事故から9年「福島への無関心」「原発への無反省」がもたらす危機

細野豪志×田中俊一【後編】
田中 俊一, 細野 豪志

「先送り」がもたらした2人の殉職者

田中 凍土壁(※注:地中に凍らせた土で壁を作り、地下水の流入や土の崩落を防ぐ技術。福島第一原発における汚染水の増加を抑えるための対策として、2013年に国と東京電力が大規模な凍土壁の設置を決定した)って作りましたよね。

細野 はい。

田中 維持するのに年間20億円もかかる。作っている当時は、まだ私が規制委員長でしたから、各自治体に説明に回っていたんですが、「これができたら、皆さんトリチウム問題なくなると思いますか?」と訊いたら「思う」って答えるんですよ。私は「なくなりませんよ」と言っていたんですが、やはり今もなくなっていません。

細野 トリチウムは除去できませんからね。

田中 自然界にも大量にあるものですから、減らすことはできても、なくならないものなんですよ。

それに、凍土壁の工事では作業員が1人、感電で亡くなっています。貯水タンクを作っている最中にも、タンクから落下して1人亡くなっている。トリチウムの海洋放出を先送りにしたことで、2人が殉職しているんです。

 
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そういう人命と、何千億円というお金が費やされている。そういうことも踏まえて判断するのが有識者の使命だと思うんです。