新型コロナウイルス感染拡大のニュースに押されて、すっかり忘れられてしまった観がある「キャッシュレスのポイント還元制度」。消費増税対策・インバウンド対応・キャッシュレス促進の一石二鳥ならぬ三鳥を狙った、政府主導の政策である。
2019年10月1日から2020年6月30日までの9ヵ月間が還元対象期間で、資本金5000万円以下の中小小売店でキャッシュレスで買い物すると、5%(コンビニなどのフランチャイズでは2%)のポイント還元を受けられるというものだ。
スタート当初はこの制度に参加する小売店は50万店ほどだったが、今では115万店まで増えている。制度の対象となる小売店は全国で約200万店といわれており、対象店舗は全体の半数を超えている。
ポイント還元制度は、あと半月を残すばかりとなったが、キャッシュレス決済比率の向上に一役買ったことは間違いない。その上で懸念されているのが“7月の壁”である。
7月以降、消費者へのポイント還元が終了するが、その一方で、加盟店側もクレジットカード会社に払う手数料が一挙に跳ね上がる。制度期間中、通常5〜9%程度だった手数料料率を3.25%以下に抑え、さらに政府が3分の1を補塡することで、2.17%まで引き下げられていた。しかしこれが、7月になると一気に元に戻るのだ。
このように、6月30日に還元制度が終了した途端にクレジットカード手数料が高騰してしまい、手数料料率の高い壁が小売店の前に立ちはだかることから、通称“7月の壁”と呼ばれている。加盟店の間では「7月から手数料料率が通常レートに戻って2〜3倍になってしまっては、とてもやっていけない」という声が強まっている。