給付金事業委託 疑念は深まるばかりだ

2020年6月13日 08時13分
 新型コロナ対策のための持続化給付金事業を巡り疑念が噴出している。対策自体は必要不可欠だが、所管する経済産業省の体制や運営はずさん極まる。予算執行の自覚を欠いているのではないか。
 持続化給付金事業のための予算はきのう成立した二〇二〇年度第二次補正予算にも盛り込まれた。一次補正と合わせて千六百億円以上の予算規模だ。
 この事業を担当する経産省中小企業庁の前田泰宏長官は二〇一七年、イベント出席のため米テキサス州に出張。その際、会場近くのアパートでパーティーを開き、そこに電通社員が参加していた。その社員は現在、事業を請け負った一般社団法人サービスデザイン推進協議会理事を務める。
 一連の事実関係は経産省側も認めている。ところが梶山弘志経産相は国会答弁や会見で「国家公務員倫理法上の問題はないとの報告を受けた」と述べた。処分を行わない方針も示している。
 この問題についての綿密な調査は行われていないはずだ。にもかかわらず、問題視しない姿勢を早々と示したことは理解に苦しむ。
 持続化給付金事業を巡り、何重にも及ぶ外注の連鎖など経産相も把握しきれない実態が浮かび上がっている。入札の際、企業の規模や事業への対応力を示す資格の等級が上だった業者が落とされ、同協議会に決まった、との指摘もある。協議会は法律が義務づける決算公告もしていなかった。
 一方、給付対象である中小企業の経営や個人事業主の生活は悪化の一途をたどっている。審査の遅れを訴える声も相次いでいる。
 業者との密接な関係が、入札の公平性に影響することはなかったのか。対応力を考慮しないずさんな委託が、給付の遅れを招いたのではないか。
 事業の陣頭指揮を執る官僚が国民の疑念を招く行為をしていたことは見過ごせない。実態を徹底解明した上で、処分を判断するのが筋だ。疑念が残る以上、いったん職務を外れるべきではないか。
 新型コロナ対策の巨額予算の財源は税金と、財政上リスクがある国債だ。国民がその予算執行を認めるのは、公平な仕組みで窮地に陥る人々に予算が届く前提があるからだが、疑念を招く今回の行為で、前提は崩れつつある。
 疑念が残る以上、不問に付すわけにはいかない。政府は第三者による調査で実態を明らかにし、国民に説明すべきだ。それが事業継続の大前提である。

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