- 1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/04(木) 23:25:23.08:CvfcV4Px0
唯「大変だどうしよう」
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/04(木) 23:28:01.01:CvfcV4Px0
唯「殺す気はなかったんだよ、ただ、勝手に澪ちゃんが死んだだけ」
唯「なのに、なんで私がこんなに苦しまなくてはいけないの?」
唯「ひどいよ、ひどいよ、このまま誰かに見つかって」
唯「公安に通報されて、身体を拘束されて」
唯「裁判にかけられるんだ。人民は私を死刑にするんだ」
唯「階段をのぼって、首に荒縄をかけられて」
唯「ずどんと床が外されて……」
唯「そんなのイヤ!」
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/04(木) 23:29:38.56:CvfcV4Px0
唯「あと十分で、みんなが来るよ、きっと。」
音楽室には、目を見開いて死んでいる澪と、呆然と立ち尽くす唯。
唯「隠さなくちゃ……」
唯は、鞄から、刃渡り十五センチのカービングナイフを取り出して、刃先を包む革製の入れ物から取り出した
唯「どうしよう、10分で解体できるかな……」
唯は素早く、澪の肩に包丁を突き立てた。関節を回すように、肩関節の靱帯と、上腕二頭筋、三角筋等の筋肉を外していく。
唯「ふう、一つの関節あたり、二分…間に合うかな」
コツは、骨を切らない事、骨を切るには大変な労力を要するからである。
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/04(木) 23:33:11.84:CvfcV4Px0
あっという間に、唯は澪の両方の肩関節と、股関節を外した。
二つの関節頭の、美しい球体を唯はペロペロなめて綺麗にした。それは唯のこだわりであった。
唯「さて、手足は、自分のバッグに入るとして……胴体はどうしよう」
唯は、マイバッグから、半透明の家庭用指定ごみ袋を取り出して、澪の手足をそこにいれ、いつもすかすかのバッグに入れた。
唯「胴体と頭部は…」
コンコン「失礼しまーす」
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/04(木) 23:34:53.59:CvfcV4Px0
唯は慌てて、頭部のついた胴体をギターケースに突っ込んだ。同時に、ドアが開いて残り三人の部員が入ってきた。
律「おーっす、唯。どうした?そんなに慌てて」
紬「うふふー」
梓「いひひ」
唯「な、なんでもないよー、さ、ムギちゃん。お茶お茶」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/04(木) 23:35:28.87:Im0i2PTO0
梓「血の匂いがするです」
唯「え?そうかなー、私風邪気味でさー」
梓「いひひ……こんな部屋でお茶なんかできるんですか?」
律「そう言えば、澪はどうした?」
唯「ひっ」
律「唯と一緒に、先に部室に来たんだろ?」
梓「いひひ」
紬「まあまあ、お茶でも~」
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/04(木) 23:41:10.88:CvfcV4Px0
紬が真っ赤に染まった紅茶を出したが、唯はその色が澪の血の色に見えて、気分が悪くなって、吐き気を催した。
唯「み、澪ちゃんんはね~」
三人は無機質な表情で唯の言い訳を聞いていた。
唯「えっとねー、突然気分が悪くなってねー、そう、ここで血を吐いたんだよ、だから血の匂いがするんだよー」
私は床にあった、血溜まりを指さした。血液を抜かずに人間を解体すれば―それも先刻まで生きていた人間―大量の血液が流れ出るのは自明のことだった。
唯「そして、えっと、家に帰ったんだよー」
梓「いひひ。唯先輩は可愛いですね。」
唯「あ、あずにゃん……」
梓「えいっ」
梓は隙をみて、唯の鞄をひったくった。
唯「やめろー、やめてよー、あずにゃん、あずにゃん!」
唯は暴れたけれども、梓はあっさりと鞄を開いた、すると、四肢がぬっぽっと飛び出した。
律「あっ!それは澪のだ!」
紬「あらあらー」
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/04(木) 23:43:53.55:CvfcV4Px0
唯「うへへー」
唯はみんなに土下座をした。梓は、ギターケースから澪の胴体も奪って、机の上に置いた。
澪はついに物言わぬ死体になっていた。
梓「問題は……ベースがこれでいなくなったということです」
唯「あ、あずにゃん……ごめんね……代わりに私がベースをするよ……」
律「唯じゃ、無理だろ」
唯「うへへー」
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/04(木) 23:46:22.81:CvfcV4Px0
梓「ならば、唯先輩が、澪先輩になればいいんですよ、いひひ。」
律「それもそうか。」
紬「あらあら。それは、別領域からのアプローチね」
梓「なら、早速しゅじゅちゅです」
唯「あ。噛んだ」
梓「いひひ」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/04(木) 23:48:14.80:iwz14g660
今度は唯が机の上に寝かせられた。澪の四肢と胴体と頭部は床に置かれた。
まず、唯はうつ伏せに寝かせられた。
梓がメスを持っていた。律は両手にピンセットを持ち、紬はバリカンを持っていた。
唯は四肢を革ベルトで拘束されていた。
しゅじゅちゅは麻酔なしで行われた。
まず、紬がバリカンで唯の艶のある髪を剃り落とした。
次に、梓が、唯の頭皮を切開した。すると、血溜まりの中に、硬い頭蓋骨が露出した。
律はその作業をピンセットで手伝った。
ピンセットで梓がはがしていく頭皮を持ち上げていたのだ。
さて、次に、鋸とノミに持ち替えた紬が
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/04(木) 23:51:58.92:yufgF+J/P
唯ちゃんの思考
痛い痛い、くはぁ。ありえないよ、なんで生きたまま、大脳を
おかしいよ、こんなの人間のすることじゃないよ、
なんで生きたまま大脳を
中身をかき回すの?
あ、下手くそ、後大脳動脈が切られた、脳出血だ、
ひぎゃががが、いぎー!!
あ、今度は内耳神経を切りやがった
爆音が聞こえる、なんで頭の後ろで、ミグ29のエンジン音が
第一部が始まります
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/04(木) 23:55:49.75:CvfcV4Px0
私はどこからか、ここに落ちてきたようです
お尻の骨が、ずきずき痛みます。
「なんで私を殺したんだよ」
澪ちゃんが目の前に立っていました。顔は見えません、包帯を顔に巻いています。
「あ!おかしいだろ、なんで私を殺したんだよ」
「ごめんね」
私は謝ることしか出来ません。思えば、私はなんで澪ちゃんを殺したんでしょう?だれか答えて!
「なんで私を殺したんだよ」
「わからないよ……」シュン
頭がぼーっとします、確かに、なんで私は澪ちゃんを殺したんでしょう?誰か答えて!
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/04(木) 23:57:52.06:CvfcV4Px0
期が遠くなる時間、私は澪ちゃんに、澪ちゃんを殺害したことで怒られていました。
どのくらいの時間かというと、
ムギちゃんが買った焼きそば一杯をつくるのに使われた小麦粉の一粒一粒を
律ちゃんが箸でつまみ、あずにゃんの口に移すのにかかかったのと同じくらい
時間がかかったのです
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 00:00:17.63:CvfcV4Px0
「と、ところで澪ちゃん、ここはどこ?」
私は落ち着いた澪ちゃんに尋ねました。
「いつからここにいたの、澪ちゃん?」
この狭い部屋は、まるで刑務所の一室くらいの広さでした。
刑務所の一室のような……
「あ!ここは刑務所だ」
私は驚くべき事実に気が付きました。私は、確かに、某刑務所の独居房に閉じ込められていました。
背の届かない、高い場所に、鉄格子のはまった窓があって、そこからうっすらと星の光が差し込んでいました。
足元の、床はとても冷たいのです。
そして部屋はとても砂っぽかったです。
澪「ここはまるで、イラン・イラク戦争で、イラク国軍兵が捕らえられていた、砂漠の牢獄に似ているな」
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 00:04:40.76:CvfcV4Px0
確かに私は澪ちゃんを殺したので、刑務所に投獄されるのは納得できます。
しかし、被害者である澪ちゃんがなぜ加害者と一緒に投獄されなければいけないのでしょう?
こんな不条理あっていいのでしょうか?いいはずありません!
澪「私は唯がここに来るまでに……本を七千と三百と二十四冊読んだよ。一番最初に読んだのは、そこの小窓から渡された新約聖書だった」
澪「ここでは、太陽が七回昇って沈むと、一冊の本が支給されるんだ」
澪「唯……この苦しみが理解できるか?」
私は涙を流しました。澪ちゃんは、私がここにやって来るまで、ずっと一人でここで本を読んでいたのです。
そう澪ちゃんは死んでからとうとう念願の文芸部に入部したのです、ここは独居房であり、文芸部室だったのです!
わたしはこうして自分の内面に湧きでた疑問に納得することにしました。
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 00:07:58.23:bbSrH4I50
澪「唯……この苦しみが理解できるか?」
私は涙を流しました。澪ちゃんは、私がここにやって来るまで、ずっと一人でここで本を読んでいたのです。
澪「私は……何度も何度も、ベースを与えてくれるように申請したんだ……」
澪「なのに、ここに投げ込まれるのは、皮脂で黄ばんで黴の生えた本ばかり」
澪ちゃんはボロボロのペーパーバックを手に持っていました。タイトルは……英語で書かれているのでわかりません。
澪「私の絶望は……こんなクソみたいな小説を…読まなくては生きてけないとういう事に尽きる」
私はさめざめと泣き続けました。これからは、私が澪ちゃんの代わりに、この独房で生きていくのです。
きっと澪ちゃんは開放されるのです。
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 00:10:49.00:bbSrH4I50
唯「ごめんね、ごめんね、ほんっと、ごめん……これからは私が代わりに…」
澪「コラ」
澪ちゃんは私の頬をぶちました。
澪「唯の考えてることはまるわかりだよ。自分が私の代わりにとか思っているんだろ?」
唯「」こくん
澪「コラ」ゴツン
今度は頭を叩かれました。少しだけ嬉しかったな、だって澪ちゃんはりっちゃん意外、あんまり叩かないから。
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 00:12:55.25:bbSrH4I50
澪「ここはそんなに甘くないよ、連中は、私達のためになることはしないのさ」
ここで澪ちゃんはふふんと鼻を鳴らしました。
唯「じゃあ、これからは、二人でここで生きていくの?」
澪「ああ。」
私はまた、涙を流しました。澪ちゃんが、私の手を取ってくれたからです。
あんな残酷な、殺し方をした私を、澪ちゃんは聖者のように許してくれたのです。
澪ちゃんは、まるで、マリア様だ!
私は叫びそうになりました。
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 00:16:26.08:bbSrH4I50
澪「唯、ここでのルールを教えておくよ」
私は、狭い部屋を見渡しました。天井だけ、異常に高くて(キリンさんの背くらいはあるのかな?)、遥か彼方の上には換気扇がガラガラ廻っていました。
一人がギリギリ寝られるくらいの、木のベッドがあって、ベッドの隣に黄ばんだ便器があったのです。このままじゃ、排泄姿を見られちゃうよー
澪「ここでの起床は朝、六時だ。」
唯「うんうん。」
澪「時計はないから、体で覚えろ、六時に布団から出て、床に正座していなければ」
唯「いなければ?」
澪「刑務官からの制裁を受ける」
唯「制裁?」
澪「それは、知る必要がない」
唯「うん」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 00:19:19.43:bbSrH4I50
澪「朝ごはんはでない」
唯「えーえーぶーぶー」
澪「文句を垂れるな」ゴン
唯「いててっ…」
昔のように、私は笑えました。うへへ。でも憂の朝ごはんが出ないのは残念です。
澪「ここでは、動く必要がないからだ」
唯「え」
澪「ここでは、立って歩く許可も、シャドーボクシングをする許可も、指定時間以外に大便をする許可もない」
澪「当然、音楽のたぐいは全部禁止されている」
唯「うそぉ……」
私は、悲鳴を上げそうになりました。
ノォおんがく、ノォライフです!ぷんぷん。うへへ。
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 00:22:48.58:bbSrH4I50
澪「まあ、代わりに、クソみたいな小説を与えられるんだ。」
澪「カラマーゾフ、赤と黒、春の嵐……なんでもあるぞ」
知らない外国の小説を上げられても、私はポカアンとするだけです。(そもそも、イケイケ女子高生の私はー文学と無縁っていうかー)
澪「全く、唯はジュリアン・ソレルと対極の人間だな!」
そこで澪ちゃんは高笑いをあげました。すると、隣の壁がドカンと叩かれました。
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 00:25:18.88:bbSrH4I50
澪「ここでは、昼の十二時までずっと本を読む」
唯「十時のおやつはー?」
唯「そんなもの、ない」ボカ
今日、何度目か覚えていないげんこつに、私の脳髄は、脳脊髄液の檻の中でぐらぐら揺れました
澪「昼の十二時には、点呼。この時も、刑務官が来るまでに、床で正座していなくてはいけない」
唯「ふえ~」
澪「点呼が終われば、日が沈む、六時まで本を読む。」
唯「ほ、本ばっかりだね……」
澪「それが、ここのコンセプトだからな。」
澪「読書によって、人間革命を成し遂げるのさ」
ここで、澪ちゃんはもう一度高笑いしました。また、隣の壁がドカンと叩かれました。
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 00:28:26.00:bbSrH4I50
唯「そんな事より、三時のおやつは……」
澪「そんなものは、ない」ボキ
もう、頭に穴が穿たれてしまったあとの衝撃を脳が受けました。
澪「飯だが、この六時の点呼の時に、一週間食べるのに、十分な量が支給される日があるんだ」
澪「それは、決まって、星の明かりが部屋を照らす、日だ。」
唯「ふ、ふうん」
澪「ああ。それが今日なのさ」
唯「う、うん」
澪「食料が、配給される日は、本を読み終わっていなくちゃならない」
そういって、澪ちゃんは膝の上のペーパーバックをポンポンと叩きました。
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 00:32:27.28:bbSrH4I50
唯「ご、ご飯はどこ?」
澪「あっはっはー!」
そこで澪ちゃんは高笑いしました。隣の壁がドカンと叩かれました。
澪「そ、それは、お前だよー、唯~」
唯「え」
私は頭がおかしくなりそうでした。だんだん、足元が揺れてきました。
澪「毎週な、おまえが、天井から降ってくるんだ。私は、それをベッドの上で眺めているのさ」
澪「それから、おまえが潰れなかった時は」
澪「こんな会話をして」
澪「それから動けなくなった唯を」
澪「生きたまま、貪り食うんだ。」
澪「あっははー!」
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 00:34:37.94:bbSrH4I50
私は、のたうちまわりました。澪ちゃんは私に馬乗りになって、刃物のような手で、私の肩をえぐりました。
そして、澪ちゃんは、肩甲骨を、剥がすように、胸郭(肋骨)と肩甲骨の間に手を差し込みました。
そして、私の、僧帽筋を切り取って、食べました。
ちゅべろ、ちゅべろ。
私は悲鳴をあげました。でも、隣の壁は叩かれませんでした。
それから、三角筋が取られました。
澪「僧帽筋、つまりサーロインの方が、美味しい。でもうめー」
むしゃむしゃむしゃ。
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 00:42:43.39:bbSrH4I50
背部の筋肉は、ほとんどはがして食べられ(豚でも牛でも、だいたい美味しい部分はここだよね!)、肋骨が乾いた空気にさらされました。
澪ちゃんは遊び心満載です、私の背部深層の最長筋を、丁寧に椎骨棘突起と後頭骨下項線から外して、剖出した後、それが本当に最長なのかをいろいろな剖出した筋肉と比べて確かめていました。
大腿四頭筋が、危うく最長筋の地位を脅かそうとしていました。私の足がもっと長かったら、危なかったね、最長筋。
澪ちゃんはそれから、私の右腕に目をつけました。
肩関節を、かつて私が澪ちゃんにやったように外し(なぜ、この時に、私が澪ちゃんを解体したシーンが明刻に脳裏に映し出されたのでしょうか?)
次に、上腕骨と、撓骨・尺骨をはがして、上腕だけを貪りました。
これで、もう二度と、私はギー太を弾けません。
とてつもない絶望に私はおののきました。
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 00:45:40.30:bbSrH4I50
最後は私の頭蓋骨を、第一頚椎から外します。それはそれは丁寧に、靱帯を切断し、lateral atlanto-occipital jointをかぽっと外します(そもそも、なぜ私はここまで解剖学に詳しいのだ?その真相はいずれ明らかになる気がしますが……)
それから、頭蓋骨の縫合にノミを当て、どんどん引きちぎっていきます。
タンパク性の部分は澪ちゃんに一週間かかって食べられました。
そしてとうとう終脳と、骨だけ私は残されました。
澪ちゃんは、私の脳を、自分の大便で詰まった、糞壷に落としました。
何度目の光景でしょうか
私は、音も光も奪われて、糞壷の中で……
その時、頭の上から何かが落ちてきました。
それが、澪ちゃんの大便だと気がつくのに、時間はいりませんでした。
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 00:48:12.26:bbSrH4I50
第二部
澪「脱獄しよう」
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 00:55:02.50:bbSrH4I50
澪「こんなところに何百年もいたら、脳が腐る……」
澪「毎日、本を読み、唯を食べる生活。ここには音楽もなければ、律もいない」
澪「さて、一般に、刑務所の外に物理的に出るのは困難だ。」
澪「刑務所の堅牢な壁は、生身の人間である囚人の脱獄を物理的に制限している」
澪「そして厳格な管理システムは、生身の人間がこの物理的な制限を突破しうる道具の調達を制限している」
澪「この二つの壁により、囚人の脱獄は困難となっているわけだ。」
澪「だから、私は別の手法を取るしかない、ただの女子高生が独房から人間のまま脱獄するのは不可能だ。」
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 01:00:58.56:bbSrH4I50
澪「今日も、天井から唯が落ちてくる。」
予定の時刻、私がДьяволиада(Михаил Булгаков)[Мастер и Маргаритаはもうすでに読み終えていた]を読み終えた頃唯が天井から案の定、降ってきた。
私はそれを潰れないように受け止めた。
唯「うへへ……」
澪「お前、なんで私を殺したんだよ!」
唯「?」
唯は首を傾げる、口を開けたまま、私をぽかあんと、見つめる
澪「あ!だから、なんで私を殺したんだよ」
唯「わ、わからないよ……」
私も、もはやなぜ唯に殺されたかは忘れてしまった。だが、この問を繰り返し続けなければ、私が唯に殺された、という事自体忘れてしまう気がしてならなかったので、私は問い続けるのだ。
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 01:03:30.15:bbSrH4I50
唯「と、ところで、澪ちゃん?」
澪「なんだなんだ、これから私がお前を説教しようとしているのに」
唯「ここから脱獄するにはね」
私は驚いた。驚いて驚いて、吸っていた紙巻きタバコを口から落としてしまうほどだった。(ここでは一日に一ダースの煙草が支給される)
唯「私を殺しちゃいけないよ」
これはいつもの唯とは違う唯だった。いつもなら、何も知らないのに、なぜこの唯は知っている風なのだ?
どうやら、子羊が知恵をつけたらしかった。その原因はわからないが、私の脱獄願望に関連している気がした。
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 01:10:57.64:bbSrH4I50
そのことに気づいたら、なんだか心がぽかぽかしてきて(そう、私は変化を求めていたのだ、つまり退屈な日常の打破だ!近年の文学のテーマだ)、体がマヤ文明の神・イガンナプタムに支配された踊り子のように、踊りだしたくなった。
唐突に、シラーの詩が浮かんだ。
澪「聞いてくれよ、唯。私はこんな牢獄に、気が狂うほど長く監禁されていたんだ。そしてな」
澪「ふろいで すねあ ごてえるんけん、ときた あうす えりーしうむ、びあ べとれてん ふおるとるんけん、ひむりしぇ、だいんはいりぐたむ!!」
澪「さあ、唯!演奏するんだ、この完璧な詩を!シラーが書き、ベートヴェンが歌わせた、この音楽を!」
私は幸福の絶頂に達した、立ち上がり、狭い独房の中で詩を歌い続けた。
最近は、よく、この些細な事でも精神が高ぶるようになっていた。例えば、独房にチャバネゴキブリが入ってきただけで、なぜだか郷愁に襲われ(私の知り合いにゴキブリがいたか?)涙をながすのだ。
唯が、私に新しい感情を―それは希望?絶望?―を与えてくれただけで、歓喜するのだ。
唯は笑い出した、うへへへっへ。
私はひとしきり歌い続けた。音楽が、この独房で再生されたのは、初めてのことだった。
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 01:14:52.90:bbSrH4I50
澪「ごめんよ、唯。これまで数えきれないくらい、天井から落ちてきたお前を解体して、食べたんだ」
澪「そして、取り出した大脳を、そこの汚い便器に投げ捨てたんだよ。」
澪「私をぶっても構わない、わたしは、それを地球が滅びるまで続けたのだからな」
なぜこの唯を見ていると、謝罪の言葉が口をつくのかわからなかった。
唯「いいんだよ、澪ちゃん。わたしはあなたを殺したし、あなたはそれから私を食べた。それでおあいこにしよう。」
なんと寛大な処置!
澪「だが、それでは私の気が収まらない。」
頭の中では相変わらず、ベートヴェンが流れる、止まらない音楽への衝動。
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 01:21:36.27:bbSrH4I50
唯「がーべん、ふろいで、いっひ、べるで、がーれん、ぼー であ はあって」
唯も歌い出した。そして、私をぶった。
唯「澪ちゃんが、好きだった音楽はこれ?ベートヴェン?バッハ?ドヴォルザーク?そんな素晴らしい音楽だったの?」
澪「わからないんだ、ここに来る前、私がどこにいたのか、そしてどんな音楽を志していたのか」
唯「私達の音楽は、屑だよ。あの連中の足元にも及ばない、屑だ。だけれども、澪ちゃん。」
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 01:27:54.39:bbSrH4I50
澪「私は、この独房から出たい、昔のように、律と唯と……あと誰だか忘れたけど、下品な豚と、ムカつく昆虫と演奏したい。それはメサイアじゃなくてもいい、第九じゃなくてもいい。」
「だけれども、私の居場所はそこにあったんだ。私達、屑人間に相応しい音楽はそこにしかなかったんだよ」
唯「やっと気がついたね、澪ちゃん。もう、私を食べることは止めにして、外に出よう。」
唯「澪ちゃんが気がついたこと、それはこの物語のテーマが「屑人間」だということだよ。それは外の世界でも忘れないでね。あと、外に出るためには私を殺しちゃだめだよ」
澪「うん、絶対に唯を殺さない」
唯「そう、絶対に私を殺しちゃだめだよ」
唯「絶対に……うへへ」
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 01:30:05.37:bbSrH4I50
澪「だが、どうやって私は外に出れるんだ?この堅牢な壁とシステムを乗り越えるにはどうすればいいんだ?」
唯「澪ちゃん。まず、はじめに、私は澪ちゃんを出すためにここにやってきたわけじゃないということに気がついて」
私は、すました顔でものをいう唯に腹がたってきた。先程の歓喜の感情は、唯が何かものを言うたびに薄らいでいく。
唯は、自分が私を救えないということを、小難しい言葉で延々とまくし立てるだけの存在だったのだ。それは、外の世界にもたくさんいる種類の人間である。
澪「なら、お前は何のためにここにやってきたんだ?」
唯「なんでだと思う?」
澪「それは、帰納法的に考えるならば、お前は食料としてやってきたんだろ」
唯「Конечно.(そうだよ)」
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 01:32:23.63:bbSrH4I50
澪「おい、さっきからだが、所々で外国語を使うのはやめてくれないか?頭がおかしくなりそうだ。お前はルー大柴か、つまらない外国語を使うな、オナニーか。それに、がばりーちえ り び ぱいえぽーんすきぃ?、だ」
唯「やー、ねむのーが、ぱにぃまーゆ ぱいぇぽーんすきぃ」
澪「そうかそうか、それじゃ、
Даже после тысяч лет человеческого существа,
『Ах, какая жизнь была бы скучной!』
Должны продолжать жаловаться.
В то же время и страх смерти так же, как она должна не спешат умирать.
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 01:35:58.36:bbSrH4I50
唯「ねぇーと、にえ、がばりゅー(ゴメンネ、ワタシロシアワカラナイヨー)。それに私はチェーホフが大嫌いです」
唯「ごめんね、澪ちゃん。もう外国語は話さないよ。」
澪「やーや。いえる、これっぽ、あんどぅ、じ、どぶんく?」
唯「今度はイタリア語か!どうしちゃったの、澪ちゃん。私、日本語しかわからないよ……さっきのは悪い冗談だったのに。」
澪「かん、ゆ、すぺーく、えんげりっく、ヴォー、ボンストゥ、ドゥー」
唯「み、澪ちゃん?」(澪ちゃんの頭がおかしくなっちゃった、まあ、いつものことなのかな)
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 01:41:53.27:bbSrH4I50
唯はやっと私を心配そうにのぞきこんできた、こいつ、全然私を案じていなかったからな。狂人のふりをして、おびき寄せたのは正解だった!私はのぞきこんできた無防備な唯の首に両手をかけた。
澪「かかったな、アホが!やっぱりお前は食料だったんだ、これから首を絞めて、事切れたあとで全身を解剖し、そう、全身の筋肉をくまなくその骨の結節から剥離して、しゃぶってやるぞー」
唯「ぐへへ……」ぱんぱん
唯は私の腕を二階叩き、タップした。それでも私は止めない、ここで唯を殺すのだ
唯を殺す?それは絶対にしちゃ駄目だったんじゃないのか?ふと、私は唯の言葉を思い出した。
※作者注:このようにして思考がめまぐるしく変化するのが狂人の、それも二十一世紀の狂人の特色なのである
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 01:47:38.07:bbSrH4I50
私は唯の首を絞める力を一瞬弱めた。
唯は力いっぱい私の手を払った。
唯「頭をかすめたね、澪ちゃん。私の忠告が頭をかすめたね?その一手が命取りだよ!」
すると今度は唯が私の首を思いっきり締めてきた。
私は気道を絞め潰され、窒息させられるより先に、頚動脈の圧迫により、脳血液の不足、その結果脳細胞に酸素と栄養がいかなくなることにより死亡した。
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 01:54:32.67:bbSrH4I50
折れた骨は、首の骨、つまり舌骨だけだった。(頚椎は中々折れないのだ)
この物語で、ヒトが死ぬとき、なかなかに骨は折れないということを私は痛感した。
そもそも、人間が死ぬとき、ほとんどのケースで骨は折れないのではないか?
私の死後の思考は、その解剖学的統計学的な疑問が支配していた。
屍となった私を唯はどんどん解体していく。
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 01:59:41.89:bbSrH4I50
まず、肩関節に鋭い包丁を入れ、上腕骨を肩甲骨と鎖骨から引き剥がした。
次に、上腕骨と撓骨、尺骨の間の三つの関節を外す。
真っ赤に私の血で染まりながら、血管と神経をぞんざいに扱いつつもこれらの作業を手際よくこなす唯には、解体屋の素質があった。
次は、撓骨と手根骨の間の靱帯を包丁で切っていく。この時になると、包丁は脂で絖っていた。
さて、見事に私の手が切り離されたわけだ。
唯は刃渡りの長い出刃包丁から、果物ナイフに切り替えて、私の手をばらばらにしていく。
八つの手根骨は綺麗に外され、上位列と連結する中手骨もちぎり取られていく。
そして中手骨の先の指の骨もパラパラにする。なにも、そこまでこだわらなくてもいいだろ。
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 02:04:25.29:bbSrH4I50
上肢の破壊がすんでから、今度は、体幹にうつる。
筋肉をめくるようにはがしていき、胸郭を露出させる。そして、肋骨を一本一本丁寧に胸骨と胸椎から外す。
唯は私の肋骨をしゃぶりながら作業を続ける。まるでチュッパチャップスだ!
唯は心臓と肺をスルーして、どんどん下へ行く。あ、まず、私の背中を貫いている脊柱を破壊していく。
脊柱を形成する椎骨、それに付着する棘間筋や、棘筋はピンセットで剥ぎ取られる。
右手に木槌、左手にノミをもち、三十一個の椎骨の椎間結合にノミをいれ、ガンガン叩いて、靱帯接合を切り外すようにして、ちぎりとっていく。
次は腰骨だ。まず、私の骨盤を外ずした。
さすがに腸骨と坐骨と恥骨の骨性の結合はちぎれないよな、包丁では。でも、仙骨と腸骨の間の結合はしっかり外してくる。
それから、下腿部を、まさに解剖するように、骨を丁寧にバラバラにしていく
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 02:11:19.90:bbSrH4I50
まずは股関節だ。なれたものだ、唯はざくりと坐骨の間に包丁を突き立て、坐骨と大腿骨を結ぶ、様々な筋肉や靱帯を切り外す。
―骨だ、彼女は骨にこだわっている。
大腿骨を外した後、下肢を切り取る、それから、大腿骨-脛骨の関節を外す。この関節円板を引っこ抜き、私の足はどんどん短くなっていく。
脛骨から細い腓骨を、さけるチーズみたく引き剥がし、それをしゃぶりながら唯は作業を続ける。
さて、脛骨と足の関節をちぎっていく。私は足が短くなるのに耐えきれず、目を背けた。
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 02:15:32.00:bbSrH4I50
ついに骨人間になった私、秋山澪。
後はまだ肉と脳が残る頭部だけだが、なんと唯は頭蓋骨の解体をしなかった。
頭蓋骨には十五種、二十一個の骨があるのに!
それから唯は私の綺麗なままの頭部を骨に乗っけた、骨人間の完成だった。
唯「これ、あずにゃんに教えてもらったんだよ」
唯は最後にそういった気がする。
私の骨と頭部は例の便器に落とされた。それからどのくらいたっただろうか。
上から何かが落ちてきた。
私がそれを唯の大便だと気がつくのに時間はかからなかった。
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 02:17:10.13:bbSrH4I50
第三部
「澪先輩のお顔、ツルゲーネフに似ていますね」
少しだけ構想に時間取ります
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 02:43:21.48:bbSrH4I50
律「しゅじゅちゅは、成功したのか?それとも失敗したのか?」
紬「……わからないわ、でもああして梓ちゃんがぐうぐう寝ているってことは、安心していいんじゃないかしら」
唯の脳に対するしゅじゅちゅが終わったあと、梓は深い眠りについた。硬い床に寝て、新鮮な血の匂いの充満した音楽室で、すかーすかーと、可愛らしい寝息を立てていた。
律「そうか、そうか!」
律は喜びに顔をほころばせ、絶叫した。なにせ、最愛の幼なじみが復活するのだ。かわりに友人は犠牲になったが、それはそれ、これはこれである。
ただ、紬は複雑な表情のまま、バラバラに遊ばれた澪の死体を眺めていた。
澪の死体の上には、ただひとつ、澪のものじゃないものが乗っかっていた。それは唯の脳髄だった。
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 02:48:30.27:bbSrH4I50
紬「私達は本当に正しいことをしたのかしら」
紬(そう。絶対に何かがおかしい。そもそも、なぜ唯ちゃんが澪ちゃんを殺したのか?ここが解せないのよ。)
紬(二人の間で何があり、そしてどうしてこのような結果になったのか。澪ちゃんを殺した唯ちゃんが結局は死に、殺された澪ちゃんは生きていた。おかしいんじゃないかしら?)
