に3万5000人分の作物を食べ尽くすという。3カ月ごとに新しい世代になり、メスは6〜11日おきに産卵する。
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