福島第一原発事故の直後から、被災地の除染に率先して取り組み、2012年から原子力規制委員会初代委員長を務めた田中俊一氏。現在、福島県飯館村に住みながらボランティアで「復興アドバイザー」を務める田中氏を、2011年当時、菅直人内閣で原発事故担当の総理補佐官を務めた衆議院議員・細野豪志氏が訪ねた。
原発の過去・現在・未来をいま改めて問う特別対談。後編では、いまだ見通しの立たない処理水問題、消えない風評被害、そして原子力に未来は残されているか否かについて考える。(構成・林智裕、ライター)
細野 中間貯蔵施設・除染土再利用と似た問題として、福島第一原発の処理水を海洋放出するか否か、という問題があります。そちらも答えを見出していかなければならない。本音のところをお伺いしたいのですが、一番初めに処理水の海洋放出について「大丈夫だ」とおっしゃったのは、田中先生ですよね。
田中 他に方法がないんだから、ちゃんと希釈廃棄するべきだ、量的にも諸外国と比べて飛びぬけて多いわけではないんだし、と言ったんですが、結局政治は、私に言わせれば逃げたんですね。
細野 決めきれなかったと。一時期、機運はちょっと高まりましたが。
田中 当時私が海洋放出を申し上げた時、福島の漁協も、ある程度はやむを得ないだろうという結論に達していたんですよ。後はもう、問題が起きたら政治が責任をとります、と言ってもらえればいいんだ、と。官邸まで私、行ったんですよ。
細野 お辞めになる随分前ですよね。
田中 原子力規制委員長に就任して2年目、2014年ごろですね。それで当時の経産大臣が、「じゃあ私がやる」と約束したから、これで片付くと思ったら、やらなかった。そしてその後、「汚染水処理対策委員会」ができて。
細野 何年も議論が続きましたね。
田中 そこで有識者がきちんと判断できず、結局今に至るまで結論が出ていない。
細野 平時と有事の判断の違いもあると思うんです。有事の時は判断せざるを得ない状況に追い込まれた。しかし今は平時になっているので、結論を先延ばしできてしまうわけですよね。