中部企業の雇用、9年ぶり「過剰」超 車や鉄鋼、窯業で
新型コロナ・中部の衝撃

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2020/6/11 19:30

中部の雇用情勢が急速に悪化している。東海財務局が11日発表した2020年4~6月期の愛知、岐阜、三重、静岡県の法人企業景気予測調査によると、不足感が続いてきた雇用は一転、東日本大震災直後の11年4~6月期以来、9年ぶりに「過剰」超となった。新型コロナウイルスの流行で生産が低迷する自動車や鉄鋼、窯業の落ち込みが大きかった。

製造業は厳しい事業環境にある(愛知県安城市のデンソー工場)

4県に本社を置く1403社に5月15日時点の状況を調査。回答を得た1056社で、直前の1~3月期と比べた雇用の過不足感を示す従業員数判断指数がマイナス5.5に落ち込んだ。マイナス幅が大きいほど雇用の過剰感が強い。

中部は14年ごろから人手不足の傾向が強まり、同指数も18年1~3月期に35.3と直近のピークを付けた。中部にはグローバル企業が集積し、業績は世界景気の影響を受けやすい。コロナ禍の世界同時不況で中部の雇用情勢は転換点を迎えた可能性がある。

中でも製造業で人手の過剰感が出始めた。指数は35.8ポイント悪化のマイナス18.3。業種別では車を中心とした輸送用機械がマイナス37.5、落ち込み幅は木材・木製品に次ぐ52.2ポイントに達した。

トヨタ自動車は多目的スポーツ車(SUV)の「RAV4」を生産する高岡工場(愛知県豊田市)の一部ラインを除き、6月も国内は週休3日の操業とする方針だ。部品を納めるサプライヤーにも余波が広がっている。

セラミック関連などの窯業・土石は46ポイント悪化のマイナス24.1、鉄鋼は10ポイント悪化のマイナス14.3だった。

非製造業は27.5ポイント悪化の3.6。人手不足に直面する業種の代表格だった外食などのサービスや卸・小売りが雇用の「過剰」超に転じた。

規模別では大企業から中小までいずれもマイナスだった。プラス圏を維持した全国と比べても悪化が目立つ。

東海財務局の聞き取りでは「4月中旬以降、従業員の約半数を日替わりで休ませている」(輸送用機械)、「臨時休業や営業時間の変更で不足していた従業員が過剰気味になった」(サービス)、「工場の稼働率低下で人員の過剰感が強まっているが、今後の需要回復に備えて雇用維持に努める」(生産用機械)といった声があった。

同時に発表した景況感を示す判断指数は全産業で39.9ポイント悪化のマイナス61.8だった。比較可能な04年以降では、リーマン・ショック直後の09年1~3月期(マイナス62.3)以来の低い水準だった。

(湯浅兼輔)

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