cakes読者のみなさま、こんにちは。
長く濃密な自粛生活を経て、新しい生活へ少しずつ脱皮中。ゆっくりと、対面の取材や打ち合わせを再開しています。しかし、最近はマスクが暑くてつらい。猛暑になったら、マスクどうしたらいいんだろう。こんな悩みも、新しい生活の一部ですね。
振り返ると、家に籠って内省する時間が増えた一方で、忙しさゆえにある意味無自覚に関わってきた社会を、俯瞰して見るいいきっかけにもなりました。常に留まることなく流れていた大河の水を一度完全に抜き、結果、川底に溜まっていたものが露呈したような、そんな感じ。で、その結果、気づけたこと、気づいてしまったこと、あるいは気づかないふりをしていたけどもう隠しきれなくなったことなどが、たくさん出てきました。身近なことなら、例えばハンコとか、通勤とか、形式的な会議とか、毎日してるメイクとか、機能していない政界の様子とか。それってなくても困らない、別の方法でいけるんじゃん、などなど。メイクにいたってはしばらくしていなかったので、久しぶりにビューラーでまつげをぐいと上げたら、やけに新鮮な道具に感じました。そして改めて、メイクって本当に面倒です。首突っ込んだら5秒でメイク完了するボックスとか、誰か考えてくれないかな。
一方で、今まで当たり前に思っていたけれど、本当はもっと感謝すべきだったというものもたくさん確認できました。私の場合、そのひとつが学校の給食。子どもの表現を借りれば、給食、まじ神。娘の通う小学校は今週から給食が再スタートしたのですが、本当に、このシステムがどれだけありがたいことか。給食制度を構築し、物理的に関わり維持してくださるすべてのみなさまに、感謝してもしきれません。改めて給食の献立表を見直すと、その豊富なおかずバリエーションはもちろん、栄養面、カロリーバランスまで、なんと細やかに計算されていることよ。学校に給食があることで、子どものみならず、親の心身の健康までも保たれているということがよく分かりました。そんなわけで、家で1日3食作りながら仕事するという過酷なクッキングマラソンも、とりあえず仮ゴール。ああ、給食に関わるみなさま、これからもどうぞよろしくお願いします。何か手伝えることがあったら、いつでも連絡してください、本当に。
そして、気が付けば6月。いつの間にか東京も梅雨入りして、夏が始まってます。蒸し暑くなってくるこれからの時季は、私的にはポルトガルの緑のワイン、ヴィーニョ・ヴェルデの季節でもあり。毎日夕方6時になると仕事のパソコンをそそくさと閉じ、冷蔵庫で冷えたボトルから1本選んで適量グラスに注ぎつつ、グラスに張り付く細かい泡を愛でながら喉を潤すのが、夏の夕刻の小さな儀式です。これから夏が終わるまで、ヴィーニョ・ヴェルデをほぼ毎日飲む私。ということで、この連載でも夏の間、おすすめのヴィーニョ・ヴェルデと、それに合う料理をご紹介していこうと思います。
ところで。ポルトガルでは、6月といえばイワシです。首都のリスボンでは毎年6月12日、13日が聖アントニオ祭、別名イワシ祭で、通りには巨大な炭火焼コンロが並び、塩をたっぷりふったイワシをじゅーじゅー焼いてパンに乗せ、イワシをサンドにして歩きながら食べたり、あるいは通りにテーブルを出し、皿にイワシの炭火焼と茹でじゃがいも、グリルしたパプリカを添え、赤ワインと楽しむ人々が町中に溢れます。そう、イワシの炭火焼には赤を合わせるのがポルトガルの常識。イワシの濃い脂には赤なのさ。お前さんが飲んでるヴィーニョ・ヴェルデの白より赤の方が合うから、ほらこれを飲め、と、レストランで知らない人に勧められたこともあります。今年はこの状況ゆえに祭りは中止だそうですが、せっかくなので今回は、イワシ祭り気分になれるイワシサンドを紹介します。ちなみに、せっかく赤を勧められた私ですが、やっぱり東京に帰ってくると、イワシには白を、それもヴィーニョ・ヴェルデを合わせたくなるのでした。おじさんごめんよ。