紬(そうよ、論理的に破綻しているわよ。この結果を言い換えれば、澪ちゃんが唯ちゃんを殺したということにならないかしら?結果がそうなのよ、現象がそう現れている。
だって、現に、綺麗な肉体のまま、机に転がっているのは生きている澪ちゃん。(ただし体は唯ちゃん)
ばらばらに解体されて床で転がっているのは死んだ唯ちゃん。おかしいわ、おかしいわ。)
琴吹紬も非常に混乱していた。なにせ、この非常事態である。混乱しない連中は頭が狂っていたのだ!(つまり梓と律は狂人に成り下がった)
78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 02:53:02.29:bbSrH4I50
梓「八ヶ国語が理解出来ない人間は馬鹿です」
いつの間にか梓が起き上がっていた。
梓「ガウスの証明した数学的問題を、二十一世紀の現在になっても理解出来ない人間は痴呆です」
紬「そ、そんな事ないわ……」
梓「だって、十九世紀の問題ですよ!ツェルメロ-フレンケルの公理系が理解出来ないのも白痴ですよ、あれは二十世紀初頭の問題です。まあ、幾何化予想を理解出来ないのだけはまだ許せます。それはつい最近のことですから」
紬「?梓ちゃん、この前の数学で七十一点だったじゃないの。たかが、関数方程式程度で……」
紬は吹き出しそうになりながらも、梓の戯言に付き合っていた。
梓「う、うるさいです///」
梓は頬を赤らめた。
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 02:56:17.76:bbSrH4I50
梓「まあ、気を取り直します。さて、一体この世界には、レーニンが帝国主義を批判した論文を読まずに資本主義政府に随従していた人民の多いこと!
逆に、マルクスの資本論すらも知らずしてスターリンに迎合した共産党員の多いこと!たまりませんね、このままじゃ世界は破滅しますよ」
紬「レーニンやスターリンって、一体いつの話よ……」
紬はあきれかけていた。
梓「これは現代にも言えることです。雇用・利子および貨幣の一般理論を聞たことすらないのに、民主党を批判して、共和党のリバタリアンどもに投票した国民たち。もちろんこれも逆が言える。」
梓「人々は、経済政策の時間整合性と実物的景気循環論すら知らない、ならば死ぬしかないのに」
紬「ちょっと、梓ちゃん。あなたも知らないでしょ。」
梓「う、うるさいです。だが、人々は阿呆です。私も……その、阿呆です。み、認めるです。」
梓はその触覚なツインテールをいじりながら認めた。
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 02:57:27.93:bbSrH4I50
紬「いいえ。梓ちゃん。あなたはおかしいわ。確かに地球は地獄のようだけど、私達は幸せだもの。不幸なことはたくさんあるけれども、生きていることが幸せだもの。」
梓「チッ。ムギ先輩はこちらの側の人間じゃないようですね。いひひ。」
梓の瞳に狂気が戻ってきた。
梓「ムギ先輩は屑人間です。それは澪先輩もでしたけれども。」
紬「唯ちゃんも?」
梓「いいえ。唯先輩は救われたんですよ。今頃、あの、『幸せの独房』の中にいます。」
紬「どこ、そこ?」
梓「いずれわかりますよ、いひひ。」
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 02:58:52.95:dms4HJnL0
梓「さて、そろそろ彼女が目覚めますよ、澪先輩です、澪先輩はしゅじゅちゅの結果、唯先輩の体をもらいました。」
梓「二つの魂の融合は何を生むのか?その真価が今わかりますよ」
梓「お二人はしゅじゅちゅの間、『幸せの独房』の中で魂の交流をしたはずです。それは、ハートフル・ストーリーだったのか?
それともちょっぴりハードボイルドな交流だったのか?はてはて、熱血スポコン的交流だったのか?
いずれにせよ、新しくなった澪先輩は私達を、屑人間と屑バンドから、至高の世界へと導いてくれるのです。」
律「あ、唯が目をさました!」
梓はむっとした。なぜなら、律が本質的なところでは何も理解せず、外見が唯の肉体が起き上がっただけで、すべてを忘れ、それを唯と読んでしまったからだ。
起き上がった唯は、梓の方を見た。ここでの表記は唯としておく。
たしかに唯の脳髄が、澪の脳髄にとって変わられたのは事実であるが、果たして魂が脳髄に宿っているかどうかは、まだ現代医学と生物学は明らかにしていないからである。
便宜上、ニューロンの集合体である脳を魂の宿る器官とみなしているだけなのだから、外見が唯である人間は、唯と記述するべきだろう
唯「あ、梓……」
唯は梓のことをあずにゃんと呼ばなかった。
梓「ほれ見ろ!魂は脳髄に宿っていた!ばんざーい、ばんざーい、ばんざーい!!」
83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 03:15:44.89:bbSrH4I50
唯「あ、このずんぐりむっくりな手足は……おい、律!鏡だ、鏡をもってこい!!」
梓「さあ、これからが見所ですよ。」
『唯先輩になった澪先輩はそれを受け入れられるのか?人間は他者を受け入れることができるのか、という世界の根幹に関わる問題が、いま明らかに……』
律「み、澪~」
律は涙を流して唯に駆けつけた。そして、自分の手鏡を渡した。
唯「そんな……うそだろ……わたしは死んだのに、なんで生き返っているんだよ……それも唯の体で……」
梓「いひひ。気分はどうですか、澪先輩。唯先輩とどんな話をしましたか?」
梓がニヤニヤしながら話しかける。律は泣いている、そして紬は何かを言いたげに側に近寄ってくる。
唯「梓、てめえ!!」
唯は梓に掴みかかる、そして胸ぐらを締め上げようとしたが、律と紬に止められた
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 03:19:42.49:bbSrH4I50
唯「やめろぉ、ふたりとも、私は唯と話をした、すべての陰謀はこの昆虫によって仕組まれ、そこの豚によって実行されたんだ!!」
紬はヒッと悲鳴をあげた。見に覚えのないことで批判され、紬はおどおどと自分の過去数日の行いを見なおした。
やましいことは一切なかった。毎日、みんなのためにしっかりお茶を汲んでいたし、何よりも調和を重んじていた自分が批判されるいわれなどなかったのだ。
梓「さあ、愛するです。澪先輩。唯先輩の体で、私を愛してください」
唯「ななにを言っているんだお前は?」
梓「それこそが世界を天国へ導く唯一の方法だったんですよ。この汚れたけいおんの世界は人間の解体によって新しい道へと……」
紬「梓ちゃん。何を言っているの?」
紬が梓を殴った。梓はぐちゃと音を立てて潰れた。
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 03:23:50.02:bbSrH4I50
梓「いひひ。そんな馬鹿な。そう、世界は、人間の魂は、たった一人の人間の脳髄に収まっていてはいけないものなのです。」
梓「さあ、澪先輩。あなたは澪先輩であり、唯先輩なのです。つまり、私を愛して良い存在なのです。
ただ、魂が脳髄に宿っている以上、私はあなたを澪先輩と呼びます。
ただ、澪先輩、私のことをあずにゃんと、ただ、あずにゃんとだけ呼んでくださいです……」
梓は紬にデッドロックをかけられながら唯に懇願した。唯は訳が分からず目を見開いたまま、縋りつく律の体温にうっとうしさを感じて梓を見つめていた。
梓「私はお二人のことを尊敬し、愛していました。そう、この世界を愛するように。私はこの世界と同義です。
私の世界は、私の脳髄の中にしか存在しないのです。その上で、あなたがた二人、外の世界を愛してしまいました」
律「こいつ、気が狂ったのか、なにいってんだかわからねーぞ」
唯「……まて、律。これからコイツが何をするか、よく見ておこう。」
唯「私は決して唯と一つになったわけじゃない。やはり、魂の交流など不可能だったんだ」
梓「うそです、うそです。あなたは澪先輩であり、唯先輩なのです。だから、私を愛してください。
私は、梓であり、世界なのです。この世界は、ただ、私の狂った脳髄液の中の……」
律「コイツを黙らせろ!ムギ!」
紬「合点承知!」
88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 03:28:10.03:bbSrH4I50
紬は力いっぱい、梓の首をねじった。すると、ぼきりと音がした。
昆虫が潰れる時とは違う音、つまり、骨が折れる音がした。
昆虫は外骨格を持つが、体を支える内骨格を持たない。つまり、このぼきりという、脊柱が折れる音は、梓が人間である証なのだ。
紬「あ、折っちゃったわ。」
律「折れた。そしてこいつは死んだのか?」
唯「やっとあの忌々しい昆虫が……」
唯は机から飛び降り、梓の元へ駆け寄った。そして、唯は律が座ろうとしていた椅子をひったくり、その椅子の足で、梓の体をがんがん叩いた。
どんどん骨が折れていく音がした。もう、肋骨はほとんどぼろぼろだろう。椅子の足は頭蓋骨の硬さにより、曲がってしまったので、今度は机を持ち上げた。唯の独断場だった。
梓の骨は粉々になるまで、たたきつぶされた。
90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 03:32:28.11:bbSrH4I50
唯「はぁ、はぁ。骨があるってことは、梓は昆虫ではなかった!昆虫ではなかった!」
唯は悲鳴をあげた。それは絶叫に近かった。
律と紬はそれをぼうっと眺めていた。
だがこの時、唯は忘れていた。梓の骨をバラバラにすることを。この物語において、人間の死は、骨をばらばらにすることによって達成されるのに……
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 03:37:27.55:bbSrH4I50
第四部
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 03:40:47.54:bbSrH4I50
事件から数日が経過した。
音楽室は公安当局の手によって、厳重に立ち入りが禁止された。そして、生存していると思われる関係者三名は身柄を拘束され、特殊な施設へ搬送された。
ただ紬だけがすぐに保釈された。琴吹家の力は大きく、琴吹紬が関与していることは一切が極秘にされた。メディアへの報道管制もしかれた。
紬はほとぼりが冷めるまで、フィンランドに旅行に出かけることになった。
93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 03:42:45.01:bbSrH4I50
さて、軽音部員以外の人間が出てくる裁判の過程は省く。
要するに、二人の人間を惨殺し、世にも恐ろしい方法で解体に及んだ平沢唯とその協力者田井中律は『屑人間』の烙印を押され、死刑となった。
死刑方法は、伝統的な絞首刑。
ただし気をつけて欲しい。絞首刑で折れる骨は首の骨、つまり舌骨と頚椎(さすがに位置エネルギーにより頚椎は折れる)だけなのだ。つまり、この二人は物語的には死亡していないのである。
真に現在死亡したのは、梓の手によって、骨を完全に解体された秋山澪だけである。
屑人間二人の死体は、数日間、門に晒されたあと、カラスたちの手によって骨だけにされた。
その内骨格を公安当局は、ゴミ捨て場に捨てた。そこから先の、二人の骨格がどこへ言ったのかの記録はない。
さて、この物語の本当の舞台は琴吹紬が旅に出たフィンランド北部の小さな町、ロヴァニエミなのだが、そこで始まるスタンダールの赤と黒に匹敵する巨篇を紡ぐ前に、残された人々の物語をしたいと思う。
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 03:46:14.65:bbSrH4I50
憂「私は梓ちゃんが許せません」
和「憂……そんなひどい顔をしていたら、精神衛生上よくないわよ」
憂「和さんはいいですよ、だって屑人間との血縁関係はありませんから。私は、そう、梓ちゃんのせいでお姉ちゃんが屑人間に認定され、もうお嫁にもいけないんですよ、教育も受けられなくなりました」
憂「何よりも、私の救いだったあの人を奪っていったのが憎い……お姉ちゃんを私の元から……」
和「そうね、もう唯はあなたのお姉ちゃんじゃない」
憂「絶対に梓ちゃんに思い知らせてやります……そう、はじめから私が人権を剥奪されたのはどうでもいいことだったの……お姉ちゃんを、いや、唯さんとの血縁関係が剥奪されてしまったことが憎いんです」
96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 03:56:04.54:bbSrH4I50
家族が屑人間に認定された人は惨めだ。
親は屑を生んだ責任を取らされ、そしてその親の遺伝子を引き継ぐ兄弟姉妹は、屑人間扱いされる。
これから先の憂と聡(律の弟)の人生は悲惨の一言……
憂は戸籍を剥がされ、物扱いされる始末だ。屑人間には憲法も法律も条例も適用されない、いや厳密には適用されるのだが、それは動物と同じレベルでのことである。
動物に値をつけることが禁じられていないように(ワシントン条約で禁止されてはいるが、屑人間はワシントン条約対象の動物ではない)、屑人間も売り買いができる。
憂も、オークションにかけられ、とある暴力団の男に買われた。これから数人の男たちに輪姦される予定だった。
(ちなみに聡くんもとある富豪に買われ、生涯奴隷になる……)
ただ、憂は逃げ出した。そして和の元に来て、助けを求めた。
和も屑人間との交流があったので、肩身の狭い思いをしていたが、憂をかくまった。
そして憂は衝撃の提案を和にした。
97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 03:57:06.19:bbSrH4I50
純「で、でも、梓は死んだんだよ」
憂「はぁ。純ちゃんは何も分かっていないんだね。梓ちゃんの骨は、解体されていなかったんだよ。」
純「う、うそでしょ……だって、公安当局は梓ちゃんの骨が粉々に潰されていたって報じていた……」
和「そこは私が説明をくわえる必要があるわね。そう、公安当局の発表は正しい。でも、生徒会が命をかけて調べた結果(公安から情報を掠めるには命の二三あってもたりないくらいなのよ)、中野梓の骨格は決してバラバラにはされていなかった。」
憂「わたしが和ちゃんに頼んだんだよ、純ちゃん。」
和「つまり、現在骨格を完全に解体されたのは澪だけって事になるわね。あんな事をしでかしておいて、ムギにいたっては骨格どころか筋肉も結合組織も健在だわ」
憂「そしていま、紬さんはロヴァニエミにいる……きっとお姉ちゃ……いや唯さんもそこにいる」
98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 04:02:12.15:bbSrH4I50
憂が提案したのは、フィンランドに行き、すべての決着を付けるということだった。
屑人間が飛行機にのるのは大変困難なことであったが、和の力を以てすれば、不可能ではなかった。
憂も和も、直接は梓の陰謀に関連していなかったが、大切な人を奪われたのだ。
和「人と人は重力によって惹かれ合うのよ……この地球が重力を持つ限り、いやすべての物質が引力を持つ限り……必ずムギとみんなは出会う。」
憂「紬さんだけ生きていたのは好都合でした。彼女にまで柔らかい部分を失われては、唯さんの追跡が困難になりますから…」
100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 04:09:06.58:bbSrH4I50
憂が提案したのは、フィンランドに行き、すべての決着を付けるということだった。
屑人間が飛行機にのるのは大変困難なことであったが、和の力を以てすれば、不可能ではなかった。(その理由は後述する)
憂も和も、直接は梓の陰謀に関連していなかったが、大切な人を奪われたのだ。
和「人と人は惹かれ合うのよ……だから世界にこんなにも人間が充ち満ちているのに、私達は大切な人を見失わずに済む。そして、これからも」
憂「紬さんだけ生きていたのは好都合でした。彼女にまで柔らかい部分を失われては、唯さんの追跡が困難になりますから…」
純「で!私達はこれからヘルシンキ国際空港へ向かうってわけね、教えてくれるのが遅いよ、憂~」
和「理由も聞かず、付いてくるあなたもたいがいだけどね。」
和「で、憂。あなたはロヴァニエミで梓ちゃんを見つけたら、どうするの?」
憂「梓ちゃんの骨格は解体します、私はその覚悟を決めています」
純「へ、へぇ。」(すごい目付き……)
101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 04:10:39.72:bbSrH4I50
憂「そうですね……フィンランドは近いうちに同性婚が合法化されるんですよね……これも運命!私は唯さんと、結婚します」
和「わ!」
純「ま!」
憂「うふふ……待っててね、唯さん……」
ただし、言えることは狂気を内在させていないこの三人では決して狂気の塊であるあの五人を殺すことなど到底かなわぬことであるということである。いひひ。
111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 08:39:45.34:v8KS8oBr0
第五部 梓「悪辣で非道な独軍に焦土化され、冷酷で残酷な露人に怯え続けた街」
130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:28:49.84:t1u8oP5T0
紬「あぐあぐ……」ムシャムシャ
バー コメア ド イフラム?(君はどこから来たのですか?)
紬「うきき!うきゃうきゃ、ぐれちゃ」
ド アル グラーレン (君は気狂いだな)
メン デン ガルラ ドレン オクタ ベラッテ サニゲン(だが、馬鹿と気狂いは真実を言う)
スタナ ヘア チリス ド エア ハリ(気が済むまで、ここにいなさい)
紬「ゴキブリ、ゴキブリ、ホアー!!」
ゴクブリ?
紬「"Gokivili" ar ackliga insekter.(ゴキブーリ アル アキリガ インスケクテル)」
ゴクブリ、バルタ ヴァート ド ヘア (なら、君が食べているものが ゴキブリ かね!)
紬「うふふー」
131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:33:29.96:t1u8oP5T0
膜、膜、膜!この街は透明な膜で覆われているようだ。(この街の気質は、歴史的に見て、まさしく膜だった)
いや、紬の意識が膜に覆われているだけかもしれない。
街行く人々は、唾を絞って吐きつけるような調子の外国語を話している。その言葉を解さない。
紬は時々だが気が狂ったように、外国語をまくし立てる時がある、ただ、それはドイツ語崩れのスウェーデン語である
さて、紬はスウェーデンはロヴァニエミ、北極に極めて近い街にやってきたのだ。
そして、ロヴァニエミの中心にある、ロヴァニエミ教会から車で二時間のところにある、さる隔離施設に入院していた。
132:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:39:04.36:t1u8oP5T0
だからこの物語では決して、ロヴァニエミの近代的な美しい町並みを記述することが出来ない。
なぜ、独軍に破壊された街が近代的なのか?それは人々が新しくロヴァニエミをつくったからです。
つまり、1941年以前のロヴァニエミに、彼女たちはいくことが出来ないだ。それはとっても不幸なことだった。
まあ、話は変わる。
琴吹家の人間は、彼女が死ぬまでそこから出さないつもりである。
日本人は誰も知らない、この異国の施設で、紬は一人ぼっちで理解出来ない言葉を聞いて過ごさなければならない。
つまり、生涯、真っ黒に膜を張られた窓のある部屋に閉じ込められて、その塗潰れた窓から世界をのぞかなければいけない人生なのである。
133:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:44:47.88:t1u8oP5T0
爪が、三十五回生え変わった頃。
紬は時間を測る手段として、それを用いていた。
なにせこの施設には時計やカレンダーなど存在しないので、正常な思考をうちに秘めた入居者はどのくらいこの施設に閉じ込められているのかを知るためにそれをしなければいけない。
まず、刃物(なければ硬い木でもいい)で親指の爪の付け根に深い傷をつける。それが目印になり、時間が経過するとともに、親指がのび、だんだんと傷跡も上に上がっていく。そして傷跡が肉部から離れ、爪の先となった時、また指に傷をつける。
それを延々と繰り返す。
紬は気狂いのふりをしていた。(時々本当に気違いになってしまうが)。そして、この施設からの脱出を夢見ていた。
紬(こんなところにいたら、脳が腐るわ)
134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:51:20.21:t1u8oP5T0
紬はベッドから起き上がり、バスタブへ向かう。
淡青色のタイルは所々が欠け、虫の死骸がゴロゴロ転がっている。この施設はとても不潔だった。お嬢様には相応しくない施設だった。
紬(なんで私がこんな所にいなくてはいけないのよ!)
しかし紬は、ゴキブリも真っ青になるほどの環境適応性を持っていた。
なにせ、高校に入学して以来、下流階級のお友達と、時々下品な面をのぞかせる下流階級のお友達に対し、嫌な顔一つせず、お付き合いしていたのだから。
だから、この甲虫や蚊の羽と死体がぼろぼろ落ちている施設のベッドでも、嫌な顔一つせず、寝ることができたのだ。
135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:57:45.24:t1u8oP5T0
爪が三十五回も生え変わると、そろそろ紬の記憶には薄い膜が張りだしてきた。だんだんと、その下流階級のお友達の名前と顔を思い出せなくなっていくのだった。
紬(唯ちゃんと、律ちゃんと……あと誰だったかしら?ゴキブリとカミキリムシがいたような……どっちがゴキブリで、どっちがカミキリムシ?カミキリムシの触覚の方が長いわ……)
作者注:よくあずにゃんはゴキブリに例えられるが、はっきり言って僕は彼女はカミキリムシに近いと思うのです。
なぜなら、カミキリムシの触覚の方が、あずにゃんのツインテールのボリューム忠実に表しているからです。
しかしこのSSはあずにゃんの存在はゴキブリやカミキリムシなどではなく、人間であるという、一大事実を傍証するためにあるのです。
136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 19:01:24.39:t1u8oP5T0
ちなみにロヴァニエミがある、ラッピランド州にはゴキブリやカミキリムシはいない。
熱帯から温帯にかけてはびこっている奴らは、北極圏に近いこの街にはあんまりいないのだ。
ちなみに紬が毎日食べている虫も、日本的感覚で言うゴキブリではなく、ただの甲虫である。
ちなみに、ここの入居者に限らず、スウェーデン人はあまりゴキブリに対する嫌悪感を持っていない。
ここ、スウェーデンの北部には大量の蚊がいる。はっきり言って、蚊の濃度は大気中のCO2どころかN2の濃度を超えているんじゃないか、と思うくらい。
つまり、口を開けていれば、ごく自然に蚊を食べることができる。まあ、そんな事をするのは、紬と、紬がここで知り合った数人の新しい友人くらいなものだが。
紬(ほろほろ……そもそもなんで私はこんな所にいるのかしら?私が日本で何をしたのかしら?
思い出せなくなってきているわ、話し相手が必要よ。
隣のベッドの女の子は、日本語が分からないし、ドクターもわからない、シスター達もわからない。ああ、なんという孤独!)
138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 19:09:56.66:t1u8oP5T0
ちなみに、紬のここでの趣味の話をしよう。
それは、昆虫の解剖であった。つまり、日本で彼女たちが愛した、人間の解剖とは違った。
紬が好んだもの、それは蜂の解剖であった。
なにせ蜂ほど解剖に適しており、また面白い特徴を持った昆虫は中々いない。
まず、体のサイズが大きい。ルーペで拡大すれば、細部まで面白いくらいに見える。
最初に紬は蜂のチキン質の外骨格をはがしていく。人間は外骨格を持たない、そして昆虫は内骨格を持たない。
注意を要するのは、蜂の頭部の口器の観察である。これは下手をすれば折れてしまう。丁寧にピンセットで剖出しよう。
それから、複眼の目、これをきめ細かく観察する。
それから胸部に移るが、胸部には二対の羽(ハチは膜翅目であるため二対、双翅目のハエはたしか一対)と六対の足がそこから出ている。
最後は腹部だが、これが蜂の醍醐味である!丁寧にピンセットで切り裂いていけば、茶色いマルピーギ管が飛び出した中腸を観察できる。
すばらしい!紬は歓声をあげた。蜂ではお得なことに毒嚢も見ることができる。そう、蜂の最大の特徴である毒針だ!
139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 19:17:18.51:t1u8oP5T0
紬(この施設では人体を解剖できないわ……)
紬(なんでこんなに鬱憤が貯まるのかしら、人間を解剖してはいけないという倫理的な縛りのせいで)
紬(ああ、あの昆虫なら、容赦なく入居者たちを解剖するでしょうね)
紬(だ、だれだったかしら?昆虫……そう、あずにゃん?だれかがあの昆虫をアズニャンと読んでた。)
紬(あずにゃん?膜翅目かしら、それとも甲虫っぽいわね。そう、鞘翅目(つまり甲虫目)だったような?ゴキブリ。そう、ゴキブリよ!)
紬「ああ、私の友人はゴキブリだったのよ!」
梓「失礼します、ムギ先輩。」
140:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 19:20:29.40:t1u8oP5T0
紬「ああ、私の友人はゴキブリだったのよ!」
梓「失礼するです」
紬「あぁ。あなたは……その、美しいカミキリムシの触覚のような、ツインテールの持ち主は!」
梓「あなたの可愛い後輩ですよ、いひひ。」
梓はこの厳重な施設のガードを突破してここまでやってきたのだ。
梓「私を昆虫だなんてあんまりです。だって、昔に、ムギ先輩が私の内骨格を折って私が昆虫ではなく、人間であるという事を確認するに至ったじゃありませんか!」
梓「あんまりです!それじゃ、まるで骨折り損のくたびれもうけ、まさしくその諺のとおりです!」
紬「なんのために、こんな辺鄙なところ、まさに世界で一番辺鄙な街にやってきたのかしら。」
梓「いひひ。その答えはですね、簡単ですよ、ここで、さらなる人間の解体が行われるから、やってきたんですよ」
141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 19:24:53.14:b6E6U0Sb0
紬は梓につれられて、施設の地下へ移動した。
紬は、そこにあったものをみて、絶叫した。なんと、大きな挽肉器があったのだ!おぞましい鋭い刃を光らせて、それは堂々と部屋の中央に鎮座していた。
いひひ。梓は近くに落ちていた、大型犬の死骸を持ち上げた。よくぞ、あの小さな体であれだけの重さの動物を持ち上げられるものである。
紬は感嘆した。しかし、かつて自分もあの程度の重さの楽器をひょいひょいと持ち上げていたのではないか?という極めて不可解な記憶が沸き上がっていた。
梓が大型挽肉器のスイッチを入れた。すると、まるでコルク抜きのような螺旋状の刃がぎゅるぎゅる回り、かつてそれで挽き潰してきた、人間どもの脂が飛び散った。
梓は笑いながら、大型犬を投げ入れた。
144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 19:34:16.52:t1u8oP5T0
ゴウーン……ゴゴゴゴ―――ガーガガガ―
大きな音を立てて、どんどん投げ入れられた犬の半身が、刃の中に吸い込まれていくとき、突然犬は目を覚ました。
内骨格を解体されていない死骸は、このような時に突然目を覚ますのだから、厄介である。
犬はくうんくうんと鳴き声をあげ、必死にねじくるう刃から逃れようとしたが、それもかなわない。
まず下腿部が飲み込まれていく。つぎに、胸郭が。犬の発達した肋骨(四足動物は、これがたいそうよく発達している)がバキバキ音をたてて折れていく。一緒に肺や心臓まで飲み込まれていく。
ああ、なんと無慈悲なのでしょう!紬が犬を救おうと、飛び出そうとしたとき、梓は機械のスイッチを止めた。
すると、必死に逃れようと上体を暴れさせていた犬が、まるで線香花火の最後のように、だんだんとゆっくりになっていき、最後は頭をたれてぼとんと息を引き取ったのだ。
梓「この瞬間が大好きなんですよ。」
145:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 19:38:54.97:t1u8oP5T0
満円の笑みをほころばせた後で、梓は再びひき肉器のスイッチを入れた。
今度はシュレッダーに飲み込まれていく紙のように、犬は静かに闇の中に吸い込まれていった。
梓「さて、次は人間でやるです」
紬「そ、それは私をこの犬がひき潰された、この下品な機械に入れるというわけかしら?」
紬は『犬』という言葉を強調した。
紬「まさか、貴族の私を……」
146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 19:44:42.85:t1u8oP5T0
梓「それです!それが豚なんです!」
紬「私が豚?」
梓「そうですよ、ムギ先輩はただの偶蹄目の豚豚ですよ!なぜお金があることをひけらかすのです!なぜあなたは高貴であるのです!そんな下劣な人間感情のせいでどれだけ多くの無辜の民が、地を這ったゴキブリのように潰されたことか!」
梓「私達にしたって、そうですよ。なんで、あんな立派な家に住んでいるんですか、なんであんな幸せな家庭があるんですか、なんであんなに幸せな友人に囲まれているんですか!」
梓「私達が人間ならば、もっと苦悩しなければいけない。私は様々に苦悩し続けました。」
梓「そうです、裕福で満ち足りた環境であっても、それを苦悩しなければいけないのです。それに満足し、自分を貴族だと内心で思い、その地位に安住している人間の罪は、貧困から殺人を犯して首を吊らされた囚人たちの罪よりも重いんですよ」
梓「だから、あのハゲは、あの……名前を忘れましたが、王子は、宮殿を飛び出してしまったんですよ。なのに、なぜ、ムギ先輩は貴族でいられるのですか。だから、貴族は豚なんです。」
挽肉器の回転音をBGMに、頭のオカシイ連中による議論が始まった。
147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 19:47:03.50:t1u8oP5T0
紬「おかしいわよ、梓ちゃん。はっきり言って、私から聞くと、あなたの主張は自分の貧しさ故に、他人の裕福さを批判しているような、嫉妬深い乞食の意見にしか思えないわ。」
梓「……」
紬「私はたしかに、生まれもいいし、育ちもいい、完璧なお嬢さまよ。でも、それなりにたくさんの苦しみを経験している。
だって、私がその生まれに因る苦悩をいだいていなければ、決してあなた達、環境の違う女子高生と付き合うことなどなかったでしょうから!」
梓「つまり、ムギ先輩のようなお金持ちの貴族が、私達下賎の民とわざわざお付き合いをしようとしたのは、あなたが高貴な身分であり、かつ、精神的にも熟成した立派な人間だからということですか。
馬鹿にしないでください、この豚。」
紬「なら、どうすればよかったのよ!私達が生まれによって、あなた達を見下すような、私の昔のお友達と同じ種類だったら、決して私達は出会うことはなかった。」
梓「……」
150:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 19:54:14.91:t1u8oP5T0
紬「ではなぜ、私達が出会ったのかしら?なぜ人と人は惹かれ合うのかしら?」
紬「わたしがHTTと出会ったのは、私が偶然あの時合唱部に興味を持ったから?そして合唱部が存在せず、あの日の音楽室にりっちゃんと澪ちゃんがいたから?なぜなの?なぜ私はみんなと出会ったの?」
梓「悲鳴をあげないでください。ムギ先輩はただの豚です。それも、とびっきり下品な。本当に下品な存在は、その本性を上手に隠すのがお上手ですよ。
さて、そんな答えのない問を絶叫しないでください。これからも私達は、数多くの出会いを経験しなければいけないのですから。」
紬「……」
梓「即爲廣説二百一十億諸佛刹土天人之善惡國土之粗妙。いひひ。」
151:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 20:04:47.59:t1u8oP5T0
紬はその言葉の意味を解さなかった。梓は笑いながら、地下室の外へいってしまった。
挽肉器のスイッチを入れたままだった。
紬(メサイアだわ!このメロディー)
挽肉器の刃が回る音が、あの人類が奏でた至高の名曲、メサイアにそっくりのメロディだと言うことに気がついたとき、紬は人間を支配し続けてきた、どうしようもない、としか表現し難いある種の感情に気がついた。
挽肉器は―ひきつぶす肉を失ったそれは―オルゴールのようにメサイアを奏で続けているのだ。
不条理だわ!そう、なぜここまで下品な存在が、メサイアのような高尚な音楽を生み出しているのか!
