2020-06-08 10:15:11
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香港をめぐる虚報について その3 (すこしだけ書き加えました)
A.【記事を一読しただけで浮かぶ、奇怪な諸点 2】
▼次に、記事本文です。
記事には「香港への国家安全法制の導入を巡り、中国を厳しく批判する米国や英国などの共同声明に日本政府も参加を打診された」とあります。
しかし、いつ、どこで、どの国の誰から、どのように打診されたかが、全くありません。
報道記事には不可欠の要素が一切ないのです。
そのあとに「拒否していたことが6日分かった」とありますが、これも、いつ、どこで、日本政府の誰が、どのように拒否したのかが、またしても一切ありません。
▼共同通信記者出身のぼくは、最初、これはいわゆる「リード」であり、この記事は長くて、あとの方にその不可欠の具体的な要素が出てくるのかなと思いました。
実は、もしもそうであっても、それ自体が通信社の記事としては落第なのです。
かつて虎ノ門ニュースに参加していたころを思い出してください。ぼくが解説するために使うニュース記事は、すべて番組側が用意した共同通信の記事でしたよね。
そのために、通信社記事の「逆三角」という原則について、何度かお話しする機会がありました。
通信社は、その記事を直接、読者に届けるのではありません。いわば中間業者です。ぼく自身は新人時代、おのれで工夫して名刺の裏に「共同通信はニュースの卸問屋です」と刷り込んでいました。
共同通信の場合は、共同通信に加盟している新聞社や、共同通信と契約している放送局などに記事を配信します。Yahooニュースのようなネット上のメディアにも契約に基づいて配信します。
それら新聞社や放送局などが、それぞれの紙面や放送時間といった制約上、共同通信の配信記事を短くしたいと考える場合に切りやすいように、頭を重く、つまり最初の部分に重要事項がすべて入っていて、あとに行くほど付け足しの要素が多い事項となり、逆三角の下の部分をスパッと切っても、大切な要素はすべて残っているという記事にする。
これが、共同通信の記者なら新人研修の段階から、徹底的に叩き込まれる原則です。
ところがこの問題記事は、必要不可欠の事項、「いつどこで誰がどのように」という記述が一切無いまま、ぼんやりと終わってしまいます。
ところがこの問題記事は、必要不可欠の事項、「いつどこで誰がどのように」という記述が一切無いまま、ぼんやりと終わってしまいます。
▼こんな記事を、まず出先のワシントン支局のデスクがそのまま通し、次にその記事を東京本社で受け取る外信部のデスクがそのまま通し、さらに同じ東京本社の整理部デスクもそのまま通し、輝かしい伝統もある共同のワシントン電として配信されたことそのものが、異様なミステリーです。
もっとはっきり言えば、共同通信の信頼性にとって、あり得ないほどの致命的な不祥事です。
▼さて、前掲のぼくの記述のなかに「5W1H」という原則の話が含まれていることにお気づきの方は多いでしょう。
いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)の5W1H、あわせて6つの要素が記事には必要だという原則です。
問題記事は、前述の通り、いつ、どこで、誰が、どのようにの4要素がすっぽり抜け落ちています。
「何を」については、「共同声明に参加を打診された」、「拒否した」と、ごく抽象的に書いてありますが、具体的な事実が記されていないので、これも無きに等しい。
▼なぜ、こうしたことが起きたのか。
取材が甘かったのなら、それはそれで大問題です。
しかし本当は、その事実が無いから、虚偽だから、いつ、どこで、誰が、何をについて書けないのです。
推測ではありません。
事実の経過は、別にあるからです。日本は、安倍内閣は、中国に屈していません。逆です。英米を中心とした、いわゆる5アイズに先んじて、中国に抗しています。
それはこのブログの後続エントリーで、あくまで客観的事実に徹して、明らかにします。
▼ところが、です。
なぜ、についてだけ、この短い記事の中に2箇所もあるのです。
まず、「中国と関係改善を目指す日本側は欧米諸国に追随しないことで配慮を示した」とあり、さらに「新型コロナの感染拡大などで当面見合わせとなった中国の習近平国家主席の国賓訪日実現に向け、中国を過度に刺激するのを回避する狙いがあるとみられる」の2箇所です。
しかし、いずれも根拠は全く記されず、したがって記者の単なる推測と言わざるを得ない記述がそのまま書いてあります。
前者は「中国と関係改善を目指す」というのが現在の武漢熱のさなかに何を指すのか、書いてありません。
どこの国とも関係改善を目指すのは外交の一般論ですから、それが示してあるだけであって、具体的にはまるで意味不明です。
▼と、考えていたら、後者で記者の真意が書いてあるのです。
「新型コロナの感染拡大などで当面見合わせとなった中国の習近平国家主席の国賓訪日実現に向け」とあります。
つまり、習近平国家主席の国賓来日が延期となっているのを、実現させる意図が安倍政権にあると書いているのと同じです。
▼実際は、習近平国家主席の国賓来日は今、どうなっているか。
このブログでも、他のオールドメディアの報道でもすでに「まず年内は見送りになった」、「そして年内だけではなく実質的に白紙に戻り、中止となった」という客観的な情勢であることを明示しています。
この記事は、なぜそれが違うのか、何を根拠に「実現させる意図がある」と言えるのか、その根拠が皆無です。
▼みなさん、もうお分かりですね。
ぼくも背筋がゾッとしています。
恐るべきことに、この記事は中国の願望をそのまんま示している、まるで中国共産党機関紙「人民日報」系列で国際ニュースを扱う「環球時報」と同じような記事であるという実像が、こうして浮かび上がります。
すなわち、共同通信のビジネスにおける最大級のセールスポイントであった中国発の記事を売り続けられるように、北京支局(中国総局)、香港支局、広州支局、上海支局を維持したい、そのためにはまさしく中国に媚びたい・・・問題記事にある「(安倍政権には)中国を過度に刺激するのを回避する狙いがある」という一文は、実は自分のことではないかということも、ありありと浮かび上がります。
▼これでもまだ、古巣に甦ってほしいぼくの願いがこもった、優しい言いぶりに過ぎません。
かつての同僚や後輩が仰る「共同は変わってしまったよ」というのが、単に社内の雰囲気だけを言うのではないことが、あらためて、ぼくには実感できました。
ほんとうは、中国の工作活動、少なくともその影響が実感を伴って、感じられます。
▼みなさん、共同通信の記事という公開情報をきちんと客観視に徹して分析するだけで、これだけのこと、これだけの恐ろしい現実が分かるのです。
▼さぁ、ブログへのアクセスができなくなるという妨害と戦いつつ、では、実際には何があったかを、無条件に公開しているこのブログとしては例外的に、水面下情報に踏み込んで、かつ、まったくあったまま、ありのままに、記していきます。
それは明日になるかも知れません。
このブログが無事であれば・・・。
(その4に続く)