そして、6月と言えばヴィーニョ・ヴェルデのほかにあともう一つ。実山椒の季節でもあります。実山椒が出回る時期はほんの一瞬。まさにいま。だから売り場で見かけると、ついつい逃してはならぬと緑の小さな実に手が伸びます。実山椒は梅より仕込みも簡単、というか、茹でて水にさらすだけ。すぱーんと切れのいい辛さや爽やかな青い風味が、じめじめを吹き飛ばしてくれます。ちょっと加えるだけで酒を呼ぶ味にもなるので、重宝。これからの季節、たっぷり仕込んだ実山椒でいろいろ楽しみたいので、今回は実山椒の下処理の方法と、実山椒を加えたイワシサンドをご紹介します。
では、パパッと作っていきましょう。
Menu do dia 本日のメニュー
材料(2人前)
バゲット 適量
じゃがいも 2個
オイルサーディン 1缶
玉ねぎ 1/4個
実山椒 小さじ2
レモン 1/2個
にんにく 1片
オリーブオイル 大さじ2
白ワインビネガー 大さじ1
塩 適量
つくり方
まずは実山椒の下ごしらえから。といっても茹でるだけです。新鮮であるほど香りも辛みも鮮烈ですので、買ったらすぐに処理すること。週末に買ってきて、のんびり作業するのがおすすめ。
まず、軸から実を外す。ここがちょっとだけ手間。私は50gの軸取りで20分かかりました。終わるころには指先が凄くいい香りになるので、案外この作業、癒し系かも。
実を軸から外したらしっかり水洗いし、たっぷりのお湯で8~10分ほど茹でる。指で簡単につぶせるぐらいが目安。
茹でたら1時間ほど水にさらし、途中で何度か水を変えてアクを抜きます。味見は必ず。食べてみてちょうどいい辛さならざるに上げ、ペーパーなどでしっかり水分を拭きとり、煮沸殺菌した保存容器へ詰めて冷凍。これで1年間、いつでも実山椒が楽しめます。お茶漬け、刺身、冷奴、納豆、混ぜご飯、パスタ、肉料理のソースにもできます。揚げ物に加えてもいい。気の利いたいい仕事をしてくれる、和のスパイスです。
では、イワシのサワーサンド作りへ。ボウルにワインビネガー、オリーブオイル、レモン汁1/4個分、すりおろしたにんにく、塩を入れ、よく混ぜてドレッシングをスタンバイ。残りのレモン1/4個分は薄切りに。
玉ねぎは薄切り、じゃがいもは皮をむいて4等分し、水から茹でたら鍋中で軽くつぶして小吹きの状態になるまで水分を飛ばす。玉ねぎ、じゃがいも、レモンの薄切りをドレッシングのボウルに入れ、軽く和えたらオイルサーディンをほぐしながら和え、実山椒を散らす。
これでイワシとじゃがいもの実山椒サワーサラダの完成。イタリアンパセリがあれば、刻んで加えるとさらに香りが層になり、風味豊かになります。そして、ちょっと待てる人は冷蔵庫でしっかり冷やす。これでさらに味が染み、実山椒の香りもふんわり乗って、申し分のない冷たいつまみになります。なんたって、ワインが進みますから。
これを香ばしいバゲットにたっぷり挟めば、実山椒とイワシのサワーサンドの出来上がり。
さてさて、このサンドに合わせるヴィーニョ・ヴェルデはどれにしようかな。
ちなみにヴィーニョ・ヴェルデとは、ポルトガル北部のミーニョ地方で作られている緑のワインのこと。緑の意味はワインの色ではなくて、フレッシュネス、つまり若々しさや、産地の緑深い土地柄を反映したりしています。しゅわっと柔らかい微発泡の飲み口が特徴ですが、中には発泡しないじっくりうま味を感じるタイプもあります。しっかりした酸、柑橘のような爽やかな印象の果実味が持ち味。淡白な味わいの肉や魚、香ばしい揚げ物などと特に相性よしです。
で、今回合わせるヴィーニョヴェルデは……
ポルトガルでは昔から親しまれている老舗ブランドのひとつ、「ガタオ」の白です。ガタオ=大猫という意味で、ラベルには代々、猫の絵が描かれています。最近、モダンで可愛らしいラベルデザインに変更になりました。しゅわしゅわと微発砲で軽やか、実際にアルコール度数は9%とかなり低め。レモンやライムなど柑橘系の爽やかな香りと心地よい酸で、休日の昼からビール代わりにくいくい開けるのにぴったりです。
それでは、祭り気分を味わえる実山椒入りイワシサンドと、爽やかでシュワシュワのヴィーニョ・ヴェルデの白で、良い週末を!