細野 飯館村の長泥地区ではいま、放射性物質を含む土砂の再利用が行われています。福島県内の除染廃棄物は、今、大熊町と双葉町の中間貯蔵施設に土が運ばれていますが、飯館村に関しては運んでいるものもあるけれど、一部は村内で再利用している。これを田中先生もサポートされていますね。
田中 福島県には2000万袋(2000万立方メートル)くらいの除染土壌があって、飯舘村にはその10%があるんです。
細野 10%もあるんですか。
田中 当初は250万袋くらい、可燃物を除いても200万袋ぐらいありました。避難解除になっても、除染土壌は田畑の真ん中にずっと置かれているわけです。これを全て大熊町や双葉町の中間貯蔵施設に運び、その後30年以内に県外にまた持ち出します、ということになっているんです(※注:除染廃棄物は双葉郡大熊町と双葉町内に造られた施設で中間貯蔵された後、30年以内に福島県外に運び出して最終処分する予定)。
しかし、放射性セシウムは粘土系の土壌に捕らえられるとほとんど動きませんから、きちっと管理処分すれば安全上の問題はない。加えて、放射性物質は化学物資と違って、時間が経てば半減期によって減っていくため、わざわざ県外に運び出すのは非合理的です。身近なところで安全に始末することが大事です。
細野 除染の基準は、本来1kgあたり8000ベクレルですよね。
田中 そうですが、なんとなく5000ベクレルが基準になっているんです。なので、それ以下のものはできるだけ再利用につなげたい。そうすると、中間貯蔵施設で処分しなければならない土壌は半分弱ぐらいには抑えられるでしょう。
細野 おそらく今、大熊町などで貯蔵されている土も、ほとんど8000ベクレルを下回っているんじゃないでしょうか。ただ、重要だと思うのは、このプロジェクトが飯舘村できちんと受け入れられるかどうか。受け入れられれば、他地域での展開もできるでしょうし、受け入れられなければ膨大な土をどう処理するかという問題になってくる。ものすごく重要なプロジェクトだと思うんですよね。