事故から9年「福島への無関心」「原発への無反省」がもたらす危機

細野豪志×田中俊一【後編】
田中 俊一, 細野 豪志

「非科学的な対応」を続けるのか

田中 福島県に申し上げたいのは、どうして福島の漁業はいまだに部分操業、試験操業なんですか、ということです。

隣の茨城県は100%操業です。海は繋がっています。福島県の水が、沿岸流はみんな南に流れるんですよ。事故前よりも、茨城県の水揚げは増えているんです。それなのに、福島県は事故前の15%しか操業していない。そういう極めて非科学的な対応を続けている限り、風評はなくならない。県の対応自体が、風評被害の根本なんだと思う。

細野 福島も変わらなければいけない?

田中 そうです。厳しく測っているとか、部分操業に留めているとか、本来は威張るようなことではないでしょう。お米だって、毎年1100万袋以上測って、(基準値越えは)1袋も出ていない。「測るだけで毎年50億円のお金がかかっているのを知っていますか」と言うと、誰も知らないですよ。科学とはファクト、データですから、それに基づいて基準を定めないと風評はなくならないと思いますね。

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細野 そこは国、政治の役割でもありますよね。国が基準を正常な状態に戻す。

田中 そうです。コーデックスの国際基準が1ミリシーベルトだから、1ミリシーベルトでいいと私は思います(※注:コーデックス委員会 [Codex Alimentarius Commission, CAC] は、国際連合食糧農業機関 [Food and Agriculture Organization of the United Nations, FAO] と世界保健機関 [World Health Organization, WHO] が1963年に設立した、食品の国際基準 [コーデックス基準] を作る政府間組織。食品からの追加線量の上限を1ミリシーベルト/ 年としている)。

細野 そもそも、その「年間1ミリ」でも、ものすごく安全サイドに立った厳しい基準です。しかし日本では「毎日汚染された食品を食べる」という非現実的な想定をおいて、100Bq/ kg という基準を作っている。

田中 きちんと測っていることは間違いないんだから、ファクトに基づいて、国際的な普通の基準に戻す。これをやっていただければ、福島の風評はほとんど回復すると思いますね。