もやし炒めは難易度が高いと思われていますが、要点をつかめば難しくありません。水っぽくなるのを防ぐには2つのことを守りましょう。一つは〈加熱しすぎない〉こと。もう一つは〈調味料を最後に加える〉ことです。
今回の工夫はもやしの表面の水分をあらかじめ飛ばしておくこと。もやしだけでは味が頼りないのでえのきを混ぜました。えのきの食感が加わることで、もやしの意外な美味しさを発見できるはず。
豚肉…100g~130g
醤油…大さじ1/2
もやし…200g
えのき…1パック
中濃ソース…大さじ2
1.もやしはバットなどに広げ、ラップをかけずに冷蔵庫に2時間以上(一晩でも可)入れ、表面の水分を飛ばす。豚肉は一口大に切り、醤油で下味をつける。えのきは硬い軸の部分を切り落とし、手でほぐす。
2.フライパンにサラダ油小さじ1程度(分量外)を敷き、中火にかける。豚肉を入れて、箸でさばきながら火を通す。全体がほぐれたらもやしとえのきを入れて、全体に広げる。
3.触らず3分間、中火のままで火を通す。フライパンを観察すると蒸気が減ってくるので、底に焦げ目がついているかを確認する。えのきに焦げ色がついていれば中濃ソースを加え、ざっくりと和え、器に盛り付ける。好みで青海苔をかけてもよい。
冷蔵庫の意外な使い方
炒めものは水分のコントロールが鍵です。よくある失敗は加熱しすぎです。加熱しすぎると野菜から水分が出てきてしまうので、ベチャベチャした仕上がりになってしまいます。
以前『野菜炒め』を作ったときは、キャベツやもやしを湯通しすることで加熱のしすぎを防ぎました。湯通しには火を通す以外にももう一つ、野菜の温度をあらかじめ上げておく、という効果がありました。冷蔵庫から出したての冷たい野菜を一気に入れると、フライパンの温度が下がります。結果として加熱時間が余分にかかり、水っぽくなってしまいますが、それを防ぐことができます。
湯通しは便利ですが、野菜の味が若干抜け、焦げ色がつきにくい、という弱点もあります。そのため、今回のもやし炒めではまったく別のアプローチをとりました。あらかじめもやしの表面の水分を飛ばしておくのです。
やり方はザルやバットにもやしを広げ、冷蔵庫に入れておくだけ。(もやしは清浄された状態でパックに詰められているため匂いがある場合をのぞき、洗う必要はありません)
冷蔵庫は当たり前の存在すぎて、使い方があまり知られていません。冷蔵庫と一言で言っても、なかは「冷蔵室」(約2℃~6℃)「チルド室」(0℃~2℃)「野菜室」(3℃~8℃~)「冷凍室」(約-20℃~-18℃)などに分かれています。
気をつけるべきは「野菜室」の使い方です。野菜室に入れる野菜はトマトやきゅうり、なすやピーマンなどの寒さに弱い野菜。寒さに強い大根やニンジン、ごぼう、キャベツやほうれん草などの葉物は野菜室ではなく、冷蔵室で保存したほうが長持ちします。(葉物の一つであるレタスだけは例外で5℃が適した保存温度なので、野菜室です)
0℃に近い温度が適した野菜もあります。例えばブロッコリーなどの花の蕾を食べる野菜やきのこ類などはチルド室で保存すればかなり持ちます。さて、もやしはどうでしょうか? もやしのような芽の野菜は成長を抑えるために温度が低いほうがよく、かといってチルド室では凍ってしまう恐れがあるので、冷蔵室が正解です。
野菜の保存にはもうひとつ、湿度が重要になってきます。植物が生き伸びるためには水分が必要だからです。冷蔵庫のなかは乾燥しているため、保存用のビニール袋に入れた状態で保存するのがセオリーです。
今回の調理法では乾燥した庫内の状況を利用し、もやしの水分を飛ばしました。そうすることでもやし炒めが水っぽくなりません。その理由は前回の野菜炒めと同様、フライパンの温度にあります。
水を蒸発させるにはたくさんのエネルギーを使います。水を0℃から100℃に温めるのに費やしたエネルギーの約5倍が必要なのです。実は蒸気機関車はこの原理を利用して動いているわけですが、あらかじめ素材の表面の水を減らせばそれだけ効率よく加熱することができる、というわけ。野菜をザルに上げた状態で冷蔵庫に放置し、水気をしっかりと切るのは大量調理する料理店などでも行われている手法です。
もやしとえのきを入れたら底に焦げ目をつくるように加熱します。かき混ぜるとフライパンの温度が下がるので、豚肉を野菜の上に置いたら触らないこと。そうすれば底は焼いたように上は蒸したようになり、上手に火を通すことができます。また、調味料を加えると野菜から水が出てくるので、味付けは最後に。
ソースを入れたらあとはスピード勝負です。ざっくりと和えて、器に盛り付けましょう。ソースを使わず塩だけで味をつけてもいいでしょう。その場合はたっぷりと黒胡椒を加えると風味がでて、よりおいしく味わえます。