@chablis777
シャブリ

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(三郎)おめえに承諾してもらいてえことがあんだ。
(畠山)何だ? 昨日の威勢はどうした?
(浩二)畠山さんに言われてから改めて考えてみたんです。僕… 本当は何でもいがった。
見返すことができんなら。
(畠山)見返すって誰を?
親父や兄貴。
いや… 世の中にですかね。
音楽の才能がある兄貴と違って俺には何にもねがった。
だから 親父から 店 任された時うれしかったんです。けど… 結局 店 閉めることになって…。
どんな家族にも 割を食うやつはいる。
俺だって 虫なんか大嫌いなのにお蚕様と30年だぞ。
役場入って うちみたいに潰れた商売人や農家が大勢いることを知りました。福島 出てった人も少なくねえ。
だから 残された俺たちにできっことをと思って りんご栽培 提案したんです。
(畠山)ほい。なかなか よく調べてあるじゃねえか。
えっ… 読んでくれたんですか?
いっちょ やってみっか。えっ?
まだ隠居するのも早えしよ。
これからの人生 何か新しいことに挑戦すんのも悪くねえ。
本当ですか?ただし… 補助金が出るならだ。
必ず 取り付けます。
…なら お前 しけた面してねえでさっさと上の者 連れてこ。
ありがとうございます。
(音)裕一さん。
(裕一)ありがとう。これでよかった?
大丈夫。
これで父さんに聴かせてあげられる。うん。
ありがとう。
父さん 入るよ。
父さん? …父さん!
(華の泣き声)父さん! 音!
お医者さん 呼んで! 母さん… 母さん!
父さん?
父さん…?
(まさ)今 お薬で眠ってる。
医者は何て?
このまま逝っても おかしくないって。
無理ばっか しやがって…。
こんなことなら もっと ちゃんと病気のこと話しとけばよかった。
父さん 知ってたよ。
自分が長くないこと。えっ?
痛みが出るたんびにね…こうやって 噛んで我慢してたんだって。
バカだ… バカだ 父さん。
だったら… 文句の一つぐらい言えよ。浩二…。
俺 だます気だったのかって怒れよ。
(まさ)浩二!(浩二)何 かっこつけてんだよ…。
代わるよ。
父さん…。
いつも 僕の味方だったよね。
周りに何言われても…かばってくれた。
まだ… 全然 恩返しできてない。
お願いだからさ…。
だから… 何だ?
えっ?
化けもんじゃねえぞ。
父さん… 父さん…。
と… と… 父さん 起きたよ!父さん 起きた!
父さん…。父さん? 父さん?
おめえ 帰ってたのか。
とっくだよ。おとうさん 3日も寝たままだったのよ!?
私 お医者さん 呼んできます。あ~ あ~…。
浩二と2人にしてくれねえか。
浩二…。うん?
おめえにはさんざん迷惑かけて悪がったな。
何だよ… 気持ち悪い。
店 継いでくれた時は…腹の底から うれしかった。
本当は 兄ちゃんの方がいがったろ?
ハッ… バカ言え。
あいづは音楽しか能がねえんだから。
俺… 2人が音楽の話するのがずっと嫌だった。
全然 話題に入れねえしさ。
音楽があったからあいづと話ができたんだ。
浩二とは 何がなくても言いてえこと言い合ってきたべ。
なっ? ハハッ。うん。
いいか? 浩二。うん?
俺が死んだら… 喪主は おめえだ。
喜多一を継いだやつがこの家の主だ 家長だ。
この家も土地も 全部 おめえが引き継げ。
喜多一の土地と家全部 浩二に譲らせてくれ!
おめえは古山家の長男だ。 けど 俺は喜多一を継いでくれた浩二にやりてえ。
それぐれえしかあいづにしてやれることがねえんだ!
いや… もちろんだよ 父さん。父さんの好きにして。
本当か!?
ちゃんと承諾取ったから。
母さんのこと… 頼んだぞ。
聞いてんのか?
聞いてるよ。
何だよ… 口約束ばっかし…。
だから だまされんだよ。
おめえは だまさねえ。
分かんねえぞ。
長生きしねえと 何すっか分かんねえぞ。
フフフフ…。笑い事じゃねえって。
俺のこと ちゃんと見張ってろよ。
もっと…もっと長生きしてくれ。
生きてくれ…。
おめえ… いいやつだな。
(泣き声)
おめえらのおかげで… いい人生だった。
ありがとな。
父さん…。ありがとう。
♪~(ハーモニカ)
その夜三郎は安らかに息を引き取りました。
世話になりました。
いつでも帰ってきてね。はい。
華ちゃん また来てね。
(鳥の鳴き声)
兄ちゃん…。
俺 りんご やんだ。
うまいの出来たら 送るよ。
ありがとう。 浩二 元気でな。
うん。母さんもね。
喜多一を出た裕一はあの人のところへ やって来ました。
(せきばらい)お… 伯父さん あの…お… お花 ありがとうございました。
(茂兵衛)行かなくて悪いな。どうせ あの世で会えっから。
アハハハ…。いえ… あっ。
ち… 父の生前は ご心配やご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
と… というより あの…僕が 本当に身勝手で伯父さんの期待に沿えなくてご… ごめんなさい。
(茂兵衛)いいだろう? この曲線。
本当は ずっと これがやりたかったのよ。
没頭できるってのは いいことだな~。ちっとも飽きねえ。
好きなことだけで飯食えるやつなんざ一握りだ。
せいぜい気張って かみさんと子どもに苦労かけるんでねえぞ。
はい!(茂兵衛)うん。
ほれ… 夫婦茶わんだ。 持ってけ。
あっ…。ありがとうございます。ありがとうございます。
あれ? これ…。あの これ どっちがどっちですか?
どっちですか? これ…。(茂兵衛)見れば 分かっぺ!
ハハハハ…。フフフ…。


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