紬は恍惚とした表情となった。はっきりいって、彼女がかつて作曲した音楽のどれもがメサイアには到底及びもつかなかったのだったが。
152:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 20:08:43.42:lrNArho40
メサイアの絶叫のようなコーラスが、この螺旋状の刃の奥から聞こえてきた。
For unto us a child is born
紬「ひええ。」
紬はいつもとは似ても似つかない声をあげた。そして、足を一歩一歩踏み出し、メサイアに近づいていった。
さあ、これから自分がこのぐるぐる回る刃の中に飛び込むとは知らず、紬は恍惚とメサイアにあわせて歌っていた。
刃先が目の前に迫った瞬間、紬ははっとした。
誰かに腕をつかまれていた。梓が戻ってくるはずもなかったので、一体誰だろうと紬は後ろを振り返ったが、そこには誰もいなかった。
しかし、床を見ると、数本の、長くて黒い、艶のある髪が落ちていた。
紬はそれを咀嚼してみた。それは澪のトリートメントの味がした。
156:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 20:18:22.82:t1u8oP5T0
紬「そうね、ごめんね、澪ちゃん。澪ちゃんは、内骨格を解体されて、死んじゃったのね……
私も危うく死ぬところだった。でも、なんで私を助けてくれたの?
意味が分からないわ、この一連の流れ……不可解極まりない」
紬「そして私は何をして、どこへいくべきかしら。」
一見、澪の最後っ屁によって救われたかに見えた紬だが、これは全然救われたわけではなく、さらに彼女が狂気に走る元凶となる事件なのである。
そもそも、この程度で、人間の内に潜む狂気が救済されるわけがない。
このようにして、ささやかな事を救いだとか、神様のお導きだとする連中こそ、盲目で、救いようのない屑なのである……
157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 20:23:27.53:t1u8oP5T0
第6部
梓「パリ、それは芸術と大便の街」
159:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 20:43:01.84:t1u8oP5T0
突然だが、舞台はスウェーデンのロヴァニエミから、フランスの首都パリへうつる(それはこの部だけで、残りすべての人間解体と魂の救済はロヴァニエミで行われるのだが)
現在、パリのジャン・ジョレス通りからさらに奥まったところに入ったマルタン通りの薄汚いバーに、一人の女子高生がいた。
バーの奥に座り、酸っぱいブランデーをすすり、煙草をくゆらせながら、バルザックを読む女子高生がいた。(とても滑稽だな!)
フランス人は彼女を無視した。女たらしのフランス男性が、この手の女性を無視するのは珍しいことだが、決して近づいてはいけないと分かっているのだから、彼らも賢いのだ。
160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 20:48:45.10:t1u8oP5T0
律「澪?お前は澪なのか!」
しかし、そのフランス紳士たちの空気を読まず、その孤独な女性に飛びかかる人間が一人いた。
律「おま、お前、唯の格好をしているけど、確かに澪なんだよなぁ~私は死刑になって一回首を絞め潰されて、糞尿やらを垂れ流した身だけど、お前に会いたかったぞ、澪」
唯「いひひ。」
律「え……その笑い方は……」
唯「ここじゃ、人間解体は行われませんよ、律先輩」
律「ひ、ひぃー!お前は、梓!」
唯「いひひ。」
律は悲鳴をあげながら、小水を漏らした。
162:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 20:53:28.20:t1u8oP5T0
唯「じょ、冗談だったのに……ごめんねりっちゃん」
なんと、唯はあくどい事に、梓のふりをして、律をビビらせようとしたのだ。しかし、律は恐怖のあまり放心していた。
唯「さ、その汚いションベンを含んだパンティーを捨ててきて。それから、ちょっとお話をしよう。」
律「ふえーん……て、お前は澪じゃないのか?澪だと思ったから私はここに来たんだぞ!」
唯「ごめんね、澪ちゃんもいるんだけど、今は私の魂の中にいるよ。なにせ、澪ちゃんはかえるべき骨格を、あずにゃんに解体されちまったから。」
律「ふーん……詳しいことは分からないが、とにかく、お前は澪であり、唯であるのだな」
唯「うん!」
唯(やべー……嘘ついちゃったよー。澪ちゃんがもう、内骨格を破壊されたから、永遠にあの独房から出てこれない事を伝えられないよ……)
唯(澪ちゃんは確かにあの時、脳髄ごと私の肉体を乗っ取ろうとしたけど……確かに、あの独房から出てきて、澪ちゃんは私の精神を支配した。
しかし、死刑によって、柔らかい部分を失ったとき、澪ちゃんも失われたんだよー。
まあ、りっちゃんを利用するためにも、ここは、澪ちゃんが生きているふりをしないとね!うへへ)
163:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 20:59:56.63:t1u8oP5T0
律「んでんで、お前の目的はなんなんだ、この辛気臭いバーに用なんかないだろ。」
唯「そう。ここにはあずにゃんもいなければ、(それゆえに)人間解体も行われない。
私の目的は、ここである人間どもを待つことだよ」
律「そ、それは誰だ?」
唯「日本から西欧州へ向かうとき、一番近い空港は?ヘルシンキにある国際空港なんだよ。
つまり、通常決して彼女たちはパリには来ない。そもそも、ヘルシンキを経由してシャルル・ド・ゴールに来る日本人の方が多いくらいだからね。」
唯「私は試しているんだよ。ムギちゃんと私の力、どちらが上か?
もし、彼女たちが、私に引きつけられるなら、絶対に今、憂達はパリにいる。そう、りっちゃんがひきつけられてきたように」
律「わ、私は、スペインから来たからここを経由しただけだ、なら絶対憂ちゃんたちはパリをよらないぜ!
だって、わざわざ遠回りするかよ。それに憂ちゃんたちの方だって、きっと唯がフィンランドにいると思っているさ」
確かに、この物語の主役たちはこれからロヴァニエミに結集するのである。ただ、唯は寄り道をしていただけだった。
人生において、寄り道のいかに大事なことか!
唯「りっちゃん。話は変わるけど、先に謝っておくことがあるよ」
律「ん?なんだ」
唯「澪ちゃんを殺しちゃって、ごめん」
164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 21:03:37.05:t1u8oP5T0
律「……なんだ、その事か」
唯「憎くないの?りっちゃんにとって、澪ちゃんは私達の中でも特別な人間だったんでしょ?
私はその澪ちゃんを殺しちゃったの。そう、そして肩関節と股関節を外して……」グスングスン
律「もういいんだよ、唯。顔を上げろよ。せっかくの化粧が台無しだぞ。」
律「澪は生きているんだ、私はそれさえ信じていればいい。生きてさえいれば、きっとどこかで会えるだろ?
いや、実は澪は本当に死んじゃっているんだて思うことの方が多いいんだ。何か、人間的な理由で、お前は隠しているのかもしれないけど、やっぱり骨格を破壊された澪が生きているとは思えないよ。
私たちは、舌骨と頚椎の破壊ですんだからよかったものの」
唯「りっちゃん……」
この時、唯は澪の死を打ち明けようとは思わなかった。逆に、永遠に澪の死を隠さなければいけないと感じた。
そう感じた時から、自分の脳味噌の中で、澪が生き返ってきた気がした。
それだけで唯は救われた。そう、澪殺害の件に関しては。
165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 21:06:58.31:t1u8oP5T0
律「だが、どうしても解せないことがあるんだ。そもそも、なぜ、唯は澪を殺したのか?」
唯「……」
その、物語の根幹についに蚊帳の外の人間だった律が踏み込もうとしたとき、バーの外で悲鳴が聞こえた。女の悲鳴だった。
唯はそっと、吸いかけの煙草を灰皿におき、バーの外を見つめた。
なにか、またひどい人間の解体が起こる気がした。しかし、まだ唯はそれを許容していた。なぜ、人間を解体してはいけないのかがわからなかった。
バーの扉が開き、ジャケットのようなに剥がされた、人間の皮膚が飛び込んできた。
正中線から、大胸筋を切断し、(鎖骨下縁まで)、それから、三角筋などの、上腕の筋肉も剥がしつつ、背中の僧帽筋から菱形筋にかけて、ざっくりきられている。
そして、背中はつながっていて、まるで革ジャンのように、おしゃれな人間の皮と筋肉が投げ入れられた。これは、メッセージだった。
だが、そのメッセージの意図は誰にもわからないし、投げ入れた本人にもわからないかもしれなかった。
166:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 21:09:53.29:t1u8oP5T0
律と唯は、その人間の革ジャンを観察した。
まず、乳房と乳首がそのままついていた。控えめな乳房を揉むと、それはまだ生前の張りを感じさせる逸品だった。
唯「これは、処女の乳房かもしれない」
律「た、確かに。まだ、乳首が黒ずんでいない、それどころか薄紅色にてかっている。ああ、これはきっとまだ処女の、十代半ばの女の子の乳房だ。」
そう言いながら、律はその左の乳首を舌でなめ、それから乳房を口に含んだ。
律がそれを楽しんでいると、今度は、人間の顔の皮が投げ込まれた。
唯「これは誰のだろう?」
167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 21:12:06.86:t1u8oP5T0
唯がマスクのように、その皮を被ると、律は首をかしげた
律「誰だろう、でも見たことあるぞ……佐々木さん…だったかな?」
律はまたしても名前を忘れてしまったが、これは鈴木純の皮である。
二人はそれに気がつかぬまま―そう、他の部位を投げ込まれても気がつかないだろう―、その皮を引き伸ばしていろいろな表情を作って遊んでいた。
今度は、骨盤を投げ込まれた。そう、骨盤にはまだ骨盤内臓器が入っていた。
律はそこから膀胱を引きちぎり、風船をふくらませるようにして、空気を輸尿管からいれて、遊んでいた。
唯は膣口から子宮口までどのくらいの長さがあるのか、純粋に医学的な興味を持って、測っていた。そう、子宮の断面をつくれば―ナイフによって―それが容易になるのだった。
168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 21:13:35.60:t1u8oP5T0
ひとしきり遊んだあと、今度はダンプカーでひき潰されたような、ぐちゃぐちゃの死体が投げ込まれてきた。もう、二人は鈴木純の死体に興味がなかった。
それから、入り口の向こうで声がした。月明かりでうっすらとドアの側にその人間の影が出来ていた。
その人間は側頭骨と頭頂骨の縫合辺りから、人間にはありえない、長くて太い器官を出していた。それは影になって黒かった。
(本当に黒いのかもしれない)まるで、その器官は、昆虫の触角のようだ!
「それは純ですよ」
ぼこりと音を立てて、今度は2kg弱の柔らかい彼女の脳髄がバーの中に飛び込んできた。
そこには12対すべての脳神経がそっくり観察できたはずなのだが、なんたることか、視神経だけが切断されていた。
169:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 21:14:51.90:t1u8oP5T0
唯「笑いなよ、そこの人間!人間の本性は笑い方でわかるんだよ、フンス」
律「フンス!なんと滑稽な響き!これが唯の笑い方だ、ならお前の笑い方を見せてみろ、昆虫!」
「いひひ。」
唯「あ、あれはあずにゃんだ!」
律「ひぃー!梓かよ!後輩の癖に生意気だぞ!」
梓「いひひ。先輩方、早くロヴァニエミにいらしてくださいよ。パリじゃ、あまりおおっぴらに人間を解体できないんですよ、そのせいで、ほら。あんまり残酷なことが出来ません」
梓は、純の眼球をペロペロなめながら、話していたが、我慢できなくなったのか、両の眼球を口に頬張り始めた。
それは、まるで、ひまわりの種を口に頬張る、ハムスターのような可愛らしさだった。
171:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 21:16:11.66:t1u8oP5T0
梓「憂と和さんも、いまパリにいますが、それで満足でしょ?いま二人がここに来ら、私は二人をここで解体しますよ。
さあ、その純のひき潰された死体を返すです。これを今から解体してやりますから。」
唯「そもそも、なぜあずにゃんが、パリなんかにいるの?」
梓「そりゃ、唯先輩の事が好きだからですよ。」
梓の突然の大胆な告白に、唯は頬を赤らめた。
梓「でも、私は澪先輩のことも好きで、尊敬しているんです。ですから、二人が一つになるのが私の望みであったんです。
現在は、澪先輩は死んでいますが、これから復活するのですよ。
四人がロヴァニエミに揃い、余分な連中をそこで解体したときに…かならず、澪先輩はもどってくるです。」
さあ、次回、衝撃のラストを、ロヴァニエミで私達は迎えるんですよ
172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 21:18:04.25:t1u8oP5T0
第七部(超大長編であり、こここそ、人間解体の真骨頂)
これを完成させる最後の一ピースをうめるため、ちょっと図書館で取材してきます。あと栄養をとってきます。
また一時間、二時間後に……
175:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 21:22:22.42:dms4HJnL0
梓が紬と二人きりで遊ぶのは、この日が初めての事だったかもしれない。
梓は少しだけ気まずい思いをしていた。なぜなら、紬は一つ年上だし、唯や律のように向こうから積極的に後輩である自分をいじることは少なかったからだ。
紬はいつも、何を考えているのかわからない。
少し浮世離れしていて、軽音部の四人とは親しくしているが、一体どのような小学校、中学校での生活を送ってきたのか、てんで想像がつかない。
梓はいつも、疑問に思っていた。なぜ、こんなにも美しく高貴な人が自分たちと親しく(それも紬の方から)接してくれるのだろうか?
184:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 23:16:29.87:t1u8oP5T0
第七部 梓「人間地獄」
185:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 23:21:15.91:t1u8oP5T0
その日は休日だった。梓は街で一人、退屈そうに歩いていた。買い物に来たのだが、あまり気が進まなかった。
足が勝手に駅の方へ向いていて、ぶらぶらと興味を引かれる店に入って服やら小物やらを眺めていた。
その時、偶然紬と出会った。
人通りの多い、大通りから一本外れた所にある、レコードショップ。
今時珍しく、豊富なレコードを取り扱っていた。
梓の家はLPレコードを聞ける環境があるため、若い人には珍しく時折レコードを眺めに来るのであるが、梓はこんな小さな店で紬に会えるとは想像していなかった。
186:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 23:25:19.68:t1u8oP5T0
その時、紬は一枚のLPレコードを手に取っていた。
梓はそれが気になって、ひょいと覗き込んでみた。
―Messiah―と大きく描かれ、その下に1969年という年号と、指揮者と楽団の名前が記されていた。
紬は恥ずかしそうにそのLPレコードを棚に戻した。
187:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 23:32:05.95:t1u8oP5T0
紬はずいぶんとお洒落な格好をしていた。とても清楚に見えた。
梓はジーンズ姿の自分とは大違いだと思った。
紬「梓ちゃん。今日は暇かしら」
紬はつぶやくように言った。梓は頷いた。
梓「ええ」
紬「ならお茶でもしない?」
189:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 23:36:19.48:t1u8oP5T0
毎日、放課後お茶をしているのに、休日もするのだろうかと梓は思った。でも、紬と二人きりのティータイムは、いつもの五人でのそれと違うものになるのだろうと思った。
紬と二人きりだと、自分も貴族の一員になったような気分になれるだろう―それに見合った格好さえしていれば。
梓が紬に連れていかれたのは、高層ビルディングの最上階で、壁がまるですべてガラスでできた、高級なレストランだった。
客は自分たちしかいないような気がした。席と他の席の間隔がとても広いのだ。
自分たちが座った場所から、隣の席までおおよそ、通常のファミレスの端から端まであった。
そこから眺める梓の街や家は、模型のようだったし、人間一人見えなかった。
190:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 23:40:21.81:t1u8oP5T0
梓はかなり恐縮し、おどおどしていた。まさか、紬がこんな店に―確かにこのような店を行きつけにしているイメージがあったが―自分を連れてくるとは想像だにしていなかった。
紬「こんなところに連れてきてごめんなさい」
紬は謝った。
梓「い、いえ。ただ、少し驚いているだけです。こんな、映画の中のようなお店があるだなんて。ウェイターもすごく礼儀が正しくて……なんだか場違いな気がします」
梓はまず疑問に思った。このような店は、スーツ等の正装が必要ではないのか?なのにジーンズ姿、そして紬も清楚であるとはいえ、ワンピース。このような私服で入れる場所なのかと思った。
紬「いいのよ。ここは昼間はあまり使われない場所だから。」
紬は静かにコーヒーをすすりながら言った。いつものような冗談めいた雰囲気はなかった。
191:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 23:47:49.65:t1u8oP5T0
梓「えっと、よくいらっしゃるのですか?唯先輩達と、この店に。」
紬「初めてよ。友達とここに来るのはこれが初めて。」
梓は、紬が自分の事を友達だとよんだことに、僅かな戸惑いを感じた。
この年代によくあることだが、たかだか一年の生まれの違い(人によっては一ヶ月の生まれた日の違いのこともある)で、その差を過剰に感じてしまうのだ。
梓も先輩には敬意を払い、同輩の友達と接するのとは違う接し方をしていたので、紬に『友達』と言われたことに気恥かしさと、少しの申し訳なさを感じたのだ。
梓「あ、ありがとうございます」
梓は、そう答えることしか出来なかった。もし、梓も紬と同じ学年だったら、どんな反応ができただろうか?
192:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 23:52:27.11:t1u8oP5T0
それから、しばらく沈黙が続いた。梓は心ここにあらずという感じでキョロキョロしているし、紬は物思いにふけるように、自分のコーヒーカップに浮かんだ波を見つめていた。
紬「……Messiah…メサイア……1742年、ヘンデル作……梓ちゃんは聞いたことあるかしら?」
梓「ハレルヤですか?ありますよ」
紬「ハレルヤじゃないわよ、メサイアよ。」
そこでまた会話が途切れた。
紬「ごめんなさい。なんだか今日は、いつもと雰囲気が違っちゃって。でも梓ちゃんなら理解してくれると思ったのよ」
梓「何をですか……」
紬「ごめんなさい。ごめんなさい。……なんだか涙が止まらないわ」
紬は突然泣き始めた。梓はこのような高貴な人でも、心の内に苦悩を抱えているのだと思った。
そして何が原因かは聞いてはいけない気がしたが
194:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 23:57:33.96:t1u8oP5T0
紬「……ごめんなさい。いいえ、勇気を持たなくっちゃね、紬」
泣き止んだ後、紬は梓の瞳を飲み込むような眼差しで梓を見つめた。梓はどきりと心臓が跳ね上がった。
紬「梓ちゃん。笑ってみて?」
梓「え……?どうしてですか?」
梓はドキマギした。突然笑えといわれても、できるはずがなかった。
紬「自分がこれまで、一番楽しかったことを思い浮かべてみて。」
梓はだんだん、頭が真っ白になってきた。思い浮かべようとしても、緊張して碌に思い出せなかった。
紬「でも、梓ちゃん。あんな笑い方はしないのね。」
梓「……?」
195:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 00:02:26.98:KXZM+jHz0
紬「うん、話そう。梓ちゃんの身に、そして私達5人の身にこれから起こる悲劇を……」
紬は決意したようだった。
紬「まず、唯ちゃんが澪ちゃんを殺す。」
梓「いひひ」
196:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 00:07:45.35:KXZM+jHz0
梓「人間を解剖するには、上皮組織、筋組織、結合組織という三つの障害を克服しなければいけません」
梓「骨は厳密には結合組織の区分にいれられますが、いいえ、人間というものは骨に結合組織、筋組織、上皮組織をまとわりつかせてようやく立っていられるのです」
梓「骨を失ってしまった人間は、まさしく、完全に解体された人間となるのです」
梓「さあ、今ここロヴァニエミに四人の役者が集結しました。これから始まるのは、人体大解剖です。」
198:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 00:10:29.38:KXZM+jHz0
紬が入院していたロヴァニエミの施設の地下室、例のオルゴール的挽肉器の前に梓が立ち、それを取り囲むように紬、唯、律が集まってきた。
律「梓。お前は気狂いだ。」
律「唯。お前も気狂いだ。」
律「ムギ。お前も気狂いだ。」
律「私はどうだ?教えてくれ」
唯「りっちゃんも気狂いだよ。」
紬「りっちゃんも気狂いよね。」
梓「律先輩も気狂いですよ。」
律「なあんだ、そうだったんだ。」
199:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 00:16:47.09:KXZM+jHz0
律「さあ、なら私をもとの、軽音部部長の田井中律に戻してくれよ」
梓「律先輩は、耐えられますかね」
地下室の中央に、大きな水槽が用意されていた。その中に、無数のヒルがうごめいていた。
体長は小指の第一関節から先くらいの小さなのもあれば、全長30cmくらいの巨大なものもいた。鈍色のものから、原色の赤色黄色のものまで選り取りみどり。
梓「ヒル…環形動物ヒル綱……ヒルの特徴は、刃のようなキチンの顎で皮膚をえぐり、そこから血を吸う事。
ヒルは血を吸いパンパンに膨れ上がるのです。
そしてヒルは抗凝固剤を血管に入れるので、ヒルをライターで炙りひっぺがしても、そこから出る血は止まりません。」
200:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 00:22:23.80:KXZM+jHz0
軽音部の三人は、律をその水槽にいれたあと、その水槽に蓋をした。律は手足を曲げ、苦しそうな格好のままヒルに血を吸われていくのだった。
りっちゃんの思考
あ、どんどん入ってくる。制服の隙間からもぞもぞもぞもぞ。
血を吸われるよ、全身の血が。目の前に、いる!!
紫色のヒルだ、とても大きい。口を空けたぞ。
ひぃ。口に硬そうな歯がびっしりだ。それで私のどこの部分をえぐるんだ!
デコか!考えたな、でも、おでこにはあまり血管は通ってないぞ。諦めたか。チッ。血が止まらん
さあ、そいつは私の首に入っていく。残念だったな、内頸静脈も総頸動脈も、かなり体の奥深くにあるぜ。はっいりいってお前のその刃じゃ、私のドラムで鍛え上げた胸鎖乳突筋は破れないだろ。
だが、全身の血が抜かれていくなぁ。
201:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 00:29:38.33:KXZM+jHz0
梓「二時間経ちました。ヒル達はもう、パンパンに膨らんでますね。律先輩は笑っていますね」
唯「りっちゃん幸せそう」
梓「さあ、次の水槽に移しますよ。今度は殺しに行きましょう」
梓「次はムカデですよ。」
律「ム、ムカデか!昆虫の親戚じゃないか、梓!ムカデも節足動物だぁ!」
梓「ふん!」
梓達は律を今度は強引にムカデの水槽に突っ込んだ。ヒルは面倒くさいのでつけたまんまだった。
律の赤い血でパンパンに膨れ上がり、葡萄の房のように律にひっつくヒルは、洒落たアクセサリーだ。
とくに耳たぶにひっついた、赤いヒルが耳ピアスのようだったので、唯は笑い転げた。
唯「り、りっちゃんが不良になっちゃった!うへへー」
203:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 00:37:07.50:KXZM+jHz0
梓「いひひ。さあ、ムカデだムカデ。」
律をドスンと水槽に入れると、その重さで底にいたムカデが何匹か潰れた。青色の体液を出して、潰れた。
ムカデ達は突然大きな肉が落ちてきたのだから慌てた。そもそもムカデは肉食性の昆虫で2800種すべてのムカデが昆虫を食べることが知られているが、人間を食べることはまだ実証されていない。
ここは壮大な人間実験の場と化した。
腹をすかせたムカデ達は、律に噛み付いた。
律は悲鳴をあげた。絶叫をあげ続けた。
何匹かのムカデは律のだらしなく開いた口から律の口腔内に侵入した。律は慌ててそのムカデを噛み潰した。苦い味が口の中に広がった。
一年間、全く歯磨をしなかったら、口の中がこんな味でみちるのだろうか、そんなひどい匂いがしてきた。
なにせ、昆虫を胃袋に詰め込んだムカデである。ひどい匂いがするのも道理だ。
205:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 00:40:36.89:KXZM+jHz0
ムカデの第一節の付属肢は一対の毒牙となっていることが多いので、これだけ色とりどりの毒ムカデに噛み付かれ、律は絶叫をあげ続けた。
ただ、ムカデの噛む力では到底律の皮膚など破れるはずもない。(人間の表皮組織は非常に堅牢なのだ)
次第にムカデ達は咬むのを諦めた。律の体は全身真っ赤になり、彼女の体は毒で火照った。
律「水、水をくれ、水をかけてくれ」
梓「今度は、蚊です!」
律は今度は蚊の水槽に入れられた。蚊は容赦なく律を刺した。律の肌はボコボコに膨れ上がった。
もはや、律は目も当てられない姿になった。
梓「人間の外見はこれだけ醜くなっても、案外中身は美しいんですよ。」
206:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 00:45:06.48:KXZM+jHz0
水槽から引きずりだされた律を仰向けに寝かせ、梓はメスを手にとった。律の四肢を革ベルトで拘束した。
梓は律の、オトガイから甲状軟骨に沿ってメスを入れ、正中線上の表皮をメスで切開した。
それから、水平にメスを入れた。そして、左手でピンセットを持ち、ピンセットで皮膚を真皮ごと持ち上げ、メスを真皮と皮下組織の間にあて、ごそごそ削り取っていった。
そう、これから梓は律を生きたまま、皮膚をひっペがそうとしているのである。
皮膚をオモテ面の皮膚を剥がされた律。それから、梓は筋肉を剥がし始めた。
大胸筋、小胸筋、前鋸筋、肋間筋。どんどん剥離していく。神経は無造作に切られていく。そのたびに律は耐え難い痛みを覚える。
律「うきゃあぁ」
梓は容赦なしだった。ついに肋骨の下に胸郭臓器がみえた。梓は律の肺に、メスを突き立てた。ピューと音を立てて、彼女の片肺はしぼんだ。
唯「わい!気胸だ、気胸だ!」
唯ははしゃいだ。
207:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 00:45:14.85:NdPuePa7O
それから、もう片肺も潰された。今度は、梓が肺をちぎるように引っ張ったのである。
それから、潰れた肺の奥に見える心臓を無視するように、梓は律の肋軟骨をはさみで切断し、肋骨を胸骨から剥がした。
肋骨も、すべて律の胸椎から外された。そして無造作に床に捨てられた。
この段になって、律はとてつもない苦痛で狂気から目を覚ました。
律(私は一体何をやっていたんだろう……なんでこんなひどい目にあっているんだろう)
気がついたら、律の大部分の筋肉と神経と血管は潰されていた。顔も表情筋をはじめ、第一層筋はすべてちぎられ、それから咀嚼筋などの第二層も、梓がぐちゃぐちゃにした。
今度はうつ伏せにされ、背中の筋肉を剥がれた。そして、脊椎をバラバラにされ、ついに脊髄を露出させられた。
梓はその脊髄にメスを突き立てた。そのたびに、律は、全身のあらゆる部位を切断される激痛に苛まされた。
そう、四肢のあらゆる神経が、そこに通じているからである。
211:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 01:01:58.37:KXZM+jHz0
脊椎を失った律の体幹はふにゃっとしていた。
そして梓はそこにとんでもない名案を思いついた。
梓「唯先輩!すごいアイディアが浮かびました」
唯「なに!あずにゃん隊長!」
梓「いま、律先輩の消化器官が―滑液で絖っている、この色艶やかな臓器が―見事に露出しています。ここに、ゴキブリを入れてやるんです」
唯「な、なんと!正気ですか!あずにゃん隊長」
梓「しょ、正気ですよ///さあ、先輩。ゴキブリの水槽を持ってきてください」
唯「うへへー」
213:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 01:04:24.15:KXZM+jHz0
梓「さあ、ゴキブリ祭りですよ」
まず梓はメスで露出した律の胃(筋肉、腹直筋・外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋は切断したが、まだ腹膜は綺麗に残されていたのだが、それを梓は丁寧に切開し、胃を膨出し、胃に通じる神経を引きずると胃が現れる。)を切開した
唯「うっ。臭いよ、りっちゃんのお腹の中、臭いよ」
律の胃袋には、昨日食べた、スパゲッティが消化されずに残っていた。まるでスパゲッティ・カルボナーラのクリーム色だった。それはミートスパゲッティであったのに。
梓「さあ、ここにゴキブリをいれます!」
胃の中に生きたゴキブリを入れた。それはもぞもぞ暴れだした。
梓はすぐに胃の切開後を縫合し、消化器系をふさいだ。律は、消化器を内部から蹂躙される苦しみに悶えた。
214:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 01:07:22.85:KXZM+jHz0
その次に、梓は律の腹膜内に残った活きの良いゴキブリを入れた。そしてすぐに腹膜を縫合した。
律は腹をゴキブリにまさぐられる感触にたえきれなかった。
もし律が、スパイだったら、この場ですべての国家機密を漏らしてしまうだろう。
律(澪……私の人生ってなんだったんだろう。こんな苦しい最後を迎えなければいけないなんて)
澪(律……)ニヤニヤ
律の空想の中の澪は自分のこの、無様な姿を見て笑っているものだった。
そして律が最後にみた光景は
胃から入ったゴキブリが、自分の口から出て、空に羽ばたいていく姿であった。
216:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 01:16:40.43:KXZM+jHz0
それから梓は淡々と律の骨格の解体を進めた。
唯が脇で梓を応援していた。紬は途中から吐き気をこらえながら、端で見つめていた。決して紬は目を閉じなかった。このような解体に至った責任は自分にもあると痛感していた体。
紬(りっちゃんの魂も……救済されなかった)
紬(澪ちゃんの魂は今どこにあるの?唯ちゃんの頭の中?それとも、もうそんな物は存在しないの?)
