夜中に突然、発疹と息苦しさで入院した広告ディレクター・佐藤尚之さん(57)。アレルギーのアナフィラキシーショックの原因は魚介に寄生するアニサキスでした。「一生魚を食べられないのか」。食に関するブログや著作もある「さとなお」さんの体験を紹介します。
鏡に映った顔は真っ赤で、かゆみを感じて服を脱ぐと、全身に発疹ができていた。気管から「ヒューヒュー」という音がする。広告ディレクターで、講演やグルメ記事なども手がける佐藤尚之(さとうなおゆき)さん(57)は今年3月24日午前3時すぎ、気持ち悪くて目が覚めた。
前夜、観劇後に妻や知人たちと東京都内のイタリアンレストランで夕食を楽しんだ。仕事で様々なプロジェクトを同時に抱えて疲れていたが、起きたのはベッドに入ってわずか2時間後だった。
食べた物はもどしてしまった。「何かにあたったかな」と考えたが、息苦しい。妻を起こすと、様子がおかしいと察したのか「すぐに病院に行った方がいい」と電話をかけ始めた。最初の病院には「その症状では診られる医者がいない」と断られた。次にかけた東邦大医療センター大森病院(東京都大田区)が受け入れてくれることになり、タクシーで向かった。
午前4時半、病院で測定した血圧は上が74、下が51と低かった。病院スタッフが「すぐ車いすに」と声を上げ、救命救急センターに運ばれた。ベッドに寝かされた時には意識がもうろうとしていた。
医師は、何らかの重篤なアレルギー反応「アナフィラキシーショック」と診断。ショックへの対処として太ももにアドレナリンを注射した。鼻に管を入れて酸素吸入をしながら、点滴や薬の投与を続けた。佐藤さんはようやく自分が危ない状況だと理解できた。夢の中のような感覚に包まれながら「これが死ぬってことかな」と思ったことを覚えている。
目覚めたのはその数時間後。かゆみは治まり、何事もなかったかのように楽になっていた。「入院しました」と、SNSに投稿する気持ちの余裕もできた。
ただ、なぜこんな状況になったのか、気になった。一緒に夕食をとった妻は「胃が痛い」と訴えていて、魚に寄生する線虫「アニサキス」の食中毒「アニサキス症」の症状のように思えた。だが自分は重いアレルギー反応だった。何が原因なのか。退院翌日、皮膚科で検査を受けることにした。
アニサキスが原因でショックが起きたとは、この時は思いもしなかった。
拡大するアニサキスアレルギーになった佐藤尚之さん。アナフィラキシーの時に自分で注射するエピペンを手にする
血圧低下などを伴う重いアレルギー反応「アナフィラキシーショック」に見舞われた広告ディレクターの佐藤尚之さん(57)は3月25日、東邦大医療センター大森病院(東京都大田区)を退院した。
翌日、同病院の皮膚科で、血液を採取してIgE抗体の量を調べた。どのアレルゲン(原因物質)に反応しているのかつかむためだ。食べ物が疑われたので、入院の前夜に夕食をとったレストランに食材を問い合わせ、昼食分と合わせて伝えた。卵白、卵黄、牛乳、牛肉、エビ、サバ、トマト、タンポポ属、アサリ――。
念のため魚に寄生する線虫アニサキスを加えた。一緒に夕食をとった妻と知人の女性が、胃痛や吐き気といった食中毒の「アニサキス症」とみられる症状になっていたからだ。「普段食べないタンポポかな」「魚のアレルギーだと嫌だな」などと考えながら、原因と疑われる食材を避けて過ごした。
4月11日、病院で検査結果を…
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