田中 そうですね。私も環境省には、これは飯館村だけのためにやっているのではなくて、国、福島県、他の県も含め、後始末の道を拓くための取り組みだということを申し上げています。
そこをいつまでも曖昧にしておくと、結局、どこかで行き詰まってしまう。大熊町や双葉町も、いずれ自分達の地域から土を運び出せると思っているわけです。しかし、将来的に県外への搬出ができなくなる、大熊や双葉が最終処分地になってしまう可能性もある。
そうなる前に、処理できるものは各地で安全に処理して、利用できるものは利用しよう、ということにしたい。除染と運搬の費用だけでも大変ですし、すでに双葉郡の中間貯蔵施設にかなり運ばれてはいるものの、除染土壌はまだまだ残っています。環境省はあと1~2年で運ぶと言いますが、本当にできるのかも分かりません。
細野 中間貯蔵施設自体は確かに動き出してはいますが、当初の私のイメージと今の姿は、正直、少し違うんですよね。
福島県としては「中間貯蔵」だから受け入れるのであって、「最終処分場」であれば首は縦に振れない、という前提があった。それはよくわかるので、当初考えていたのは、どんどん溜め込むのではなく、安全性を確保できたものから再利用する。どうしても処理できない高レベルのものが残る可能性はありますが、オンサイト(原子力施設内部)には、さらに高レベルのものも相当ありますよね。
田中 はい。
細野 燃料デブリで溶けているものは簡単に処理もできない。そこも含めて、放射線量の強いものをどうするかは、ある段階でまた次の策を考えなければならない。当初から私はそう思っていたし、そういう提案もしたんです。ただ現実的には再利用が進まず、除染土がどんどん溜まっている。半減期などの要因で放射線量が下がっていたとしても、行き先がなくなっていますよね。
もちろん、生活空間や学校の近くに置いておくのは精神的な部分も含めていいことではないので、いったん運び出しが必要なものもあるけれども、安全性を確保できたものについては活用していく道筋がないと、本当に出口がなくなってしまいます。
田中 これは、目の前にある現実の問題をどういう風に処理するかということなんですね。
安全上の問題があるなら、やっぱりそれはきちんと報告して対応しなきゃいけない。けれども安全上の問題がないなら、要するに気持ちの問題だったら、やっぱりそれを乗り越えないと事態は動かない。私も住んでみてわかったのですが、現地に住んでいる人はある程度合理的に考えているところもあると思うんです。
(後編へつづく)