梓は数時間かけて、律の解体を終えた。
梓はセックスの後のように、汗だくになっていた。(ただし梓は絶対に処女なのである)
唯「あずにゃん、おつかれ!」
唯がぽんぽん、と梓の頭を撫でた。すると梓は顔をほころばせた
梓「ありがとうございます、唯先輩。そして、澪先輩」
唯「ふふん」
217:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 01:23:12.66:KXZM+jHz0
梓は残った律の残骸を、かつて犬を解体した大型挽肉器にいれた。
掃除機に吸い込まれるように、闇の中に消えていく律の骨格をみて、紬はさめざめと泣き始めた。
梓「どうしたんです?ムギ先輩」
紬「わからないのよ。私自身が。そして梓ちゃんのことも。唯ちゃんのことも。」
梓「なぜわからないのですか?さすが豚ですね。下品な豚は、この人間解体を理解出来ないのですか」
紬「唯ちゃん!そもそも、なぜあなたは澪ちゃんを殺したの?」
唯「それは、りっちゃんにも聞かれたよ。答えようとしたら、邪魔が入ったけどね」
紬「教えて!それだけで、私は多分、救われるの!なぜ、唯ちゃんは澪ちゃんを殺したのか?それこそが私達の狂気の原点なのよ……それがわかれば…」
梓「救われる?救われる!人間なんて決して救われないんですよ。最後の最後まで、律先輩のように苦しんでいくんですよ。
苦しんで、苦しみぬいて……あなたのような、貴族風情の豚も、最後は死ぬときは、苦しむんですよ。
だって、生きているときにあったすべてのものと関係を捨てなくちゃいけないんですから、その苦しみは貧乏人の比じゃないでしょうね。」
紬「問題はそこじゃないのよ!」
唯「私が……澪ちゃんを殺したわけはね」
218:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 01:30:18.03:KXZM+jHz0
和「待ちなさい。唯。」
いつの間にか、真鍋和が、地下室にいた。青白くなった顔色、そして、苦しみでぼろぼろになった肌が今の真鍋和だった。
ここまで来るのに、壮絶なドラマが有ったのだろうが、それはあの五人の苦悩に比べれば薄っぺらいものだろう。
和「この事件の黒幕は……そう、陰謀を引き起こしたのは、そこの下品な豚なのよ。だから、絶対にその『大切な事』を教えてはいけない」
紬「なんで!和ちゃん!私は、なにもしていないわ、私は巻き込まれただけ……」
和「そうじゃないのよ。ことはもっと深刻なの。そして、梓ちゃん。その振り上げた手をおろしなさい。私に何かあったら、憂が黙っちゃいないから」
梓はメスを持った手を振り上げ、今にも和に向かって投げつる勢いだった。
梓「いひひ。」
梓は静かに手をおろした。
220:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 01:37:22.90:KXZM+jHz0
もし、物語が正常に推移していれば、決して唯が澪を殺すことはなかった。
見てみてくれ!あの、美しいまでの女子高生の日常を。あの環境では、貧困や屈辱、そして存在に対する苦悩、人間を何千年も苦しめ続けてきた、そしてこれからも苦しめ続ける様々な苦しみが起こりえない。
人間なら必ず苦しむ。それなのに、彼女たちは苦しまない。
そして唯が澪を殺すことになった、その直接的な原因をいくらあの美しい日常を穴があくほど見つめても見つからない。
和もいくら考えても、唯が澪を殺す理由を見いだせなかった。
梓「唯先輩が、澪先輩を殺す……?」
221:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 01:44:29.44:KXZM+jHz0
紬「……毎日夢に見るの。梓ちゃんが入部してから。」
梓「えっ」
梓は驚いた。と、同時に疑問を持った。そんな残酷な夢を毎日見続けて、完全な精神の調和を保っているこの人は、おかしいのではないかということだった。自分なら、毎日そんな狂った夢を見続けていれば、頭がおかしくなる自信がある。
紬「いえ、はっきりと覚えているわけではないの。すごい深い夢なのよ。朝起きたら、すっきり忘れてしまう、そんな夢。でも、毎日見るのよ。最近、気がついたんだけど。で、梓ちゃん。梓ちゃんはそんな夢、見ない?」
梓「……見たことがないです……でも、ムギ先輩、大丈夫ですか……私なら、そんな夢を見続けたら」
紬「気が狂う?」
222:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 01:50:18.37:KXZM+jHz0
和「琴吹紬はとある願望を、心の奥底に持っていた。それは、人間の解体なのよ」
和「この世界はムギの夢。だから、この残酷で非人道的な行為は、ムギの心のある種の現れなのよ。
一見完璧な人間性を持つムギの奥底に潜む、人間的な闇。
それは普段から立派で人徳がある人が抱え込みやすいのよ」
和「この世界はムギの夢。だから、梓ちゃんを恐れる必要なんてない。はっきり言って、梓ちゃんは、ただの木偶の坊よ。
肝心なのは、主人公の唯が(この世界はムギの夢なのに、主人公は唯なの)、握っている鍵、つまりなぜ唯が澪を殺したのか?をムギが知らなければいいの。」
唯「……」
梓「……」
紬「……」
223:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 01:53:54.34:KXZM+jHz0
梓「馬鹿ですね。ここは夢じゃありませんよ。いひひ。」
唯「いひひ。」
紬「いひひ。」
和「え。嘘」
和は気がついた。ここは自分が理解した世界とは全く別種の狂気に満ち溢れているということに。ここにあるのは、ただ純粋な人間解体への欲求だけだった。
勘違いしていたのだ。
人間を解体したいという欲望を、理性的に解釈しようとする姿勢がそもそもおかしいのに。
和は、いつの間にか、右手をミキサーの中に入れていた。
なぜ、そうしたか、そしてミキサーがどこから来たのかはわからなかった。
梓「スイッチ、オンです。」
ブーン………ヴィー―-―……ババババ……
226:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 02:04:47.66:KXZM+jHz0
唯「和ちゃんの、右腕ジュースだー」
紬「まあまあまあ!」
梓「いひひ。飲んでみてくださいよ、和さん。」
和「憂!憂!早く梓を殺して!」
唯「憂?憂は私の妹だよ、和ちゃん。」
唯は口を開いて、そこから何かを出した。誰かの右手がそのまま出てきた。
それは言うまでもなく、平沢憂のものだった。
梓「まあ、和さん程度の人間なら、あんまり解体する欲求が湧き上がりませんよね」
紬「うふふー」
唯「うへへ」
和「や、やめてぇー!!」
和はいつの間にか、革ベルトにより、全身を固定されていた。
そして、唯が、ジュウジュウに熱された、金属の長い串を持っていた。先が、尖った金属の串だった。
唯「これから和ちゃんで、焼き鳥をつくるね!!」
227:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 02:09:06.51:KXZM+jHz0
和は、肛門から口まで一刺しされた。和の体の芯を激痛が走った。
脊柱の他に、もう一本の体を貫く柱を用意された和は、ただでさえ熱い金属の、身悶えする苦しみに耐えきれずに失禁した。
和「ひぃ、ひぃっぃ。」
そしてその小便が、和の大腿から、滴り落ちると、じゅうと音を立て、そのアンモニアを多分に含んだ尿は蒸発した。
なんと、唯達は串に刺さった和を持ち上げ、木炭が明々と燃える大きな釜の上に置いたのだった。
和は、串に刺さった鶏肉のように炙られていく。まず、汗が噴き出る。それから、全身の脂がにじみだしてくる。
大変なことに、唯が火加減をあやまったのか、火と和の距離が近すぎた。
火が和の制服に燃え移り、そして、髪の毛に燃え移り、それから、彼女の脂ぎった体を燃やし続けた。
梓「これじゃ、焼き鳥じゃなくて、丸焼きです」
唯「うへへー、ごめんね、あずにゃん。」
三人は、黒焦げになっていく和を笑いながら眺めていた。
真鍋和は、絶望して死亡した。
228:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 02:17:40.36:KXZM+jHz0
唯が和を串からおろした。そして梓が包丁で、柔らかくジューシーになった和の肉を切り分けた。
あまり脂肪が多くない人だったので、唯は文句を言った。
唯「人間って、なんだかパサパサしているね」
唯がかつての理解者を頬張り、梓がちびちびと肉をかじっている。そして紬は脂のよく乗った、和の皮を食べている。
なんと、背徳的な光景だろうか。だけれども、あんまり人間の肉というものは美味しくないので、すぐに飽きた三人は、和の丸焼け死体を外に捨てた。
ロヴァニエミの乾いた風が、和の魂を天国へ運んでいった。
229:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 02:22:24.49:KXZM+jHz0
第八部
睡眠とったあと、朝六時にまた書き始めます。(明日は一日自由ですから)
たいへん申し訳ありません。だんだん、描写のキレが落ちていきます。
これだけのことをしでかしたあずにゃんには相応の報いを考えてありますので、それをもっとグロテスクに描くためには眠るのです。
おやすみなさい。
落ちれば、あずにゃんは救われるのですよ、きっと。
233:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 02:51:02.74:9JENE6VCO
第八部 梓「一人にしないでください!」
遅くなってすみません。寝坊しました。
258:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 13:56:56.80:8khEDPY40
紬「……梓ちゃん。私の事もっと知りたい?」
昼の摩天楼、75階のレストランで、唯が澪を殺す前の日、梓は紬に誘われた。
梓は子供だったので、その言葉の意味を解しかねて戸惑った。
まだ、空は青かった。太陽が空の一番高いところで燃え上がっていた。
梓「えっ……あ、はい、知りたいです!」
子どもが初めて捕まえたカブトムシの名前を大人に尋ねるような調子だったので、紬はため息をついた。
そのため息を見たとき、梓は紬の、絶対に音楽室では見せない苦悩を垣間見た気がした。
260:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 14:01:20.49:8khEDPY40
紬「……例えば、私のどんなところを知りたいのかしら?」
梓「えっ……えっと、そうですね、ムギ先輩のお家に遊びにいきたいですね」
梓は、紬がどんな家に暮らしているのかがかねてから気になっていた。お城だろうか?それとも、高層マンションの最上階だろうか(屋上は植物園になっているんだ)。
紬は躊躇うように、首を振った。
紬「ごめんなさい。あの家には来ちゃだめなのよ。きっと梓ちゃんは幻滅するわ。……自分でも恥ずかしいんですもの」
この日の紬はまるで人格が変わったみたいだった。梓は、先刻から困惑しぱなしだった。
梓「そ、そうですか……では、ムギ先輩の中学校の頃のアルバムとか……」
紬「ごめんなさい。そんなものももうこの世には存在しないのよ」
梓「……」
紬「梓ちゃんたちには、今の自分の事を知って欲しかったの。それじゃ駄目かしら。」
261:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 14:03:27.71:8khEDPY40
梓「これで和さんも死にました。いひひ」
唯「そうだね~」
梓「さあ、残るは三人です。次は、ムギ先輩の番ですよ」
紬「……」
唯「豚さんは、屠殺だね、ぶーぶー」
唯が豚の真似をした時、紬は唯の頬を平手でぶった。
紬「私は豚なんかじゃないわ」
262:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 14:08:32.30:8khEDPY40
唯「……ム、ムギちゃん…」
唯は頬を押さえて泣き出した。
梓「ちょ、ちょっと。私の唯先輩に何をするんですか!」
紬「さあ、唯ちゃん。教えなさい!なんで、澪ちゃんを殺したの!?」
紬は唯の胸ぐらをつかんで、持ち上げた。紬の怪力を以てすれば、唯程度の重さの人間一人持ち上げるのは容易いことだった。
唯「うーうー、ギブギブ、ムギちゃん下ろしてよ~」
唯は暴れた。梓は笑うのも忘れて呆然と見ていた。
唯「教えるから。私が澪ちゃんを殺害した訳を」
263:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 14:13:23.79:8khEDPY40
唯が、梓と紬に語った回想
澪「不幸の、最後に辿りつく場所はどこだと思う、唯?」
二人きりの音楽室で突然澪ちゃんが尋ねてきました。
唯「?もっと簡単な言葉で言って」
私は馬鹿なので、小難しい言葉はわかりません。
澪「ようするに、考えられる一番不幸な事はなんだ、という事だ」
唯「?わかる訳ないよ~私達はこんなにも幸せなのに」
澪「そうか……」
澪ちゃんは何か言いたげに呟きました。
264:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 14:17:21.48:8khEDPY40
唯「どーしたのっ。澪ちゃん、今日はなんか暗いよーひょっとして、テストの点が悪くて、さわちゃんに怒られた、とか!?」
澪「うへ、いひ、あはっはー!」
澪ちゃんは突然笑い出しました。
澪「お前は、幸せだな、唯。私が思う、最大の不幸は、幸せの絶頂にいる人間が、突然そのすべてを失うことだと思うんだ」
澪「昨日、××(伏字)は否定したがな。××(伏字)がいうには、人間の最大の不幸は、死ぬことが出来ないことだそうだ。
確かに死は大きな苦しみだ。しかし、それがあるから、私達は苦悩に殺されなくて済むらしいよ。
人間は、屑人間でも聖人でも、死ぬんだよ!どうしようもないことだ!私は絶対に死にたくない!
律が生きている限り、私は死ねない!」
澪ちゃんは突然、ギリシア悲劇のヒロインのように、大声で泣き、歌うように台詞をわめきたてました。
この時点で、もう、澪ちゃんは狂っていたのです。
265:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 14:21:31.85:8khEDPY40
私が狂わせたのか?××(伏字)ちゃんが狂わせたのか?私はわかりません。
そして澪ちゃんはいいました。
澪「律はどうなんだろう?私が死んだら、苦しむかな。他の三人はどう思うだろう?苦しむのかなー?」
澪「そして、今、一番幸せな唯……お前は他人の苦悩をよく知らないだろ」
澪「これから私はお前に殺されるよ」
私は訳がわかりませんでした。なぜ私が澪ちゃんを殺さなければいけないのか?
澪「私はお前にお願いしてでもいるんだ……私は、ムギが音楽室に入ってきたとき、つまり私と律がムギと出会った日の晩から、夢を見続けてきた。それはだな、律が、昆虫のような後輩に、腹を掻っ捌かれ、そこに彼女のような昆虫を入れられる夢なんだ。」
澪「そして、その夢は、唯。お前が私を殺した後に、実現することは、もうわかっているんだよ」
唯「で、でも。それじゃ、りっちゃんは死んじゃうよ?」
266:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 14:25:41.33:8khEDPY40
私は馬鹿なので、なぜそのようなことが起こりえるのかわかりません。きっと、どんな人間でも理解出来ないでしょう。
私は馬鹿だけど、みんな同じくらい屑だから……(この時、私になぜこのような感情が沸き上がったのか、今考えても詮方ないことです。まったく今までの私とは違う思考回路に切り替わったみたいでした)
澪「うふ。そうだろ。でも私はその時、死んでいるんだ。そして律も死ぬ。まあ、それはいいことだ。仕方が無いんだ、人間はいつか死ぬからな。」
澪「律だけは、まともな人間だった……私は少なくとも、処刑される前の律に関してはそう信じている。
律だけはまともだ……まともだと思わないと。律は屑人間なんかではない。私と唯は屑人間だけれどもな」
澪「それより大切なことは。私等が死ぬことによって、あのゴキブリが、とてつもない不幸な目に会うってことなのさ」
267:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 14:30:25.88:8khEDPY40
唯「あずにゃんが?」
澪「そう、今、お前が私を殺せば、梓は不幸のどん底に沈むことになるぞぉー。いひひ。」
私はその言葉を聞いて、澪ちゃんの首を締めて殺しました。
それからパニックに陥り、澪ちゃんを解体して隠そうとしました。体が勝手に動いていました。誰かに操られたみたいでした。
269:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 14:34:34.72:8khEDPY40
唯が語り終えたとき、紬は顔面蒼白になり、うつむいていた。
そして、何よりも意外なことが、梓までが顔を青くして、唯の話を黙って聞いていたということだった。
梓「それで……は、誰が一番最初に気狂いになっていたんですか……」
梓「そうだ、××が怪しいです、さあ、ムギ先輩、あなたが一番怪しいです。」
紬「私が最後にあったのは、確かに澪ちゃんよ。でも、澪ちゃんと、少しだけ難しい話はしたけど、そんなに気狂いではなかったわ。
むしろ、私がみんなの毒にやられて、気が狂ってしまったのは、唯ちゃんが解体した、澪ちゃんの四肢を見てしまった時だと思うわよ」
270:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 14:37:43.02:8khEDPY40
梓「そんな……でも、澪先輩は、私が律先輩のお腹にゴキブリをつめる事を知っていました。
つまり、私は、澪先輩に操られていたのですか?そんなわけありません、い、いひ、……」
梓は恐怖のあまり、満足に笑えなくなっていた。今梓が話したことは、梓に衝撃をあたえ続けたのだが、それよりも梓に深い苦しみを与えたのは別のことだった。
つまり、尊敬する澪が、梓の不幸を望み、そして好きだった唯が、澪の言うことを聞いて、澪を殺したことだった。
梓(わたしは……わたしは……澪先輩が私の不幸を望んだ?自分の死と律先輩の死を引換にしてまで、私の不幸を望んだ?)
梓(何がきっかけで?私が澪先輩や唯先輩に、ひどい事をしましたか?答えはノーです。
なにせ、私は澪先輩のために(わたしのためでもあるが)唯先輩に殺された澪先輩を、唯先輩の魂の中で生き返らせようとしたのです)
梓(それに、澪先輩を殺した、唯先輩を批判することもしませんでした。)
梓(ありえないです……いや、元凶はなに?力を貸してよ……憂……純……)
272:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 15:05:38.48:8khEDPY40
憂(梓ちゃん大っキライ。わたしからお姉ちゃんを奪った)
純(痛いよー暗いよー痛いよー痛いよー、あずさ、痛いよーやめてよー痛いよー、暗いよー痛いよー暗いよー辛いよー)
梓の頭の中で、思い起こされる憂も純も、教室で笑って話している姿ではなかった。
右半身をこそげ落とされて、立ち上がることも出来ず人形のように床に転がっている憂と、目玉をほじくられて、暗闇のなかで手探りで歩いている純だった。
273:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 15:13:19.79:8khEDPY40
唯「これが私が澪ちゃんを殺した理由だよ。ただ、あずにゃんに不幸になって欲しいと思っただけだよ」
梓「う、うそでしょ……」
紬「そうだったのー。ならはじめからいってくれれば、協力したのに」
唯「だけれども、まだ、最大の疑問が残っているよ」
紬「な、何?唯ちゃん。梓ちゃんをこれから解体する前に、まだ、何か喉につっかえるものがあるの?」
唯「それは、まだあずにゃんが昆虫か人間かわからないってことだよ。」
274:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 15:32:59.42:8khEDPY40
梓「……私はに、人間ですよ。だって、ムギ先輩だって、私の脊柱をおって、私に内骨格が残っている事を証明したじゃありませんか」
梓「そもそもですね、人間は脊髄動物で昆虫は節足動物。人間が、棘皮動物と分岐する以前……つまり人間の祖先の兄弟がヒトデになる時代よりも昔に、私達人間は昆虫と決別したんですよ……」
梓「私達の体には、マルピーギ管もないし、体を覆う、キチン質の外骨格もない……体は分節構造をとっていないし、私達の神経系は、中枢神経系で、高度に発達しているんですよ!」
梓「その昆虫とは違う、発達した中枢神経系で、私が昆虫だと判別するなんて、あなた達は、馬鹿ですか?」
唯「私は屑人間って、あずにゃんに言われた」
紬「私は豚って、梓ちゃんにいわれたわ。」
276:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 15:52:00.15:8khEDPY40
紬「梓ちゃんには、昆虫になってもらいましょう」
今度は梓が解体される番だった。
いつも、梓の解体を側で眺めていた唯と紬はもう、その道の技術に習熟しかけていた。
唯「下手くそだけど、我慢してね、あずにゃん。」
まず、梓を固定した。その固定ののしかたは、まず梓の胸骨の下、Xiphoid processに長い鉄の釘を打ち込む。
そして次に、撓骨と尺骨の間の骨性線維結合に同じく長い鉄の釘を打ち込む。それから、足の関節にも打ち込む。これでいくら暴れても梓は決して逃げられなくなった。
それから、唯と紬は研がれたメスを持ち、梓の皮膚を剥ぐ。唯が右半身、紬が左半身を担当した。
こうして、梓の腹側の皮膚はすべて剥がれ、黄色の脂肪がぶちょぶちょ付着した筋膜があらわになった。
277:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 15:57:35.20:8khEDPY40
唯「昆虫には柔らかい皮膚より、硬いチキン質の外骨格のがお似合いだよ!」
紬「そして、筋肉は必要だけれども、そうね、内骨格は不要だわ」
紬は筋肉の停止部を切開し、そして、その筋肉の裏を走る、様々な神経を剖出していく。
唯は、梓の肋間神経を見つけ出し、それを引っ張り、弦のように弾く。
そのたびに梓は、茨の鞭で叩かれたような激痛に襲われる。
紬「昆虫に女性器ってあるのかしら~?」
紬はむき出しになった、梓のピンク色の女性器をいじっていた。
梓は感じる暇もなかった、なぜなら、神経を弾く事に快感を覚えた唯が、骨をそっちのけで、梓の上腕部をほじくり、腕神経叢を探していたからだ。
そしてそれを見つけ出した唯は、神経をギターの弦のように弾く。
そのたびに梓は悲鳴をあげる。
梓(いぃい、いぎぃ、唯先輩、やめてよぅ……)
278:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 16:02:59.25:8khEDPY40
唯「わーい、新しいギターが手に入ったよぉー」
紬「こっちも、面白いわよー。梓ちゃん、昆虫には、大陰唇や小陰唇、陰核なんてないわよね、なら、それを切開するわ。」
紬「私がメスでやっても、いいんだけど、面白いアイディアがあるの。そう、昆虫にやらせたらどうかしらってね。」
紬は、黒い粒が無数に入った瓶と、はちみつの入った瓶を持ってきた。
まず、紬ははちみつを梓の女性器に塗った。それから、黒い瓶を開け、梓の股の下に置いた。
すると、その黒い粒がもぞもぞ出てきた。
唯「あっ、蟻だ~」
紬「蟻が、梓ちゃんの女性器を食いちぎってくれるわ。さ、私は下半身の解体にうつるね」
279:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 16:07:30.79:8khEDPY40
その蟻は、ただのクロアリではなく、南米産の軍隊アリだった。
肉を食いちぎられる苦痛で、梓は頭が真っ白になった。
紬は、その梓の女性としての象徴の崩壊を見つめながら、梓のむちむちとした下腿部を解体していった。太ももの肉付きを演出する、太腿四頭筋と二頭筋は骨から剥がされた。
股関節を形成する、大腿骨は、大腿骨頭靱帯を最後に切られ、梓の股関節から外された。
280:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 16:12:19.14:8khEDPY40
数時間かけて、梓はバラバラにされた。頭蓋骨から脳髄まで摘出され、脊髄も脊柱から暴露した。
梓は、今、物言わぬ肉塊になっていたが、まだ死んでいないはずだった。
唯「つ、疲れたね……」
紬「うん」
唯と紬は、激しいセックスの後のように汗だくだった。(ただし唯と紬は処女である)
二人は梓の骨を完全にその肉体から取り除いた。そして、その骨を、挽肉器に入れて粉々に潰した。
そして残った肉片をかき集めた。
これからが梓の本当の苦しみの始まりなのである。
人間の尊厳タル内骨格を喪失した梓は、すりつぶされた神経の断面をを空気にさらされる激痛に苦しんでいた。
281:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 16:18:46.03:8khEDPY40
憂「お姉ちゃん……久しぶりだね……」
地下室に、憂が入ってきた。全身が××××(伏字)氏病の類似症状を呈しており、左半身には包帯をグルグル巻きにしていた。大きく欠損した右半身は、断面がすりつぶされ、肉が腐っていた。
憂は腕にかかえた銀ボウルいっぱいにはいった、ゴキブリの死体を唯に渡した。
唯「ありがとー、憂~」
そして、唯と紬は、ゴキブリの皮を剥き始めた。左手が麻痺して使えなくなった憂は、突然眠気に襲われて、床でごろんと横になっていた。
挽肉器が奏でるメサイアが、子守唄のように憂を夢の世界へ導いた。それは新たな悲劇の始まり出るのだが、ここでは割愛する。
憂はそのまま、とこしえの眠りについた。
唯「さて、憂も死んだことだし。さあ、ゴキブリを剥こう」
紬「ええ。梓ちゃんはどんな思いで、その転がった眼球から私達を見つめているのかしら?」
282:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 16:23:10.33:8khEDPY40
唯と紬の、いつもは楽器で美しい音楽を奏でる、あの芸術的に繊細な指は、ゴキブリの青銅色の体液で濡れていた。
ふたりは、黙々と、栗の皮を向くように、無言でゴキブリの中身を潰さぬよう注意して皮を剥ぐ。
キチン質の外骨格を剥がしたあと、中腸や直腸のつまった内臓系は、梓の口の中に捨てられた。
唯「あずにゃん、お腹一杯だね」
外骨格をゴキブリから剥がしたあと、唯と紬は外骨格を梓に縫いつけていった。
梓を昆虫にするための、彼女たちなりの考えであった。
284:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 16:38:08.42:8khEDPY40
梓の全身を覆うだけの外骨格を得るために、唯と紬は数千匹のゴキブリを犠牲にした。
ひどい殺生だった。二人の罪は、ゴキブリの世界ではとてつもなく重いものであろうが、人間はなぜだか、ゴキブリをいくら殺しても罪には問われないのだ。まったく、理不尽ではないか!
