コロナ禍、受難の名ばかり事業主 「休業補償ゼロ」トラブル続出
2020年6月13日 14時08分
実態は企業の指示下で働く労働者なのに個人事業主として働かせる「名ばかり事業主」の弊害が、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で露呈している。ヨガ教室大手の「ヨギー」(東京)の講師らは十二日、東京都内で記者会見し、休業中の補償が支払われていないとして、近く東京都労働委員会に救済を申し立てると表明した。ヤマハグループの英語教室や、ホテルチェーンでも個人事業主の立場で働く人が休業補償の支給などを会社に強く求めている。
ヨギーは講師約三百人を抱え、全国二十三店舗を展開する。労働組合「yoggyインストラクターユニオン」によると、緊急事態宣言に伴い四月から五月にかけて全クラスが休講となった。
だが講師らは個人事業主として会社から業務委託を受けて働いているため、会社側は「手当を支払う必要はない」と主張。休業補償を払わなかった。六月にクラスは一部再開したが、その数は半分に減り、特に労組の幹部四人については担当クラスがゼロに減らされ、収入もゼロになった。
組合は「指導は会社の指示通りに行っており、実態は労働者だ」と強調し、会社側は労働基準法が義務付ける休業手当を支払うべきだと主張。さらに組合幹部から仕事を取り上げるのは「組合つぶしを狙う不当労働行為だ」と指摘した。会社側は「ユニオンとは誠実に交渉してきたので遺憾」と述べた。
ヤマハの子会社が運営する英語教室でも講師は個人事業主の扱いで、一部の教室は二月末以降に休業したが、少額の見舞金が出ただけ。子会社は来年度中に講師らを雇用契約に切り替える方針を示したが、千二百人の講師のうち何人が対象になるかは未定という。
企業が社員として雇うのでなく、個人事業主として働かせるのは社会保険に加入する必要がない上、残業代も払う必要がなく、人件費負担が軽減できることが大きい。だが企業負担が軽くなった分、働き手の生活不安は大きくなっている。
連合によるとコロナの影響による業績悪化で正社員をいったん退職させ、個人事業主に切り替える「禁じ手」に出る企業もある。だが労働問題に詳しい川上資人(よしひと)弁護士は「個人事業主を安易に使うのは問題。企業は実態に合わせて雇用契約に切り替えるのが筋だ」と主張する。 (池尾伸一)
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