感染症の種類と特徴
MRSAは、methicillin‐resistant Staphylococcus aureus(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の頭文字をとったものです。
黄色ブドウ球菌は非常にありふれた菌で、私たちの髪の毛や皮膚、鼻の粘膜、口腔内、傷口などによく付着しています。しかし、黄色ブドウ球菌は、基本的に弱毒菌のため、私たちの抵抗力がしっかりあれば、特に重症化することはありません。 MRSAはこの黄色ブドウ球菌の仲間で、性質は黄色ブドウ球菌と一緒ですが、耐性遺伝子を持っており、抗生物質(菌を殺す薬)が効きにくくなっています。その為、治療が思うように進まず、患者の抵抗力だけが頼りになる場合が多いのです。重症化すると、敗血症、髄膜炎、心内膜炎、骨髄炎などに陥って死亡する事も少なくありません。
このような場合にMRSAに感染すると、様々な病気を起こしやすく、治療しにくいため、MRSAは大変恐れられていますが、家庭や施設で生活されている方々に、重症化しやすい状態の方は少ないため、MRSAのために実害が起きるということは通常考えにくいと言えます。
菌の検出は、必ずしもその菌による感染症とは言えません。MRSAは非常にありふれた菌で、鼻の中にMRSAを付着したまま家庭や施設で過ごされる方もいます。MRSAを付着しているけれども、病気は起こしていない状態を「保菌」していると言います。
MRSAを保菌していても、健康な人であれば、数日で自分の抵抗力で駆除してしまいますが、高齢になるとそのまま「保菌」した状態が続くことがあります。
しかし、「保菌」しているからといっても、家庭や施設で過ごせるような人であれば、重症化して、実害を及ぼすようなことはありません。つまりMRSAを『保菌』していても心配はなく、周りの人にも害は及ぼさないということです。
一方、MRSAを『発症』している患者というのは、感染した結果、咳やくしゃみ、発熱、下痢のような症状が現れて、臨床的に問題となる感染症状を呈している患者のことです。代表的なMRSA感染症とは、髄膜炎、肺炎、腹膜炎、腸炎、敗血症などです。
MRSAをもったご利用者や、撒き散らされた菌で汚染された床などが汚染源となり、それに触れたり、空中に舞い上がった菌を吸込んだりして人に移り、その人の手指を介して、次々と広がっていきます。