全身、茶色に塗りつぶされ、自分の支えとなってきた内骨格を失った梓は、もぞもぞと這うようにして、動き出した。
唯「あずにゃん復活!あずにゃん復活!」
紬「おめでとーおめでとー」
梓「やめてください、私は昆虫じゃありません、私に脊柱をを、内骨格を返してください」
唯「ごめんね、あずにゃん。あずにゃんの内骨格は、メサイアの中に捨ててきたよ」
梓「いぎゃああああああ」
286:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 16:42:43.05:8khEDPY40
唯「あずにゃんは苦しんだかな?でも、これからもっと苦しむんだよ。」
紬「梓ちゃんは、私達の何倍、何十倍、いいえ私達がこの小麦の小さな粒だとしたら、梓ちゃんはこの宇宙の大きさくらいの苦しみを体験しなければいけないの。」
唯「でも宇宙は小麦の粒の中にもあるんだよ。だから、あんまり悲観しないでね、あずにゃん」
紬「はっ!そうよ、いまえ思えば、苦しみなんてそのくらいの大きさのものなのよ。だから、苦悩していた自分が馬鹿らしい。
なんだか、昆虫になって、これからずっと死ぬまで(死ねないけど)、地面を這い続ける梓ちゃんを見ていたら、私の抱えた苦悩なんてどうでもいいものだったと思えるのよ
唯「そうそう。マザー・テレサの苦しみも、場末の飲み屋で酒とクスリに溺れている若くてボロボロの女の人の苦しみも、みぃんな同じ。
そうだったんだね、あずにゃん。だから、あずにゃんの苦しみも……」
梓「そんな!私が一番ひどい目にあってますよ、私が一番苦しんでますよ、なんでこんな目に合わなくちゃいけないんです」ガサゴソ
287:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 16:52:21.66:8khEDPY40
唯「人間は自分の苦悩を一番大きなものだと思っているんだよ」
紬「だから、梓ちゃんの世界では、それが一番大きいんでしょうね」
唯「それじゃ、私達は世界から退場するよ。あずにゃんの世界は、あずにゃん、一人ぼっちで、一番大きな苦しみと向き合うといいよ」
梓「行かないで、行かないでください、唯先輩!」ゴソゴソ
唯「健康には気をつけてね」
紬「そうよ。いくら昆虫が風邪を引かないとはいえ(昆虫は呼吸器が満足に発達していないから、あんまり障害を起こさないのかもしれない※)、踏み潰されないように気を付けるのは大切よ。
それじゃ、お元気で」
※作者注:昆虫が風邪を引かない、というのは僕の偏見です。本当は私達人間のように、毎年この季節には風邪で困っているのかもしれません。
289:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 16:55:13.11:8khEDPY40
唯と紬は、先刻からメサイアを奏で続ける挽肉器の中に入っていった。
メサイアにあわせて、彼女たちは引き潰れていき、その断末魔の悲鳴はその、『主を褒め称える言葉』そっくりだった。
そのとき、ちょうどメサイアがハレルヤの部分に入った。
梓も、一緒にハレルヤの中に飛び込もうとしたけれども、梓は昆虫の癖に羽をつけてもらえなかったので、地面をはうことしか出来ず、挽肉器の中に入る事は叶わなかった。
梓は世界で一人ぼっち。
梓「自分以外の人を苦しめただけで、この有様ですか。すみませんね、澪先輩、律先輩」
梓はこれからずうっと、地面を這い続けます。
291:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 17:00:19.17:8khEDPY40
第九部(最終部)
292:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 17:04:34.21:8khEDPY40
摩天楼、75階のレストランでお茶を終えたあと、梓は紬につれられて街を出歩いた。
今度はどんな場所に連れていかれるのか、梓は緊張した
紬に手を握られ、引っ張られる格好で梓は街を歩いた。
途中、いかがわしい看板を掲げるホテルがあって、そこに連れ込まれるのではないかと恐怖したりした。
梓は、先程のレストランよりも高級な場所に連れていかれるのではないかとビクビクしたが、だんだんと人通りの多い、それも自分のような若者が多い場所に入っていった。
293:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 17:07:03.59:8khEDPY40
紬は梓を連れて、駅前のゲームセンターに入った。
ここは梓も来たことがある場所だった。
紬「ここはね、前にりっちゃんに連れてきてもらった場所なの」
梓「……え?」
紬「楽しかったわ~このUFOキャッチャーってのがね、難しいのよ、ほんと」
紬は子供のようにはしゃいだ。梓はどういうリアクションを取っていいのかわからず立ちつくしていた。
294:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 17:11:33.15:8khEDPY40
紬「あっ。また落としちゃった。梓ちゃん、やってくれないかしら?かわりに」
梓は紬の代わりに、バーを操作し、ぬいぐるみを捕まえようとした。アームがおりてきて、その不恰好な銀色の腕に可愛らしいぬいぐるみを捕まえたと思ったら、ゴールに辿り着く前にぬいぐるみを落としてしまった。
紬「あっ」
梓「すみません!」
梓は頭を下げた
紬「いいのよ。でも、りっちゃんは一発で捕まえてくれたわ」
梓は自分の財布から百円硬貨を二枚出して、それをUFOキャッチャーに入れた。
梓「やってやるです!」
295:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 17:16:17.37:8khEDPY40
澪「おっ、ムギに梓だ」
ゲームセンターの奥から、澪がやって来た。
梓「こんにちわ、澪先輩。」
紬「澪ちゃん~奇遇ねぇ」
梓が三回目のUFOキャッチャーにチャレンジしている時だった。
澪「おっ。頑張ってるな、でもそんな不細工なぬいぐるみ欲しいのか?」
澪がガラスから覗き込んだとき、また、UFOの腕からぬいぐるみが落ちた。
いわゆる、キモカワ系のぬいぐるみだったが、梓はじとっと澪を見た。
紬「ひどい……澪ちゃん……私が欲しかったのに……」
澪「わーわー!!ごめん、ムギ、悪気はなかったんだよ!!」
澪が謝り続けいる間、梓は四回目のUFOキャッチャーにチャレンジしていた。
296:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 17:22:05.60:8khEDPY40
律「おーい、澪、急にいなくなってどーしたー。って、梓にムギじゃん」
紬「あ、りっちゃーん。澪ちゃんと一緒に来てたのね」
律「ああ。ところでUFOキャッチャーか?」
梓「ええ、これがなかなか難しいです」
ぼとん。また、UFOは、ぬいぐるみを上で落とした。
律「下手くそだな~そんなカミキリムシ?みたいなキャラ、そこまで欲しいのかよ!まあ、私がかわりにやってやってもいいぞ。律先生お願いしま~すって、猫の真似をしながら言えるならなっ!」
澪「り~つ」ボコ
律「あっいたい!」
紬「もう諦めたら、梓ちゃん。私はいいから……」
梓「いいえ、やってやるです!」
梓は今日、五回目の二百円をUFOキャッチャーに投じた。
298:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 17:28:09.57:8khEDPY40
律「それにしても、これで唯が来れば、軽音部全員集合だな」
澪「そうだな、でもそんな偶然あるはずないよ」
梓「ぐぬぬ……この角度でこういけば……」ブツブツ
紬「あっ!あれ、今、ゲームセンターの前歩いているの、唯ちゃんじゃない?」
勉強道具の入った鞄を肩にかけ、唯があどけない足取りで、道を歩いていた。
律「おーい、唯~こっちだぞー」
唯も四人に気がついたみたく、駆け寄ってきた。途中、ごちんと他の通行人とぶつかっていたが、唯はふらふらしながらやってきた。
唯「みんな~りっちゃんに、澪ちゃんに、ムギちゃんに、あずにゃん!」
紬「これで、軽音部全員集合ね!」
唯「えへへ~すごい偶然だねーっ」
299:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 17:31:54.92:8khEDPY40
唯「あずにゃん?そのぬいぐるみ、なんだか触覚があずにゃんのツインテールそっくりだね!」
梓「なっ!?あっ!唯先輩がそんなこと言うから、落としちゃったです!」
五回目のチャレンジも無為に終わった。
泣きそうになる梓を、先輩四人がなだめた。
紬「せっかく五人が集まったんだから、一緒に遊ばない?」
律「そうだな!イエーイ!」
澪「もうっ……律ったら……」
唯「わーい!!」
梓「……」
律「ほら、梓も盛り上がっていこうぜ!」
梓「わっ、ちょっと、律先輩!」
300:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 17:40:08.13:8khEDPY40
律と唯に引っ張られ、嫌そうにしつつも頬をほころばせる梓。
紬「楽しそうね……」
澪「ああ。五人そろってよかったよ。」
紬「ええ……」
澪「私達、五人が出会えたことが奇跡であり、幸せなんだよな」
紬「そうね。私達がお互いに惹かれ合って出会えたのって本当に幸せよね」
遠巻きに、はしゃぐ三人をみつめる澪と紬の顔もほころんでいた。
「けいおん部、万歳!」
部長の律が声をあげた。
少し離れたところで見守っていた、紬と澪もかけよって、お互いの手をつないで輪をつくった。
「けいおん部、万歳!万歳!」
その絶叫に近い唱和を聞き、梓が取りそこねたぬいぐるみが笑った。
いひひ。
終り
301:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 17:42:04.01:8khEDPY40
ご静聴ありがとうございました。
本当にありがとうございました。
僕は梓が大好きですが、他の4人も大好きです。
本当にありがとうございました。
さようなら。
303:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 17:45:48.78:v43bUe8gO
唯「殺す気はなかったんだよ、ただ、勝手に澪ちゃんが死んだだけ」
唯「なのに、なんで私がこんなに苦しまなくてはいけないの?」
唯「ひどいよ、ひどいよ、このまま誰かに見つかって」
唯「公安に通報されて、身体を拘束されて」
唯「裁判にかけられるんだ。人民は私を死刑にするんだ」
唯「階段をのぼって、首に荒縄をかけられて」
唯「ずどんと床が外されて……」
唯「そんなのイヤ!」
唯「あと十分で、みんなが来るよ、きっと。」
音楽室には、目を見開いて死んでいる澪と、呆然と立ち尽くす唯。
唯「隠さなくちゃ……」
唯は、鞄から、刃渡り十五センチのカービングナイフを取り出して、刃先を包む革製の入れ物から取り出した
唯「どうしよう、10分で解体できるかな……」
唯は素早く、澪の肩に包丁を突き立てた。関節を回すように、肩関節の靱帯と、上腕二頭筋、三角筋等の筋肉を外していく。
唯「ふう、一つの関節あたり、二分…間に合うかな」
コツは、骨を切らない事、骨を切るには大変な労力を要するからである。
あっという間に、唯は澪の両方の肩関節と、股関節を外した。
二つの関節頭の、美しい球体を唯はペロペロなめて綺麗にした。それは唯のこだわりであった。
唯「さて、手足は、自分のバッグに入るとして……胴体はどうしよう」
唯は、マイバッグから、半透明の家庭用指定ごみ袋を取り出して、澪の手足をそこにいれ、いつもすかすかのバッグに入れた。
唯「胴体と頭部は…」
コンコン「失礼しまーす」
唯は慌てて、頭部のついた胴体をギターケースに突っ込んだ。同時に、ドアが開いて残り三人の部員が入ってきた。
律「おーっす、唯。どうした?そんなに慌てて」
紬「うふふー」
梓「いひひ」
唯「な、なんでもないよー、さ、ムギちゃん。お茶お茶」
いひひwww
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/04(木) 23:37:07.88:CvfcV4Px0梓「血の匂いがするです」
唯「え?そうかなー、私風邪気味でさー」
梓「いひひ……こんな部屋でお茶なんかできるんですか?」
律「そう言えば、澪はどうした?」
唯「ひっ」
律「唯と一緒に、先に部室に来たんだろ?」
梓「いひひ」
紬「まあまあ、お茶でも~」
紬が真っ赤に染まった紅茶を出したが、唯はその色が澪の血の色に見えて、気分が悪くなって、吐き気を催した。
唯「み、澪ちゃんんはね~」
三人は無機質な表情で唯の言い訳を聞いていた。
唯「えっとねー、突然気分が悪くなってねー、そう、ここで血を吐いたんだよ、だから血の匂いがするんだよー」
私は床にあった、血溜まりを指さした。血液を抜かずに人間を解体すれば―それも先刻まで生きていた人間―大量の血液が流れ出るのは自明のことだった。
唯「そして、えっと、家に帰ったんだよー」
梓「いひひ。唯先輩は可愛いですね。」
唯「あ、あずにゃん……」
梓「えいっ」
梓は隙をみて、唯の鞄をひったくった。
唯「やめろー、やめてよー、あずにゃん、あずにゃん!」
唯は暴れたけれども、梓はあっさりと鞄を開いた、すると、四肢がぬっぽっと飛び出した。
律「あっ!それは澪のだ!」
紬「あらあらー」
唯「うへへー」
唯はみんなに土下座をした。梓は、ギターケースから澪の胴体も奪って、机の上に置いた。
澪はついに物言わぬ死体になっていた。
梓「問題は……ベースがこれでいなくなったということです」
唯「あ、あずにゃん……ごめんね……代わりに私がベースをするよ……」
律「唯じゃ、無理だろ」
唯「うへへー」
梓「ならば、唯先輩が、澪先輩になればいいんですよ、いひひ。」
律「それもそうか。」
紬「あらあら。それは、別領域からのアプローチね」
梓「なら、早速しゅじゅちゅです」
唯「あ。噛んだ」
梓「いひひ」
一体なにが始まるんです?
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/04(木) 23:49:14.48:CvfcV4Px0今度は唯が机の上に寝かせられた。澪の四肢と胴体と頭部は床に置かれた。
まず、唯はうつ伏せに寝かせられた。
梓がメスを持っていた。律は両手にピンセットを持ち、紬はバリカンを持っていた。
唯は四肢を革ベルトで拘束されていた。
しゅじゅちゅは麻酔なしで行われた。
まず、紬がバリカンで唯の艶のある髪を剃り落とした。
次に、梓が、唯の頭皮を切開した。すると、血溜まりの中に、硬い頭蓋骨が露出した。
律はその作業をピンセットで手伝った。
ピンセットで梓がはがしていく頭皮を持ち上げていたのだ。
さて、次に、鋸とノミに持ち替えた紬が
( д ) ゚ ゚
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/04(木) 23:52:31.37:CvfcV4Px0唯ちゃんの思考
痛い痛い、くはぁ。ありえないよ、なんで生きたまま、大脳を
おかしいよ、こんなの人間のすることじゃないよ、
なんで生きたまま大脳を
中身をかき回すの?
あ、下手くそ、後大脳動脈が切られた、脳出血だ、
ひぎゃががが、いぎー!!
あ、今度は内耳神経を切りやがった
爆音が聞こえる、なんで頭の後ろで、ミグ29のエンジン音が
第一部が始まります
私はどこからか、ここに落ちてきたようです
お尻の骨が、ずきずき痛みます。
「なんで私を殺したんだよ」
澪ちゃんが目の前に立っていました。顔は見えません、包帯を顔に巻いています。
「あ!おかしいだろ、なんで私を殺したんだよ」
「ごめんね」
私は謝ることしか出来ません。思えば、私はなんで澪ちゃんを殺したんでしょう?だれか答えて!
「なんで私を殺したんだよ」
「わからないよ……」シュン
頭がぼーっとします、確かに、なんで私は澪ちゃんを殺したんでしょう?誰か答えて!
期が遠くなる時間、私は澪ちゃんに、澪ちゃんを殺害したことで怒られていました。
どのくらいの時間かというと、
ムギちゃんが買った焼きそば一杯をつくるのに使われた小麦粉の一粒一粒を
律ちゃんが箸でつまみ、あずにゃんの口に移すのにかかかったのと同じくらい
時間がかかったのです
「と、ところで澪ちゃん、ここはどこ?」
私は落ち着いた澪ちゃんに尋ねました。
「いつからここにいたの、澪ちゃん?」
この狭い部屋は、まるで刑務所の一室くらいの広さでした。
刑務所の一室のような……
「あ!ここは刑務所だ」
私は驚くべき事実に気が付きました。私は、確かに、某刑務所の独居房に閉じ込められていました。
背の届かない、高い場所に、鉄格子のはまった窓があって、そこからうっすらと星の光が差し込んでいました。
足元の、床はとても冷たいのです。
そして部屋はとても砂っぽかったです。
澪「ここはまるで、イラン・イラク戦争で、イラク国軍兵が捕らえられていた、砂漠の牢獄に似ているな」
確かに私は澪ちゃんを殺したので、刑務所に投獄されるのは納得できます。
しかし、被害者である澪ちゃんがなぜ加害者と一緒に投獄されなければいけないのでしょう?
こんな不条理あっていいのでしょうか?いいはずありません!
澪「私は唯がここに来るまでに……本を七千と三百と二十四冊読んだよ。一番最初に読んだのは、そこの小窓から渡された新約聖書だった」
澪「ここでは、太陽が七回昇って沈むと、一冊の本が支給されるんだ」
澪「唯……この苦しみが理解できるか?」
私は涙を流しました。澪ちゃんは、私がここにやって来るまで、ずっと一人でここで本を読んでいたのです。
そう澪ちゃんは死んでからとうとう念願の文芸部に入部したのです、ここは独居房であり、文芸部室だったのです!
わたしはこうして自分の内面に湧きでた疑問に納得することにしました。
澪「唯……この苦しみが理解できるか?」
私は涙を流しました。澪ちゃんは、私がここにやって来るまで、ずっと一人でここで本を読んでいたのです。
澪「私は……何度も何度も、ベースを与えてくれるように申請したんだ……」
澪「なのに、ここに投げ込まれるのは、皮脂で黄ばんで黴の生えた本ばかり」
澪ちゃんはボロボロのペーパーバックを手に持っていました。タイトルは……英語で書かれているのでわかりません。
澪「私の絶望は……こんなクソみたいな小説を…読まなくては生きてけないとういう事に尽きる」
私はさめざめと泣き続けました。これからは、私が澪ちゃんの代わりに、この独房で生きていくのです。
きっと澪ちゃんは開放されるのです。
唯「ごめんね、ごめんね、ほんっと、ごめん……これからは私が代わりに…」
澪「コラ」
澪ちゃんは私の頬をぶちました。
澪「唯の考えてることはまるわかりだよ。自分が私の代わりにとか思っているんだろ?」
唯「」こくん
澪「コラ」ゴツン
今度は頭を叩かれました。少しだけ嬉しかったな、だって澪ちゃんはりっちゃん意外、あんまり叩かないから。
澪「ここはそんなに甘くないよ、連中は、私達のためになることはしないのさ」
ここで澪ちゃんはふふんと鼻を鳴らしました。
唯「じゃあ、これからは、二人でここで生きていくの?」
澪「ああ。」
私はまた、涙を流しました。澪ちゃんが、私の手を取ってくれたからです。
あんな残酷な、殺し方をした私を、澪ちゃんは聖者のように許してくれたのです。
澪ちゃんは、まるで、マリア様だ!
私は叫びそうになりました。
澪「唯、ここでのルールを教えておくよ」
私は、狭い部屋を見渡しました。天井だけ、異常に高くて(キリンさんの背くらいはあるのかな?)、遥か彼方の上には換気扇がガラガラ廻っていました。
一人がギリギリ寝られるくらいの、木のベッドがあって、ベッドの隣に黄ばんだ便器があったのです。このままじゃ、排泄姿を見られちゃうよー
澪「ここでの起床は朝、六時だ。」
唯「うんうん。」
澪「時計はないから、体で覚えろ、六時に布団から出て、床に正座していなければ」
唯「いなければ?」
澪「刑務官からの制裁を受ける」
唯「制裁?」
澪「それは、知る必要がない」
唯「うん」
澪「朝ごはんはでない」
唯「えーえーぶーぶー」
澪「文句を垂れるな」ゴン
唯「いててっ…」
昔のように、私は笑えました。うへへ。でも憂の朝ごはんが出ないのは残念です。
澪「ここでは、動く必要がないからだ」
唯「え」
澪「ここでは、立って歩く許可も、シャドーボクシングをする許可も、指定時間以外に大便をする許可もない」
澪「当然、音楽のたぐいは全部禁止されている」
唯「うそぉ……」
私は、悲鳴を上げそうになりました。
ノォおんがく、ノォライフです!ぷんぷん。うへへ。
澪「まあ、代わりに、クソみたいな小説を与えられるんだ。」
澪「カラマーゾフ、赤と黒、春の嵐……なんでもあるぞ」
知らない外国の小説を上げられても、私はポカアンとするだけです。(そもそも、イケイケ女子高生の私はー文学と無縁っていうかー)
澪「全く、唯はジュリアン・ソレルと対極の人間だな!」
そこで澪ちゃんは高笑いをあげました。すると、隣の壁がドカンと叩かれました。
澪「ここでは、昼の十二時までずっと本を読む」
唯「十時のおやつはー?」
唯「そんなもの、ない」ボカ
今日、何度目か覚えていないげんこつに、私の脳髄は、脳脊髄液の檻の中でぐらぐら揺れました
澪「昼の十二時には、点呼。この時も、刑務官が来るまでに、床で正座していなくてはいけない」
唯「ふえ~」
澪「点呼が終われば、日が沈む、六時まで本を読む。」
唯「ほ、本ばっかりだね……」
澪「それが、ここのコンセプトだからな。」
澪「読書によって、人間革命を成し遂げるのさ」
ここで、澪ちゃんはもう一度高笑いしました。また、隣の壁がドカンと叩かれました。
唯「そんな事より、三時のおやつは……」
澪「そんなものは、ない」ボキ
もう、頭に穴が穿たれてしまったあとの衝撃を脳が受けました。
澪「飯だが、この六時の点呼の時に、一週間食べるのに、十分な量が支給される日があるんだ」
澪「それは、決まって、星の明かりが部屋を照らす、日だ。」
唯「ふ、ふうん」
澪「ああ。それが今日なのさ」
唯「う、うん」
澪「食料が、配給される日は、本を読み終わっていなくちゃならない」
そういって、澪ちゃんは膝の上のペーパーバックをポンポンと叩きました。
唯「ご、ご飯はどこ?」
澪「あっはっはー!」
そこで澪ちゃんは高笑いしました。隣の壁がドカンと叩かれました。
澪「そ、それは、お前だよー、唯~」
唯「え」
私は頭がおかしくなりそうでした。だんだん、足元が揺れてきました。
澪「毎週な、おまえが、天井から降ってくるんだ。私は、それをベッドの上で眺めているのさ」
澪「それから、おまえが潰れなかった時は」
澪「こんな会話をして」
澪「それから動けなくなった唯を」
澪「生きたまま、貪り食うんだ。」
澪「あっははー!」
私は、のたうちまわりました。澪ちゃんは私に馬乗りになって、刃物のような手で、私の肩をえぐりました。
そして、澪ちゃんは、肩甲骨を、剥がすように、胸郭(肋骨)と肩甲骨の間に手を差し込みました。
そして、私の、僧帽筋を切り取って、食べました。
ちゅべろ、ちゅべろ。
私は悲鳴をあげました。でも、隣の壁は叩かれませんでした。
それから、三角筋が取られました。
澪「僧帽筋、つまりサーロインの方が、美味しい。でもうめー」
むしゃむしゃむしゃ。
背部の筋肉は、ほとんどはがして食べられ(豚でも牛でも、だいたい美味しい部分はここだよね!)、肋骨が乾いた空気にさらされました。
澪ちゃんは遊び心満載です、私の背部深層の最長筋を、丁寧に椎骨棘突起と後頭骨下項線から外して、剖出した後、それが本当に最長なのかをいろいろな剖出した筋肉と比べて確かめていました。
大腿四頭筋が、危うく最長筋の地位を脅かそうとしていました。私の足がもっと長かったら、危なかったね、最長筋。
澪ちゃんはそれから、私の右腕に目をつけました。
肩関節を、かつて私が澪ちゃんにやったように外し(なぜ、この時に、私が澪ちゃんを解体したシーンが明刻に脳裏に映し出されたのでしょうか?)
次に、上腕骨と、撓骨・尺骨をはがして、上腕だけを貪りました。
これで、もう二度と、私はギー太を弾けません。
とてつもない絶望に私はおののきました。
最後は私の頭蓋骨を、第一頚椎から外します。それはそれは丁寧に、靱帯を切断し、lateral atlanto-occipital jointをかぽっと外します(そもそも、なぜ私はここまで解剖学に詳しいのだ?その真相はいずれ明らかになる気がしますが……)
それから、頭蓋骨の縫合にノミを当て、どんどん引きちぎっていきます。
タンパク性の部分は澪ちゃんに一週間かかって食べられました。
そしてとうとう終脳と、骨だけ私は残されました。
澪ちゃんは、私の脳を、自分の大便で詰まった、糞壷に落としました。
何度目の光景でしょうか
私は、音も光も奪われて、糞壷の中で……
その時、頭の上から何かが落ちてきました。
それが、澪ちゃんの大便だと気がつくのに、時間はいりませんでした。
第二部
澪「脱獄しよう」
澪「こんなところに何百年もいたら、脳が腐る……」
澪「毎日、本を読み、唯を食べる生活。ここには音楽もなければ、律もいない」
澪「さて、一般に、刑務所の外に物理的に出るのは困難だ。」
澪「刑務所の堅牢な壁は、生身の人間である囚人の脱獄を物理的に制限している」
澪「そして厳格な管理システムは、生身の人間がこの物理的な制限を突破しうる道具の調達を制限している」
澪「この二つの壁により、囚人の脱獄は困難となっているわけだ。」
澪「だから、私は別の手法を取るしかない、ただの女子高生が独房から人間のまま脱獄するのは不可能だ。」
澪「今日も、天井から唯が落ちてくる。」
予定の時刻、私がДьяволиада(Михаил Булгаков)[Мастер и Маргаритаはもうすでに読み終えていた]を読み終えた頃唯が天井から案の定、降ってきた。
私はそれを潰れないように受け止めた。
唯「うへへ……」
澪「お前、なんで私を殺したんだよ!」
唯「?」
唯は首を傾げる、口を開けたまま、私をぽかあんと、見つめる
澪「あ!だから、なんで私を殺したんだよ」
唯「わ、わからないよ……」
私も、もはやなぜ唯に殺されたかは忘れてしまった。だが、この問を繰り返し続けなければ、私が唯に殺された、という事自体忘れてしまう気がしてならなかったので、私は問い続けるのだ。
唯「と、ところで、澪ちゃん?」
澪「なんだなんだ、これから私がお前を説教しようとしているのに」
唯「ここから脱獄するにはね」
私は驚いた。驚いて驚いて、吸っていた紙巻きタバコを口から落としてしまうほどだった。(ここでは一日に一ダースの煙草が支給される)
唯「私を殺しちゃいけないよ」
これはいつもの唯とは違う唯だった。いつもなら、何も知らないのに、なぜこの唯は知っている風なのだ?
どうやら、子羊が知恵をつけたらしかった。その原因はわからないが、私の脱獄願望に関連している気がした。
そのことに気づいたら、なんだか心がぽかぽかしてきて(そう、私は変化を求めていたのだ、つまり退屈な日常の打破だ!近年の文学のテーマだ)、体がマヤ文明の神・イガンナプタムに支配された踊り子のように、踊りだしたくなった。
唐突に、シラーの詩が浮かんだ。
澪「聞いてくれよ、唯。私はこんな牢獄に、気が狂うほど長く監禁されていたんだ。そしてな」
澪「ふろいで すねあ ごてえるんけん、ときた あうす えりーしうむ、びあ べとれてん ふおるとるんけん、ひむりしぇ、だいんはいりぐたむ!!」
澪「さあ、唯!演奏するんだ、この完璧な詩を!シラーが書き、ベートヴェンが歌わせた、この音楽を!」
私は幸福の絶頂に達した、立ち上がり、狭い独房の中で詩を歌い続けた。
最近は、よく、この些細な事でも精神が高ぶるようになっていた。例えば、独房にチャバネゴキブリが入ってきただけで、なぜだか郷愁に襲われ(私の知り合いにゴキブリがいたか?)涙をながすのだ。
唯が、私に新しい感情を―それは希望?絶望?―を与えてくれただけで、歓喜するのだ。
唯は笑い出した、うへへへっへ。
私はひとしきり歌い続けた。音楽が、この独房で再生されたのは、初めてのことだった。
澪「ごめんよ、唯。これまで数えきれないくらい、天井から落ちてきたお前を解体して、食べたんだ」
澪「そして、取り出した大脳を、そこの汚い便器に投げ捨てたんだよ。」
澪「私をぶっても構わない、わたしは、それを地球が滅びるまで続けたのだからな」
なぜこの唯を見ていると、謝罪の言葉が口をつくのかわからなかった。
唯「いいんだよ、澪ちゃん。わたしはあなたを殺したし、あなたはそれから私を食べた。それでおあいこにしよう。」
なんと寛大な処置!
澪「だが、それでは私の気が収まらない。」
頭の中では相変わらず、ベートヴェンが流れる、止まらない音楽への衝動。
唯「がーべん、ふろいで、いっひ、べるで、がーれん、ぼー であ はあって」
唯も歌い出した。そして、私をぶった。
唯「澪ちゃんが、好きだった音楽はこれ?ベートヴェン?バッハ?ドヴォルザーク?そんな素晴らしい音楽だったの?」
澪「わからないんだ、ここに来る前、私がどこにいたのか、そしてどんな音楽を志していたのか」
唯「私達の音楽は、屑だよ。あの連中の足元にも及ばない、屑だ。だけれども、澪ちゃん。」
澪「私は、この独房から出たい、昔のように、律と唯と……あと誰だか忘れたけど、下品な豚と、ムカつく昆虫と演奏したい。それはメサイアじゃなくてもいい、第九じゃなくてもいい。」
「だけれども、私の居場所はそこにあったんだ。私達、屑人間に相応しい音楽はそこにしかなかったんだよ」
唯「やっと気がついたね、澪ちゃん。もう、私を食べることは止めにして、外に出よう。」
唯「澪ちゃんが気がついたこと、それはこの物語のテーマが「屑人間」だということだよ。それは外の世界でも忘れないでね。あと、外に出るためには私を殺しちゃだめだよ」
澪「うん、絶対に唯を殺さない」
唯「そう、絶対に私を殺しちゃだめだよ」
唯「絶対に……うへへ」
澪「だが、どうやって私は外に出れるんだ?この堅牢な壁とシステムを乗り越えるにはどうすればいいんだ?」
唯「澪ちゃん。まず、はじめに、私は澪ちゃんを出すためにここにやってきたわけじゃないということに気がついて」
私は、すました顔でものをいう唯に腹がたってきた。先程の歓喜の感情は、唯が何かものを言うたびに薄らいでいく。
唯は、自分が私を救えないということを、小難しい言葉で延々とまくし立てるだけの存在だったのだ。それは、外の世界にもたくさんいる種類の人間である。
澪「なら、お前は何のためにここにやってきたんだ?」
唯「なんでだと思う?」
澪「それは、帰納法的に考えるならば、お前は食料としてやってきたんだろ」
唯「Конечно.(そうだよ)」
澪「おい、さっきからだが、所々で外国語を使うのはやめてくれないか?頭がおかしくなりそうだ。お前はルー大柴か、つまらない外国語を使うな、オナニーか。それに、がばりーちえ り び ぱいえぽーんすきぃ?、だ」
唯「やー、ねむのーが、ぱにぃまーゆ ぱいぇぽーんすきぃ」
澪「そうかそうか、それじゃ、
Даже после тысяч лет человеческого существа,
『Ах, какая жизнь была бы скучной!』
Должны продолжать жаловаться.
В то же время и страх смерти так же, как она должна не спешат умирать.
唯「ねぇーと、にえ、がばりゅー(ゴメンネ、ワタシロシアワカラナイヨー)。それに私はチェーホフが大嫌いです」
唯「ごめんね、澪ちゃん。もう外国語は話さないよ。」
澪「やーや。いえる、これっぽ、あんどぅ、じ、どぶんく?」
唯「今度はイタリア語か!どうしちゃったの、澪ちゃん。私、日本語しかわからないよ……さっきのは悪い冗談だったのに。」
澪「かん、ゆ、すぺーく、えんげりっく、ヴォー、ボンストゥ、ドゥー」
唯「み、澪ちゃん?」(澪ちゃんの頭がおかしくなっちゃった、まあ、いつものことなのかな)
唯はやっと私を心配そうにのぞきこんできた、こいつ、全然私を案じていなかったからな。狂人のふりをして、おびき寄せたのは正解だった!私はのぞきこんできた無防備な唯の首に両手をかけた。
澪「かかったな、アホが!やっぱりお前は食料だったんだ、これから首を絞めて、事切れたあとで全身を解剖し、そう、全身の筋肉をくまなくその骨の結節から剥離して、しゃぶってやるぞー」
唯「ぐへへ……」ぱんぱん
唯は私の腕を二階叩き、タップした。それでも私は止めない、ここで唯を殺すのだ
唯を殺す?それは絶対にしちゃ駄目だったんじゃないのか?ふと、私は唯の言葉を思い出した。
※作者注:このようにして思考がめまぐるしく変化するのが狂人の、それも二十一世紀の狂人の特色なのである
私は唯の首を絞める力を一瞬弱めた。
唯は力いっぱい私の手を払った。
唯「頭をかすめたね、澪ちゃん。私の忠告が頭をかすめたね?その一手が命取りだよ!」
すると今度は唯が私の首を思いっきり締めてきた。
私は気道を絞め潰され、窒息させられるより先に、頚動脈の圧迫により、脳血液の不足、その結果脳細胞に酸素と栄養がいかなくなることにより死亡した。
折れた骨は、首の骨、つまり舌骨だけだった。(頚椎は中々折れないのだ)
この物語で、ヒトが死ぬとき、なかなかに骨は折れないということを私は痛感した。
そもそも、人間が死ぬとき、ほとんどのケースで骨は折れないのではないか?
私の死後の思考は、その解剖学的統計学的な疑問が支配していた。
屍となった私を唯はどんどん解体していく。
まず、肩関節に鋭い包丁を入れ、上腕骨を肩甲骨と鎖骨から引き剥がした。
次に、上腕骨と撓骨、尺骨の間の三つの関節を外す。
真っ赤に私の血で染まりながら、血管と神経をぞんざいに扱いつつもこれらの作業を手際よくこなす唯には、解体屋の素質があった。
次は、撓骨と手根骨の間の靱帯を包丁で切っていく。この時になると、包丁は脂で絖っていた。
さて、見事に私の手が切り離されたわけだ。
唯は刃渡りの長い出刃包丁から、果物ナイフに切り替えて、私の手をばらばらにしていく。
八つの手根骨は綺麗に外され、上位列と連結する中手骨もちぎり取られていく。
そして中手骨の先の指の骨もパラパラにする。なにも、そこまでこだわらなくてもいいだろ。
上肢の破壊がすんでから、今度は、体幹にうつる。
筋肉をめくるようにはがしていき、胸郭を露出させる。そして、肋骨を一本一本丁寧に胸骨と胸椎から外す。
唯は私の肋骨をしゃぶりながら作業を続ける。まるでチュッパチャップスだ!
唯は心臓と肺をスルーして、どんどん下へ行く。あ、まず、私の背中を貫いている脊柱を破壊していく。
脊柱を形成する椎骨、それに付着する棘間筋や、棘筋はピンセットで剥ぎ取られる。
右手に木槌、左手にノミをもち、三十一個の椎骨の椎間結合にノミをいれ、ガンガン叩いて、靱帯接合を切り外すようにして、ちぎりとっていく。
次は腰骨だ。まず、私の骨盤を外ずした。
さすがに腸骨と坐骨と恥骨の骨性の結合はちぎれないよな、包丁では。でも、仙骨と腸骨の間の結合はしっかり外してくる。
それから、下腿部を、まさに解剖するように、骨を丁寧にバラバラにしていく
まずは股関節だ。なれたものだ、唯はざくりと坐骨の間に包丁を突き立て、坐骨と大腿骨を結ぶ、様々な筋肉や靱帯を切り外す。
―骨だ、彼女は骨にこだわっている。
大腿骨を外した後、下肢を切り取る、それから、大腿骨-脛骨の関節を外す。この関節円板を引っこ抜き、私の足はどんどん短くなっていく。
脛骨から細い腓骨を、さけるチーズみたく引き剥がし、それをしゃぶりながら唯は作業を続ける。
さて、脛骨と足の関節をちぎっていく。私は足が短くなるのに耐えきれず、目を背けた。
ついに骨人間になった私、秋山澪。
後はまだ肉と脳が残る頭部だけだが、なんと唯は頭蓋骨の解体をしなかった。
頭蓋骨には十五種、二十一個の骨があるのに!
