UWF、UWFインターナショナルで活躍した元プロレスラーの宮戸優光氏(57)がプロレスラーの中野巽耀(54)の著書「私説UWF 中野巽耀自伝」(辰巳出版刊)で名誉を著しく損なわれたとして中野と同書の編集人の佐々木賢之氏に対して5月27日に名誉毀損(きそん)で神奈川県警に告訴状を提出したことが分かった。
宮戸氏は、今回の告訴についてスポーツ報知の取材に応じ、同書で書かれた自身に関するすべての記述を意図的な誹謗(ひぼう)中傷と判断し、今年3月に自身の代理人を務める中山雅雄弁護士に相談し告訴状の提出に至ったことを明かした。
一方、同書を出版した辰巳出版は「詳しい事はお答えできませんが、宮戸様には誠意をもって対応させていただきます」とコメントした。
宮戸氏は1985年9月にUWFでデビューし、91年1月にUWFが解散すると同年5月にUWFインターナショナルに参加し活躍。95年9月に引退し、その後は、英国出身の伝説的レスラー、ビル・ロビンソン氏をヘッドコーチとして招聘(しょうへい)し99年から東京・高円寺に格闘技ジム「UWFスネークピットジャパン(現C.A.C.Cスネークピットジャパン)」を設立。現在も同ジムでプロレスと格闘技の普及に努めている。
中野は、84年8月にUWFでデビューし、宮戸と同じようにUWF解散後はUWFインターへ参加。96年に同団体を離脱後はさまざまな団体に参戦し現在も現役でリングに上がっている。
同門の先輩である中野について宮戸氏はUWF時代から「当時気に入らないことがあったとしても、30年もたって人を社会的におとしめることを好き勝手に言うのは、見過ごす事ができなかった」と告白し「私は、誹謗中傷に対して同じような汚い言葉で返そうという気持ちは毛頭ありません。ただ、彼は、悪口を書籍化して出版することを当たり前のようにやっているようですが、こういうことをやったら社会のなかでどうなるのかということを法に問いたい」と明かした。
さらに宮戸氏は、現在のプロレス界への問題提起も今回の告訴に至った背景にあることを語った。
宮戸氏「今、プロレス業界は、ここ数年にわたって、いろんな雑誌、書籍、You Tube、トークショーで誹謗中傷、侮辱、悪口があふれています。ある意味、それが当たり前の業界になっていて、冷静になって考えるとひどい状況だと思います。
こういった書籍、出版物である種の悪者が作り出され、それを読んだ読者、トークショーの来場者、動画の視聴者がSNSで悪者にされた人を誹謗中傷するネガティブな連鎖が実際に起きています。
さらに言えば、今、出版業界が厳しいと言われている中で、裏話と称する誹謗中傷や悪口を書けば売れる風潮が出来上がって、悪口を『言ったもん勝ち』みたいな感じになって、黙っていたほうは、そのまま悪役になる業界になってしまっています。他のスポーツでも芸能界でも、同じ選手同士やタレント同士が悪口を書籍化してビジネスになるような業界は他にはありません。自分が好きで長く関わってきたジャンルがまともな世界になっていないことが情けないんです。これは私だけの問題じゃありません。他にもプロレス界で一時代を築いた先輩方で好き放題に書かれて、言われている方がたくさんいらっしゃいます。悪口を言った人間がすごいって言われて、黙っていたら悪者みたいな常軌を逸している世界は悲しい限りです。ですから、繰り返しになりますが、こんなことをして社会的に許されるのかという思いで法に問いました」
中でも宮戸氏は、自身が所属してきたUWF、UWFインターナショナルに関する書籍は見過ごすことはできないという。
宮戸氏「この何年間のUWF関連の本は、見るのも嫌なぐらいで、実際に最近は目を通していませんが、その書籍の中で当時、私との間で気に入らなかったことがあった人間にいろいろなことが書かれ、それを読んだ読者がSNSに私へのひどい中傷を書き込むことが現実になっています。
これまで黙っていたのは、決して言われたことがその通りだからではありません。この年になって30年以上前にいろいろあった人たちと今また中傷合戦のようにはなりたくなかったからです。しかし、今回またこれだけのことを好き勝手に書かれて考えが変わりました。私の名前を汚されることはビル・ロビンソン先生、私を慕ってくれる人、家族も汚されることになります。このようなことが一般社会で通用するのか?法に問いたいと思います。ですから、告訴はこれだけじゃ終わらない可能性もあります。他の書籍も全部あらためて見直したい気持ちもあります。今後も書籍、雑誌、ムック、トークショー、ユーチュ-ブで発信源になって、私の名前を汚されたものに関しては、法的にどうなるのかを問いかけるつもりです」
今回の告訴について中山弁護士は、問題の書籍は「宮戸さんの社会的評価を低下させることを意図的に狙ったというほかない悪意に満ちた記述が多数に上りますが、特に問題としている記述は、明白な名誉毀損であり、違法性や責任を阻却する事情は見当りません」と指摘し、すでに中野と編集人の男性に対して、宮戸氏の名誉回復措置と慰謝料の支払いを求めた通知書を送付したことを明かした。
また、中野だけでなく編集人も告訴したことは「編集人という立場は、書かれた内容が名誉毀損にあたるかどうか当然チェクすべき立場にあります」と説明し、今後、刑事告訴だけでなく民事訴訟の提起も視野に入れていることを明かした。