『持続化給付金』問題はどこに?記者が解説[2020/06/11 23:30]
持続化給付金めぐる“問題点”について、経済部の梶川幸司記者が解説します。
※委託の構図について
経済産業省から『サービスデザイン推進協議会』に委託された後、協議会から電通に金額にして97%を再委託し、業務の内容ごとに電通からグループの子会社に外注。さらに、外注されていて、野党が「丸投げ」「中抜きではないか」と批判しています。業務を民間に委託すること自体は問題ありません。今回、指摘されているのは、業務を請け負った事業者が、さらに別の事業者に業務を委ねる“再委託”の問題です。一般的に、再委託や外注が重なると、どの企業がどんな業務を担っているのか見えずらくなり、税金が効率的に使われているのか検証が難しくなります。つまり、無駄なコストが生じてしまう恐れがあります。
2006年に、当時の谷垣財務大臣が、各省庁に事業を丸ごと“一括再委託”することを禁止するという通知を出しています。しかし、例外があります。“合理的な理由”がある場合は、可能となります。経産省は「2兆円を超えるお金を迅速に配る」「オンライン申請で実施」するためには、実績のある事業者に委託することは“合理的な理由”があるとして、97%の再委託であっても「ルール上、許される」としています。ただ、こうした再委託が許される場合でも、全体像を把握してなければならないという決まりがあります。ところが、経産省が、電通の子会社から先の下請けまでを含む全体像を把握したのは、8日のことでした。経産省は、全体像をきちんと把握できているのかという疑念を招く形となっています。
※入札の経緯について
今回、一般競争入札にかけられ、競合する側の入札の予定価格や入札価格を「黒塗り」でしか開示せず、果たして適正に入札が行われたのか、検証が難しくなります。また、サービスデザイン協議会は、2016年の設立以来、法律で義務付けられている財務状況の公表「決算公告」を最近まで出していませんでした。経産省は財務状況も確認せずに「なぜ業務の委託を判断できたのか」「何か裏があるのではないか」と、別の疑念を招くことになっています。経産省は「費用は終了後に精算して、無駄な支出はさせない」としていますが、国民の批判の高まりを受けて、梶山大臣は今週に入って、再委託先や外注先も含めて、外部の専門家を入れた「中間検査」を行うと表明しました。異例なことで、火消しを迫られた形といえます。
※持続化給付金の支給について
持続化給付金の受付を始まった5月1日、2日に申請があった約28万7000件のうち、11日時点で約1万件超が“未支給”となっています。その理由について、経産省は「二重申請など不備があったから」など、申請する側にトラブルがあったためとしています。しかし、申請した側だけに問題があったのか、外注に外注が重なると、問題点があった場合に、見いだすのは難しくなります。ある専門家は、「業務を執行できるか、目詰まりが起きないのか、経産省が事前に全体像を把握、チェックすべきだった」と指摘しています。