それから唯は私の綺麗なままの頭部を骨に乗っけた、骨人間の完成だった。
唯「これ、あずにゃんに教えてもらったんだよ」
唯は最後にそういった気がする。
私の骨と頭部は例の便器に落とされた。それからどのくらいたっただろうか。
上から何かが落ちてきた。
私がそれを唯の大便だと気がつくのに時間はかからなかった。
第三部
「澪先輩のお顔、ツルゲーネフに似ていますね」
少しだけ構想に時間取ります
律「しゅじゅちゅは、成功したのか?それとも失敗したのか?」
紬「……わからないわ、でもああして梓ちゃんがぐうぐう寝ているってことは、安心していいんじゃないかしら」
唯の脳に対するしゅじゅちゅが終わったあと、梓は深い眠りについた。硬い床に寝て、新鮮な血の匂いの充満した音楽室で、すかーすかーと、可愛らしい寝息を立てていた。
律「そうか、そうか!」
律は喜びに顔をほころばせ、絶叫した。なにせ、最愛の幼なじみが復活するのだ。かわりに友人は犠牲になったが、それはそれ、これはこれである。
ただ、紬は複雑な表情のまま、バラバラに遊ばれた澪の死体を眺めていた。
澪の死体の上には、ただひとつ、澪のものじゃないものが乗っかっていた。それは唯の脳髄だった。
紬「私達は本当に正しいことをしたのかしら」
紬(そう。絶対に何かがおかしい。そもそも、なぜ唯ちゃんが澪ちゃんを殺したのか?ここが解せないのよ。)
紬(二人の間で何があり、そしてどうしてこのような結果になったのか。澪ちゃんを殺した唯ちゃんが結局は死に、殺された澪ちゃんは生きていた。おかしいんじゃないかしら?)
紬(そうよ、論理的に破綻しているわよ。この結果を言い換えれば、澪ちゃんが唯ちゃんを殺したということにならないかしら?結果がそうなのよ、現象がそう現れている。
だって、現に、綺麗な肉体のまま、机に転がっているのは生きている澪ちゃん。(ただし体は唯ちゃん)
ばらばらに解体されて床で転がっているのは死んだ唯ちゃん。おかしいわ、おかしいわ。)
琴吹紬も非常に混乱していた。なにせ、この非常事態である。混乱しない連中は頭が狂っていたのだ!(つまり梓と律は狂人に成り下がった)
梓「八ヶ国語が理解出来ない人間は馬鹿です」
いつの間にか梓が起き上がっていた。
梓「ガウスの証明した数学的問題を、二十一世紀の現在になっても理解出来ない人間は痴呆です」
紬「そ、そんな事ないわ……」
梓「だって、十九世紀の問題ですよ!ツェルメロ-フレンケルの公理系が理解出来ないのも白痴ですよ、あれは二十世紀初頭の問題です。まあ、幾何化予想を理解出来ないのだけはまだ許せます。それはつい最近のことですから」
紬「?梓ちゃん、この前の数学で七十一点だったじゃないの。たかが、関数方程式程度で……」
紬は吹き出しそうになりながらも、梓の戯言に付き合っていた。
梓「う、うるさいです///」
梓は頬を赤らめた。
梓「まあ、気を取り直します。さて、一体この世界には、レーニンが帝国主義を批判した論文を読まずに資本主義政府に随従していた人民の多いこと!
逆に、マルクスの資本論すらも知らずしてスターリンに迎合した共産党員の多いこと!たまりませんね、このままじゃ世界は破滅しますよ」
紬「レーニンやスターリンって、一体いつの話よ……」
紬はあきれかけていた。
梓「これは現代にも言えることです。雇用・利子および貨幣の一般理論を聞たことすらないのに、民主党を批判して、共和党のリバタリアンどもに投票した国民たち。もちろんこれも逆が言える。」
梓「人々は、経済政策の時間整合性と実物的景気循環論すら知らない、ならば死ぬしかないのに」
紬「ちょっと、梓ちゃん。あなたも知らないでしょ。」
梓「う、うるさいです。だが、人々は阿呆です。私も……その、阿呆です。み、認めるです。」
梓はその触覚なツインテールをいじりながら認めた。
紬「いいえ。梓ちゃん。あなたはおかしいわ。確かに地球は地獄のようだけど、私達は幸せだもの。不幸なことはたくさんあるけれども、生きていることが幸せだもの。」
梓「チッ。ムギ先輩はこちらの側の人間じゃないようですね。いひひ。」
梓の瞳に狂気が戻ってきた。
梓「ムギ先輩は屑人間です。それは澪先輩もでしたけれども。」
紬「唯ちゃんも?」
梓「いいえ。唯先輩は救われたんですよ。今頃、あの、『幸せの独房』の中にいます。」
紬「どこ、そこ?」
梓「いずれわかりますよ、いひひ。」
いひひ。
82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 03:06:10.97:bbSrH4I50梓「さて、そろそろ彼女が目覚めますよ、澪先輩です、澪先輩はしゅじゅちゅの結果、唯先輩の体をもらいました。」
梓「二つの魂の融合は何を生むのか?その真価が今わかりますよ」
梓「お二人はしゅじゅちゅの間、『幸せの独房』の中で魂の交流をしたはずです。それは、ハートフル・ストーリーだったのか?
それともちょっぴりハードボイルドな交流だったのか?はてはて、熱血スポコン的交流だったのか?
いずれにせよ、新しくなった澪先輩は私達を、屑人間と屑バンドから、至高の世界へと導いてくれるのです。」
律「あ、唯が目をさました!」
梓はむっとした。なぜなら、律が本質的なところでは何も理解せず、外見が唯の肉体が起き上がっただけで、すべてを忘れ、それを唯と読んでしまったからだ。
起き上がった唯は、梓の方を見た。ここでの表記は唯としておく。
たしかに唯の脳髄が、澪の脳髄にとって変わられたのは事実であるが、果たして魂が脳髄に宿っているかどうかは、まだ現代医学と生物学は明らかにしていないからである。
便宜上、ニューロンの集合体である脳を魂の宿る器官とみなしているだけなのだから、外見が唯である人間は、唯と記述するべきだろう
唯「あ、梓……」
唯は梓のことをあずにゃんと呼ばなかった。
梓「ほれ見ろ!魂は脳髄に宿っていた!ばんざーい、ばんざーい、ばんざーい!!」
唯「あ、このずんぐりむっくりな手足は……おい、律!鏡だ、鏡をもってこい!!」
梓「さあ、これからが見所ですよ。」
『唯先輩になった澪先輩はそれを受け入れられるのか?人間は他者を受け入れることができるのか、という世界の根幹に関わる問題が、いま明らかに……』
律「み、澪~」
律は涙を流して唯に駆けつけた。そして、自分の手鏡を渡した。
唯「そんな……うそだろ……わたしは死んだのに、なんで生き返っているんだよ……それも唯の体で……」
梓「いひひ。気分はどうですか、澪先輩。唯先輩とどんな話をしましたか?」
梓がニヤニヤしながら話しかける。律は泣いている、そして紬は何かを言いたげに側に近寄ってくる。
唯「梓、てめえ!!」
唯は梓に掴みかかる、そして胸ぐらを締め上げようとしたが、律と紬に止められた
唯「やめろぉ、ふたりとも、私は唯と話をした、すべての陰謀はこの昆虫によって仕組まれ、そこの豚によって実行されたんだ!!」
紬はヒッと悲鳴をあげた。見に覚えのないことで批判され、紬はおどおどと自分の過去数日の行いを見なおした。
やましいことは一切なかった。毎日、みんなのためにしっかりお茶を汲んでいたし、何よりも調和を重んじていた自分が批判されるいわれなどなかったのだ。
梓「さあ、愛するです。澪先輩。唯先輩の体で、私を愛してください」
唯「ななにを言っているんだお前は?」
梓「それこそが世界を天国へ導く唯一の方法だったんですよ。この汚れたけいおんの世界は人間の解体によって新しい道へと……」
紬「梓ちゃん。何を言っているの?」
紬が梓を殴った。梓はぐちゃと音を立てて潰れた。
梓「いひひ。そんな馬鹿な。そう、世界は、人間の魂は、たった一人の人間の脳髄に収まっていてはいけないものなのです。」
梓「さあ、澪先輩。あなたは澪先輩であり、唯先輩なのです。つまり、私を愛して良い存在なのです。
ただ、魂が脳髄に宿っている以上、私はあなたを澪先輩と呼びます。
ただ、澪先輩、私のことをあずにゃんと、ただ、あずにゃんとだけ呼んでくださいです……」
梓は紬にデッドロックをかけられながら唯に懇願した。唯は訳が分からず目を見開いたまま、縋りつく律の体温にうっとうしさを感じて梓を見つめていた。
梓「私はお二人のことを尊敬し、愛していました。そう、この世界を愛するように。私はこの世界と同義です。
私の世界は、私の脳髄の中にしか存在しないのです。その上で、あなたがた二人、外の世界を愛してしまいました」
律「こいつ、気が狂ったのか、なにいってんだかわからねーぞ」
唯「……まて、律。これからコイツが何をするか、よく見ておこう。」
唯「私は決して唯と一つになったわけじゃない。やはり、魂の交流など不可能だったんだ」
梓「うそです、うそです。あなたは澪先輩であり、唯先輩なのです。だから、私を愛してください。
私は、梓であり、世界なのです。この世界は、ただ、私の狂った脳髄液の中の……」
律「コイツを黙らせろ!ムギ!」
紬「合点承知!」
紬は力いっぱい、梓の首をねじった。すると、ぼきりと音がした。
昆虫が潰れる時とは違う音、つまり、骨が折れる音がした。
昆虫は外骨格を持つが、体を支える内骨格を持たない。つまり、このぼきりという、脊柱が折れる音は、梓が人間である証なのだ。
紬「あ、折っちゃったわ。」
律「折れた。そしてこいつは死んだのか?」
唯「やっとあの忌々しい昆虫が……」
唯は机から飛び降り、梓の元へ駆け寄った。そして、唯は律が座ろうとしていた椅子をひったくり、その椅子の足で、梓の体をがんがん叩いた。
どんどん骨が折れていく音がした。もう、肋骨はほとんどぼろぼろだろう。椅子の足は頭蓋骨の硬さにより、曲がってしまったので、今度は机を持ち上げた。唯の独断場だった。
梓の骨は粉々になるまで、たたきつぶされた。
唯「はぁ、はぁ。骨があるってことは、梓は昆虫ではなかった!昆虫ではなかった!」
唯は悲鳴をあげた。それは絶叫に近かった。
律と紬はそれをぼうっと眺めていた。
だがこの時、唯は忘れていた。梓の骨をバラバラにすることを。この物語において、人間の死は、骨をばらばらにすることによって達成されるのに……
第四部
事件から数日が経過した。
音楽室は公安当局の手によって、厳重に立ち入りが禁止された。そして、生存していると思われる関係者三名は身柄を拘束され、特殊な施設へ搬送された。
ただ紬だけがすぐに保釈された。琴吹家の力は大きく、琴吹紬が関与していることは一切が極秘にされた。メディアへの報道管制もしかれた。
紬はほとぼりが冷めるまで、フィンランドに旅行に出かけることになった。
さて、軽音部員以外の人間が出てくる裁判の過程は省く。
要するに、二人の人間を惨殺し、世にも恐ろしい方法で解体に及んだ平沢唯とその協力者田井中律は『屑人間』の烙印を押され、死刑となった。
死刑方法は、伝統的な絞首刑。
ただし気をつけて欲しい。絞首刑で折れる骨は首の骨、つまり舌骨と頚椎(さすがに位置エネルギーにより頚椎は折れる)だけなのだ。つまり、この二人は物語的には死亡していないのである。
真に現在死亡したのは、梓の手によって、骨を完全に解体された秋山澪だけである。
屑人間二人の死体は、数日間、門に晒されたあと、カラスたちの手によって骨だけにされた。
その内骨格を公安当局は、ゴミ捨て場に捨てた。そこから先の、二人の骨格がどこへ言ったのかの記録はない。
さて、この物語の本当の舞台は琴吹紬が旅に出たフィンランド北部の小さな町、ロヴァニエミなのだが、そこで始まるスタンダールの赤と黒に匹敵する巨篇を紡ぐ前に、残された人々の物語をしたいと思う。
憂「私は梓ちゃんが許せません」
和「憂……そんなひどい顔をしていたら、精神衛生上よくないわよ」
憂「和さんはいいですよ、だって屑人間との血縁関係はありませんから。私は、そう、梓ちゃんのせいでお姉ちゃんが屑人間に認定され、もうお嫁にもいけないんですよ、教育も受けられなくなりました」
憂「何よりも、私の救いだったあの人を奪っていったのが憎い……お姉ちゃんを私の元から……」
和「そうね、もう唯はあなたのお姉ちゃんじゃない」
憂「絶対に梓ちゃんに思い知らせてやります……そう、はじめから私が人権を剥奪されたのはどうでもいいことだったの……お姉ちゃんを、いや、唯さんとの血縁関係が剥奪されてしまったことが憎いんです」
家族が屑人間に認定された人は惨めだ。
親は屑を生んだ責任を取らされ、そしてその親の遺伝子を引き継ぐ兄弟姉妹は、屑人間扱いされる。
これから先の憂と聡(律の弟)の人生は悲惨の一言……
憂は戸籍を剥がされ、物扱いされる始末だ。屑人間には憲法も法律も条例も適用されない、いや厳密には適用されるのだが、それは動物と同じレベルでのことである。
動物に値をつけることが禁じられていないように(ワシントン条約で禁止されてはいるが、屑人間はワシントン条約対象の動物ではない)、屑人間も売り買いができる。
憂も、オークションにかけられ、とある暴力団の男に買われた。これから数人の男たちに輪姦される予定だった。
(ちなみに聡くんもとある富豪に買われ、生涯奴隷になる……)
ただ、憂は逃げ出した。そして和の元に来て、助けを求めた。
和も屑人間との交流があったので、肩身の狭い思いをしていたが、憂をかくまった。
そして憂は衝撃の提案を和にした。
純「で、でも、梓は死んだんだよ」
憂「はぁ。純ちゃんは何も分かっていないんだね。梓ちゃんの骨は、解体されていなかったんだよ。」
純「う、うそでしょ……だって、公安当局は梓ちゃんの骨が粉々に潰されていたって報じていた……」
和「そこは私が説明をくわえる必要があるわね。そう、公安当局の発表は正しい。でも、生徒会が命をかけて調べた結果(公安から情報を掠めるには命の二三あってもたりないくらいなのよ)、中野梓の骨格は決してバラバラにはされていなかった。」
憂「わたしが和ちゃんに頼んだんだよ、純ちゃん。」
和「つまり、現在骨格を完全に解体されたのは澪だけって事になるわね。あんな事をしでかしておいて、ムギにいたっては骨格どころか筋肉も結合組織も健在だわ」
憂「そしていま、紬さんはロヴァニエミにいる……きっとお姉ちゃ……いや唯さんもそこにいる」
憂が提案したのは、フィンランドに行き、すべての決着を付けるということだった。
屑人間が飛行機にのるのは大変困難なことであったが、和の力を以てすれば、不可能ではなかった。
憂も和も、直接は梓の陰謀に関連していなかったが、大切な人を奪われたのだ。
和「人と人は重力によって惹かれ合うのよ……この地球が重力を持つ限り、いやすべての物質が引力を持つ限り……必ずムギとみんなは出会う。」
憂「紬さんだけ生きていたのは好都合でした。彼女にまで柔らかい部分を失われては、唯さんの追跡が困難になりますから…」
憂が提案したのは、フィンランドに行き、すべての決着を付けるということだった。
屑人間が飛行機にのるのは大変困難なことであったが、和の力を以てすれば、不可能ではなかった。(その理由は後述する)
憂も和も、直接は梓の陰謀に関連していなかったが、大切な人を奪われたのだ。
和「人と人は惹かれ合うのよ……だから世界にこんなにも人間が充ち満ちているのに、私達は大切な人を見失わずに済む。そして、これからも」
憂「紬さんだけ生きていたのは好都合でした。彼女にまで柔らかい部分を失われては、唯さんの追跡が困難になりますから…」
純「で!私達はこれからヘルシンキ国際空港へ向かうってわけね、教えてくれるのが遅いよ、憂~」
和「理由も聞かず、付いてくるあなたもたいがいだけどね。」
和「で、憂。あなたはロヴァニエミで梓ちゃんを見つけたら、どうするの?」
憂「梓ちゃんの骨格は解体します、私はその覚悟を決めています」
純「へ、へぇ。」(すごい目付き……)
憂「そうですね……フィンランドは近いうちに同性婚が合法化されるんですよね……これも運命!私は唯さんと、結婚します」
和「わ!」
純「ま!」
憂「うふふ……待っててね、唯さん……」
ただし、言えることは狂気を内在させていないこの三人では決して狂気の塊であるあの五人を殺すことなど到底かなわぬことであるということである。いひひ。
なんだこれ
ちょっとレベル高いな
117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 12:59:41.90:bJLxPt8wOちょっとレベル高いな
もう考えながら見るのを辞めたぜ
いひひ
121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 14:34:07.37:DDXyw5OJ0いひひ
ドグラマグラみたいだな
128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 18:26:27.86:t1u8oP5T0第五部 梓「悪辣で非道な独軍に焦土化され、冷酷で残酷な露人に怯え続けた街」
紬「あぐあぐ……」ムシャムシャ
バー コメア ド イフラム?(君はどこから来たのですか?)
紬「うきき!うきゃうきゃ、ぐれちゃ」
ド アル グラーレン (君は気狂いだな)
メン デン ガルラ ドレン オクタ ベラッテ サニゲン(だが、馬鹿と気狂いは真実を言う)
スタナ ヘア チリス ド エア ハリ(気が済むまで、ここにいなさい)
紬「ゴキブリ、ゴキブリ、ホアー!!」
ゴクブリ?
紬「"Gokivili" ar ackliga insekter.(ゴキブーリ アル アキリガ インスケクテル)」
ゴクブリ、バルタ ヴァート ド ヘア (なら、君が食べているものが ゴキブリ かね!)
紬「うふふー」
膜、膜、膜!この街は透明な膜で覆われているようだ。(この街の気質は、歴史的に見て、まさしく膜だった)
いや、紬の意識が膜に覆われているだけかもしれない。
街行く人々は、唾を絞って吐きつけるような調子の外国語を話している。その言葉を解さない。
紬は時々だが気が狂ったように、外国語をまくし立てる時がある、ただ、それはドイツ語崩れのスウェーデン語である
さて、紬はスウェーデンはロヴァニエミ、北極に極めて近い街にやってきたのだ。
そして、ロヴァニエミの中心にある、ロヴァニエミ教会から車で二時間のところにある、さる隔離施設に入院していた。
だからこの物語では決して、ロヴァニエミの近代的な美しい町並みを記述することが出来ない。
なぜ、独軍に破壊された街が近代的なのか?それは人々が新しくロヴァニエミをつくったからです。
つまり、1941年以前のロヴァニエミに、彼女たちはいくことが出来ないだ。それはとっても不幸なことだった。
まあ、話は変わる。
琴吹家の人間は、彼女が死ぬまでそこから出さないつもりである。
日本人は誰も知らない、この異国の施設で、紬は一人ぼっちで理解出来ない言葉を聞いて過ごさなければならない。
つまり、生涯、真っ黒に膜を張られた窓のある部屋に閉じ込められて、その塗潰れた窓から世界をのぞかなければいけない人生なのである。
爪が、三十五回生え変わった頃。
紬は時間を測る手段として、それを用いていた。
なにせこの施設には時計やカレンダーなど存在しないので、正常な思考をうちに秘めた入居者はどのくらいこの施設に閉じ込められているのかを知るためにそれをしなければいけない。
まず、刃物(なければ硬い木でもいい)で親指の爪の付け根に深い傷をつける。それが目印になり、時間が経過するとともに、親指がのび、だんだんと傷跡も上に上がっていく。そして傷跡が肉部から離れ、爪の先となった時、また指に傷をつける。
それを延々と繰り返す。
紬は気狂いのふりをしていた。(時々本当に気違いになってしまうが)。そして、この施設からの脱出を夢見ていた。
紬(こんなところにいたら、脳が腐るわ)
紬はベッドから起き上がり、バスタブへ向かう。
淡青色のタイルは所々が欠け、虫の死骸がゴロゴロ転がっている。この施設はとても不潔だった。お嬢様には相応しくない施設だった。
紬(なんで私がこんな所にいなくてはいけないのよ!)
しかし紬は、ゴキブリも真っ青になるほどの環境適応性を持っていた。
なにせ、高校に入学して以来、下流階級のお友達と、時々下品な面をのぞかせる下流階級のお友達に対し、嫌な顔一つせず、お付き合いしていたのだから。
だから、この甲虫や蚊の羽と死体がぼろぼろ落ちている施設のベッドでも、嫌な顔一つせず、寝ることができたのだ。
爪が三十五回も生え変わると、そろそろ紬の記憶には薄い膜が張りだしてきた。だんだんと、その下流階級のお友達の名前と顔を思い出せなくなっていくのだった。
紬(唯ちゃんと、律ちゃんと……あと誰だったかしら?ゴキブリとカミキリムシがいたような……どっちがゴキブリで、どっちがカミキリムシ?カミキリムシの触覚の方が長いわ……)
作者注:よくあずにゃんはゴキブリに例えられるが、はっきり言って僕は彼女はカミキリムシに近いと思うのです。
なぜなら、カミキリムシの触覚の方が、あずにゃんのツインテールのボリューム忠実に表しているからです。
しかしこのSSはあずにゃんの存在はゴキブリやカミキリムシなどではなく、人間であるという、一大事実を傍証するためにあるのです。
ちなみにロヴァニエミがある、ラッピランド州にはゴキブリやカミキリムシはいない。
熱帯から温帯にかけてはびこっている奴らは、北極圏に近いこの街にはあんまりいないのだ。
ちなみに紬が毎日食べている虫も、日本的感覚で言うゴキブリではなく、ただの甲虫である。
ちなみに、ここの入居者に限らず、スウェーデン人はあまりゴキブリに対する嫌悪感を持っていない。
ここ、スウェーデンの北部には大量の蚊がいる。はっきり言って、蚊の濃度は大気中のCO2どころかN2の濃度を超えているんじゃないか、と思うくらい。
つまり、口を開けていれば、ごく自然に蚊を食べることができる。まあ、そんな事をするのは、紬と、紬がここで知り合った数人の新しい友人くらいなものだが。
紬(ほろほろ……そもそもなんで私はこんな所にいるのかしら?私が日本で何をしたのかしら?
思い出せなくなってきているわ、話し相手が必要よ。
隣のベッドの女の子は、日本語が分からないし、ドクターもわからない、シスター達もわからない。ああ、なんという孤独!)
ちなみに、紬のここでの趣味の話をしよう。
それは、昆虫の解剖であった。つまり、日本で彼女たちが愛した、人間の解剖とは違った。
紬が好んだもの、それは蜂の解剖であった。
なにせ蜂ほど解剖に適しており、また面白い特徴を持った昆虫は中々いない。
まず、体のサイズが大きい。ルーペで拡大すれば、細部まで面白いくらいに見える。
最初に紬は蜂のチキン質の外骨格をはがしていく。人間は外骨格を持たない、そして昆虫は内骨格を持たない。
注意を要するのは、蜂の頭部の口器の観察である。これは下手をすれば折れてしまう。丁寧にピンセットで剖出しよう。
それから、複眼の目、これをきめ細かく観察する。
それから胸部に移るが、胸部には二対の羽(ハチは膜翅目であるため二対、双翅目のハエはたしか一対)と六対の足がそこから出ている。
最後は腹部だが、これが蜂の醍醐味である!丁寧にピンセットで切り裂いていけば、茶色いマルピーギ管が飛び出した中腸を観察できる。
すばらしい!紬は歓声をあげた。蜂ではお得なことに毒嚢も見ることができる。そう、蜂の最大の特徴である毒針だ!
紬(この施設では人体を解剖できないわ……)
紬(なんでこんなに鬱憤が貯まるのかしら、人間を解剖してはいけないという倫理的な縛りのせいで)
紬(ああ、あの昆虫なら、容赦なく入居者たちを解剖するでしょうね)
紬(だ、だれだったかしら?昆虫……そう、あずにゃん?だれかがあの昆虫をアズニャンと読んでた。)
紬(あずにゃん?膜翅目かしら、それとも甲虫っぽいわね。そう、鞘翅目(つまり甲虫目)だったような?ゴキブリ。そう、ゴキブリよ!)
紬「ああ、私の友人はゴキブリだったのよ!」
梓「失礼します、ムギ先輩。」
紬「ああ、私の友人はゴキブリだったのよ!」
梓「失礼するです」
紬「あぁ。あなたは……その、美しいカミキリムシの触覚のような、ツインテールの持ち主は!」
梓「あなたの可愛い後輩ですよ、いひひ。」
梓はこの厳重な施設のガードを突破してここまでやってきたのだ。
梓「私を昆虫だなんてあんまりです。だって、昔に、ムギ先輩が私の内骨格を折って私が昆虫ではなく、人間であるという事を確認するに至ったじゃありませんか!」
梓「あんまりです!それじゃ、まるで骨折り損のくたびれもうけ、まさしくその諺のとおりです!」
紬「なんのために、こんな辺鄙なところ、まさに世界で一番辺鄙な街にやってきたのかしら。」
梓「いひひ。その答えはですね、簡単ですよ、ここで、さらなる人間の解体が行われるから、やってきたんですよ」
いひひ
143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 19:29:32.24:t1u8oP5T0紬は梓につれられて、施設の地下へ移動した。
紬は、そこにあったものをみて、絶叫した。なんと、大きな挽肉器があったのだ!おぞましい鋭い刃を光らせて、それは堂々と部屋の中央に鎮座していた。
いひひ。梓は近くに落ちていた、大型犬の死骸を持ち上げた。よくぞ、あの小さな体であれだけの重さの動物を持ち上げられるものである。
紬は感嘆した。しかし、かつて自分もあの程度の重さの楽器をひょいひょいと持ち上げていたのではないか?という極めて不可解な記憶が沸き上がっていた。
梓が大型挽肉器のスイッチを入れた。すると、まるでコルク抜きのような螺旋状の刃がぎゅるぎゅる回り、かつてそれで挽き潰してきた、人間どもの脂が飛び散った。
梓は笑いながら、大型犬を投げ入れた。
ゴウーン……ゴゴゴゴ―――ガーガガガ―
大きな音を立てて、どんどん投げ入れられた犬の半身が、刃の中に吸い込まれていくとき、突然犬は目を覚ました。
内骨格を解体されていない死骸は、このような時に突然目を覚ますのだから、厄介である。
犬はくうんくうんと鳴き声をあげ、必死にねじくるう刃から逃れようとしたが、それもかなわない。
まず下腿部が飲み込まれていく。つぎに、胸郭が。犬の発達した肋骨(四足動物は、これがたいそうよく発達している)がバキバキ音をたてて折れていく。一緒に肺や心臓まで飲み込まれていく。
ああ、なんと無慈悲なのでしょう!紬が犬を救おうと、飛び出そうとしたとき、梓は機械のスイッチを止めた。
すると、必死に逃れようと上体を暴れさせていた犬が、まるで線香花火の最後のように、だんだんとゆっくりになっていき、最後は頭をたれてぼとんと息を引き取ったのだ。
梓「この瞬間が大好きなんですよ。」
満円の笑みをほころばせた後で、梓は再びひき肉器のスイッチを入れた。
今度はシュレッダーに飲み込まれていく紙のように、犬は静かに闇の中に吸い込まれていった。
梓「さて、次は人間でやるです」
紬「そ、それは私をこの犬がひき潰された、この下品な機械に入れるというわけかしら?」
紬は『犬』という言葉を強調した。
紬「まさか、貴族の私を……」
梓「それです!それが豚なんです!」
紬「私が豚?」
梓「そうですよ、ムギ先輩はただの偶蹄目の豚豚ですよ!なぜお金があることをひけらかすのです!なぜあなたは高貴であるのです!そんな下劣な人間感情のせいでどれだけ多くの無辜の民が、地を這ったゴキブリのように潰されたことか!」
梓「私達にしたって、そうですよ。なんで、あんな立派な家に住んでいるんですか、なんであんな幸せな家庭があるんですか、なんであんなに幸せな友人に囲まれているんですか!」
梓「私達が人間ならば、もっと苦悩しなければいけない。私は様々に苦悩し続けました。」
梓「そうです、裕福で満ち足りた環境であっても、それを苦悩しなければいけないのです。それに満足し、自分を貴族だと内心で思い、その地位に安住している人間の罪は、貧困から殺人を犯して首を吊らされた囚人たちの罪よりも重いんですよ」
梓「だから、あのハゲは、あの……名前を忘れましたが、王子は、宮殿を飛び出してしまったんですよ。なのに、なぜ、ムギ先輩は貴族でいられるのですか。だから、貴族は豚なんです。」
挽肉器の回転音をBGMに、頭のオカシイ連中による議論が始まった。
紬「おかしいわよ、梓ちゃん。はっきり言って、私から聞くと、あなたの主張は自分の貧しさ故に、他人の裕福さを批判しているような、嫉妬深い乞食の意見にしか思えないわ。」
梓「……」
紬「私はたしかに、生まれもいいし、育ちもいい、完璧なお嬢さまよ。でも、それなりにたくさんの苦しみを経験している。
だって、私がその生まれに因る苦悩をいだいていなければ、決してあなた達、環境の違う女子高生と付き合うことなどなかったでしょうから!」
梓「つまり、ムギ先輩のようなお金持ちの貴族が、私達下賎の民とわざわざお付き合いをしようとしたのは、あなたが高貴な身分であり、かつ、精神的にも熟成した立派な人間だからということですか。
馬鹿にしないでください、この豚。」
紬「なら、どうすればよかったのよ!私達が生まれによって、あなた達を見下すような、私の昔のお友達と同じ種類だったら、決して私達は出会うことはなかった。」
梓「……」
紬「ではなぜ、私達が出会ったのかしら?なぜ人と人は惹かれ合うのかしら?」
紬「わたしがHTTと出会ったのは、私が偶然あの時合唱部に興味を持ったから?そして合唱部が存在せず、あの日の音楽室にりっちゃんと澪ちゃんがいたから?なぜなの?なぜ私はみんなと出会ったの?」
梓「悲鳴をあげないでください。ムギ先輩はただの豚です。それも、とびっきり下品な。本当に下品な存在は、その本性を上手に隠すのがお上手ですよ。
さて、そんな答えのない問を絶叫しないでください。これからも私達は、数多くの出会いを経験しなければいけないのですから。」
紬「……」
梓「即爲廣説二百一十億諸佛刹土天人之善惡國土之粗妙。いひひ。」
紬はその言葉の意味を解さなかった。梓は笑いながら、地下室の外へいってしまった。
挽肉器のスイッチを入れたままだった。
紬(メサイアだわ!このメロディー)
挽肉器の刃が回る音が、あの人類が奏でた至高の名曲、メサイアにそっくりのメロディだと言うことに気がついたとき、紬は人間を支配し続けてきた、どうしようもない、としか表現し難いある種の感情に気がついた。
挽肉器は―ひきつぶす肉を失ったそれは―オルゴールのようにメサイアを奏で続けているのだ。
不条理だわ!そう、なぜここまで下品な存在が、メサイアのような高尚な音楽を生み出しているのか!
紬は恍惚とした表情となった。はっきりいって、彼女がかつて作曲した音楽のどれもがメサイアには到底及びもつかなかったのだったが。
>>1は何者なんだよ
154:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 20:13:38.00:t1u8oP5T0メサイアの絶叫のようなコーラスが、この螺旋状の刃の奥から聞こえてきた。
For unto us a child is born
紬「ひええ。」
紬はいつもとは似ても似つかない声をあげた。そして、足を一歩一歩踏み出し、メサイアに近づいていった。
さあ、これから自分がこのぐるぐる回る刃の中に飛び込むとは知らず、紬は恍惚とメサイアにあわせて歌っていた。
刃先が目の前に迫った瞬間、紬ははっとした。
誰かに腕をつかまれていた。梓が戻ってくるはずもなかったので、一体誰だろうと紬は後ろを振り返ったが、そこには誰もいなかった。
しかし、床を見ると、数本の、長くて黒い、艶のある髪が落ちていた。
紬はそれを咀嚼してみた。それは澪のトリートメントの味がした。
紬「そうね、ごめんね、澪ちゃん。澪ちゃんは、内骨格を解体されて、死んじゃったのね……
私も危うく死ぬところだった。でも、なんで私を助けてくれたの?
意味が分からないわ、この一連の流れ……不可解極まりない」
紬「そして私は何をして、どこへいくべきかしら。」
一見、澪の最後っ屁によって救われたかに見えた紬だが、これは全然救われたわけではなく、さらに彼女が狂気に走る元凶となる事件なのである。
そもそも、この程度で、人間の内に潜む狂気が救済されるわけがない。
このようにして、ささやかな事を救いだとか、神様のお導きだとする連中こそ、盲目で、救いようのない屑なのである……
第6部
梓「パリ、それは芸術と大便の街」
突然だが、舞台はスウェーデンのロヴァニエミから、フランスの首都パリへうつる(それはこの部だけで、残りすべての人間解体と魂の救済はロヴァニエミで行われるのだが)
現在、パリのジャン・ジョレス通りからさらに奥まったところに入ったマルタン通りの薄汚いバーに、一人の女子高生がいた。
バーの奥に座り、酸っぱいブランデーをすすり、煙草をくゆらせながら、バルザックを読む女子高生がいた。(とても滑稽だな!)
フランス人は彼女を無視した。女たらしのフランス男性が、この手の女性を無視するのは珍しいことだが、決して近づいてはいけないと分かっているのだから、彼らも賢いのだ。
律「澪?お前は澪なのか!」
しかし、そのフランス紳士たちの空気を読まず、その孤独な女性に飛びかかる人間が一人いた。
律「おま、お前、唯の格好をしているけど、確かに澪なんだよなぁ~私は死刑になって一回首を絞め潰されて、糞尿やらを垂れ流した身だけど、お前に会いたかったぞ、澪」
唯「いひひ。」
律「え……その笑い方は……」
唯「ここじゃ、人間解体は行われませんよ、律先輩」
律「ひ、ひぃー!お前は、梓!」
唯「いひひ。」
律は悲鳴をあげながら、小水を漏らした。
唯「じょ、冗談だったのに……ごめんねりっちゃん」
なんと、唯はあくどい事に、梓のふりをして、律をビビらせようとしたのだ。しかし、律は恐怖のあまり放心していた。
唯「さ、その汚いションベンを含んだパンティーを捨ててきて。それから、ちょっとお話をしよう。」
律「ふえーん……て、お前は澪じゃないのか?澪だと思ったから私はここに来たんだぞ!」
唯「ごめんね、澪ちゃんもいるんだけど、今は私の魂の中にいるよ。なにせ、澪ちゃんはかえるべき骨格を、あずにゃんに解体されちまったから。」
律「ふーん……詳しいことは分からないが、とにかく、お前は澪であり、唯であるのだな」
唯「うん!」
唯(やべー……嘘ついちゃったよー。澪ちゃんがもう、内骨格を破壊されたから、永遠にあの独房から出てこれない事を伝えられないよ……)
唯(澪ちゃんは確かにあの時、脳髄ごと私の肉体を乗っ取ろうとしたけど……確かに、あの独房から出てきて、澪ちゃんは私の精神を支配した。
しかし、死刑によって、柔らかい部分を失ったとき、澪ちゃんも失われたんだよー。
まあ、りっちゃんを利用するためにも、ここは、澪ちゃんが生きているふりをしないとね!うへへ)
律「んでんで、お前の目的はなんなんだ、この辛気臭いバーに用なんかないだろ。」
唯「そう。ここにはあずにゃんもいなければ、(それゆえに)人間解体も行われない。
私の目的は、ここである人間どもを待つことだよ」
律「そ、それは誰だ?」
唯「日本から西欧州へ向かうとき、一番近い空港は?ヘルシンキにある国際空港なんだよ。
つまり、通常決して彼女たちはパリには来ない。そもそも、ヘルシンキを経由してシャルル・ド・ゴールに来る日本人の方が多いくらいだからね。」
唯「私は試しているんだよ。ムギちゃんと私の力、どちらが上か?
もし、彼女たちが、私に引きつけられるなら、絶対に今、憂達はパリにいる。そう、りっちゃんがひきつけられてきたように」
律「わ、私は、スペインから来たからここを経由しただけだ、なら絶対憂ちゃんたちはパリをよらないぜ!
だって、わざわざ遠回りするかよ。それに憂ちゃんたちの方だって、きっと唯がフィンランドにいると思っているさ」
確かに、この物語の主役たちはこれからロヴァニエミに結集するのである。ただ、唯は寄り道をしていただけだった。
人生において、寄り道のいかに大事なことか!
唯「りっちゃん。話は変わるけど、先に謝っておくことがあるよ」
律「ん?なんだ」
唯「澪ちゃんを殺しちゃって、ごめん」
律「……なんだ、その事か」
唯「憎くないの?りっちゃんにとって、澪ちゃんは私達の中でも特別な人間だったんでしょ?
私はその澪ちゃんを殺しちゃったの。そう、そして肩関節と股関節を外して……」グスングスン
律「もういいんだよ、唯。顔を上げろよ。せっかくの化粧が台無しだぞ。」
律「澪は生きているんだ、私はそれさえ信じていればいい。生きてさえいれば、きっとどこかで会えるだろ?
いや、実は澪は本当に死んじゃっているんだて思うことの方が多いいんだ。何か、人間的な理由で、お前は隠しているのかもしれないけど、やっぱり骨格を破壊された澪が生きているとは思えないよ。
私たちは、舌骨と頚椎の破壊ですんだからよかったものの」
唯「りっちゃん……」
この時、唯は澪の死を打ち明けようとは思わなかった。逆に、永遠に澪の死を隠さなければいけないと感じた。
そう感じた時から、自分の脳味噌の中で、澪が生き返ってきた気がした。
それだけで唯は救われた。そう、澪殺害の件に関しては。
律「だが、どうしても解せないことがあるんだ。そもそも、なぜ、唯は澪を殺したのか?」
唯「……」
その、物語の根幹についに蚊帳の外の人間だった律が踏み込もうとしたとき、バーの外で悲鳴が聞こえた。女の悲鳴だった。
唯はそっと、吸いかけの煙草を灰皿におき、バーの外を見つめた。
なにか、またひどい人間の解体が起こる気がした。しかし、まだ唯はそれを許容していた。なぜ、人間を解体してはいけないのかがわからなかった。
バーの扉が開き、ジャケットのようなに剥がされた、人間の皮膚が飛び込んできた。
正中線から、大胸筋を切断し、(鎖骨下縁まで)、それから、三角筋などの、上腕の筋肉も剥がしつつ、背中の僧帽筋から菱形筋にかけて、ざっくりきられている。
そして、背中はつながっていて、まるで革ジャンのように、おしゃれな人間の皮と筋肉が投げ入れられた。これは、メッセージだった。
だが、そのメッセージの意図は誰にもわからないし、投げ入れた本人にもわからないかもしれなかった。
律と唯は、その人間の革ジャンを観察した。
まず、乳房と乳首がそのままついていた。控えめな乳房を揉むと、それはまだ生前の張りを感じさせる逸品だった。
唯「これは、処女の乳房かもしれない」
律「た、確かに。まだ、乳首が黒ずんでいない、それどころか薄紅色にてかっている。ああ、これはきっとまだ処女の、十代半ばの女の子の乳房だ。」
そう言いながら、律はその左の乳首を舌でなめ、それから乳房を口に含んだ。
律がそれを楽しんでいると、今度は、人間の顔の皮が投げ込まれた。
唯「これは誰のだろう?」
唯がマスクのように、その皮を被ると、律は首をかしげた
律「誰だろう、でも見たことあるぞ……佐々木さん…だったかな?」
律はまたしても名前を忘れてしまったが、これは鈴木純の皮である。
二人はそれに気がつかぬまま―そう、他の部位を投げ込まれても気がつかないだろう―、その皮を引き伸ばしていろいろな表情を作って遊んでいた。
今度は、骨盤を投げ込まれた。そう、骨盤にはまだ骨盤内臓器が入っていた。
律はそこから膀胱を引きちぎり、風船をふくらませるようにして、空気を輸尿管からいれて、遊んでいた。
唯は膣口から子宮口までどのくらいの長さがあるのか、純粋に医学的な興味を持って、測っていた。そう、子宮の断面をつくれば―ナイフによって―それが容易になるのだった。
ひとしきり遊んだあと、今度はダンプカーでひき潰されたような、ぐちゃぐちゃの死体が投げ込まれてきた。もう、二人は鈴木純の死体に興味がなかった。
それから、入り口の向こうで声がした。月明かりでうっすらとドアの側にその人間の影が出来ていた。
その人間は側頭骨と頭頂骨の縫合辺りから、人間にはありえない、長くて太い器官を出していた。それは影になって黒かった。
(本当に黒いのかもしれない)まるで、その器官は、昆虫の触角のようだ!
「それは純ですよ」
ぼこりと音を立てて、今度は2kg弱の柔らかい彼女の脳髄がバーの中に飛び込んできた。
そこには12対すべての脳神経がそっくり観察できたはずなのだが、なんたることか、視神経だけが切断されていた。
唯「笑いなよ、そこの人間!人間の本性は笑い方でわかるんだよ、フンス」
律「フンス!なんと滑稽な響き!これが唯の笑い方だ、ならお前の笑い方を見せてみろ、昆虫!」
「いひひ。」
唯「あ、あれはあずにゃんだ!」
律「ひぃー!梓かよ!後輩の癖に生意気だぞ!」
梓「いひひ。先輩方、早くロヴァニエミにいらしてくださいよ。パリじゃ、あまりおおっぴらに人間を解体できないんですよ、そのせいで、ほら。あんまり残酷なことが出来ません」
梓は、純の眼球をペロペロなめながら、話していたが、我慢できなくなったのか、両の眼球を口に頬張り始めた。
それは、まるで、ひまわりの種を口に頬張る、ハムスターのような可愛らしさだった。
梓「憂と和さんも、いまパリにいますが、それで満足でしょ?いま二人がここに来ら、私は二人をここで解体しますよ。
さあ、その純のひき潰された死体を返すです。これを今から解体してやりますから。」
唯「そもそも、なぜあずにゃんが、パリなんかにいるの?」
梓「そりゃ、唯先輩の事が好きだからですよ。」
梓の突然の大胆な告白に、唯は頬を赤らめた。
梓「でも、私は澪先輩のことも好きで、尊敬しているんです。ですから、二人が一つになるのが私の望みであったんです。
現在は、澪先輩は死んでいますが、これから復活するのですよ。
四人がロヴァニエミに揃い、余分な連中をそこで解体したときに…かならず、澪先輩はもどってくるです。」
さあ、次回、衝撃のラストを、ロヴァニエミで私達は迎えるんですよ
第七部(超大長編であり、こここそ、人間解体の真骨頂)
これを完成させる最後の一ピースをうめるため、ちょっと図書館で取材してきます。あと栄養をとってきます。
また一時間、二時間後に……
たまらん…早くしろ……
182:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/05(金) 23:09:54.57:t1u8oP5T0梓が紬と二人きりで遊ぶのは、この日が初めての事だったかもしれない。
梓は少しだけ気まずい思いをしていた。なぜなら、紬は一つ年上だし、唯や律のように向こうから積極的に後輩である自分をいじることは少なかったからだ。
紬はいつも、何を考えているのかわからない。
少し浮世離れしていて、軽音部の四人とは親しくしているが、一体どのような小学校、中学校での生活を送ってきたのか、てんで想像がつかない。
梓はいつも、疑問に思っていた。なぜ、こんなにも美しく高貴な人が自分たちと親しく(それも紬の方から)接してくれるのだろうか?
第七部 梓「人間地獄」
その日は休日だった。梓は街で一人、退屈そうに歩いていた。買い物に来たのだが、あまり気が進まなかった。
足が勝手に駅の方へ向いていて、ぶらぶらと興味を引かれる店に入って服やら小物やらを眺めていた。
その時、偶然紬と出会った。
人通りの多い、大通りから一本外れた所にある、レコードショップ。
今時珍しく、豊富なレコードを取り扱っていた。
梓の家はLPレコードを聞ける環境があるため、若い人には珍しく時折レコードを眺めに来るのであるが、梓はこんな小さな店で紬に会えるとは想像していなかった。
その時、紬は一枚のLPレコードを手に取っていた。
梓はそれが気になって、ひょいと覗き込んでみた。
―Messiah―と大きく描かれ、その下に1969年という年号と、指揮者と楽団の名前が記されていた。
紬は恥ずかしそうにそのLPレコードを棚に戻した。
紬はずいぶんとお洒落な格好をしていた。とても清楚に見えた。
梓はジーンズ姿の自分とは大違いだと思った。
紬「梓ちゃん。今日は暇かしら」
紬はつぶやくように言った。梓は頷いた。
梓「ええ」
紬「ならお茶でもしない?」
毎日、放課後お茶をしているのに、休日もするのだろうかと梓は思った。でも、紬と二人きりのティータイムは、いつもの五人でのそれと違うものになるのだろうと思った。
紬と二人きりだと、自分も貴族の一員になったような気分になれるだろう―それに見合った格好さえしていれば。
梓が紬に連れていかれたのは、高層ビルディングの最上階で、壁がまるですべてガラスでできた、高級なレストランだった。
客は自分たちしかいないような気がした。席と他の席の間隔がとても広いのだ。
自分たちが座った場所から、隣の席までおおよそ、通常のファミレスの端から端まであった。
そこから眺める梓の街や家は、模型のようだったし、人間一人見えなかった。
梓はかなり恐縮し、おどおどしていた。まさか、紬がこんな店に―確かにこのような店を行きつけにしているイメージがあったが―自分を連れてくるとは想像だにしていなかった。
紬「こんなところに連れてきてごめんなさい」
紬は謝った。
梓「い、いえ。ただ、少し驚いているだけです。こんな、映画の中のようなお店があるだなんて。ウェイターもすごく礼儀が正しくて……なんだか場違いな気がします」
梓はまず疑問に思った。このような店は、スーツ等の正装が必要ではないのか?なのにジーンズ姿、そして紬も清楚であるとはいえ、ワンピース。このような私服で入れる場所なのかと思った。
紬「いいのよ。ここは昼間はあまり使われない場所だから。」
紬は静かにコーヒーをすすりながら言った。いつものような冗談めいた雰囲気はなかった。
梓「えっと、よくいらっしゃるのですか?唯先輩達と、この店に。」
紬「初めてよ。友達とここに来るのはこれが初めて。」
梓は、紬が自分の事を友達だとよんだことに、僅かな戸惑いを感じた。
この年代によくあることだが、たかだか一年の生まれの違い(人によっては一ヶ月の生まれた日の違いのこともある)で、その差を過剰に感じてしまうのだ。
梓も先輩には敬意を払い、同輩の友達と接するのとは違う接し方をしていたので、紬に『友達』と言われたことに気恥かしさと、少しの申し訳なさを感じたのだ。
梓「あ、ありがとうございます」
梓は、そう答えることしか出来なかった。もし、梓も紬と同じ学年だったら、どんな反応ができただろうか?
それから、しばらく沈黙が続いた。梓は心ここにあらずという感じでキョロキョロしているし、紬は物思いにふけるように、自分のコーヒーカップに浮かんだ波を見つめていた。
紬「……Messiah…メサイア……1742年、ヘンデル作……梓ちゃんは聞いたことあるかしら?」
梓「ハレルヤですか?ありますよ」
紬「ハレルヤじゃないわよ、メサイアよ。」
そこでまた会話が途切れた。
紬「ごめんなさい。なんだか今日は、いつもと雰囲気が違っちゃって。でも梓ちゃんなら理解してくれると思ったのよ」
梓「何をですか……」
紬「ごめんなさい。ごめんなさい。……なんだか涙が止まらないわ」
紬は突然泣き始めた。梓はこのような高貴な人でも、心の内に苦悩を抱えているのだと思った。
そして何が原因かは聞いてはいけない気がしたが
紬「……ごめんなさい。いいえ、勇気を持たなくっちゃね、紬」
泣き止んだ後、紬は梓の瞳を飲み込むような眼差しで梓を見つめた。梓はどきりと心臓が跳ね上がった。
紬「梓ちゃん。笑ってみて?」
梓「え……?どうしてですか?」
梓はドキマギした。突然笑えといわれても、できるはずがなかった。
紬「自分がこれまで、一番楽しかったことを思い浮かべてみて。」
梓はだんだん、頭が真っ白になってきた。思い浮かべようとしても、緊張して碌に思い出せなかった。
紬「でも、梓ちゃん。あんな笑い方はしないのね。」
梓「……?」
紬「うん、話そう。梓ちゃんの身に、そして私達5人の身にこれから起こる悲劇を……」
紬は決意したようだった。
紬「まず、唯ちゃんが澪ちゃんを殺す。」
梓「いひひ」
梓「人間を解剖するには、上皮組織、筋組織、結合組織という三つの障害を克服しなければいけません」
梓「骨は厳密には結合組織の区分にいれられますが、いいえ、人間というものは骨に結合組織、筋組織、上皮組織をまとわりつかせてようやく立っていられるのです」
梓「骨を失ってしまった人間は、まさしく、完全に解体された人間となるのです」
梓「さあ、今ここロヴァニエミに四人の役者が集結しました。これから始まるのは、人体大解剖です。」
紬が入院していたロヴァニエミの施設の地下室、例のオルゴール的挽肉器の前に梓が立ち、それを取り囲むように紬、唯、律が集まってきた。
律「梓。お前は気狂いだ。」
律「唯。お前も気狂いだ。」
律「ムギ。お前も気狂いだ。」
律「私はどうだ?教えてくれ」
唯「りっちゃんも気狂いだよ。」
紬「りっちゃんも気狂いよね。」
梓「律先輩も気狂いですよ。」
律「なあんだ、そうだったんだ。」
律「さあ、なら私をもとの、軽音部部長の田井中律に戻してくれよ」
梓「律先輩は、耐えられますかね」
地下室の中央に、大きな水槽が用意されていた。その中に、無数のヒルがうごめいていた。
体長は小指の第一関節から先くらいの小さなのもあれば、全長30cmくらいの巨大なものもいた。鈍色のものから、原色の赤色黄色のものまで選り取りみどり。
梓「ヒル…環形動物ヒル綱……ヒルの特徴は、刃のようなキチンの顎で皮膚をえぐり、そこから血を吸う事。
ヒルは血を吸いパンパンに膨れ上がるのです。
そしてヒルは抗凝固剤を血管に入れるので、ヒルをライターで炙りひっぺがしても、そこから出る血は止まりません。」
軽音部の三人は、律をその水槽にいれたあと、その水槽に蓋をした。律は手足を曲げ、苦しそうな格好のままヒルに血を吸われていくのだった。
りっちゃんの思考
あ、どんどん入ってくる。制服の隙間からもぞもぞもぞもぞ。
血を吸われるよ、全身の血が。目の前に、いる!!
紫色のヒルだ、とても大きい。口を空けたぞ。
ひぃ。口に硬そうな歯がびっしりだ。それで私のどこの部分をえぐるんだ!
デコか!考えたな、でも、おでこにはあまり血管は通ってないぞ。諦めたか。チッ。血が止まらん
さあ、そいつは私の首に入っていく。残念だったな、内頸静脈も総頸動脈も、かなり体の奥深くにあるぜ。はっいりいってお前のその刃じゃ、私のドラムで鍛え上げた胸鎖乳突筋は破れないだろ。
だが、全身の血が抜かれていくなぁ。
梓「二時間経ちました。ヒル達はもう、パンパンに膨らんでますね。律先輩は笑っていますね」
唯「りっちゃん幸せそう」
梓「さあ、次の水槽に移しますよ。今度は殺しに行きましょう」
梓「次はムカデですよ。」
律「ム、ムカデか!昆虫の親戚じゃないか、梓!ムカデも節足動物だぁ!」
梓「ふん!」
梓達は律を今度は強引にムカデの水槽に突っ込んだ。ヒルは面倒くさいのでつけたまんまだった。
律の赤い血でパンパンに膨れ上がり、葡萄の房のように律にひっつくヒルは、洒落たアクセサリーだ。
とくに耳たぶにひっついた、赤いヒルが耳ピアスのようだったので、唯は笑い転げた。
唯「り、りっちゃんが不良になっちゃった!うへへー」
梓「いひひ。さあ、ムカデだムカデ。」
律をドスンと水槽に入れると、その重さで底にいたムカデが何匹か潰れた。青色の体液を出して、潰れた。
ムカデ達は突然大きな肉が落ちてきたのだから慌てた。そもそもムカデは肉食性の昆虫で2800種すべてのムカデが昆虫を食べることが知られているが、人間を食べることはまだ実証されていない。
ここは壮大な人間実験の場と化した。
腹をすかせたムカデ達は、律に噛み付いた。
律は悲鳴をあげた。絶叫をあげ続けた。
何匹かのムカデは律のだらしなく開いた口から律の口腔内に侵入した。律は慌ててそのムカデを噛み潰した。苦い味が口の中に広がった。
一年間、全く歯磨をしなかったら、口の中がこんな味でみちるのだろうか、そんなひどい匂いがしてきた。
なにせ、昆虫を胃袋に詰め込んだムカデである。ひどい匂いがするのも道理だ。
ムカデの第一節の付属肢は一対の毒牙となっていることが多いので、これだけ色とりどりの毒ムカデに噛み付かれ、律は絶叫をあげ続けた。
ただ、ムカデの噛む力では到底律の皮膚など破れるはずもない。(人間の表皮組織は非常に堅牢なのだ)
次第にムカデ達は咬むのを諦めた。律の体は全身真っ赤になり、彼女の体は毒で火照った。
律「水、水をくれ、水をかけてくれ」
梓「今度は、蚊です!」
律は今度は蚊の水槽に入れられた。蚊は容赦なく律を刺した。律の肌はボコボコに膨れ上がった。
もはや、律は目も当てられない姿になった。
梓「人間の外見はこれだけ醜くなっても、案外中身は美しいんですよ。」
水槽から引きずりだされた律を仰向けに寝かせ、梓はメスを手にとった。律の四肢を革ベルトで拘束した。
梓は律の、オトガイから甲状軟骨に沿ってメスを入れ、正中線上の表皮をメスで切開した。
それから、水平にメスを入れた。そして、左手でピンセットを持ち、ピンセットで皮膚を真皮ごと持ち上げ、メスを真皮と皮下組織の間にあて、ごそごそ削り取っていった。
そう、これから梓は律を生きたまま、皮膚をひっペがそうとしているのである。
皮膚をオモテ面の皮膚を剥がされた律。それから、梓は筋肉を剥がし始めた。
大胸筋、小胸筋、前鋸筋、肋間筋。どんどん剥離していく。神経は無造作に切られていく。そのたびに律は耐え難い痛みを覚える。
律「うきゃあぁ」
梓は容赦なしだった。ついに肋骨の下に胸郭臓器がみえた。梓は律の肺に、メスを突き立てた。ピューと音を立てて、彼女の片肺はしぼんだ。
唯「わい!気胸だ、気胸だ!」
唯ははしゃいだ。
なんでだろう
グロも虫もダメなのにすごい引き付けられる
210:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 00:49:41.76:KXZM+jHz0グロも虫もダメなのにすごい引き付けられる
それから、もう片肺も潰された。今度は、梓が肺をちぎるように引っ張ったのである。
それから、潰れた肺の奥に見える心臓を無視するように、梓は律の肋軟骨をはさみで切断し、肋骨を胸骨から剥がした。
肋骨も、すべて律の胸椎から外された。そして無造作に床に捨てられた。
この段になって、律はとてつもない苦痛で狂気から目を覚ました。
律(私は一体何をやっていたんだろう……なんでこんなひどい目にあっているんだろう)
気がついたら、律の大部分の筋肉と神経と血管は潰されていた。顔も表情筋をはじめ、第一層筋はすべてちぎられ、それから咀嚼筋などの第二層も、梓がぐちゃぐちゃにした。
今度はうつ伏せにされ、背中の筋肉を剥がれた。そして、脊椎をバラバラにされ、ついに脊髄を露出させられた。
梓はその脊髄にメスを突き立てた。そのたびに、律は、全身のあらゆる部位を切断される激痛に苛まされた。
そう、四肢のあらゆる神経が、そこに通じているからである。
脊椎を失った律の体幹はふにゃっとしていた。
そして梓はそこにとんでもない名案を思いついた。
梓「唯先輩!すごいアイディアが浮かびました」
唯「なに!あずにゃん隊長!」
梓「いま、律先輩の消化器官が―滑液で絖っている、この色艶やかな臓器が―見事に露出しています。ここに、ゴキブリを入れてやるんです」
唯「な、なんと!正気ですか!あずにゃん隊長」
梓「しょ、正気ですよ///さあ、先輩。ゴキブリの水槽を持ってきてください」
唯「うへへー」
梓「さあ、ゴキブリ祭りですよ」
まず梓はメスで露出した律の胃(筋肉、腹直筋・外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋は切断したが、まだ腹膜は綺麗に残されていたのだが、それを梓は丁寧に切開し、胃を膨出し、胃に通じる神経を引きずると胃が現れる。)を切開した
唯「うっ。臭いよ、りっちゃんのお腹の中、臭いよ」
律の胃袋には、昨日食べた、スパゲッティが消化されずに残っていた。まるでスパゲッティ・カルボナーラのクリーム色だった。それはミートスパゲッティであったのに。
梓「さあ、ここにゴキブリをいれます!」
胃の中に生きたゴキブリを入れた。それはもぞもぞ暴れだした。
梓はすぐに胃の切開後を縫合し、消化器系をふさいだ。律は、消化器を内部から蹂躙される苦しみに悶えた。
その次に、梓は律の腹膜内に残った活きの良いゴキブリを入れた。そしてすぐに腹膜を縫合した。
律は腹をゴキブリにまさぐられる感触にたえきれなかった。
もし律が、スパイだったら、この場ですべての国家機密を漏らしてしまうだろう。
律(澪……私の人生ってなんだったんだろう。こんな苦しい最後を迎えなければいけないなんて)
澪(律……)ニヤニヤ
律の空想の中の澪は自分のこの、無様な姿を見て笑っているものだった。
そして律が最後にみた光景は
胃から入ったゴキブリが、自分の口から出て、空に羽ばたいていく姿であった。
それから梓は淡々と律の骨格の解体を進めた。
唯が脇で梓を応援していた。紬は途中から吐き気をこらえながら、端で見つめていた。決して紬は目を閉じなかった。このような解体に至った責任は自分にもあると痛感していた体。
紬(りっちゃんの魂も……救済されなかった)
紬(澪ちゃんの魂は今どこにあるの?唯ちゃんの頭の中?それとも、もうそんな物は存在しないの?)
梓は数時間かけて、律の解体を終えた。
梓はセックスの後のように、汗だくになっていた。(ただし梓は絶対に処女なのである)
唯「あずにゃん、おつかれ!」
唯がぽんぽん、と梓の頭を撫でた。すると梓は顔をほころばせた
梓「ありがとうございます、唯先輩。そして、澪先輩」
唯「ふふん」
梓は残った律の残骸を、かつて犬を解体した大型挽肉器にいれた。
掃除機に吸い込まれるように、闇の中に消えていく律の骨格をみて、紬はさめざめと泣き始めた。
梓「どうしたんです?ムギ先輩」
紬「わからないのよ。私自身が。そして梓ちゃんのことも。唯ちゃんのことも。」
梓「なぜわからないのですか?さすが豚ですね。下品な豚は、この人間解体を理解出来ないのですか」
紬「唯ちゃん!そもそも、なぜあなたは澪ちゃんを殺したの?」
唯「それは、りっちゃんにも聞かれたよ。答えようとしたら、邪魔が入ったけどね」
紬「教えて!それだけで、私は多分、救われるの!なぜ、唯ちゃんは澪ちゃんを殺したのか?それこそが私達の狂気の原点なのよ……それがわかれば…」
梓「救われる?救われる!人間なんて決して救われないんですよ。最後の最後まで、律先輩のように苦しんでいくんですよ。
苦しんで、苦しみぬいて……あなたのような、貴族風情の豚も、最後は死ぬときは、苦しむんですよ。
だって、生きているときにあったすべてのものと関係を捨てなくちゃいけないんですから、その苦しみは貧乏人の比じゃないでしょうね。」
紬「問題はそこじゃないのよ!」
唯「私が……澪ちゃんを殺したわけはね」
和「待ちなさい。唯。」
いつの間にか、真鍋和が、地下室にいた。青白くなった顔色、そして、苦しみでぼろぼろになった肌が今の真鍋和だった。
ここまで来るのに、壮絶なドラマが有ったのだろうが、それはあの五人の苦悩に比べれば薄っぺらいものだろう。
和「この事件の黒幕は……そう、陰謀を引き起こしたのは、そこの下品な豚なのよ。だから、絶対にその『大切な事』を教えてはいけない」
紬「なんで!和ちゃん!私は、なにもしていないわ、私は巻き込まれただけ……」
和「そうじゃないのよ。ことはもっと深刻なの。そして、梓ちゃん。その振り上げた手をおろしなさい。私に何かあったら、憂が黙っちゃいないから」
梓はメスを持った手を振り上げ、今にも和に向かって投げつる勢いだった。
梓「いひひ。」
梓は静かに手をおろした。
もし、物語が正常に推移していれば、決して唯が澪を殺すことはなかった。
見てみてくれ!あの、美しいまでの女子高生の日常を。あの環境では、貧困や屈辱、そして存在に対する苦悩、人間を何千年も苦しめ続けてきた、そしてこれからも苦しめ続ける様々な苦しみが起こりえない。
人間なら必ず苦しむ。それなのに、彼女たちは苦しまない。
そして唯が澪を殺すことになった、その直接的な原因をいくらあの美しい日常を穴があくほど見つめても見つからない。
和もいくら考えても、唯が澪を殺す理由を見いだせなかった。
梓「唯先輩が、澪先輩を殺す……?」
紬「……毎日夢に見るの。梓ちゃんが入部してから。」
梓「えっ」
梓は驚いた。と、同時に疑問を持った。そんな残酷な夢を毎日見続けて、完全な精神の調和を保っているこの人は、おかしいのではないかということだった。自分なら、毎日そんな狂った夢を見続けていれば、頭がおかしくなる自信がある。
紬「いえ、はっきりと覚えているわけではないの。すごい深い夢なのよ。朝起きたら、すっきり忘れてしまう、そんな夢。でも、毎日見るのよ。最近、気がついたんだけど。で、梓ちゃん。梓ちゃんはそんな夢、見ない?」
梓「……見たことがないです……でも、ムギ先輩、大丈夫ですか……私なら、そんな夢を見続けたら」
紬「気が狂う?」
和「琴吹紬はとある願望を、心の奥底に持っていた。それは、人間の解体なのよ」
和「この世界はムギの夢。だから、この残酷で非人道的な行為は、ムギの心のある種の現れなのよ。
一見完璧な人間性を持つムギの奥底に潜む、人間的な闇。
それは普段から立派で人徳がある人が抱え込みやすいのよ」
和「この世界はムギの夢。だから、梓ちゃんを恐れる必要なんてない。はっきり言って、梓ちゃんは、ただの木偶の坊よ。
肝心なのは、主人公の唯が(この世界はムギの夢なのに、主人公は唯なの)、握っている鍵、つまりなぜ唯が澪を殺したのか?をムギが知らなければいいの。」
唯「……」
梓「……」
紬「……」
梓「馬鹿ですね。ここは夢じゃありませんよ。いひひ。」
唯「いひひ。」
紬「いひひ。」
和「え。嘘」
和は気がついた。ここは自分が理解した世界とは全く別種の狂気に満ち溢れているということに。ここにあるのは、ただ純粋な人間解体への欲求だけだった。
勘違いしていたのだ。
人間を解体したいという欲望を、理性的に解釈しようとする姿勢がそもそもおかしいのに。
和は、いつの間にか、右手をミキサーの中に入れていた。
なぜ、そうしたか、そしてミキサーがどこから来たのかはわからなかった。
梓「スイッチ、オンです。」
ブーン………ヴィー―-―……ババババ……
唯「和ちゃんの、右腕ジュースだー」
紬「まあまあまあ!」
梓「いひひ。飲んでみてくださいよ、和さん。」
和「憂!憂!早く梓を殺して!」
唯「憂?憂は私の妹だよ、和ちゃん。」
唯は口を開いて、そこから何かを出した。誰かの右手がそのまま出てきた。
それは言うまでもなく、平沢憂のものだった。
梓「まあ、和さん程度の人間なら、あんまり解体する欲求が湧き上がりませんよね」
紬「うふふー」
唯「うへへ」
和「や、やめてぇー!!」
和はいつの間にか、革ベルトにより、全身を固定されていた。
そして、唯が、ジュウジュウに熱された、金属の長い串を持っていた。先が、尖った金属の串だった。
唯「これから和ちゃんで、焼き鳥をつくるね!!」
和は、肛門から口まで一刺しされた。和の体の芯を激痛が走った。
脊柱の他に、もう一本の体を貫く柱を用意された和は、ただでさえ熱い金属の、身悶えする苦しみに耐えきれずに失禁した。
和「ひぃ、ひぃっぃ。」
そしてその小便が、和の大腿から、滴り落ちると、じゅうと音を立て、そのアンモニアを多分に含んだ尿は蒸発した。
なんと、唯達は串に刺さった和を持ち上げ、木炭が明々と燃える大きな釜の上に置いたのだった。
和は、串に刺さった鶏肉のように炙られていく。まず、汗が噴き出る。それから、全身の脂がにじみだしてくる。
大変なことに、唯が火加減をあやまったのか、火と和の距離が近すぎた。
火が和の制服に燃え移り、そして、髪の毛に燃え移り、それから、彼女の脂ぎった体を燃やし続けた。
梓「これじゃ、焼き鳥じゃなくて、丸焼きです」
唯「うへへー、ごめんね、あずにゃん。」
三人は、黒焦げになっていく和を笑いながら眺めていた。
真鍋和は、絶望して死亡した。
唯が和を串からおろした。そして梓が包丁で、柔らかくジューシーになった和の肉を切り分けた。
あまり脂肪が多くない人だったので、唯は文句を言った。
唯「人間って、なんだかパサパサしているね」
唯がかつての理解者を頬張り、梓がちびちびと肉をかじっている。そして紬は脂のよく乗った、和の皮を食べている。
なんと、背徳的な光景だろうか。だけれども、あんまり人間の肉というものは美味しくないので、すぐに飽きた三人は、和の丸焼け死体を外に捨てた。
ロヴァニエミの乾いた風が、和の魂を天国へ運んでいった。
第八部
睡眠とったあと、朝六時にまた書き始めます。(明日は一日自由ですから)
たいへん申し訳ありません。だんだん、描写のキレが落ちていきます。
これだけのことをしでかしたあずにゃんには相応の報いを考えてありますので、それをもっとグロテスクに描くためには眠るのです。
おやすみなさい。
落ちれば、あずにゃんは救われるのですよ、きっと。
何だろう、狂気の中にもどこか美しさを感じずにはいられない
244:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 07:09:52.92:1f0XnzRiOすげえ全部理解できない
続きが読みたい
256:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 13:53:36.92:8khEDPY40続きが読みたい
第八部 梓「一人にしないでください!」
遅くなってすみません。寝坊しました。
紬「……梓ちゃん。私の事もっと知りたい?」
昼の摩天楼、75階のレストランで、唯が澪を殺す前の日、梓は紬に誘われた。
梓は子供だったので、その言葉の意味を解しかねて戸惑った。
まだ、空は青かった。太陽が空の一番高いところで燃え上がっていた。
梓「えっ……あ、はい、知りたいです!」
子どもが初めて捕まえたカブトムシの名前を大人に尋ねるような調子だったので、紬はため息をついた。
そのため息を見たとき、梓は紬の、絶対に音楽室では見せない苦悩を垣間見た気がした。
紬「……例えば、私のどんなところを知りたいのかしら?」
梓「えっ……えっと、そうですね、ムギ先輩のお家に遊びにいきたいですね」
梓は、紬がどんな家に暮らしているのかがかねてから気になっていた。お城だろうか?それとも、高層マンションの最上階だろうか(屋上は植物園になっているんだ)。
紬は躊躇うように、首を振った。
紬「ごめんなさい。あの家には来ちゃだめなのよ。きっと梓ちゃんは幻滅するわ。……自分でも恥ずかしいんですもの」
この日の紬はまるで人格が変わったみたいだった。梓は、先刻から困惑しぱなしだった。
梓「そ、そうですか……では、ムギ先輩の中学校の頃のアルバムとか……」
紬「ごめんなさい。そんなものももうこの世には存在しないのよ」
梓「……」
紬「梓ちゃんたちには、今の自分の事を知って欲しかったの。それじゃ駄目かしら。」
梓「これで和さんも死にました。いひひ」
唯「そうだね~」
梓「さあ、残るは三人です。次は、ムギ先輩の番ですよ」
紬「……」
唯「豚さんは、屠殺だね、ぶーぶー」
唯が豚の真似をした時、紬は唯の頬を平手でぶった。
紬「私は豚なんかじゃないわ」
唯「……ム、ムギちゃん…」
唯は頬を押さえて泣き出した。
梓「ちょ、ちょっと。私の唯先輩に何をするんですか!」
紬「さあ、唯ちゃん。教えなさい!なんで、澪ちゃんを殺したの!?」
紬は唯の胸ぐらをつかんで、持ち上げた。紬の怪力を以てすれば、唯程度の重さの人間一人持ち上げるのは容易いことだった。
唯「うーうー、ギブギブ、ムギちゃん下ろしてよ~」
唯は暴れた。梓は笑うのも忘れて呆然と見ていた。
唯「教えるから。私が澪ちゃんを殺害した訳を」
唯が、梓と紬に語った回想
澪「不幸の、最後に辿りつく場所はどこだと思う、唯?」
二人きりの音楽室で突然澪ちゃんが尋ねてきました。
唯「?もっと簡単な言葉で言って」
私は馬鹿なので、小難しい言葉はわかりません。
澪「ようするに、考えられる一番不幸な事はなんだ、という事だ」
唯「?わかる訳ないよ~私達はこんなにも幸せなのに」
澪「そうか……」
澪ちゃんは何か言いたげに呟きました。
唯「どーしたのっ。澪ちゃん、今日はなんか暗いよーひょっとして、テストの点が悪くて、さわちゃんに怒られた、とか!?」
澪「うへ、いひ、あはっはー!」
澪ちゃんは突然笑い出しました。
澪「お前は、幸せだな、唯。私が思う、最大の不幸は、幸せの絶頂にいる人間が、突然そのすべてを失うことだと思うんだ」
澪「昨日、××(伏字)は否定したがな。××(伏字)がいうには、人間の最大の不幸は、死ぬことが出来ないことだそうだ。
確かに死は大きな苦しみだ。しかし、それがあるから、私達は苦悩に殺されなくて済むらしいよ。
人間は、屑人間でも聖人でも、死ぬんだよ!どうしようもないことだ!私は絶対に死にたくない!
律が生きている限り、私は死ねない!」
澪ちゃんは突然、ギリシア悲劇のヒロインのように、大声で泣き、歌うように台詞をわめきたてました。
この時点で、もう、澪ちゃんは狂っていたのです。
私が狂わせたのか?××(伏字)ちゃんが狂わせたのか?私はわかりません。
そして澪ちゃんはいいました。
澪「律はどうなんだろう?私が死んだら、苦しむかな。他の三人はどう思うだろう?苦しむのかなー?」
澪「そして、今、一番幸せな唯……お前は他人の苦悩をよく知らないだろ」
澪「これから私はお前に殺されるよ」
私は訳がわかりませんでした。なぜ私が澪ちゃんを殺さなければいけないのか?
澪「私はお前にお願いしてでもいるんだ……私は、ムギが音楽室に入ってきたとき、つまり私と律がムギと出会った日の晩から、夢を見続けてきた。それはだな、律が、昆虫のような後輩に、腹を掻っ捌かれ、そこに彼女のような昆虫を入れられる夢なんだ。」
澪「そして、その夢は、唯。お前が私を殺した後に、実現することは、もうわかっているんだよ」
唯「で、でも。それじゃ、りっちゃんは死んじゃうよ?」
私は馬鹿なので、なぜそのようなことが起こりえるのかわかりません。きっと、どんな人間でも理解出来ないでしょう。
私は馬鹿だけど、みんな同じくらい屑だから……(この時、私になぜこのような感情が沸き上がったのか、今考えても詮方ないことです。まったく今までの私とは違う思考回路に切り替わったみたいでした)
澪「うふ。そうだろ。でも私はその時、死んでいるんだ。そして律も死ぬ。まあ、それはいいことだ。仕方が無いんだ、人間はいつか死ぬからな。」
澪「律だけは、まともな人間だった……私は少なくとも、処刑される前の律に関してはそう信じている。
律だけはまともだ……まともだと思わないと。律は屑人間なんかではない。私と唯は屑人間だけれどもな」
澪「それより大切なことは。私等が死ぬことによって、あのゴキブリが、とてつもない不幸な目に会うってことなのさ」
唯「あずにゃんが?」
澪「そう、今、お前が私を殺せば、梓は不幸のどん底に沈むことになるぞぉー。いひひ。」
私はその言葉を聞いて、澪ちゃんの首を締めて殺しました。
それからパニックに陥り、澪ちゃんを解体して隠そうとしました。体が勝手に動いていました。誰かに操られたみたいでした。
唯が語り終えたとき、紬は顔面蒼白になり、うつむいていた。
そして、何よりも意外なことが、梓までが顔を青くして、唯の話を黙って聞いていたということだった。
梓「それで……は、誰が一番最初に気狂いになっていたんですか……」
梓「そうだ、××が怪しいです、さあ、ムギ先輩、あなたが一番怪しいです。」
紬「私が最後にあったのは、確かに澪ちゃんよ。でも、澪ちゃんと、少しだけ難しい話はしたけど、そんなに気狂いではなかったわ。
むしろ、私がみんなの毒にやられて、気が狂ってしまったのは、唯ちゃんが解体した、澪ちゃんの四肢を見てしまった時だと思うわよ」
梓「そんな……でも、澪先輩は、私が律先輩のお腹にゴキブリをつめる事を知っていました。
つまり、私は、澪先輩に操られていたのですか?そんなわけありません、い、いひ、……」
梓は恐怖のあまり、満足に笑えなくなっていた。今梓が話したことは、梓に衝撃をあたえ続けたのだが、それよりも梓に深い苦しみを与えたのは別のことだった。
つまり、尊敬する澪が、梓の不幸を望み、そして好きだった唯が、澪の言うことを聞いて、澪を殺したことだった。
梓(わたしは……わたしは……澪先輩が私の不幸を望んだ?自分の死と律先輩の死を引換にしてまで、私の不幸を望んだ?)
梓(何がきっかけで?私が澪先輩や唯先輩に、ひどい事をしましたか?答えはノーです。
なにせ、私は澪先輩のために(わたしのためでもあるが)唯先輩に殺された澪先輩を、唯先輩の魂の中で生き返らせようとしたのです)
梓(それに、澪先輩を殺した、唯先輩を批判することもしませんでした。)
梓(ありえないです……いや、元凶はなに?力を貸してよ……憂……純……)
憂(梓ちゃん大っキライ。わたしからお姉ちゃんを奪った)
純(痛いよー暗いよー痛いよー痛いよー、あずさ、痛いよーやめてよー痛いよー、暗いよー痛いよー暗いよー辛いよー)
梓の頭の中で、思い起こされる憂も純も、教室で笑って話している姿ではなかった。
右半身をこそげ落とされて、立ち上がることも出来ず人形のように床に転がっている憂と、目玉をほじくられて、暗闇のなかで手探りで歩いている純だった。
唯「これが私が澪ちゃんを殺した理由だよ。ただ、あずにゃんに不幸になって欲しいと思っただけだよ」
梓「う、うそでしょ……」
紬「そうだったのー。ならはじめからいってくれれば、協力したのに」
唯「だけれども、まだ、最大の疑問が残っているよ」
紬「な、何?唯ちゃん。梓ちゃんをこれから解体する前に、まだ、何か喉につっかえるものがあるの?」
唯「それは、まだあずにゃんが昆虫か人間かわからないってことだよ。」
梓「……私はに、人間ですよ。だって、ムギ先輩だって、私の脊柱をおって、私に内骨格が残っている事を証明したじゃありませんか」
梓「そもそもですね、人間は脊髄動物で昆虫は節足動物。人間が、棘皮動物と分岐する以前……つまり人間の祖先の兄弟がヒトデになる時代よりも昔に、私達人間は昆虫と決別したんですよ……」
梓「私達の体には、マルピーギ管もないし、体を覆う、キチン質の外骨格もない……体は分節構造をとっていないし、私達の神経系は、中枢神経系で、高度に発達しているんですよ!」
梓「その昆虫とは違う、発達した中枢神経系で、私が昆虫だと判別するなんて、あなた達は、馬鹿ですか?」
唯「私は屑人間って、あずにゃんに言われた」
紬「私は豚って、梓ちゃんにいわれたわ。」
紬「梓ちゃんには、昆虫になってもらいましょう」
今度は梓が解体される番だった。
いつも、梓の解体を側で眺めていた唯と紬はもう、その道の技術に習熟しかけていた。
唯「下手くそだけど、我慢してね、あずにゃん。」
まず、梓を固定した。その固定ののしかたは、まず梓の胸骨の下、Xiphoid processに長い鉄の釘を打ち込む。
そして次に、撓骨と尺骨の間の骨性線維結合に同じく長い鉄の釘を打ち込む。それから、足の関節にも打ち込む。これでいくら暴れても梓は決して逃げられなくなった。
それから、唯と紬は研がれたメスを持ち、梓の皮膚を剥ぐ。唯が右半身、紬が左半身を担当した。
こうして、梓の腹側の皮膚はすべて剥がれ、黄色の脂肪がぶちょぶちょ付着した筋膜があらわになった。
唯「昆虫には柔らかい皮膚より、硬いチキン質の外骨格のがお似合いだよ!」
紬「そして、筋肉は必要だけれども、そうね、内骨格は不要だわ」
紬は筋肉の停止部を切開し、そして、その筋肉の裏を走る、様々な神経を剖出していく。
唯は、梓の肋間神経を見つけ出し、それを引っ張り、弦のように弾く。
そのたびに梓は、茨の鞭で叩かれたような激痛に襲われる。
紬「昆虫に女性器ってあるのかしら~?」
紬はむき出しになった、梓のピンク色の女性器をいじっていた。
梓は感じる暇もなかった、なぜなら、神経を弾く事に快感を覚えた唯が、骨をそっちのけで、梓の上腕部をほじくり、腕神経叢を探していたからだ。
そしてそれを見つけ出した唯は、神経をギターの弦のように弾く。
そのたびに梓は悲鳴をあげる。
梓(いぃい、いぎぃ、唯先輩、やめてよぅ……)
唯「わーい、新しいギターが手に入ったよぉー」
紬「こっちも、面白いわよー。梓ちゃん、昆虫には、大陰唇や小陰唇、陰核なんてないわよね、なら、それを切開するわ。」
紬「私がメスでやっても、いいんだけど、面白いアイディアがあるの。そう、昆虫にやらせたらどうかしらってね。」
紬は、黒い粒が無数に入った瓶と、はちみつの入った瓶を持ってきた。
まず、紬ははちみつを梓の女性器に塗った。それから、黒い瓶を開け、梓の股の下に置いた。
すると、その黒い粒がもぞもぞ出てきた。
唯「あっ、蟻だ~」
紬「蟻が、梓ちゃんの女性器を食いちぎってくれるわ。さ、私は下半身の解体にうつるね」
その蟻は、ただのクロアリではなく、南米産の軍隊アリだった。
肉を食いちぎられる苦痛で、梓は頭が真っ白になった。
紬は、その梓の女性としての象徴の崩壊を見つめながら、梓のむちむちとした下腿部を解体していった。太ももの肉付きを演出する、太腿四頭筋と二頭筋は骨から剥がされた。
股関節を形成する、大腿骨は、大腿骨頭靱帯を最後に切られ、梓の股関節から外された。
数時間かけて、梓はバラバラにされた。頭蓋骨から脳髄まで摘出され、脊髄も脊柱から暴露した。
梓は、今、物言わぬ肉塊になっていたが、まだ死んでいないはずだった。
唯「つ、疲れたね……」
紬「うん」
唯と紬は、激しいセックスの後のように汗だくだった。(ただし唯と紬は処女である)
二人は梓の骨を完全にその肉体から取り除いた。そして、その骨を、挽肉器に入れて粉々に潰した。
そして残った肉片をかき集めた。
これからが梓の本当の苦しみの始まりなのである。
人間の尊厳タル内骨格を喪失した梓は、すりつぶされた神経の断面をを空気にさらされる激痛に苦しんでいた。
憂「お姉ちゃん……久しぶりだね……」
地下室に、憂が入ってきた。全身が××××(伏字)氏病の類似症状を呈しており、左半身には包帯をグルグル巻きにしていた。大きく欠損した右半身は、断面がすりつぶされ、肉が腐っていた。
憂は腕にかかえた銀ボウルいっぱいにはいった、ゴキブリの死体を唯に渡した。
唯「ありがとー、憂~」
そして、唯と紬は、ゴキブリの皮を剥き始めた。左手が麻痺して使えなくなった憂は、突然眠気に襲われて、床でごろんと横になっていた。
挽肉器が奏でるメサイアが、子守唄のように憂を夢の世界へ導いた。それは新たな悲劇の始まり出るのだが、ここでは割愛する。
憂はそのまま、とこしえの眠りについた。
唯「さて、憂も死んだことだし。さあ、ゴキブリを剥こう」
紬「ええ。梓ちゃんはどんな思いで、その転がった眼球から私達を見つめているのかしら?」
唯と紬の、いつもは楽器で美しい音楽を奏でる、あの芸術的に繊細な指は、ゴキブリの青銅色の体液で濡れていた。
ふたりは、黙々と、栗の皮を向くように、無言でゴキブリの中身を潰さぬよう注意して皮を剥ぐ。
キチン質の外骨格を剥がしたあと、中腸や直腸のつまった内臓系は、梓の口の中に捨てられた。
唯「あずにゃん、お腹一杯だね」
外骨格をゴキブリから剥がしたあと、唯と紬は外骨格を梓に縫いつけていった。
梓を昆虫にするための、彼女たちなりの考えであった。
梓の全身を覆うだけの外骨格を得るために、唯と紬は数千匹のゴキブリを犠牲にした。
ひどい殺生だった。二人の罪は、ゴキブリの世界ではとてつもなく重いものであろうが、人間はなぜだか、ゴキブリをいくら殺しても罪には問われないのだ。まったく、理不尽ではないか!
全身、茶色に塗りつぶされ、自分の支えとなってきた内骨格を失った梓は、もぞもぞと這うようにして、動き出した。
唯「あずにゃん復活!あずにゃん復活!」
紬「おめでとーおめでとー」
梓「やめてください、私は昆虫じゃありません、私に脊柱をを、内骨格を返してください」
唯「ごめんね、あずにゃん。あずにゃんの内骨格は、メサイアの中に捨ててきたよ」
梓「いぎゃああああああ」
唯「あずにゃんは苦しんだかな?でも、これからもっと苦しむんだよ。」
紬「梓ちゃんは、私達の何倍、何十倍、いいえ私達がこの小麦の小さな粒だとしたら、梓ちゃんはこの宇宙の大きさくらいの苦しみを体験しなければいけないの。」
唯「でも宇宙は小麦の粒の中にもあるんだよ。だから、あんまり悲観しないでね、あずにゃん」
紬「はっ!そうよ、いまえ思えば、苦しみなんてそのくらいの大きさのものなのよ。だから、苦悩していた自分が馬鹿らしい。
なんだか、昆虫になって、これからずっと死ぬまで(死ねないけど)、地面を這い続ける梓ちゃんを見ていたら、私の抱えた苦悩なんてどうでもいいものだったと思えるのよ
唯「そうそう。マザー・テレサの苦しみも、場末の飲み屋で酒とクスリに溺れている若くてボロボロの女の人の苦しみも、みぃんな同じ。
そうだったんだね、あずにゃん。だから、あずにゃんの苦しみも……」
梓「そんな!私が一番ひどい目にあってますよ、私が一番苦しんでますよ、なんでこんな目に合わなくちゃいけないんです」ガサゴソ
唯「人間は自分の苦悩を一番大きなものだと思っているんだよ」
紬「だから、梓ちゃんの世界では、それが一番大きいんでしょうね」
唯「それじゃ、私達は世界から退場するよ。あずにゃんの世界は、あずにゃん、一人ぼっちで、一番大きな苦しみと向き合うといいよ」
梓「行かないで、行かないでください、唯先輩!」ゴソゴソ
唯「健康には気をつけてね」
紬「そうよ。いくら昆虫が風邪を引かないとはいえ(昆虫は呼吸器が満足に発達していないから、あんまり障害を起こさないのかもしれない※)、踏み潰されないように気を付けるのは大切よ。
それじゃ、お元気で」
※作者注:昆虫が風邪を引かない、というのは僕の偏見です。本当は私達人間のように、毎年この季節には風邪で困っているのかもしれません。
唯と紬は、先刻からメサイアを奏で続ける挽肉器の中に入っていった。
メサイアにあわせて、彼女たちは引き潰れていき、その断末魔の悲鳴はその、『主を褒め称える言葉』そっくりだった。
そのとき、ちょうどメサイアがハレルヤの部分に入った。
梓も、一緒にハレルヤの中に飛び込もうとしたけれども、梓は昆虫の癖に羽をつけてもらえなかったので、地面をはうことしか出来ず、挽肉器の中に入る事は叶わなかった。
梓は世界で一人ぼっち。
梓「自分以外の人を苦しめただけで、この有様ですか。すみませんね、澪先輩、律先輩」
梓はこれからずうっと、地面を這い続けます。
第九部(最終部)
摩天楼、75階のレストランでお茶を終えたあと、梓は紬につれられて街を出歩いた。
今度はどんな場所に連れていかれるのか、梓は緊張した
紬に手を握られ、引っ張られる格好で梓は街を歩いた。
途中、いかがわしい看板を掲げるホテルがあって、そこに連れ込まれるのではないかと恐怖したりした。
梓は、先程のレストランよりも高級な場所に連れていかれるのではないかとビクビクしたが、だんだんと人通りの多い、それも自分のような若者が多い場所に入っていった。
紬は梓を連れて、駅前のゲームセンターに入った。
ここは梓も来たことがある場所だった。
紬「ここはね、前にりっちゃんに連れてきてもらった場所なの」
梓「……え?」
紬「楽しかったわ~このUFOキャッチャーってのがね、難しいのよ、ほんと」
紬は子供のようにはしゃいだ。梓はどういうリアクションを取っていいのかわからず立ちつくしていた。
紬「あっ。また落としちゃった。梓ちゃん、やってくれないかしら?かわりに」
梓は紬の代わりに、バーを操作し、ぬいぐるみを捕まえようとした。アームがおりてきて、その不恰好な銀色の腕に可愛らしいぬいぐるみを捕まえたと思ったら、ゴールに辿り着く前にぬいぐるみを落としてしまった。
紬「あっ」
梓「すみません!」
梓は頭を下げた
紬「いいのよ。でも、りっちゃんは一発で捕まえてくれたわ」
梓は自分の財布から百円硬貨を二枚出して、それをUFOキャッチャーに入れた。
梓「やってやるです!」
澪「おっ、ムギに梓だ」
ゲームセンターの奥から、澪がやって来た。
梓「こんにちわ、澪先輩。」
紬「澪ちゃん~奇遇ねぇ」
梓が三回目のUFOキャッチャーにチャレンジしている時だった。
澪「おっ。頑張ってるな、でもそんな不細工なぬいぐるみ欲しいのか?」
澪がガラスから覗き込んだとき、また、UFOの腕からぬいぐるみが落ちた。
いわゆる、キモカワ系のぬいぐるみだったが、梓はじとっと澪を見た。
紬「ひどい……澪ちゃん……私が欲しかったのに……」
澪「わーわー!!ごめん、ムギ、悪気はなかったんだよ!!」
澪が謝り続けいる間、梓は四回目のUFOキャッチャーにチャレンジしていた。
律「おーい、澪、急にいなくなってどーしたー。って、梓にムギじゃん」
紬「あ、りっちゃーん。澪ちゃんと一緒に来てたのね」
律「ああ。ところでUFOキャッチャーか?」
梓「ええ、これがなかなか難しいです」
ぼとん。また、UFOは、ぬいぐるみを上で落とした。
律「下手くそだな~そんなカミキリムシ?みたいなキャラ、そこまで欲しいのかよ!まあ、私がかわりにやってやってもいいぞ。律先生お願いしま~すって、猫の真似をしながら言えるならなっ!」
澪「り~つ」ボコ
律「あっいたい!」
紬「もう諦めたら、梓ちゃん。私はいいから……」
梓「いいえ、やってやるです!」
梓は今日、五回目の二百円をUFOキャッチャーに投じた。
律「それにしても、これで唯が来れば、軽音部全員集合だな」
澪「そうだな、でもそんな偶然あるはずないよ」
梓「ぐぬぬ……この角度でこういけば……」ブツブツ
紬「あっ!あれ、今、ゲームセンターの前歩いているの、唯ちゃんじゃない?」
勉強道具の入った鞄を肩にかけ、唯があどけない足取りで、道を歩いていた。
律「おーい、唯~こっちだぞー」
唯も四人に気がついたみたく、駆け寄ってきた。途中、ごちんと他の通行人とぶつかっていたが、唯はふらふらしながらやってきた。
唯「みんな~りっちゃんに、澪ちゃんに、ムギちゃんに、あずにゃん!」
紬「これで、軽音部全員集合ね!」
唯「えへへ~すごい偶然だねーっ」
唯「あずにゃん?そのぬいぐるみ、なんだか触覚があずにゃんのツインテールそっくりだね!」
梓「なっ!?あっ!唯先輩がそんなこと言うから、落としちゃったです!」
五回目のチャレンジも無為に終わった。
泣きそうになる梓を、先輩四人がなだめた。
紬「せっかく五人が集まったんだから、一緒に遊ばない?」
律「そうだな!イエーイ!」
澪「もうっ……律ったら……」
唯「わーい!!」
梓「……」
律「ほら、梓も盛り上がっていこうぜ!」
梓「わっ、ちょっと、律先輩!」
律と唯に引っ張られ、嫌そうにしつつも頬をほころばせる梓。
紬「楽しそうね……」
澪「ああ。五人そろってよかったよ。」
紬「ええ……」
澪「私達、五人が出会えたことが奇跡であり、幸せなんだよな」
紬「そうね。私達がお互いに惹かれ合って出会えたのって本当に幸せよね」
遠巻きに、はしゃぐ三人をみつめる澪と紬の顔もほころんでいた。
「けいおん部、万歳!」
部長の律が声をあげた。
少し離れたところで見守っていた、紬と澪もかけよって、お互いの手をつないで輪をつくった。
「けいおん部、万歳!万歳!」
その絶叫に近い唱和を聞き、梓が取りそこねたぬいぐるみが笑った。
いひひ。
終り
ご静聴ありがとうございました。
本当にありがとうございました。
僕は梓が大好きですが、他の4人も大好きです。
本当にありがとうございました。
さようなら。
おつ
面白かった
いひひ。
305:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 17:49:41.59:yHNwuDhV0面白かった
いひひ。
ん、んんーブラボー!ブラボー!!素晴らしいスバラシイ
気が向いたらまた書いてくれ!そのときまで待ってる待ってるイツマデモ……
いひひ。
310:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 18:42:50.37:jCwHxI5M0気が向いたらまた書いてくれ!そのときまで待ってる待ってるイツマデモ……
いひひ。
乙!ただひたすらに素晴らしい過ぎる!
ラストなんて挽肉機の入り口とUFOキャッチャーの落とし口?が重なって見えてカタルシスのあまり膀胱としてしまう。
いひひ
311:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 18:48:05.51:4/N/89wN0ラストなんて挽肉機の入り口とUFOキャッチャーの落とし口?が重なって見えてカタルシスのあまり膀胱としてしまう。
いひひ
チャカポコチャカポコ乙
いひひ
316:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 19:48:40.30:1bxXCCBR0いひひ
今読み終わったけどすごい いやすごいと思う
この手のあんまり好きじゃないんだけど続きが読みたくなる
そんな感じでした >>1乙!
317:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 20:24:34.54:7Wavr3SU0この手のあんまり好きじゃないんだけど続きが読みたくなる
そんな感じでした >>1乙!
時間を忘れて読んでしまった
いひひ
319:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/06(土) 21:00:46.82:WpJEYEnb0いひひ
いいもの読ませていただいた。気が向いたらでいいからぜひまた書いて欲しい。>>1の溢れる文才に乾杯。
コメント
キチアピにつき合わされるのって意外と苦痛なんだな…おやすみ
狂気は感じたけど惹かれない狂気だったわ
というか趣味でこれだけ書けるって凄いね
こんなssタダで見れてありがたいわ
いひひ